水力7【電験3種 電力】揚水発電所の電動機入力と発電機出力を計算する(揚程と有効落差)!令和6年度上期 A問題2 完全解説

電験3種 電力科目 水力 令和6年度上期 A問題2 発電は掛けて揚水は割る!入力と出力を計算

今回は令和6年度上期 電力科目 A問題2を解説します。総落差200m・流量100m³/sの揚水発電所について、揚水時の電動機入力[MW]と発電時の発電機出力[MW]を求める計算問題です。

揚水時は揚程=総落差+損失水頭で水動力を効率で割り、発電時は有効落差=総落差−損失水頭で水動力に効率を掛ける——この「加減」と「乗除」の向きが最大のポイントです。

出題のポイント:揚水と発電で逆になる向き

揚水発電所の電動機入力と発電機出力を求める問題の要点図
揚水は足して割り、発電は引いて掛けることが計算の要点です。

揚水時は損失水頭を足して効率で割り、発電時は損失水頭を引いて効率を掛けます。総落差200 m、流量100 m³/sから電動機入力と発電機出力を順に求めます。

目次

令和6年度上期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 水力 令和6年度上期 A問題2 問題文
令和6年度上期 電力科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2

電験3種 電力科目 【水力】 令和6年度上期 A問題2

 総落差200m、ポンプ水車・発電電動機1台よりなる揚水発電所がある。揚水時・発電時共に流量は100m³/s、損失水頭は揚水・発電共に総落差の2.5%、ポンプ効率・水車効率共に85%、発電効率・電動機効率共に98%とし、損失水頭及び上記4種の効率は、揚程、落差、出力、入力の変化によらず一定とする。揚水時の電動機入力[MW]と、発電時の発電機出力[MW]の組合せとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

電動機入力[MW]発電機出力[MW]
(1)235163
(2)235159
(3)241163
(4)241159
(5)229167

揚水と発電で逆になる2つの向き

上池と下池を結ぶ揚水発電所で揚水時と発電時の損失と効率の扱いを比較する解説
損失は、揚水時には必要な揚程を増やし、発電時には使える落差を減らします。

本問の急所はここだけ——2つとも逆になることを押さえれば解けます。

★揚水時(ポンプ)★発電時(水車)
使う高さ★揚程=総落差+損失水頭★有効落差=総落差−損失水頭
効率の扱い★割る(入力を求める)★掛ける(出力を求める)
求めるもの電動機入力発電機出力

なぜ揚水では損失を足すのか——摩擦に打ち勝ってさらに持ち上げなければならないからです。200 m 上げるのに、摩擦の5 m 分も余計に仕事をする——だから205 m 分の仕事になります。

発電では逆に、摩擦で目減りした分しか使えません——200 m あっても実際は195 m 分損失は常に「損をする方向」に働くと考えれば、符号を間違えません。

効率も同じ発想——揚水では「これだけ入れないと足りない」ので割り算発電では「これだけしか取り出せない」ので掛け算です。

揚水発電所の入力・出力を計算

損失水頭から電動機入力241 MWと発電機出力159 MWを計算し選択肢4を選ぶ解説
電動機入力は241 MW、発電機出力は159 MWとなり、正解は選択肢(4)です。
\( h_l=200\times 0.025=5\ [\mathrm{m}] \)
①損失水頭
総落差の2.5 %
\( H_{\text{揚}}=200+5=205\ [\mathrm{m}] \)
②揚程
★足す
\( P_{\text{電動機}}=\dfrac{9.8\times 100\times 205}{0.85\times 0.98} \)
③電動機入力
★効率で割る
\( =\dfrac{200\,900}{0.833}=241\,000\ [\mathrm{kW}]=241\ [\mathrm{MW}] \)

\( H_{\text{発}}=200-5=195\ [\mathrm{m}] \)
⑤有効落差
★引く
\( P_{\text{発電機}}=9.8\times 100\times 195\times 0.85\times 0.98 \)
⑥発電機出力
★効率を掛ける
\( =191\,100\times 0.833=159\,000\ [\mathrm{kW}]=159\ [\mathrm{MW}] \)

★答え

総合効率0.85×0.98=0.833 を先に出しておく——揚水も発電も同じ値なので、1回計算すれば使い回せます。

9.8×100=980 も共通——980×205=200,900、980×195=191,100あとは0.833 で割るか掛けるかだけになります。

答え正解は (4)——電動機入力241 MW、発電機出力159 MW です。

選択肢はすべて符号の取り違え

選択肢値[MW]どんな誤りか
(1)(2)揚水235★揚水で損失を足さなかった(200 m のまま)
(1)(3)発電163★発電で損失を引かなかった(200 m のまま)
★(4)★241/159★正解
(5)229/167★揚水で引き、発電で足した(符号が両方逆)

(5)がいちばん惜しい誤り——損失を考慮してはいるが、向きが逆です。「損失は常に損をする方向」と考えれば防げます。

(1)〜(3)は損失を片方または両方無視した場合——235 と163 は、どちらも200 m で計算した値です。問題文がわざわざ2.5 % を与えているのですから、使わなければおかしいと気づけます。

⚠️ よくある間違い
揚水時と発電時で同じ扱いをしてしまう——これが本問で最も多い誤りです。
「ポンプは損をする、水車も損をする」——どちらも損失は不利に働くのですが、不利の向きが逆になります。
揚水は「余計に仕事をする」=高さが増える・入力が増える発電は「取り分が減る」=高さが減る・出力が減るどちらも「損」だと確認してください。
電動機入力241 > 発電機出力159——この大小関係も検算になりますもし入力より出力が大きく出たら、必ずどこかで間違えています

揚水発電の総合効率

\( \eta=\dfrac{159}{241}=0.66 \)
往復の総合効率
★約66 %

241 MW で汲み上げて、159 MW しか返ってこない——3分の1が失われる計算です。それでも揚水発電が使われる理由を考えてみましょう。

役割内容
★ピークシフト★夜間の余剰電力を昼間の需要へ移す
調整力★数分で起動でき、需要の変動に追従できる
再エネの受け皿太陽光の余剰を吸収する

効率が悪くても、電気を「貯める」手段はほかにほとんどありません——大規模に貯蔵できるのは揚水発電だけというのが現状です。

しかも起動が速い——火力の起動には数時間かかるのに対し、揚水は数分で全出力系統の急な変動に応えられる貴重な存在になります。

⏱️ 本番での進め方
①損失水頭=総落差×2.5 %=5 m。
②★揚水は足して割る(205 m、÷0.833)。
③★発電は引いて掛ける(195 m、×0.833)。
④入力>出力を確認。逆なら必ず誤り。

💡 覚え方
「損失は常に損をする方向」——揚水なら高さが増え、発電なら高さが減る効率も同じで、揚水は割り、発電は掛ける——2つとも逆だと覚えてください。

ポンプ水車が反動水車である理由は平成20年度 A問題1水力:反動水車と衝動水車の使い分け)にあります。

揚水発電所の構成

上池と下池を持ち、その間を水が往復します——設備としては水力発電所とほぼ同じです。

設備役割
上池(上部調整池)★汲み上げた水を貯める=エネルギーの貯蔵庫
下池(下部調整池)発電後の水を受け止める
★ポンプ水車★発電時は水車、揚水時はポンプ
★発電電動機★発電時は発電機、揚水時は電動機

本問が「ポンプ水車・発電電動機1台よりなる」と書いているのは、1台で両方をこなす方式だという意味です。

下池が必要なのが、ふつうの水力発電所との違い——水を使い捨てにせず、循環させるからです。だから「発電した水を捨てない」=同じ水を何度も使えることになります。

純揚水と混合揚水

方式上池への流入特徴
★純揚水★汲み上げた水のみ純粋な蓄電設備
混合揚水河川からの流入もある自流分でも発電できる

純揚水は「電気を貯める」ことだけが目的——だから総合効率66 % でも成り立つのです。混合揚水なら、自然の流れ込みの分は丸ごと利益になります。

揚水発電の運転パターン

1日のうちで、汲み上げと発電を使い分けます——電力需要のかたちに合わせた運転です。

時間帯運転理由
★深夜〜早朝★揚水★需要が少なく電気が余る
昼のピーク★発電★需要が最大になる
近年の昼間揚水することも★太陽光の出力が余る

従来は「夜に汲んで昼に出す」が基本でした——ところが太陽光発電が増えて、昼に電気が余る日が出てきたのです。

そこで昼に揚水し、夕方に発電するという運転も行われています——太陽光が落ちる夕方こそ需要のピークだからです。揚水発電の役割が時代とともに変わってきていることになります。

効率66 % をどう見るか

3分の1が失われる——一見すると大きな損です。

ところが「捨てるはずだった電気」を貯めるなら話は別——0 になるものが66 % 残るのですから、差し引きで得になります。

出力を絞れない原子力や、止められない太陽光が増えるほど、この価値が高まる——効率の数字だけでは測れない役割だと言えます。

まとめ

損失水頭200×0.025=5m
揚水時の揚程200+5=205m
電動機入力9.8×100×205/(0.85×0.98)≒241MW
発電時の有効落差200−5=195m
発電機出力9.8×100×195×0.85×0.98≒159MW→(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・ペルトン水車の急停止と小水力発電(水力6):【電力】令和6年度上期 A問題1

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和6年度上期 問題一覧(全4科目)

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