電験3種の機械科目で問われる直流発電機の電圧の確立。本記事では、平成21年度 A問題1の論説問題(正しいものを選ぶ)を解説します。
カギは自励発電機の電圧確立のメカニズム(残留磁気→起電力→界磁電流→磁束増…の繰り返し)と、方式ごとの違いです。
平成21年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
自励発電機がどうやって電圧を立ち上げるのかを軸に整理します。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成21年度 A問題1
直流発電機に関する記述として、正しいのは次のうちどれか。
(1) 直巻発電機は、負荷を接続しなくても電圧の確立ができる。
(2) 平複巻発電機は、全負荷電圧が無負荷電圧と等しくなるように(電圧変動率が零になるように)直巻巻線の起磁力を調整した発電機である。
(3) 他励発電機は、界磁巻線の接続方向や電機子の回転方向によっては電圧の確立ができない場合がある。
(4) 分巻発電機は、負荷電流によって端子電圧が降下すると、界磁電流が増加するので、他励発電機より負荷による電圧変動が小さい。
(5) 分巻発電機は、残留磁気があれば分巻巻線の接続方向や電機子の回転方向に関係なく電圧の確立ができる。
出題のポイント:正しいものを選ぶ問題は「消去法」が速い
この問題は「正しいものを選べ」という形式です。誤りを選ぶ問題と違い、4つの誤りを見つければ答えが決まるので、明らかにおかしい記述から消していくのが確実です。
軸になる知識は「自励発電機がどうやって電圧を立ち上げるか」。ここを押さえると、(1)(3)(5)がまとめて処理できます。

5つの選択肢を1つずつ検証する
(1) 直巻発電機は、負荷を接続しなくても電圧の確立ができる → 誤り
直巻は界磁巻線が電機子と直列なので、負荷電流がそのまま界磁電流です。無負荷では電流が流れず、界磁磁束が立ちません——残留磁気による小さな起電力は出ますが、そこから先へ成長できません。
「直巻は無負荷では使えない」という性質は、電動機(暴走する)でも発電機(電圧が立たない)でも共通です。どちらも「電流がないと磁束がない」という同じ原因から出ていますが、現れ方が正反対なのが面白いところです。
(2) 平複巻発電機は、電圧変動率が零になるように直巻巻線の起磁力を調整した発電機 → 正しい
複巻発電機は分巻巻線と直巻巻線の両方を持ちます。分巻の性質だけなら負荷が増えると電圧が下がる、直巻の性質だけなら負荷が増えると電圧が上がる——この2つを打ち消し合わせれば、負荷によらず電圧を一定にできます。
| 複巻の種類 | 直巻巻線の起磁力 | 全負荷電圧と無負荷電圧の関係 | 電圧変動率 |
| 平複巻 | ちょうど釣り合う量 | 等しい | 0 % |
| 過複巻 | 多め | 全負荷のほうが高い | 負(マイナス) |
| 不足複巻 | 少なめ | 全負荷のほうが低い | 正(プラス) |
| 差動複巻 | 分巻と逆向き | 全負荷で大きく低下 | 大きい正 |
「平」は「平ら」=電圧が水平に保たれるという意味です。これが正解——記述に誤りはありません。過複巻は、送電線の電圧降下を見越して負荷時にあえて電圧を上げる用途に使われました。
(3) 他励発電機は、界磁巻線の接続方向や電機子の回転方向によっては電圧の確立ができない場合がある → 誤り
これは自励発電機の話です。他励は界磁を別電源で励磁するので、残留磁気にも接続の向きにも依存しません。回せば必ず電圧が出ます(向きが逆になることはあっても、大きさは確立します)。
☝️ ひっかけの作り方:正しい内容を、間違った主語に付けるという作り方です。「界磁の接続方向で電圧が立たないことがある」のは自励(分巻)の話——(5)がその裏返しになっています。主語をすり替えた記述を疑う習慣をつけてください。
(4) 分巻発電機は、端子電圧が降下すると界磁電流が増加するので、他励より電圧変動が小さい → 誤り
因果が完全に逆です。分巻の界磁電流は If=V/rf ですから、端子電圧が下がれば界磁電流も減ります——増えるはずがありません。
そして界磁電流が減れば磁束が減り、起電力が減り、端子電圧がさらに下がるという悪循環になります。したがって分巻の電圧変動は他励より大きい——結論も逆です。
(5) 分巻発電機は、残留磁気があれば接続方向や回転方向に関係なく電圧の確立ができる → 誤り
「関係なく」が誤りです。残留磁気は必要条件ですが、それだけでは足りません。界磁電流の作る起磁力が、残留磁束を強める向きでなければならないのです。
もし逆向きなら、わずかに立ち上がった電圧が残留磁束を打ち消してしまい、電圧はゼロへ戻ってしまいます。実務では界磁巻線の接続を逆にするか、回転方向を逆にすることで解決します。


誤りの作られ方を整理する
| 選択肢 | 誤りの作り方 | 正しくは |
| (1) | 条件を落とした | 直巻は負荷がないと電圧が確立できない |
| (3) | 主語をすり替えた | 接続方向に依存するのは自励(他励は無関係) |
| (4) | 因果を逆にした | 電圧が下がれば界磁電流も減る。変動は他励より大きい |
| (5) | 「関係なく」と言い切った | 接続方向・回転方向が正しくなければ確立できない |
4つの誤りが「条件を落とす」「主語をすり替える」「因果を逆にする」「言い切る」という4通りの作り方になっています。論説問題の誤りはこの4パターンのどれかだと知っておくと、読むときの注意点がはっきりします。
特に「〜に関係なく」「必ず」「常に」といった言い切りの表現は要注意です。電気機器の性質にはたいてい条件が付くので、無条件を主張する記述は疑ってかかる価値があります。
電圧変動率という指標
(2)に出てくる電圧変動率は、発電機の性能を表す基本的な指標です。
| 発電機の種類 | 電圧変動率のめやす | 理由 |
| 他励 | 小さい(数 %) | 界磁が守られている |
| 分巻 | やや大きい | 電圧低下が界磁低下を招く悪循環 |
| 平複巻 | ほぼ0 % | 分巻の垂下を直巻の上昇で打ち消す |
| 過複巻 | 負(マイナス) | 全負荷のほうが電圧が高い |
| 直巻 | 非常に大きい | そもそも無負荷で電圧が立たない |
電圧変動率が0 % に近いほど「安定した電源」ということになります。ただし過複巻のように、あえて負に振る設計もある——送電線での電圧降下を発電機側で先に補っておくという考え方です。「変動率が小さいほど良い」とは限らないのが面白いところです。
⏱️ 本番での進め方
① 「正しいものを選べ」なら消去法。明らかな誤りから消していく。
② 自励の電圧確立の4条件(残留磁気・接続の向き・臨界界磁抵抗・臨界速度)を軸にする。
③ 「〜に関係なく」「必ず」は疑う。電気機器の性質には条件が付くのが普通。
④ 因果の向きを確認:分巻は「電圧が下がる ⇒ 界磁電流も減る」。逆に書いてあれば誤り。
💡 覚え方
自励の電圧確立には4条件(残留磁気/接続の向き/臨界界磁抵抗/臨界速度)。他励は別電源なので条件不要、直巻はさらに負荷が要る。平複巻=電圧変動率0 %(分巻の垂下を直巻の上昇で打ち消す)、過複巻は負・不足複巻は正。
⚠️ よくある間違い
(4)の因果を見落とすのが典型です。分巻の界磁電流は端子電圧に比例するので、電圧が下がれば界磁電流も減ります。もう一つは(3)を正しいと思ってしまうこと——接続方向に依存するのは自励であって他励ではありません。主語がすり替わっていないかを確認してください。

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