パワエレ54【電験3種 機械】三相全波整流は1個あたり1/3周期!損失12W・出力262V 令和7年度下期 B問題16 完全解説

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 令和7年度下期 B問題16 三相全波整流の素子は1/3周期だけ通電!損失は?

今回は令和7年度下期 機械科目 B問題16を解説します。ダイオード6個による三相全波整流回路について、ダイオード1個の損失(a)と出力電圧(b)を求める計算問題です。

(a)は「損失=順電圧降下×電流×通電割合」という定義どおりの掛け算だけ。(b)は公式が問題文に書いてあるので、XL=2πfLL を計算して代入するだけです。B問題の中では最も取りやすい部類で、落としたくない1問です。

目次

令和7年度下期 機械科目 B問題16:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 令和7年度下期 B問題16 問題文
令和7年度下期 機械科目 B問題16 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16

電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 令和7年度下期 B問題16

 次の図は,パワー半導体デバイスとしてダイオードを用いた三相整流装置の回路を示す.

 平滑リアクトルのインダクタンスLd[H]は十分に大きく,直流電流Id[A]は一定になっているものとする.

 交流側にリアクタンスXL[Ω]のリアクトルがあると転流時に重なり角が生じ,直流電圧が降下する.また,ダイオードの順電圧降下VF[V]によっても直流電圧が降下する.これら以外の電圧降下は無視する.入力交流電圧がVL[V]のときのこの整流装置の出力電圧Vd[V]は次式で求められる.

 この整流装置の入力交流電圧はVL=200V,周波数はf=50Hzで,直流電流はId=36Aである.交流側のリアクトルのインダクタンスはLL=5.56×10-4Hで,その抵抗値は平滑リアクトルの抵抗値とともに無視できるものとする.また,各ダイオードの順電圧降下はVF=1.0Vで一定とする.次の(a)及び(b)の問に答えよ.

 (a)ダイオードでは,電流の通電によって損失が発生する.一つのダイオードの損失の平均値は,通電する期間が1サイクルの1/3であるとして計算できる.一つのダイオードで発生する損失[W]の平均値に最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.

 (b)出力電圧Vdの値[V]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.

次の図は、パワー半導体デバイスとしてダイオードを用いた三相整流装置の回路を示す。

平滑リアクトルのインダクタンスLd[H]は十分に大きく、直流電流Id[A]は一定になっているものとする。

交流側にリアクタンスXL[Ω]のリアクトルがあると転流時に重なり角が生じ、直流電圧が降下する。また、ダイオードの順電圧降下VF[V]によっても直流電圧が降下する。これら以外の電圧降下は無視する。入力交流電圧がVL[V]のときのこの整流装置の出力電圧Vd[V]は次式で求められる。

Vd = (3√2/π)VL − (3/π)XL・Id − 2VF

この整流装置の入力交流電圧はVL=200V、周波数はf=50Hzで、直流電流はId=36Aである。交流側のリアクトルのインダクタンスはLL=5.56×10-4Hで、その抵抗値は平滑リアクトルの抵抗値とともに無視できるものとする。また、各ダイオードの順電圧降下はVF=1.0Vで一定とする。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)ダイオードでは、電流の通電によって損失が発生する。一つのダイオードの損失の平均値は、通電する期間が1サイクルの1/3であるとして計算できる。一つのダイオードで発生する損失[W]の平均値に最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)72 (2)36 (3)24 (4)18 (5)12 W

(b)出力電圧Vdの値[V]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)270 (2)264 (3)263 (4)262 (5)251 V

図 ダイオードを用いた三相整流装置の回路
図 ダイオードを用いた三相整流装置の回路

出題のポイント:三相全波では1個あたり1/3周期

三相全波整流(6パルス)では、6個のダイオードが順番に導通します1周期のうち1個が導通するのは 120°分=1/3 周期——問題文もそう明記しています

平滑リアクトルが十分大きいので、直流電流は一定の36 A導通している間は36 A が流れ、していない間は0——だから平均損失は「導通時の損失×導通率」になります。

ダイオード1個の平均損失

\( P=V_F I_d\times\dfrac{1}{3} \)

順電圧降下×電流×導通率——導通率が1/3 なのが三相全波の特徴です。

(a) ダイオード1個の損失

\( P=1.0\times36\times\dfrac{1}{3} \)
代入
VF=1.0 V、Id=36 A
\( \phantom{P}=12\ [\mathrm{W}] \)
平均損失
選択肢の12に一致
答え(a)の正解は (5) 12 Wです。6個合わせれば72 W——これが整流装置全体のダイオード損失になります。

⚠️ よくある間違い
(1) 72 W6個分の合計(2) 36 W導通率を掛け忘れたときの値(1.0×36)です。問われているのは「一つのダイオードで発生する損失」——全体ではなく1個分です。
(4) 18 W導通率を1/2 としたときの値——単相全波なら1/2 ですが、三相全波は1/3です。

☝️ ひっかけの作り方:導通率は整流方式で変わります単相半波なら1/2、単相全波(ブリッジ)なら1/2、三相半波なら1/3、三相全波なら1/3——問題文が明示してくれることも多いので、まずそこを確認してください。本問は「1サイクルの1/3」と書いてあります

(b) 出力電圧を求める

問題文が式を与えてくれているので、あとは値を計算して代入するだけです。ただし XL は与えられておらず、インダクタンスから求める必要があります

三相全波整流の出力電圧

\( V_d=\dfrac{3\sqrt{2}}{\pi}V_L-\dfrac{3}{\pi}X_L I_d-2V_F \)

第1項が理想的な出力、第2項が重なり角による降下、第3項がダイオードの順電圧降下です。

\( X_L=2\pi fL_L=2\pi\times50\times5.56\times10^{-4} \)
リアクタンス
インダクタンスから
\( \phantom{X_L}\fallingdotseq 0.175\ [\Omega] \)
計算
約0.175 Ω
\( \dfrac{3\sqrt{2}}{\pi}V_L=1.350\times200=270.1\ [\mathrm{V}] \)
第1項
3√2/π≒1.350
\( \dfrac{3}{\pi}X_L I_d=0.955\times0.175\times36\fallingdotseq 6.0\ [\mathrm{V}] \)
第2項
重なり角による降下
\( 2V_F=2\times1.0=2.0\ [\mathrm{V}] \)
第3項
★2個直列に導通するので2倍
\( V_d=270.1-6.0-2.0=262.1\ [\mathrm{V}] \)
出力電圧
選択肢の262に一致
答え(b)の正解は (4) 262 Vです。理想値270 V から、重なり角で6 V、ダイオードで2 V 下がった——合わせて8 V、約3 %の降下になります。

3つの項がそれぞれ何を表すか

意味
\( \dfrac{3\sqrt{2}}{\pi}V_L \)270.1 V理想的な三相全波整流の直流電圧(線間電圧の平均値)
\( \dfrac{3}{\pi}X_L I_d \)6.0 V転流時の重なり角による降下。電流に比例
2VF2.0 V直列に導通する2個のダイオードの順電圧降下

第1項の 3√2/π≒1.35は、三相全波整流の基本係数です。線間電圧200 V なら直流270 V——「200 V 三相を整流すると約270 V」という感覚は覚えておくと便利です。

第3項が 2VF(2倍)である理由も押さえましょう。三相ブリッジでは、上側と下側のダイオードが2個直列で導通します——だから順電圧降下も2個分になります。「6個あるから6倍」ではありません

第2項の重なり角(転流重なり)は、交流側にリアクタンスがあると電流が瞬時に切り替わらないために生じます。一時的に2相が同時に導通する期間ができ、その分だけ出力電圧が下がる——電流が大きいほど降下も大きくなります

⏱️ 本番での進め方
①(a) 三相全波の導通率は1/3。1.0×36/3=12 W。
② 6個分の72 W や、導通率を忘れた36 W が誤答に置かれている。
③(b) XL=2πfL=0.175 Ω を先に出す。
④ 3√2/π≒1.35。200×1.35=270 V から6 V と2 V を引く。

💡 覚え方
「三相全波は 3√2/π≒1.35 倍、1個あたり1/3周期、順電圧降下は2個分」——3つの数字(1.35/1/3/2)が本問のすべてです。とくに「順電圧降下は2倍」は、ブリッジ構成では上下2個が直列に入ることから導けます。

重なり角とは何が重なっているのか

(b)の第2項に出てきた「重なり角」は、転流が瞬時に終わらないことから生じる現象です。

整流回路では、導通するダイオードが次々と切り替わります理想的には、ある瞬間にパッと切り替わるはず——ところが交流側にリアクタンスがあると、そうはいきません

インダクタンスは電流を急には変えられないからです。これから消える側の電流が0になるまでに時間がかかり、その間は次の相と同時に導通している——この「同時に導通している期間」が重なり角です。

交流側リアクタンスがない場合ある場合(本問)
転流瞬時に切り替わる有限の時間がかかる
同時導通なしあり(重なり角 u)
出力電圧理想値270 V6 V 低下して264 V

重なっている間は、2つの相が短絡されたような状態になります。2相の電圧の平均が出力に現れるので、本来より低い電圧になる——これが電圧降下の正体です。

降下量は直流電流に比例します。\( (3/\pi)X_L I_d \) という式の形がそれを表しています——電流が大きいほど転流に時間がかかり、重なり角も大きくなるからです。

この降下は「抵抗による損失」ではありませんリアクタンスは電力を消費しないので、電圧は下がるのに損失は生じない——不思議に思えますが、力率が悪化しているだけです。交流側から見れば、遅れ無効電力を余分に取り込んでいることになります。

まとめ

回路ダイオード6個の三相全波(ブリッジ)整流。L_d が大きく I_d は一定
1素子の通電割合120°=1サイクルの1/3(単相ブリッジなら1/2)
(a)1個の平均損失V_F×I_d×(1/3)=1.0×36/3=12 W …… (5)
交流側リアクタンスX_L=2πfL_L=2π×50×5.56×10⁻⁴=0.1747 Ω
理想の出力電圧(3√2/π)V_L=1.3504×200=270.09 V
重なり角による降下(3/π)X_L I_d=0.9549×0.1747×36=6.00 V
順電圧降下2V_F=2.00 V(上下2個を直列に通るため)
(b)出力電圧270.09−6.00−2.00=262.1 V …… (4)
答え(a)-(5),(b)-(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・パワー半導体デバイスの定常動作(パワエレ53):【機械】令和7年度下期 A問題10
・電力用コンデンサの誘電体と点検(電気機器52):【機械】令和7年度下期 A問題8

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次