今回は令和7年度下期 機械科目 A問題8を解説します。電力用コンデンサの誘電体に求められる性質(ア)〜(ウ)と、点検の区分(エ)(オ)を問う空欄補充問題です。
判断の軸はたった2つ。①「良いコンデンサ」とはどういうものか——小さくて、熱くならず、壊れない。②点検は「外から見るだけ」か「止めて測るか」。この2つで5つの空欄はすべて埋まります。
出題のポイント

令和7年度下期 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【電気機器】 令和7年度下期 A問題8
次の文章は,電力用コンデンサに関する記述である.
電力用コンデンサには,進相コンデンサ,調相コンデンサ及び直列コンデンサがあり,さらにフィルタ用コンデンサやサージ吸収用コンデンサなどを含めることがある.電力用コンデンサは,一般的に複数枚の薄葉誘電体を金属はく電極とともに巻き込み,リード線を引き出した単位コンデンサの集合で構成し,容器などに収納したものである.また,電極として蒸着金属が用いられることがある.誘電体には,広い面積にわたり厚さが均一であること,適当な機械的強度を有すること,誘電率が(ア)その温度変化が少ないこと,誘電正接が(イ)絶縁抵抗及び絶縁耐力が(ウ)こと,耐熱性に優れ長期安定性に優れていることなどが求められる.
電力用コンデンサの(エ)点検としては,油漏れ,発錆,がいしの汚損,容器の変形,端子部の過熱及び機器の異常加熱などの有無について確認を行う.また,数年ごとあるいは異常発生時に行う(オ)点検として,(エ)点検項目のほかにコンデンサの静電容量・損失の測定,端子-外箱間の絶縁抵抗測定,耐電圧試験などを実施する.
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
次の文章は、電力用コンデンサに関する記述である。
電力用コンデンサには、進相コンデンサ、調相コンデンサ及び直列コンデンサがあり、さらにフィルタ用コンデンサやサージ吸収用コンデンサなどを含めることがある。電力用コンデンサは、一般的に複数枚の薄葉誘電体を金属はく電極とともに巻き込み、リード線を引き出した単位コンデンサの集合で構成し、容器などに収納したものである。また、電極として蒸着金属が用いられることがある。誘電体には、広い面積にわたり厚さが均一であること、適当な機械的強度を有すること、誘電率が(ア)その温度変化が少ないこと、誘電正接が(イ)絶縁抵抗及び絶縁耐力が(ウ)こと、耐熱性に優れ長期安定性に優れていることなどが求められる。
電力用コンデンサの(エ)点検としては、油漏れ、発錆、がいしの汚損、容器の変形、端子部の過熱及び機器の異常加熱などの有無について確認を行う。また、数年ごとあるいは異常発生時に行う(オ)点検として、(エ)点検項目のほかにコンデンサの静電容量・損失の測定、端子-外箱間の絶縁抵抗測定、耐電圧試験などを実施する。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 高く 大きく 高い 日常 特別 (2) 高く 小さく 高い 日常 特別 (3) 高く 小さく 低い 特別 日常 (4) 低く 大きく 高い 特別 日常 (5) 低く 大きく 低い 特別 日常
ポイント解説:良い誘電体は「大容量・低発熱・高耐圧」
空欄(ア)〜(ウ)は誘電体に求められる性質です。難しく考えず、「良いコンデンサとはどんなものか」を3つの言葉で表すと自動的に決まります。
(ア)誘電率は高く——静電容量は C = εS/d で、誘電率 ε に比例します。誘電率が高いほど、同じ大きさでより大きな容量が得られる、つまり装置を小型化できるということです。「その温度変化が少ないこと」と続くのは、温度で容量が変わっては困るからで、これも自然な要求です。
(イ)誘電正接は小さく——誘電正接 tanδ は、誘電体の中で無駄に熱になる割合を表す量です。理想のコンデンサは電流が電圧より90°進み、電力を消費しません。しかし実際の誘電体はわずかに損失があり、その分だけ位相が90°からずれます。そのずれ角 δ の正接が tanδで、誘電損失 = ωCV2tanδ。tanδ が大きいほど発熱が大きいのですから、小さいほど良いに決まっています。
(ウ)絶縁抵抗及び絶縁耐力は高い——ここは考えるまでもありません。絶縁抵抗が低ければ漏れ電流が流れ、絶縁耐力が低ければ絶縁破壊します。絶縁に関する数値は「高いほど良い」が原則です。
空欄(エ)(オ)は点検の区分です。見分け方は簡単で、「止めずに外から見るだけ」なら日常点検、「数年ごとに止めて測る」なら特別点検(精密点検)。問題文の(エ)は油漏れ・発錆・がいしの汚損・容器の変形・過熱——すべて目視で分かることなので日常点検。(オ)は「数年ごとあるいは異常発生時に行う」と明記され、内容も静電容量・損失の測定、絶縁抵抗測定、耐電圧試験と計器を当てる作業なので特別点検です。
問題の解説
STEP1 (ア)誘電率を決める
C = εS/d ⇒ 誘電率が高いほど同じ体積で大容量。
⇒ (ア)=高く。これで(4)(5)が消える。
STEP2 (イ)誘電正接を決める
誘電損失 = ωCV2tanδ ⇒ tanδ は発熱の指標。
⇒ (イ)=小さく。これで(1)も消える。
STEP3 (ウ)絶縁抵抗・絶縁耐力を決める
絶縁性能は高いほど良い(低ければ漏れ電流・絶縁破壊)。
⇒ (ウ)=高い。これで(3)も消え、残るのは(2)だけ。
STEP4 (エ)(オ)の点検区分を確認する
(エ)の項目は油漏れ・発錆・汚損・変形・過熱=すべて目視 ⇒ 日常点検。
(オ)は「数年ごとあるいは異常発生時」+測定・試験 ⇒ 特別点検。
「(エ)点検項目のほかに」と書かれている ⇒ (オ)は(エ)を含む上位の点検=より本格的なほう。
STEP5 答えを確定する
(ア)高く/(イ)小さく/(ウ)高い/(エ)日常/(オ)特別 ⇒ (2)。
答え:(2)
💡 覚え方
誘電体に求められるのは「誘電率は高く、誘電正接は小さく、絶縁抵抗・絶縁耐力は高く」。tanδ(誘電正接)だけが『小さいほど良い』——ここが引っかけどころです。誘電損失=ωCV2tanδ と書ければ迷いません。点検は日常点検=止めずに目視(油漏れ・発錆・汚損・変形・過熱)/特別点検=数年ごとに止めて測定(静電容量・損失・絶縁抵抗・耐電圧試験)。「数年ごと」と書いてあれば特別点検と即断できます。
⚠️ よくある間違い
①誘電正接を「大きく」としてしまうのが最大の落とし穴で、(1)(4)(5)がこれに当たります。他の項目が「高く」「高い」と続くので、流れで(イ)も『大きく』と書きたくなる——出題者はそこを狙っています。tanδ は損失の大きさそのものですから、小さいほど良いのが唯一の正解です。
②誘電率を「低く」としてしまう:(4)(5)がこれです。「絶縁体だから電気を通しにくいほうが良い=誘電率も低いほうが良い」と混同する誤りですが、電気を通しにくいことを表すのは絶縁抵抗であって誘電率ではありません。誘電率は「どれだけ電荷を蓄えられるか」の指標なので、高いほど良いのです。
③絶縁耐力を「低い」とする:(3)(5)がこれです。絶縁耐力が低い=壊れやすいということですから、要求として成立しません。
④(エ)(オ)を逆にする:(3)(4)(5)がこれです。「(オ)は(エ)点検項目のほかに…を実施する」という文から、(オ)のほうが(エ)を包含する大がかりな点検だと読み取れます。大がかりなほう=特別点検です。「数年ごと」という頻度の記述も決め手になります。
なお進相コンデンサ・調相コンデンサ・直列コンデンサの用途混同にも注意を。進相コンデンサは需要家の力率改善、調相コンデンサは系統の電圧調整、直列コンデンサは線路リアクタンスの打消しです。
誘電正接 tanδ をもう少し詳しく
(イ)で問われた誘電正接は、電力科目でも絶縁診断の指標として登場する重要な量です。
| 理想のコンデンサ | 実際のコンデンサ | |
| 電流の位相 | 電圧より90°進み | 90°−δ だけ進み |
| 消費電力 | 0 | ★ωCV2tanδ |
| 等価回路 | Cのみ | Cに抵抗分が並列(または直列) |
tanδ は絶縁の劣化診断にも使われます。絶縁物が吸湿したり劣化したりすると tanδ が増える——測定値の経年変化を追えば、劣化の進行が分かるのです。
良好な電力用コンデンサなら tanδ は0.1 %以下——これが数%まで上がれば要注意。発熱が増え、さらに劣化が進むという悪循環に入ります。
点検の区分——日常・定期・特別
(エ)(オ)で問われた点検の区分を整理しておきましょう。実務でも試験でも使う分類です。
| 区分 | 頻度 | 停電 | 内容 |
| 日常(巡視)点検 | 毎日〜毎月 | 不要 | ★五感による外観確認(油漏れ・発錆・変形・過熱) |
| 定期点検 | 年1回程度 | 必要 | 絶縁抵抗測定、清掃、増締め |
| 特別(精密)点検 | 数年ごと・異常発生時 | 必要 | ★静電容量・tanδ測定、耐電圧試験 |
問題文の「油漏れ、発錆、がいしの汚損、容器の変形、端子部の過熱」——すべて運転したまま外から見て分かることです。だから(エ)は日常点検。
一方「静電容量・損失の測定、絶縁抵抗測定、耐電圧試験」は停止して測定器をつながなければできません——しかも「数年ごとあるいは異常発生時」と書かれているので、(オ)は特別点検です。
「見るだけか、止めて測るか」——この一点で判断できます。設備の点検区分は、機械科目だけでなく法規でも問われるテーマですから、3つの区分をセットで覚えておくとよいでしょう。
まとめ
| (ア)誘電率 | 高く(C=εS/d ⇒ 小型で大容量) |
| (イ)誘電正接 tanδ | 小さく(誘電損失=ωCV²tanδ ⇒ 発熱の指標) |
| (ウ)絶縁抵抗・絶縁耐力 | 高い(低いと漏れ電流・絶縁破壊) |
| (エ)日常点検 | 止めずに目視:油漏れ・発錆・がいしの汚損・容器の変形・過熱 |
| (オ)特別点検 | 数年ごとや異常時:静電容量・損失の測定、絶縁抵抗測定、耐電圧試験 |
| 構造 | 薄葉誘電体と金属はく電極を巻き込んだ単位コンデンサの集合 |
| 答え | (2) |
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