今回は平成18年度 電力科目 B問題15、火力ユニット最後の問題です。出力600MW・復水器冷却水量24m³/s・温度上昇7℃の汽力発電所について、(a)海水へ放出される熱量と(b)タービン室効率を求めます。
この問題は令和4年度下期 B問題15(火力16)として数値までそっくりそのまま再出題されました。つまり16年越しの完全リサイクル。Q=mcΔTと熱の収支(入熱=仕事+捨てた熱)という2つの道具は、それだけ確実に出るということです。
平成18年度 電力科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題15
電験3種 電力科目 【火力】 平成18年度 B問題15
復水器での冷却に海水を使用する汽力発電所が出力600[MW]で運転しており、復水器冷却水量が24[m³/s]、冷却水の温度上昇が7[℃]であるとき、次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし、海水の比熱を4.02[kJ/(kg·K)]、密度を1.02×10³[kg/m³]、発電機効率を98[%]とする。
復水器での冷却に海水を使用する汽力発電所が出力600[MW]で運転しており、復水器冷却水量が24[m³/s]、冷却水の温度上昇が7[℃]であるとき、次の(a)及び(b)に答えよ。ただし、海水の比熱を4.02[kJ/(kg·K)]、密度を1.02×10³[kg/m³]、発電機効率を98[%]とする。
(a) 復水器で海水へ放出される熱量[kJ/s]の値として、最も近いのは次のうちどれか。(1)4.25×10⁴ (2)1.71×10⁵ (3)6.62×10⁵ (4)6.89×10⁵ (5)8.61×10⁵ kJ/s
(b) タービン室効率[%]の値として、最も近いのは次のうちどれか。ただし、条件を示していない損失は無視できるものとする。
(1)41.5 (2)46.5 (3)47.0 (4)47.5 (5)48.0 %

(a) 海水が持ち去る熱量
質量流量を求めてから、比熱と温度上昇を掛けます。
★毎秒24.5トン
★約689 MW ぶんの熱
海水は真水より密度が大きく(1.02×10³)、比熱は小さい(4.02)——問題文が与えてくれています。
毎秒24.5トンの海水が、7 ℃ 温まって出ていく——それが689 MW ぶんの熱になります。
発電出力600 MW より大きい——捨てる熱のほうが、取り出す電気より多いのです。
(b) タービン室効率を求める
① タービンの軸出力
★発電機より前の出力
発電機出力600 MW は、発電機で損失を受けた後の値——タービンの軸ではもっと大きいのです。
だから割る——612.2 MW=612,200 kJ/s になります。
② 蒸気が持ち込んだ熱
★蒸気が運んできた熱の合計
「条件を示していない損失は無視」と問題文にあります——入ってきた熱は、仕事になるか捨てられるかのどちらかです。
だから2つを足せば、蒸気が持ち込んだ熱になる——熱の収支を使った求め方になります。
③ 割り算する
★47.0 %
熱の収支で解くという発想
蒸気のエンタルピーが与えられていなくても解けます——出ていくものを足せば、入ってきたものが分かるからです。
| 入ってくる | 出ていく | 本問の値 |
| ★蒸気が運ぶ熱 | ★タービンの軸出力 | ★612,200 kJ/s(47.0 %) |
| — | ★復水器が捨てる熱 | ★689,000 kJ/s(53.0 %) |
| 合計 | 合計 | ★1,301,200 kJ/s(100 %) |
捨てる熱が53 %——取り出す仕事より多いのです。
復水器の損失が熱サイクル最大だという事実が、数字で確かめられます。
⚠️ よくある間違い
(a)で密度を掛け忘れる——4.02×24×7=675 となって桁が3つずれます。m³/s を kg/s に直すのを忘れないこと。
(b)で発電機効率を掛けてしまう——600×0.98=588 として計算すると46.0 % 前後になります。タービンの軸のほうが大きいので割るのが正解です。
(b)で発電機効率を無視する——600,000/(600,000+689,000)=46.5 % となり選択肢(2)に一致します。
(b)の分母を復水器の熱だけにしてしまう——612,200/689,000=88.9 %。選択肢にないので気づけます。
⏱️ 本番での進め方
①(a)★m³/s に密度を掛けて kg/s にする。
②(b)★発電機効率で割ってタービン軸出力を出す。
③★分母=軸出力+捨てた熱。熱の収支で求める。
④捨てる熱(53 %)>取り出す仕事(47 %)。
💡 覚え方
「入ってきた熱=仕事+捨てた熱」——エンタルピーが分からなくても、収支から求められます。発電機効率は割って戻す——軸のほうが大きいからです。
タービン室効率と効率の連鎖は平成27年度 A問題3(火力:ボイラ効率を逆算)にあります。
復水器の冷却水量を逆に求める
本問の関係を使えば、必要な冷却水量も計算できます。
温度上昇を小さく抑えたければ、その分だけ大量の水が要ります——反比例の関係です。
| 温度上昇 | 必要な冷却水量 | 温排水の影響 |
| ★5 ℃ | ★34 m³/s | ★小さい |
| ★7 ℃(本問) | ★24 m³/s | 標準的 |
| 10 ℃ | 17 m³/s | 大きい |
温度上昇7 ℃ 前後が一般的——環境への影響と、ポンプ動力の兼ね合いで決まります。
温度上昇を抑えれば海域への影響は小さくなりますが、その分だけ大量の水を送る動力が要る——ここでも折り合いをつけているのです。
海水の物性値
| 項目 | 海水 | 真水 |
| ★密度 | ★1.02×10³ kg/m³ | 1.00×10³ kg/m³ |
| ★比熱 | ★4.02 kJ/(kg·K) | 4.19 kJ/(kg·K) |
塩分がある分、密度は大きく比熱は小さい——問題文が与えてくれるので覚える必要はありません。
ただし「真水の4.19」を使ってしまうと答えがずれます——与えられた値を使うことを徹底しましょう。
復水器の熱勘定を一枚にまとめる
本問で求めた数字を、全体の中に位置づけてみましょう。
| 項目 | 本問の値 | 蒸気の熱に対する割合 |
| ★蒸気が持ち込んだ熱 | ★1,301,200 kJ/s | ★100 % |
| ★タービンの軸出力 | ★612,200 kJ/s | ★47.0 %(タービン室効率) |
| ★復水器が捨てる熱 | ★689,000 kJ/s | ★53.0 % |
| ★発電機出力 | ★600,000 kJ/s | ★46.1 % |
捨てる熱が53 %——取り出す仕事より多いのです。
発電機で失うのは1 % 程度——612,200−600,000=12,200 kJ/s。復水器の損失に比べれば、ごくわずかです。
火力発電の効率を決めているのは、この「捨てる53 %」——だから真空度を高く保つことが重要になるのです。
計算の流れを確認する
| 順 | やること | 使う値 |
| ① | 体積流量×密度=質量流量 | 24×1.02×10³ |
| ② | ×比熱×温度上昇=捨てた熱 | ×4.02×7 |
| ③ | 発電機出力÷効率=軸出力 | 600/0.98 |
| ④ | 軸出力+捨てた熱=入ってきた熱 | 612+689 |
| ⑤ | 軸出力÷入ってきた熱 | 612/1301 |
5段階のうち、③だけが割り算で戻す操作——そこを掛け算にすると答えがずれます。
まとめ
| (a)質量流量 | 24×1.02×10³=2.448×10⁴kg/s |
| (a)放出熱量 | Q=mcΔT≒6.89×10⁵kJ/s→(4) |
| (b)タービン出力 | 600×10³/0.98≒6.122×10⁵kJ/s |
| (b)タービン室効率 | 6.122/(6.122+6.889)≒47.0%→(3) |
| 備考 | R04下問15(火力16)に数値ごと完全再出題 |
▼あわせて解きたい関連問題
・復水器の放出熱量とタービン室効率(火力16・本問の完全再出題版):【電力】令和4年度下期 B問題15
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