今回は令和7年度下期 電力科目 A問題4を解説します。日本で将来に向けた検討がなされている新型炉——高速増殖炉・高温ガス炉・核融合炉——に関する記述から誤っているものを選ぶ問題です。
名前がヒントです。「高速」増殖炉は高速中性子を使う炉——「速度の遅い熱中性子」と書いてあったら名前と矛盾します。さらにウラン238は中性子を吸収してプルトニウム239に転換されるのであって、核分裂を起こすわけではありません。
令和7年度下期 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 令和7年度下期 A問題4
日本において将来に向けた検討がなされている新型炉に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
高速増殖炉では、ウラン238が速度の遅い熱中性子を吸収して核分裂を起こし、プルトニウム239に転換される。
高速増殖炉では、燃料の核分裂により消費したプルトニウム239の量より多くのプルトニウム239が生成される。
高温ガス炉では、不活性なヘリウムガスを冷却材、黒鉛を減速材として使用する。
核融合炉では、ウランなどの核分裂物質ではなく、軽い原子である水素やヘリウムの核融合反応を利用する。
核融合炉では、プラズマ状態にした重水素の原子核をきわめて高速で衝突させて、核融合反応を利用する。
出題のポイント:新型炉は名称と材料で見分ける

高速増殖炉は高速中性子を使い、U238は核分裂せず中性子を吸収してPu239へ転換します。炉の名称、冷却材、減速材、反応を対応させて判断します。
誤りは(1):高速増殖炉は高速中性子を使う
「速度の遅い熱中性子を吸収して核分裂を起こし」——2か所が誤っています。
| 問題文の記述 | 正しくは |
| ★速度の遅い熱中性子 | ★高速中性子(減速材を使わない) |
| ★ウラン238が核分裂を起こす | ★ウラン238は核分裂せず、転換するだけ |
「高速」増殖炉という名前が答えを示しています——高速中性子をそのまま使う炉です。
だから減速材を入れません——冷却材にも中性子を減速しにくいナトリウムを使うのです。
水は減速してしまうので使えません——ナトリウムは重いので、中性子の速度をあまり落とさない。
解法の原理:新型炉の特徴を整理する

燃やした量より多くの燃料が生まれます——不思議に思えますが、原理は単純です。
| 中性子 | 1回の核分裂で出る数 | 行き先 |
| ① | ★1個 | ★次の核分裂を起こす(連鎖の維持) |
| ★② | ★1個以上 | ★ウラン238に吸われてプルトニウムになる |
| ③ | 残り | 吸収・漏えい |
高速中性子のほうが、1回の核分裂で出る中性子が多い——約2.9個(熱中性子なら約2.4個)です。
1個を連鎖に使っても、1個以上が余る——それがウラン238をプルトニウムに変えます。
だから転換比が1を超える——これが増殖です。
軽水炉の転換比は0.6程度——増えはするが、燃やす量には届きません。
問題の解説:選択肢(1)の誤りを確認


高温ガス炉
| 項目 | 内容 | 利点 |
| ★冷却材 | ★ヘリウムガス | ★不活性で放射化しない |
| ★減速材 | ★黒鉛 | ★高温に耐える |
| ★出口温度 | ★950 ℃ 前後 | ★熱効率が高い/水素製造にも使える |
軽水炉が280 ℃ 程度なのに対して950 ℃——けた違いの高温です。
発電だけでなく、水を熱分解して水素を作れる——そこに期待が寄せられています。
核融合炉
核分裂とは逆に、軽い原子核をくっつけます。
★ヘリウムと中性子ができる
燃料は海水から取れる重水素——資源がほぼ無尽蔵です。
高レベル放射性廃棄物が出ない——暴走もしないという利点があります。
ただし1億 ℃ 以上のプラズマを閉じ込める必要がある——実用化はまだ先です。
⚠️ よくある間違い
(1)の「プルトニウム239に転換される」だけを見て正しいと判断する——転換自体は正しいのです。
誤りは「速度の遅い熱中性子」と「核分裂を起こし」の2か所——ウラン238は核分裂せず、転換するだけ。
(2)の「消費した量より多く生成される」を疑ってしまう——それが増殖炉の定義です。
(3)のヘリウムと黒鉛を疑ってしまう——高温ガス炉の構成として正しい。
(4)(5)の核融合を疑ってしまう——いずれも正しいのです。重水素のプラズマを高速で衝突させる。
「高速増殖炉なのに熱中性子」という矛盾——名前と記述が食い違う点が決め手です。
⏱️ 本番での進め方
①★「高速」増殖炉なので高速中性子。減速材を使わない。
②★ウラン238は核分裂しない。中性子を吸って転換するだけ。
③★高温ガス炉=ヘリウム冷却+黒鉛減速+950 ℃。
④核融合は重水素・三重水素。海水から取れる。
💡 覚え方
「名前が答えを教えている」——高速増殖炉は高速中性子、高温ガス炉は高温のガスです。ウラン238は燃えない、変わるだけ——ここを混同させるのが定番の引っかけになります。
核燃料サイクルと高速増殖炉は平成28年度 A問題4(原子力:核燃料サイクル)にあります。
ナトリウムを冷却材に使う理由と難しさ
高速増殖炉では、水を冷却材に使えません。
| 冷却材 | 中性子の減速 | 高速炉で使えるか |
| ★軽水 | ★大きく減速する | ★使えない |
| ★ナトリウム | ★ほとんど減速しない | ★使える |
ナトリウムは原子量23で、中性子の23倍重い——ぶつかっても中性子はあまり減速しません。
熱をよく伝え、沸点が約880 ℃ と高い——加圧しなくても液体のまま使えます。
その代わりの難しさ
| 性質 | 問題になること |
| ★水と激しく反応する | ★漏れると爆発的に燃える |
| ★空気中で燃える | ★窒素で覆う必要がある |
| ★不透明 | ★炉内を目視できず、点検が難しい |
| ★98 ℃ で固まる | ★配管を常に加熱しておく必要がある |
だから中間熱交換器を挟んで、3つの系統に分けます——放射化したナトリウムを水から遠ざけるのです。
「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故も、この難しさの表れ——実用化の壁になっています。
核融合の3つの条件
(4)(5)の核融合を、もう少し詳しく見ましょう。
| 条件 | 必要な値 | 理由 |
| ★温度 | ★1億 ℃ 以上 | ★原子核どうしの反発に打ち勝つ |
| ★密度 | ★十分に高く | ★衝突の回数を増やす |
| ★閉じ込め時間 | ★十分に長く | ★反応が続くように保つ |
3つの積が一定値を超えると、自己持続する反応になります——ローソン条件と呼ばれます。
原子核はどちらもプラスの電気を帯びています——だから近づけるだけで強く反発するのです。
その反発を超える速度を与えるのが、1億 ℃ という温度——問題文の「きわめて高速で衝突させて」がそれです。
どうやって閉じ込めるか
1億 ℃ に耐える容器はありません——だから磁場で浮かせます。
プラズマは電気を帯びた粒子の集まり——磁場で進路を曲げられるのです。
ドーナツ形の磁場に閉じ込める方式がトカマク型——国際協力のITERがこの形になります。
要点をもう一度
誤りは(1)——2か所が同時に間違っています。
| 炉型 | 冷却材 | 減速材 | 使う中性子 |
| 軽水炉 | 軽水 | 軽水 | ★熱中性子 |
| ★高速増殖炉 | ★ナトリウム | ★使わない | ★高速中性子 |
| ★高温ガス炉 | ★ヘリウム | ★黒鉛 | ★熱中性子 |
高速増殖炉だけが減速材を持ちません——だから「高速」です。
ウラン238は核分裂せず、プルトニウム239に転換されるだけ——燃えるのは転換した後になります。
新型炉が目指すもの
高速増殖炉は資源を増やす、高温ガス炉は熱を活かす、核融合は燃料の制約をなくす——目的がそれぞれ違います。
核融合が核分裂より難しい理由
核融合は原理的に優れていますが、実現が困難です。
| ★核分裂 | ★核融合 | |
| ★起こすきっかけ | ★中性子を当てるだけ | ★1億 ℃ に加熱する |
| ★中性子は | ★電気を帯びず、近づきやすい | ★原子核どうしが反発する |
| ★暴走 | ★あり得る(制御が要る) | ★条件が崩れれば止まる |
| ★高レベル廃棄物 | ★出る | ★出ない |
核分裂は中性子を当てるだけで起こせます——中性子は電気を帯びていないので、反発を受けません。
核融合は、プラスどうしを無理やり近づける——だから途方もない条件が要るのです。
起こしにくいということは、暴走もしにくいということ——安全性の面では利点になります。
太陽の中では重力が閉じ込めを担っています——地上では磁場で代用することになります。
まとめ
| (1)高速増殖炉 | 高速中性子を使用。U238は吸収して転換→誤り |
| (2)増殖 | 消費したPu239より多く生成→正しい |
| (3)高温ガス炉 | He冷却材+黒鉛減速材→正しい |
| (4)核融合炉 | 軽い原子の核融合反応を利用→正しい |
| (5)プラズマ | 重水素の原子核を高速衝突→正しい。答えは(1) |
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