今回は平成18年度 電力科目 A問題2を解説します。排熱回収方式のコンバインドサイクル発電における、ガスタービンの燃焼用空気の流れとして正しいものを選ぶ問題です。
流れは物理で導けます。①まず圧縮(燃焼前に圧力を上げるほど効率がよい)②次に燃焼(高圧の空気に燃料を吹き込み高温ガスに)③タービンで膨張(仕事を取り出す)④排熱回収ボイラ(残った熱で蒸気を作る)。圧縮機→燃焼器→タービン→排熱回収ボイラの一本道です。
平成18年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 平成18年度 A問題2
排熱回収方式のコンバインドサイクル発電におけるガスタービンの燃焼用空気に関する流れとして、正しいのは次のうちどれか。
圧縮機 → タービン → 排熱回収ボイラ → 燃焼器
圧縮機 → 燃焼器 → タービン → 排熱回収ボイラ
燃焼器 → タービン → 圧縮機 → 排熱回収ボイラ
圧縮機 → タービン → 燃焼器 → 排熱回収ボイラ
燃焼器 → 圧縮機 → 排熱回収ボイラ → タービン

空気がたどる道
圧縮して、燃やして、膨張させて、余熱を回収する——この順番です。
| 順 | 機器 | そこで起きること | 温度 |
| ★① | ★圧縮機 | ★空気を吸い込んで圧縮する | ★400 ℃ 前後まで上がる |
| ★② | ★燃焼器 | ★燃料を噴射して燃やす | ★1,300〜1,600 ℃ |
| ★③ | ★タービン | ★膨張させて仕事を取り出す | ★600 ℃ 前後まで下がる |
| ★④ | ★排熱回収ボイラ | ★残った熱で蒸気を作る | ★150 ℃ 程度で煙突へ |
燃やす前に圧縮する——これが順番の要点です。
圧力が高いほど効率が上がるのですから、燃焼させる前に圧縮しておく必要があるのです。
燃えた後に圧縮しようとしても、高温のガスは圧縮しにくい——物理的にも成り立ちません。
圧縮機とタービンは同じ軸
ガスタービンの特徴は、圧縮機とタービンが直結していることです。
| 機器 | 役割 | 出力に対する割合 |
| ★タービン | ★仕事を生み出す | ★100 |
| ★圧縮機 | ★仕事を消費する | ★−50〜−60 |
| 差し引き | 正味の出力 | ★40〜50 |
タービンが出す力の半分以上を、圧縮機が食ってしまう——これがガスタービンの宿命です。
気体は圧縮するのに大きな仕事が要ります——水を加圧するランキンサイクルとの決定的な違いになります。
だからガスタービン単独の効率は30〜40 % にとどまる——排気の熱を使って初めて、汽力を上回るのです。
起動時は外部から回す
圧縮機が回らなければ、燃焼も始まりません——最初は電動機などで回してやる必要があります。
ある回転速度に達したら燃料を点火——自力で回り始めたら起動用の動力を切り離すことになります。
この起動が数十分で済む——ボイラに火を入れて蒸気を作る汽力に比べて、はるかに速いのです。
⚠️ よくある間違い
燃焼器を先頭にしてしまう——選択肢(3)(5)がそれです。
空気を圧縮せずに燃やしても、圧力が上がりません——タービンを回す力にならないのです。
タービンと燃焼器を逆にしてしまう——選択肢(4)。膨張させてから燃やしたのでは、その熱を仕事に変えられません。
排熱回収ボイラを途中に置いてしまう——選択肢(1)(5)。排熱回収ボイラは名前のとおり「排熱」を使うので、必ず最後です。
「圧縮→燃焼→膨張→排熱回収」——ブレイトンサイクルの4過程そのものだと考えれば迷いません。
⏱️ 本番での進め方
①★圧縮機 → 燃焼器 → タービン → 排熱回収ボイラ。
②燃やす前に圧縮する。圧力比が効率を決める。
③★排熱回収ボイラは名前どおり最後。
④★圧縮機がタービン出力の半分以上を消費する。
💡 覚え方
「押して、燃やして、回して、拾う」——4つの機器の順番です。ブレイトンサイクルの断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張とそのまま対応しています。
ブレイトンサイクルとランキンサイクルの違いは平成20年度 A問題3(火力:ランキンサイクルの4過程)にあります。
ガスタービンの各機器を詳しく
4つの機器が、それぞれ何をしているのか見ておきましょう。
| 機器 | 形 | 働き |
| ★圧縮機 | ★軸流式(多段の翼列) | ★空気を15〜20倍に圧縮する |
| ★燃焼器 | ★筒状。複数本を円周に配置 | ★燃料を噴射して連続燃焼させる |
| ★タービン | ★多段。翼は冷却される | ★高温ガスを膨張させて仕事を得る |
| ★排熱回収ボイラ | ★管束を並べた熱交換器 | ★排ガスの熱で蒸気を作る |
圧縮機は十数段の翼列を重ねます——1段では少ししか圧力が上がらないからです。
燃焼器では、空気の一部だけを燃焼に使います——残りは高温ガスを薄めて温度を下げるために回されます。
そうしないとタービン翼が耐えられない——排ガス量が多くなる理由の一つでもあります。
排熱回収ボイラは何段かに分かれる
| 圧力段 | 役割 |
| ★高圧段 | ★高温の排ガスから高圧蒸気を作る |
| ★中圧段 | 中間の温度域を使う |
| ★低圧段 | ★低温側で低圧蒸気を作る |
1つの圧力だけで蒸気を作ると、排ガスの熱を使い切れません——温度差が足りなくなるのです。
複数の圧力に分けることで、低い温度域まで熱を回収できる——多重圧式と呼ばれます。効率向上の工夫の一つです。
ガスタービンと蒸気タービンの違い
同じ「タービン」でも、作動流体が違えば設備が変わります。
| ★ガスタービン | ★蒸気タービン | |
| 作動流体 | ★空気・燃焼ガス | ★水・蒸気 |
| 圧縮 | ★圧縮機(大仕事) | ★給水ポンプ(小仕事) |
| 加熱 | ★燃焼器(流体の中で燃やす) | ★ボイラ(外から熱を伝える) |
| 放熱 | ★大気へそのまま捨てる | ★復水器で凝縮させる |
| 循環 | ★開いた系(使い捨て) | ★閉じた系(循環) |
ガスタービンは空気を吸って大気へ捨てる開放系——だから復水器が要りません。
蒸気タービンは同じ水を循環させる閉じた系——純度を保つ必要があり、復水器で回収することになります。
燃焼が流体の中で起きるか、外から熱を伝えるか——これも大きな違いです。ガスタービンは熱交換器を介さないので、高温を直接使えるのです。
排熱回収ボイラの位置づけ
名前のとおり「排熱」を回収する装置——だから必ず流れの最後に来ます。
| ふつうのボイラ | ★排熱回収ボイラ | |
| 熱源 | 燃料を燃やす | ★ガスタービンの排ガス |
| 燃料 | 必要 | ★不要 |
| ガス温度 | 1,500 ℃ 前後 | ★600 ℃ 前後 |
| 火炉 | あり | ★なし(管束だけ) |
燃やさないので火炉がありません——ただの熱交換器だと言えます。
だから構造が簡単で、起動も速い——コンバインドサイクルが短時間で立ち上がる理由の一つです。
ガス温度が低いので、作れる蒸気の条件も控えめ——それでも捨てるよりはるかによいことになります。
流れの順番は問題文で確かめられる
「燃焼用空気に関する流れ」と問われています——空気の立場になってたどればよいのです。
吸い込まれ、押し縮められ、燃料と混じって燃え、膨張して仕事をし、最後に熱を渡して出ていく——物語として読めば順番を間違えません。
選択肢を見ると、圧縮機が先頭にあるのは(1)(2)(4)——そのうち燃焼器がタービンより前にあるのは(2)だけ。2つの条件で確定します。
「圧縮機が先頭」と「排熱回収ボイラが最後」——この2点だけでも(2)に絞れます。両端から挟み込むのが速い解き方でしょう。
この1問で押さえること
ガスタービンの空気の流れは「圧縮機 → 燃焼器 → タービン → 排熱回収ボイラ」——ブレイトンサイクルの断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張と対応しています。
燃やす前に圧縮する——圧力比が効率を決めるからです。膨張させてから燃やしても、その熱は仕事になりません。
排熱回収ボイラは名前のとおり最後——両端を押さえれば、選択肢は1つに絞れます。
まとめ
| ①空気圧縮機 | 空気を昇圧(断熱圧縮) |
| ②燃焼器 | 燃料を燃やし高温高圧ガスに(等圧受熱) |
| ③ガスタービン | 膨張させて仕事を取り出す(断熱膨張) |
| ④排熱回収ボイラ | 排気の熱で蒸気を作り蒸気タービンへ |
| 答え | 圧縮機→燃焼器→タービン→排熱回収ボイラ→(2) |
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