今回は平成19年度 電力科目 A問題5を解説します。原子力・LNGコンバインドサイクル・石炭専焼汽力・重油専焼汽力の4つの発電設備を、発生電力量当たりの二酸化炭素排出量が少ない順に並べる問題です。
判断軸は2つ。①燃料の炭素の多さ(石炭>重油>LNG、原子力はゼロ)と②熱効率(コンバインドは高効率なので同じ電力量でも燃料が少なくて済む)。この2軸で並べれば原子力<LNGコンバインド<重油<石炭と一意に決まります。
平成19年度 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【火力】 平成19年度 A問題5
地球温暖化の主な原因の一つといわれる二酸化炭素の排出量削減が、国際的な課題となっている。発電時の発生電力量当たりの二酸化炭素排出量が少ない順に発電設備を並べたものとして、正しいのは次のうちどれか。
ただし、発電所の記号を次のとおりとし、ここでは、汽力発電所の発電効率は同一であるとする。a. 原子力発電所 b. LNG燃料を用いたコンバインドサイクル発電所 c. 石炭専焼汽力発電所 d. 重油専焼汽力発電所
a < b < c < d
a < d < c < b
b < a < d < c
a < b < d < c
b < a < c < d

CO₂ を出すかどうかは燃料で決まる
4つの発電所を、排出量の少ない順に並べます。
| 順 | 発電所 | CO₂ 排出量 | 理由 |
| ★1 | ★a 原子力 | ★ほぼ零 | ★燃焼しないので炭素を出さない |
| ★2 | ★b LNGコンバインドサイクル | ★少ない | ★水素比率が高く、効率も高い |
| ★3 | ★d 重油専焼 | 中 | 石油系 |
| ★4 | ★c 石炭専焼 | ★最も多い | ★炭素の割合が最も高い |
a < b < d < c の順になります。
なぜ石炭が最も多いのか
燃料に含まれる炭素と水素の比率が違う——ここが根本の理由です。
| 燃料 | 主成分 | C:H の比 | 燃やすと |
| ★天然ガス(LNG) | ★メタン CH4 | ★1:4(水素が多い) | ★H2O が多く CO2 が少ない |
| 石油(重油) | CnH2n 程度 | 1:2 | 中間 |
| ★石炭 | ★炭素が主体 | ★水素が少ない | ★CO2 が多い |
水素が燃えれば水になる——CO₂ は出ません。だから水素の割合が高い燃料ほど、同じ熱量あたりの CO₂ が少ないのです。
メタンは炭素1個に水素4個——燃料の中で最も水素比率が高いことになります。
コンバインドサイクルの効率も効いている
| 方式 | 熱効率 | 同じ電力量あたりの燃料 |
| 汽力(従来型) | 40〜45 % | 多い |
| ★コンバインドサイクル | ★50〜60 % | ★少ない |
効率が高ければ、同じ電力を作るのに要る燃料が減ります——その分だけ CO₂ も減るのです。
LNGコンバインドサイクルは「燃料の水素比率」と「高い効率」の両方で有利——だから化石燃料の中では最も排出が少ないことになります。
問題文が「汽力発電所の発電効率は同一とする」と断っている——c と d の比較は燃料の違いだけで決まるという意味です。
⚠️ よくある間違い
c と d の順序を逆にする——選択肢(1)がそれです。
石炭のほうが重油より多い——炭素の割合が高いからです。「石炭=炭」と考えれば、炭素だらけだと分かります。
b を最も少ないとする——選択肢(3)(5)。原子力は燃焼しないので発電時の CO2 はほぼ零。どんなに効率のよい火力でも、燃やす以上は勝てません。
「発電時の」という限定に注意——建設や燃料の採掘まで含めたライフサイクルでは事情が変わりますが、本問は発電時のみを問うています。
⏱️ 本番での進め方
①★原子力は燃焼しないので発電時は実質零。
②★LNGは水素比率が高い(CH4)+効率が高い。
③★石炭が最も多い。炭素の割合が高いから。
④a < b < d < c と覚える。
💡 覚え方
「水素が多い燃料ほど CO₂ が少ない」——水素が燃えても水にしかならないからです。順番は 原子力<LNG<重油<石炭——石炭が最悪と覚えましょう。
燃料ごとの CO₂ 排出原単位
同じ熱量を得るときに出る CO₂ の量を比べます。
| 燃料 | 排出原単位の目安 | 石炭を100 とすると |
| ★石炭 | ★最も多い | ★100 |
| ★石油(重油) | 中 | ★約80 |
| ★天然ガス(LNG) | ★少ない | ★約60 |
燃料だけで見ても、石炭とLNGでは1.7倍近い差——さらに発電効率の差が加わるのです。
★2倍以上の差
燃料の違いと効率の違いが掛け合わさる——だから発電端で見ると2倍以上の開きになります。
コンバインドサイクルとは
ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた方式——2段構えで熱を使い切ります。
| 段 | 設備 | 使う熱 |
| ★1段目 | ★ガスタービン | ★燃焼ガスで直接回す(1,300 ℃ 級) |
| ★2段目 | ★排熱回収ボイラ+蒸気タービン | ★ガスタービンの排熱で蒸気を作る |
従来の汽力は蒸気タービンだけ——入口温度が600 ℃ 程度に制限されます。
ガスタービンなら1,300 ℃ 以上で使える——高温から始められるぶん効率が上がるのです。その排熱をさらに使うので、合計で50〜60 % に達します。
原子力の CO₂ が「ほぼ零」である理由
核分裂は化学反応ではありません——炭素を燃やしていないのです。
| 方式 | エネルギー源 | 発電時の CO₂ |
| ★火力 | ★燃料の化学反応(酸化) | ★必ず出る |
| ★原子力 | ★ウランの核分裂 | ★出ない |
燃焼とは、炭素や水素が酸素と結びつくこと——炭素があれば必ず CO₂ が出ます。
核分裂は原子核が分かれる現象——化学反応ではないので CO₂ とは無縁です。
ただし「発電時」に限った話——建設や燃料の加工では化石燃料が使われます。問題文が「発電時の」と限定しているのは、そのためでしょう。
順序を覚える手がかり
| 記号 | 覚え方 | |
| ★1番少ない | ★a 原子力 | ★燃やさない |
| ★2番目 | ★b LNG | ★水素が多い+効率が高い |
| ★3番目 | ★d 重油 | 中間 |
| ★最も多い | ★c 石炭 | ★炭素の塊 |
選択肢の記号が a・b・c・d の順に並んでいないのが厄介——c(石炭)と d(重油)を取り違えやすいのです。
「c=石炭が最後」と決めてから選択肢を見る——末尾が c のものは(1)と(4)。あとは b と d の順で(4)に決まります。
発電方式ごとの位置づけ
CO₂ だけで発電方式は選べません——それぞれに事情があります。
| 方式 | CO₂ | 燃料費 | 運用 |
| 原子力 | ★ほぼ零 | ★安い | ★出力調整に不向き |
| LNGコンバインド | ★少ない | 高い | ★起動が速く調整しやすい |
| 石炭 | ★最も多い | ★最も安い | ベース運転向き |
| 重油 | 中 | 高い | ピーク用に限られる |
石炭は CO₂ が多いかわりに燃料費が安い——だから長く使われてきました。
LNGは燃料費が高いかわりに CO₂ が少なく、調整もしやすい——再エネが増えた今、この調整能力の価値が上がっています。
本問は CO₂ の順序だけを問うていますが、実際の電源構成はこうした条件の組み合わせで決まる——そう理解しておくと、他の問題にもつながります。
石炭火力の CO₂ を減らす取り組み
| 技術 | 内容 |
| ★超々臨界圧(USC) | ★蒸気の温度・圧力を上げて効率を43 % 程度へ |
| ★石炭ガス化複合発電(IGCC) | ★石炭をガス化してコンバインドサイクルで使う |
| アンモニア混焼 | 燃やしても CO2 を出さないアンモニアを混ぜる |
| CCS | 排ガスから CO2 を分離して地中に貯める |
効率を上げれば、同じ電力あたりの燃料が減ります——それがそのまま CO₂ の削減になるのです。
本問の設定「汽力発電所の発電効率は同一」は、こうした効率の違いを取り除いて、燃料だけで比べさせるためだと読めます。
まとめ
| a 原子力 | 発電時のCO₂排出はゼロ→最少 |
| b LNGコンバインド | 炭素の少ないLNG×高効率→2番目 |
| d 重油汽力 | 炭素は石炭より少ない→3番目 |
| c 石炭汽力 | 炭素の割合が最も多い→最多 |
| 答え | a<b<d<c→(4) |
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