火力52【電験3種 電力】熱効率向上の誤りは真空度を「低く」!向きの入れ替えを見抜く 平成21年度 A問題3 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成21年度 A問題3 真空度は高くするのが正解!向きの罠に注意

今回は平成21年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所における熱効率の向上を図る方法として、誤っているものを選ぶ問題です。

この問題、実は令和元年度 A問題3(火力24)の前身で、選択肢の構成がほぼ同じ。あちらは「正しいもの」を選ばせて答えが(2)、こちらは「誤っているもの」で真空度の向きを逆にした(2)が答え——設問の向きまで含めて対で覚えると得します。

目次

平成21年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成21年度 A問題3 問題文
平成21年度 電力科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3

電験3種 電力科目 【火力】 平成21年度 A問題3

 汽力発電所における、熱効率の向上を図る方法として、誤っているのは次のうちどれか。

タービン入口の蒸気として、高温・高圧のものを採用する。
復水器の真空度を低くすることで蒸気はタービン内で十分に膨張して、タービンの羽根車に大きな回転力を与える。
節炭器を設置し、排ガスエネルギーを回収する。
高圧タービンから出た湿り飽和蒸気をボイラで再熱し、再び高温の乾き飽和蒸気として低圧タービンに用いる。
高圧及び低圧のタービンから蒸気を一部取り出し、給水加熱器に導いて給水を加熱する。

答え誤っている記述は (2)——「低く」を「高く」に直せば正しくなります

誤りは(2):真空度は高くする

「真空度を低くすることで蒸気は十分に膨張して」——向きが逆です。

真空度復水器の圧力タービン内の膨張熱効率
★高い★低い★十分に膨張できる★向上
低い高い膨張しきれない低下

出口の圧力が低いほど、蒸気は大きく膨張できます——それだけ多くの仕事を取り出せるのです。

記述の後半「十分に膨張して大きな回転力を与える」は正しい——その原因が「真空度を低く」となっているのが誤りです。

結論は合っているのに理由が逆——この形の誤りは見落としやすいので注意しましょう。

蒸気条件の高温高圧化

(1)の「高温・高圧」を、具体的な数字で見ておきましょう

区分蒸気圧力蒸気温度熱効率
亜臨界圧16〜19 MPa538 ℃38〜40 %
★超臨界圧(SC)★22.1 MPa 超566 ℃41 % 前後
★超々臨界圧(USC)★24〜25 MPa★600 ℃ 以上★43 % 前後

臨界圧(22.1 MPa)を超えると、水と蒸気の区別がなくなります——沸騰という現象が起きないのです。

だからドラムが不要になり、貫流ボイラが使われます——1本の管を通る間に、水がそのまま蒸気に変わることになります。

温度を上げるほど効率は上がりますが、材料が追いつきません——600 ℃ 級が現在の実用上限です。

節炭器と空気予熱器の位置づけ

(3)の節炭器は、煙道の余熱を回収する装置——捨てるはずの熱を拾うという点で、再生サイクルと似た発想です。

違うのは、拾う相手が「排ガス」か「蒸気」か——節炭器は排ガスから、再生サイクルは抽気から熱をもらいます。

再生サイクルはなぜ効率を上げるのか

(5)の抽気は、一見すると損に見えます——タービンで使えるはずの蒸気を取り出してしまうのですから。

抽気なし★抽気あり
タービンの仕事大きい★少し減る
給水の温度低い★高い
ボイラで加える熱多い★少なくて済む
効率★向上する

分子(仕事)が少し減っても、分母(加えた熱)がそれ以上減る——だから効率が上がるのです。

冷たい水をいきなりボイラに入れると、そこで大きな温度差が生じます——温度差の大きい熱の受け渡しは、損失になるのです。

抽気で段階的に温めておけば、その損失が減る——大型機では6〜8段の給水加熱器が使われます

再熱サイクルが湿り度を下げる

(4)の再熱は、効率だけでなく機器の保護にも効きます

タービンの後段では、蒸気が膨張して温度が下がり、水滴ができます——その水滴が高速で翼に当たると、表面が削られるのです。

湿り度は12 % 程度が限度——それを超えないように、途中で温め直すことになります。

結果として熱落差も増えるので、効率も上がる——一石二鳥の工夫だと言えます。

正誤判定の進め方

5つとも熱効率向上策——向きが逆になっているものを探します

記述判定
(1)高温・高圧の蒸気正しい
★(2)★復水器の真空度を低く★誤り(高く)
(3)節炭器で排熱回収正しい
(4)再熱サイクル正しい
(5)再生サイクル正しい

(1)(3)(4)(5)は、教科書に載っている向上策そのもの——言い回しも素直です。

(2)だけが「低くする」という下向きの操作——ほかがすべて「上げる・回収する・加熱する」プラス方向なのに、1つだけ逆を向いています。

そこに目を留められれば、知識を思い出す前に候補が絞れます

向上策どうしの関係

5つの策は、独立に効くわけではありません——互いに関係しています

たとえば蒸気を高温にすると、タービン出口の湿り度が下がります——再熱の必要性が減るのです。

逆に高圧にすると湿り度は上がる——再熱がいっそう重要になることになります。

だから高温高圧化と再熱はセットで進んできた——単独の工夫ではなく、組み合わせて成り立つのです。

熱効率向上策の一覧

本問の5つは、いずれも代表的な向上策——まとめて押さえましょう

やることなぜ効くか
★(1) 高温・高圧化★タービン入口の蒸気条件を上げる★カルノーの T₁ が上がる
★(2) 真空度を高く★復水器の圧力を下げる★カルノーの T₂ が下がる
★(3) 節炭器★煙道の排熱で給水を温める★捨てる熱を減らす
★(4) 再熱サイクル★高圧タービンの出口蒸気を温め直す★湿り度を下げ、熱落差を増やす
★(5) 再生サイクル★抽気で給水を加熱する★ボイラで加える熱を減らす

(1)(2)はカルノー効率の上下限を広げる策——1−T₂/T₁ で T₁ を上げ、T₂ を下げるのです。

(3)(5)は「捨てるはずの熱を拾う」策——煙道から拾うのが節炭器、タービンから拾うのが再生になります。

(4)は少し性格が違う——湿り蒸気による翼の傷み(エロージョン)を防ぎつつ、仕事を増やすのです。

再熱と再生の違い

★再熱サイクル★再生サイクル
取り出す蒸気★高圧タービンの排気(全量)★途中段からの抽気(一部)
行き先★ボイラの再熱器へ戻す★給水加熱器へ送る
ねらい★温め直して再びタービンで使う★給水を温めてボイラの負担を減らす

再熱は「戻して使う」、再生は「途中で分けて使う」——まったく別の工夫です。

現在の大型機は両方を採用しています——再熱再生サイクルと呼ばれる形になります。

⚠️ よくある間違い
(2)の後半だけを読んで正しいと判断する——「十分に膨張して大きな回転力を与える」は正しいのです。
誤りは前半の「真空度を低くする」——1文の中で、原因が逆で結果が正しいという形になっています。
「真空度」という言葉の向きに注意——真空度が高い=圧力が低い「圧力を低く」なら正しいのですが、「真空度を低く」は逆です。
(4)の「湿り飽和蒸気」を疑ってしまう——高圧タービンを出た蒸気は湿っているのが実際です。それを再熱するのですから、正しい記述になります。

⏱️ 本番での進め方
①★真空度は「高く」。低くするのは圧力のほう。
②結論が正しくても、理由が逆なら誤り。
③向上策は5つ:高温高圧・真空度・節炭器・再熱・再生。
④★(1)(2)はカルノー、(3)(5)は排熱回収、(4)は湿り度対策。

💡 覚え方
「上を上げて、下を下げて、捨てる熱を拾う」——熱効率向上策はこの3方向です。真空度は高く、圧力は低く——言葉が逆向きになる点に毎回注意しましょう。

復水器の真空度は平成23年度 A問題3火力:復水器の一般的説明)、節炭器は令和5年度上期 A問題3火力:節炭器と空気予熱器)にあります。

まとめ

(1)入口蒸気高温・高圧を採用→正しい
(2)真空度高くするのが正しい(低くは逆)→誤り
(3)節炭器排ガスエネルギーを回収→正しい
(4)再熱湿り飽和蒸気を再熱して低圧タービンへ→正しい
(5)再生抽気で給水加熱→正しい。答えは(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・熱効率向上方法・「正しいもの」形式(火力24・後継問題):【電力】令和元年度 A問題3

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成21年度 問題一覧(全4科目)

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