今回は平成22年度 電力科目 A問題3を解説します。複数の発電機で構成されるコンバインドサイクル発電を、同一出力の単機汽力発電と比較した記述から誤っているものを選ぶ問題です。
このテーマはR06上・R05上・R04下でも出題されている超定番。今回のすり替えは起動停止時間で、大きなボイラを温める必要がないコンバインドは短いのが正解。「長い」とあれば即誤りです。
平成22年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 平成22年度 A問題3
複数の発電機で構成されるコンバインドサイクル発電を、同一出力の単機汽力発電と比較した記述として、誤っているのは次のうちどれか。
熱効率が高い。
起動停止時間が長い。
部分負荷に対応するため、運転する発電機数を変えるので、熱効率の低下が少ない。
最大出力が外気温度の影響を受けやすい。
蒸気タービンの出力分担が少ないので、その分復水器の冷却水量が少なく、温排水量も少なくなる。

誤りは(2):起動停止時間は短い
コンバインドサイクルは、汽力よりずっと速く立ち上がります。
| 汽力発電 | ★コンバインドサイクル | |
| 起動時間(冷態から) | ★数時間〜半日 | ★1時間程度 |
| 時間がかかる理由 | ★大量の水を沸かし、厚い金属をゆっくり温める | ★ガスタービンは点火してすぐ回る |
汽力の起動が遅いのは、ボイラとタービンの金属を温める必要があるから——急に温めると熱応力で割れます。
厚肉のドラムやタービンロータは、内側と外側で温度差が生じます——その差が大きいと材料が耐えられないのです。だから何時間もかけて慎重に温めることになります。
ガスタービンは軽く、水を沸かす必要もありません——点火から数分で回転が上がるのです。
排熱回収ボイラも火炉がなく、構造が簡単——全体として1時間程度で並列できることになります。
(3) 複数台構成が部分負荷に強い理由
本問の題名が「複数の発電機で構成される」となっている——そこが要点です。
| 需要 | 汽力(1台) | ★コンバインド(4台構成) |
| 100 % | 定格運転 | ★4台とも定格 |
| ★50 % | ★1台を半分に絞る(効率が大きく落ちる) | ★2台を止め、2台は定格(効率が保たれる) |
| 25 % | さらに効率低下 | ★1台だけ定格運転 |
汽力で出力を絞ると、蒸気の圧力と温度が下がります——熱サイクルの条件そのものが悪くなるのです。
コンバインドなら、動かす台数を減らすだけ——動いている機械は定格のままですから効率が落ちません。
この性質が、再生可能エネルギーの変動を埋める役目に向いている——近年ますます重要になっています。
(5) 温排水も少ない
復水器の冷却水が少ないということは、温排水も少ないということです。
★残りはガスタービン
★熱効率の差も効く
復水器を通る蒸気が少なく、しかも捨てる熱そのものが少ない——2つの理由が重なります。
海域への影響が小さく、取水設備も小型で済む——環境面でも建設費の面でも有利だと言えます。
⚠️ よくある間違い
(3)を疑ってしまう——「運転する発電機数を変えるので熱効率の低下が少ない」は正しいのです。
複数台あることが前提の記述——問題文の題名が「複数の発電機で構成される」と断っているので成り立ちます。
(4)を疑ってしまう——外気温度の影響を受けやすいのはコンバインドで正しい。空気を吸い込むからです。
(2)を「起動は速いが停止は遅い」と考えてしまう——停止も速いのです。金属を冷やす手間が少ないためです。
⏱️ 本番での進め方
①★起動停止時間は「短い」。汽力の数時間に対し1時間程度。
②理由:ガスタービンは水を沸かす必要がなく軽い。
③(3)★複数台なので運転台数を変えれば効率が落ちない。
④(5) 冷却水量が少ない=温排水も少ない。
💡 覚え方
「速く起動し、台数で調整する」——コンバインドの運用上の強みです。汽力は厚い金属を温めるのに時間がかかる——これが起動時間の差を生んでいます。
同じ比較表の問題が平成19年度 A問題3(火力:コンバインドと汽力の比較)にあります。そちらは冷却水量が誤りにされているので、2問セットで6項目を確認しておきましょう。
起動の中身をたどる
汽力発電所が立ち上がるまでに、何をしているのでしょうか。
| 段階 | やること | かかる時間 |
| ① | ボイラに点火して水を沸かす | ★1〜2時間 |
| ② | ★蒸気の温度・圧力を徐々に上げる | ★数時間 |
| ③ | ★タービンを低速で回して暖機する | ★1時間前後 |
| ④ | 定格速度まで上げて系統に並列する | 数十分 |
③の暖機が特に時間を要します——厚いロータをゆっくり温める必要があるからです。
急に高温の蒸気を当てると、表面だけが伸びて内部との差で応力が生じます——繰り返せば亀裂につながるのです。
コンバインドサイクルでは、この暖機がほぼ不要——ガスタービンのロータは軽く、蒸気タービンも小さいからです。
停止後の再起動
| 状態 | 呼び方 | 起動時間 |
| ★冷えきっている | ★コールドスタート | ★最も長い |
| まだ温かい | ウォームスタート | 中間 |
| ★止めた直後 | ★ホットスタート | ★短い |
金属が温まっていれば、暖機を省ける——だから毎日起動停止する運転(DSS)も可能になります。
コンバインドの構成方式
「複数の発電機で構成される」のは、どういう形なのでしょうか。
| 方式 | 構成 | 特徴 |
| ★一軸形(単軸形) | ★ガスタービン・蒸気タービン・発電機を1本の軸に | ★系列ごとに独立。台数制御しやすい |
| ★多軸形 | ★複数のガスタービンの排熱を1台の蒸気タービンに集める | ★蒸気タービンが大きく効率がよい |
一軸形は、1系列が丸ごと1つの発電ユニット——止めるときは系列ごと止めることになります。
だから運転台数を変えるだけで出力を調整できる——(3)の記述はこの方式を前提にしています。
多軸形では蒸気タービンが共通——ガスタービンを1台止めても、蒸気側は部分負荷になるのです。
近年の大容量機は一軸形が主流——運用の柔軟さが評価されているためでしょう。
比較6項目をもう一度
この型は繰り返し出るので、表で覚えてしまいましょう。
| 項目 | コンバインドは汽力より |
| ★熱効率 | ★高い |
| ★起動停止時間 | ★短い(本問の誤り) |
| ★部分負荷での効率低下 | ★少ない(台数制御) |
| ★排ガス量 | ★多い |
| ★冷却水量・温排水量 | ★少ない |
| ★所内率 | ★小さい |
| ★外気温度の影響 | ★受けやすい |
「多い」のは排ガス量だけ——あとは効率が高く、水も所内電力も少ないのです。
弱点として挙げられるのは、排ガス量と外気温度の影響の2つ——ここを誤りにされることが多いと押さえておきましょう。
なぜ排ガス量だけが多いのか
ガスタービンは、燃焼に必要な量よりずっと多くの空気を吸い込みます。
余分な空気は、燃焼ガスの温度を下げるために使われる——そのままではタービン翼が溶けてしまうからです。
燃やすための空気に対し、3倍前後の空気を通す——だから排ガスの量が多くなることになります。
とはいえ排ガスの温度は低く、有害物質も少ない——量が多いことが、そのまま環境負荷の大きさを意味するわけではありません。
まとめ
| (1)熱効率 | 高い→正しい |
| (2)起動停止時間 | 短い(長いは逆)→誤り |
| (3)部分負荷 | 台数を変えて効率低下が少ない→正しい |
| (4)外気温度 | 最大出力が影響を受けやすい(弱点)→正しい |
| (5)冷却水・温排水 | 蒸気タービンの分担が少なく少ない→正しい。答えは(2) |
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