今回は平成24年度 電力科目 A問題2を解説します。汽力発電所のタービン発電機について、回転速度・要求される強度・回転子の構造・直径と軸方向の寸法を、水車発電機と比較しながら埋める空欄補充問題です。
論理は一本道です。回転速度が高い→遠心力(機械的強度)→円筒形で直径を小さく→そのままでは出力が足りないので軸方向に長く。因果でつながっているので、最初の「高く」さえ取れれば全部つながります。
平成24年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 平成24年度 A問題2
次の文章は、汽力発電所のタービン発電機の特徴に関する記述である。汽力発電所のタービン発電機は、水車発電機に比べ回転速度が(ア)なるため、(イ)強度を要求されることから、回転子の構造は(ウ)にし、水車発電機よりも直径を(エ)しなければならない。このため、水車発電機と同出力を得るためには軸方向に(オ)することが必要となる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、最も適切なものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 高く 熱的 突極形 小さく 長く (2) 低く 熱的 円筒形 大きく 短く (3) 高く 機械的 円筒形 小さく 長く (4) 低く 機械的 円筒形 大きく 短く (5) 高く 機械的 突極形 小さく 長く

高速回転が形を決める
タービン発電機は毎分3,000回転——この速さが、すべての形を決めています。
★重力の5,000倍
重力の5,000倍もの力が、外向きにかかります——1 kg の部品が5トンで引っ張られるのと同じです。
だから直径を小さくするしかない——遠心力は半径に比例するからです。
そして出っ張りのある突極形では、その部分が飛んでしまいます——一体の円筒形にするのが答えになります。
直径を小さくした分、軸方向に長くする
同じ出力を得るには、それだけの体積が要ります——太くできないなら長くするしかありません。
| ★タービン発電機 | 水車発電機 | |
| 回転速度 | ★3,000/3,600 min-1 | 100〜1,200 min-1 |
| 極数 | ★2極・4極 | 多極 |
| 回転子 | ★円筒形(一体鍛造) | 突極形 |
| 直径 | ★1 m 程度と小さい | 大きい |
| 軸長 | ★長い(細長い) | 短い(扁平) |
| 軸 | ★横軸 | 立軸が多い |
細長い形になるので横軸——立てると自重で曲がってしまうからです。
長くすることにも限界がある
軸が長くなると、たわみやすくなります——回転中に共振する回転速度(危険速度)が下がるのです。
定格回転速度が危険速度と重なってはいけません——激しい振動で軸が壊れるからです。
だから長さにも限界があり、そこが容量の上限を決めます——大容量機では4極にして1,500 min-1 にすることで直径を大きく取れるようにしています。
冷却も高速回転が理由
細長い形は、表面積が小さく熱がこもります——空気では冷やしきれません。
| 冷却方式 | 適用容量 | 理由 |
| 空気冷却 | 小容量 | 構造が簡単 |
| ★水素冷却 | ★中〜大容量 | ★熱伝導がよく風損が小さい |
| 水冷却 | 超大容量 | 導体の中に水を通す |
水素は空気の7分の1の密度——高速で回る回転子の風損が大幅に減ります。
しかも熱伝導率は空気の7倍——冷却能力も高いことになります。高速機だからこそ、この2つが効いてくるのです。
⚠️ よくある間違い
(イ)を「熱的」としてしまう——選択肢(1)がそれです。
熱の問題も確かにありますが、回転子の構造を決めているのは遠心力=機械的強度。問題文が「回転速度が高くなるため」と理由を示しているので機械的です。
(ウ)を「突極形」としてしまう——選択肢(1)(5)。突極形は水車発電機。出っ張りが遠心力に耐えられません。
(ア)を「低く」としてしまう——選択肢(2)(4)。汽力タービンは高速です。(ア)と(ウ)の2欄で確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★タービン発電機は高速(3,000/3,600 min-1)。
②(イ)(ウ)★遠心力に耐えるため機械的強度→円筒形。
③(エ)(オ) 遠心力は半径に比例→直径を小さく→軸方向に長く。
④★F=mrω²。これ1つで(イ)〜(オ)が説明できる。
💡 覚え方
「速く回るから細長い」——遠心力 F=mrω² がすべての出発点です。水車発電機は逆に低速だから平たい——回転速度が形を決めている点は共通しています。
水車発電機との比較は平成28年度 A問題2(水力:水車発電機とタービン発電機・鉄機械)にあります。そちらは短絡比と鉄機械が主題です。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 高く | ★(1)(3)(5) |
| (ウ) | 円筒形 | ★(3)に確定 |
(ア)は水車発電機との比較——汽力タービンは3,000 min-1 ですから高く。これで2つ落ちます。
(ウ)は回転子の構造——高速なので円筒形。突極形は水車発電機ですから、2手で確定します。
なぜ2極なのか
★東日本
★西日本
蒸気タービンは高速で回すほど効率がよい——だから極数を最小の2極にするのです。
2極では磁極が2つだけ——円筒にスロットを刻んで巻線を入れる形になります。突極のように出っ張らせる必要がないのです。
タービン発電機の容量と冷却
細長い形は、熱を逃がしにくい形でもあります——容量を上げるには冷却が鍵になります。
| 項目 | 空気 | ★水素 |
| 密度 | 1 | ★約1/14(風損が小さい) |
| 熱伝導率 | 1 | ★約7倍 |
| ★比熱 | 1 | ★約14倍(大きい) |
| 注意点 | — | ★空気と混ざると爆発するので純度管理が要る |
水素は密度が小さいので、高速で回しても風損が小さい——3,000 min-1 で回る機械には決定的な利点です。
そのうえ熱をよく運ぶ——冷却能力も高いことになります。
「比熱が小さい」と書かれていたら誤り——比熱は大きいのです。比重(密度)が小さく、比熱が大きい——2つを取り違えないようにしましょう。
軸の長さを制限するもの
「軸方向に長く」といっても、無制限ではありません。
| 制約 | 内容 |
| ★危険速度(共振) | ★軸が長いほど固有振動数が下がり、定格速度に近づく |
| ★たわみ | ★自重で曲がり、軸受の当たりが偏る |
| 製作・輸送 | 一体鍛造できる大きさに限りがある |
定格回転速度が危険速度と重なると、激しい振動が起きます——避けて設計する必要があるのです。
大容量機では4極にして1,500 min-1 に落とす——遠心力が4分の1になるので直径を大きく取れることになります。細長くしすぎないための工夫です。
まとめ
| (ア) | 2極で3000/3600min⁻¹→水車発電機より高く |
| (イ) | 遠心力に耐える機械的強度が必要 |
| (ウ) | 回転子は円筒形 |
| (エ) | 直径を小さくする(遠心力は半径に比例) |
| (オ) | 同出力のため軸方向に長く→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・タービン発電機の構造と水素冷却(火力17・同テーマ):【電力】令和4年度上期 A問題2
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成24年度 問題一覧(全4科目)

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