今回は平成26年度 電力科目 A問題2を解説します。汽力発電所の熱サイクル(ランキンサイクル)を温度-エントロピー線図(T-s線図)で示し、A→B→C→D→E→Aの各過程の説明から誤っているものを選ぶ問題です。
各過程は「ポンプ=断熱圧縮」「ボイラ・過熱器=等圧受熱」「タービン=断熱膨張」「復水器=等圧放熱」の4種類しかありません。圧力を高めるのに「膨張」はあり得ない——用語の対応さえ覚えていれば一発です。
平成26年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 平成26年度 A問題2
図に示す汽力発電所の熱サイクルにおいて、各過程に関する記述として誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
A→B:給水が給水ポンプによりボイラ圧力まで高められる断熱膨張の過程である。
B→C:給水がボイラ内で熱を受けて飽和蒸気になる等圧受熱の過程である。
C→D:飽和蒸気がボイラの過熱器により過熱蒸気になる等圧受熱の過程である。
D→E:過熱蒸気が蒸気タービンに入り復水器内の圧力まで断熱膨張する過程である。
E→A:蒸気が復水器内で海水などにより冷やされ凝縮した水となる等圧放熱の過程である。



誤りは(1):給水ポンプは断熱圧縮
ポンプは水を押し縮める装置——膨張させるわけではありません。
| 区間 | 機器 | ★正しい過程 | 問題文 |
| ★A→B | ★給水ポンプ | ★断熱圧縮 | ★断熱膨張(誤り) |
| B→C | ボイラ(蒸発) | 等圧受熱 | 正しい |
| C→D | 過熱器 | 等圧受熱 | 正しい |
| D→E | 蒸気タービン | 断熱膨張 | 正しい |
| E→A | 復水器 | 等圧放熱 | 正しい |
断熱膨張はタービンの過程——D→E にすでに出てきています。
1周のサイクルに膨張が2回あるのは不自然——圧縮と膨張は1回ずつでなければ元に戻れません。
選択肢どうしを見比べれば、そこに気づけます。
T-s線図の読み方
本問の図は、横軸がエントロピー s、縦軸が絶対温度 T——PV線図とは見えるものが違います。
| PV線図 | ★T-s線図 | |
| 横軸 | 体積 V | ★エントロピー s |
| 縦軸 | 圧力 P | ★絶対温度 T |
| 囲む面積 | 仕事 | ★出入りした熱量 |
| 断熱変化 | 曲線 | ★垂直な直線 |
断熱変化ではエントロピーが変わりません——だから T-s線図では真上か真下へ動くのです。
A→B(ポンプ)は垂直に上向き、D→E(タービン)は垂直に下向き——図を見れば、どちらが圧縮でどちらが膨張か分かります。
温度が上がるほうが圧縮——押し縮めれば温度が上がるという直感どおりです。
面積が熱量を表す
| 区間 | 下側の面積 | 意味 |
| ★B→C→D | ★受け取った熱 | ★ボイラで加えた熱 |
| ★E→A | ★捨てた熱 | ★復水器で捨てた熱 |
| ★囲まれた面積 | ★差 | ★取り出せた仕事 |
効率は「囲まれた面積÷加えた熱の面積」——図の上で効率が見えるのが T-s線図の利点です。
だから熱サイクルの改良を検討するときは、この図が使われます——再熱すれば面積がどう増えるかが一目で分かるのです。
⚠️ よくある間違い
(2)と(3)を「同じ等圧受熱なのに分けている」と疑ってしまう——どちらも正しいのです。
B→C は水が蒸気になる区間(温度一定)、C→D は蒸気をさらに温める区間(温度上昇)——T-s線図では形が違うので、分けて説明しているのです。
(5)を疑ってしまう——「海水などにより冷やされ凝縮」で正しい。復水器の説明そのものです。
(1)の「ボイラ圧力まで高められる」だけを読んで正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「断熱膨張」という過程名。1文の中で前半が正しく後半が誤りという形です。
⏱️ 本番での進め方
①★給水ポンプは断熱圧縮。膨張はタービン。
②1周に圧縮と膨張が1回ずつ。2回あったらおかしい。
③★T-s線図では断熱変化が垂直線になる。
④面積が熱量。囲まれた面積が取り出せた仕事。
💡 覚え方
「ポンプは圧縮、タービンは膨張」——どちらも断熱です。T-s線図なら垂直な線——上向きが圧縮、下向きが膨張になります。
PV線図で同じサイクルを問う問題が平成20年度 A問題3(火力:ランキンサイクルの4過程)にあります。図の種類が違うだけで、内容は同じです。
B→C と C→D を分ける意味
どちらも等圧受熱ですが、T-s線図では形がまったく違います。
| 区間 | 何が起きるか | 温度 | 線の形 |
| ★B→C | ★水が蒸発して飽和蒸気になる | ★一定(沸点のまま) | ★水平な直線 |
| ★C→D | ★飽和蒸気をさらに加熱する | ★上がっていく | ★右上がりの曲線 |
沸騰している間は、熱を加えても温度が上がりません——蒸発熱として使われるからです。
やかんの湯が沸いている間、100 ℃ のままなのと同じ——加えた熱は水を蒸気に変えることに使われているのです。
すべて蒸気になってから、はじめて温度が上がり始める——それが C→D の過熱になります。
湿り度と乾き度
B と C の間では、水と蒸気が混ざっています——その割合を表すのが乾き度です。
| 乾き度 x | 状態 |
| ★0 | ★全部が水(飽和水)=点B |
| 0.5 | 半分が蒸気 |
| ★1 | ★全部が蒸気(乾き飽和蒸気)=点C |
タービン出口の点 E も、この領域に入ります——膨張して温度が下がり、一部が水に戻るのです。
乾き度が下がりすぎると翼が傷む——だから再熱で湿り度を抑えることになります。
T-s線図で効率を上げる工夫を見る
再熱と再生が、図の上でどう見えるかを押さえましょう。
| 工夫 | T-s線図での変化 | 効果 |
| ★高温高圧化 | ★点 D が右上へ動く | ★囲む面積が増える |
| ★真空度向上 | ★E→A の線が下へ動く | ★捨てる熱の面積が減る |
| ★再熱 | ★膨張の途中から再び上へ、そして下へ | ★面積が付け足される |
囲まれた面積が仕事、下の面積が捨てた熱——効率を上げるとは、この比を大きくすることです。
再熱サイクルでは、膨張の途中でいったん温度を上げ直します——図の上ではジグザグの形になります。
その分だけ囲む面積が増える——取り出せる仕事が増えたということです。
カルノーサイクルとの違い
カルノーサイクルは、T-s線図で長方形になります——2つの等温変化と2つの断熱変化だからです。
ランキンサイクルは長方形になりません——B→C→D で温度が変わりながら熱を受け取るからです。
その分だけカルノー効率には届かない——けれども水を使うことで、ポンプの仕事を小さくできる——実用上の折り合いをつけたサイクルだと言えます。
この1問で押さえること
A→B は給水ポンプによる断熱「圧縮」——膨張はタービン(D→E)の過程です。
1周のサイクルに圧縮と膨張は1回ずつ——2回あったら元に戻れません。選択肢どうしを見比べるだけで気づけます。
T-s線図では断熱変化が垂直線——上向きが圧縮、下向きが膨張。図を見れば一目で判定できます。
5つの記述の対応を確かめる
| 区間 | 機器 | 過程 |
| ★A→B | ★給水ポンプ | ★断熱圧縮 |
| B→C | ボイラ(蒸発) | 等圧受熱(温度一定) |
| C→D | 過熱器 | 等圧受熱(温度上昇) |
| D→E | 蒸気タービン | 断熱膨張 |
| E→A | 復水器 | 等圧放熱 |
この対応表を書き出してから選択肢を見る——それが最も確実な解き方です。
本問は5点なので B→C と C→D が分かれています——4点で表す問題(平成20年度)とは点の数が違うので、記号の対応を毎回確かめてください。
まとめ
| (1)A→B | 給水ポンプ=断熱圧縮(膨張ではない)→誤り |
| (2)B→C | ボイラで飽和蒸気になる等圧受熱→正しい |
| (3)C→D | 過熱器で過熱蒸気になる等圧受熱→正しい |
| (4)D→E | タービンで断熱膨張→正しい |
| (5)E→A | 復水器で等圧放熱→正しい。答えは(1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・P-V線図からタービン効率と発電機効率(火力32):【電力】平成28年度 B問題15
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