火力19【電験3種 電力】ボイラ設備!再熱した蒸気が戻るのは低圧タービン 令和3年度 A問題3 完全解説

電験3種 電力科目 火力 令和3年度 A問題3 再熱した蒸気はどこへ戻る?ボイラ設備の正誤

今回は令和3年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電のボイラ設備について、循環方式・蒸気ドラム・空気予熱器・節炭器・再熱器の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。

4つは教科書どおりですが、1つだけ蒸気の行き先が入れ替わっています。再熱器で温め直した蒸気が向かうのは低圧タービン——「高圧タービン→再熱器→低圧タービン」の流れを覚えていれば一発です。

目次

令和3年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 令和3年度 A問題3 問題文
令和3年度 電力科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3

電験3種 電力科目 【火力】 令和3年度 A問題3

 汽力発電におけるボイラ設備に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

ボイラを水の循環方式によって分けると、自然循環ボイラ、強制循環ボイラ、貫流ボイラがある。
蒸気ドラム内には汽水分離器が設置されており、蒸発管から送られてくる飽和蒸気と水を分離する。
空気予熱器は、煙道ガスの余熱を燃焼用空気に回収することによって、ボイラ効率を高めるための熱交換器である。
節炭器は、煙道ガスの余熱を利用してボイラ給水を加熱することによって、ボイラ効率を高めるためのものである。
再熱器は、高圧タービンで仕事をした蒸気をボイラに戻して再加熱し、再び高圧タービンで仕事をさせるためのもので、熱効率の向上とタービン翼の腐食防止のために用いられている。

答え誤っている記述は (5)——「再び高圧タービン」を「低圧タービン」に直せば正しくなります

出題のポイント:再熱後は次段のタービンへ送る

ボイラ設備の水蒸気経路と煙道ガスの余熱回収を整理し再熱蒸気が次段タービンへ進むことから選択肢5を誤りと判定する図
再熱器は高圧タービンで膨張した蒸気を温め直し、圧力に合う次段のタービンへ送ります。

自然循環・強制循環・貫流の分類、蒸気ドラムの汽水分離、空気予熱器と節炭器の余熱回収は正しい記述です。高圧タービンで膨張した蒸気は再熱器で温度を上げても圧力は元へ戻らず、次段の中圧・低圧タービンへ送るため、「再び高圧タービン」とする(5)が誤りです。

誤りは(5):再熱した蒸気は低圧タービンへ

ボイラ過熱器から高圧タービン再熱器中圧低圧タービン復水器へ進む蒸気経路と再熱の目的を示す図
再熱で温度は上がりますが圧力は元に戻らないため、再熱蒸気を高圧タービンへ戻す記述は誤りです。

高圧タービンで仕事をした蒸気を、また高圧タービンへ戻しても意味がありません

段階蒸気の行き先圧力
過熱器 → 高圧タービン★24 MPa
★高圧タービン出口 → 再熱器★4 MPa 程度まで下がっている
★再熱器 → 中圧・低圧タービン★温度は戻るが圧力は戻らない

再熱器で加えるのは熱であって、圧力ではありません——温度は上がりますが、圧力は下がったままです。

4 MPa の蒸気を24 MPa の高圧タービン入口に送っても、押し込めません——圧力が足りないのです。

だから次の段、つまり中圧または低圧タービンへ送る——圧力に見合った場所で仕事をさせることになります。

再熱がタービン翼を守る

(5)の後半「タービン翼の腐食防止」——正確には壊食(エロージョン)ですが、ねらいは正しい記述です。

再熱なし★再熱あり
タービン出口の湿り度★大きい(15 % 以上)★小さい(12 % 以下)
水滴の量多い★少ない
翼への影響★水滴が当たって削られる★傷みにくい

蒸気が膨張すると温度が下がり、一部が水滴になります——それが高速で翼に当たるのです。

翼の先端は音速に近い速さで動いています——水滴が当たれば表面が少しずつ削られることになります。

途中で温め直せば、出口まで乾いた状態を保てる——効率も上がり、翼も守られるという一石二鳥です。

(2) 汽水分離器の役割

蒸発管から戻ってくるのは、水と蒸気が混ざったもの——これを分けなければなりません

分離しないと起きること
★水滴が過熱器へ入る★管の中で急に蒸発して熱応力が生じる
★不純物が持ち込まれる★水に溶けた塩分がタービン翼に付着する

ドラム内では遠心力や邪魔板を使って水滴を落とします——スクラバやサイクロンと呼ばれる部品です。

分けた水は蒸発管へ戻し、蒸気だけを過熱器へ送る——問題文の(2)は、この働きを正しく述べています

⚠️ よくある間違い
(5)の「熱効率の向上」だけを見て正しいと判断する——再熱が熱効率を上げるのは事実です。
誤りは「再び高圧タービンで仕事をさせる」という部分——圧力が下がっているので戻せません
「再熱」という言葉から「元に戻す」と連想してしまう——戻るのは温度だけだと押さえましょう。
(3)(4)の空気予熱器と節炭器を疑ってしまう——どちらも「煙道ガスの余熱を利用」で正しい相手が空気か給水かの違いです。
(1)の循環方式も正しい——自然循環・強制循環・貫流の3つです。

⏱️ 本番での進め方
①★再熱した蒸気が戻るのは低圧(中圧)タービン。
②理由:再熱器は温度を戻すが圧力は戻さない。
③再熱のねらいは効率向上+湿り度低下による翼の保護。
④(2) 汽水分離器は水滴を落として過熱器を守る。

💡 覚え方
「戻るのは温度だけ、圧力は戻らない」——だから次の段のタービンへ送ります再熱器と過熱器の違い「初めて温めるか、温め直すか」で区別しましょう。

ボイラ設備は平成23年度 A問題2火力:ボイラ設備の説明)、流体の通過順序は令和7年度上期 A問題3火力:水・蒸気・燃焼ガスの順序)にあります。

正誤判定の進め方

5つとも定義の記述——装置名と行き先を確かめます

記述内容判定
(1)自然循環・強制循環・貫流正しい
(2)ドラム内の汽水分離器正しい
(3)空気予熱器は煙道ガスで空気を温める正しい
(4)節炭器は煙道ガスで給水を温める正しい
★(5)★再熱した蒸気を再び高圧タービンへ★誤り

(3)と(4)が、どちらも「煙道ガスの余熱」と正しく書かれています——平成23年度の問題では、ここを入れ替える出題がありました。

今回は熱源が正しいので、別の場所に誤りがある——そう見当をつけて読むと(5)に行き着けます

循環方式ごとのドラムの有無

方式ドラム汽水分離器
★自然循環★あり★必要
★強制循環★あり★必要
★貫流★なし★不要

貫流ボイラでは、水が1本の管を通る間に全部が蒸気になります——分離すべき水が残らないのです。

だから(2)の汽水分離器は、ドラムを持つ方式の話——問題文が「蒸気ドラム内には」と断っているので成り立ちます。

高圧・中圧・低圧の3段構成

大容量機の蒸気タービンは、3つに分かれています——再熱蒸気がどこへ入るかを確かめましょう

入口の蒸気圧力の目安
★高圧タービン★過熱器からの主蒸気★24 MPa/600 ℃
★中圧タービン★再熱器からの再熱蒸気★4 MPa/600 ℃
★低圧タービン★中圧タービンの排気★1 MPa 以下

再熱蒸気は温度こそ主蒸気と同じくらいまで戻ります——ところが圧力は6分の1程度です。

だから高圧タービンには入れられない——圧力に見合った中圧タービンへ送ることになります。

問題文が「低圧タービン」と書いていれば正しい——2段構成の機では、中圧を省いて低圧と呼ぶこともあります。

再熱を2回行う機もある

再熱は1回とは限りません——二段再熱を採用する機もあります。

高圧→再熱→中圧→再熱→低圧という流れ——さらに効率が上がるのです。

ただし配管も制御も複雑になります——超々臨界圧の大容量機に限られることになります。

この1問で押さえること

再熱器で温め直した蒸気は、低圧(中圧)タービンへ送られます——再び高圧タービンへは戻せません

理由は圧力——再熱器が加えるのは熱であって圧力ではないので、4 MPa まで下がった蒸気を24 MPa の入口には押し込めません

再熱のねらいは、熱効率の向上とタービン翼の保護の2つ——膨張で生じる水滴が翼を削るのを防ぐのです。

残る4つの記述

記述要点
(1)循環方式は自然循環・強制循環・貫流の3つ
(2)汽水分離器は蒸発管から来た気水混合を分ける
(3)空気予熱器は煙道ガスで燃焼用空気を温める
(4)節炭器は煙道ガスでボイラ給水を温める

(3)と(4)の熱源が両方とも「煙道ガス」で正しい——ここを入れ替える出題(平成23年度)と見比べておくと確実です。

同じ設備を扱う問題でも、どこを誤りにするかは年度ごとに違います——選択肢の文面を丸ごと覚えるのではなく、装置の役割そのものを理解しておくことが大切でしょう。

まとめ

自然循環強制循環貫流、蒸気ドラム、空気予熱器、節炭器、再熱器の五記述を順に検証して答え5を選ぶ図
(1)から(4)は正しく、再熱蒸気を再び高圧タービンへ送るとした(5)が誤りです。
(1)循環方式自然循環・強制循環・貫流→正しい
(2)蒸気ドラム汽水分離器で飽和蒸気と水を分離→正しい
(3)空気予熱器煙道ガスの余熱を燃焼用空気に回収→正しい
(4)節炭器煙道ガスの余熱でボイラ給水を加熱→正しい
(5)再熱器再加熱した蒸気は低圧タービンへ→誤り。答えは(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・節炭器は給水を、空気予熱器は燃焼用空気を温める(火力12):【電力】令和5年度上期 A問題3

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和3年度 問題一覧(全4科目)

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