火力18【電験3種 電力】発電機出力からタービン効率を求める!効率で割り戻す一手間 令和4年度上期 A問題3 完全解説

電験3種 電力科目 火力 令和4年度上期 A問題3 発電機出力から逆算!タービン効率は何%?

今回は令和4年度上期 電力科目 A問題3を解説します。発電機出力19MW・タービン入口の比エンタルピー3550kJ/kg・復水器入口の比エンタルピー2500kJ/kg・使用蒸気量80t/h・発電機効率95%のとき、タービン効率を求める問題です。

使う式は火力3とまったく同じ Z=PT×3600/(ηt×Δh) を、今度はηtについて解くだけ。ただし今回は与えられているのが発電機出力なので、発電機効率で割り戻してタービン出力に戻す一手間が入ります。

目次

令和4年度上期 電力科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 令和4年度上期 A問題3 問題文
令和4年度上期 電力科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3

電験3種 電力科目 【火力】 令和4年度上期 A問題3

 ある汽力発電設備が、発電機出力19MWで運転している。このとき、蒸気タービン入口における蒸気の比エンタルピーが3550kJ/kg、復水器入口における蒸気の比エンタルピーが2500kJ/kg、使用蒸気量が80t/hであった。発電機効率が95%であるとすると、タービン効率の値[%]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)71 (2)77 (3)81 (4)86 (5)90 %

出題のポイント:発電機出力を軸出力へ割り戻す

発電機出力からタービン軸出力へ割り戻すエネルギーの流れ
発電機出力19 MWを発電機効率0.95で割ると、タービン軸出力は20 MWです。

発電機出力19 MWは、タービン軸出力が発電機損失を受けた後の値です。まず発電機効率0.95で割り戻して軸出力20 MWを求めます。次に蒸気流量をkg/sへ換算し、比エンタルピー差から得た理論出力と比較してタービン効率を求めます。

発電機効率で割り戻す

蒸気流量と熱落差から理論出力とタービン効率を求める計算
80 t/hを22.22 kg/sへ換算し、熱落差1050 kJ/kgから理論出力23.33 MW、タービン効率約86%を求めます。

与えられているのは発電機出力——タービンの軸ではもっと大きいのです。

\( P_T=\dfrac{19}{0.95}=20\ [\mathrm{MW}] \)
発電機効率95 % を戻す
★タービンの軸出力

発電機で5 % を失っている——だから軸のほうが大きいことになります。

19/0.95=20 と、きれいな数字になる——問題が作りやすいように仕組まれているのでしょう。

理論出力と比べる

タービン効率
\( \eta_T=\dfrac{\text{実際の軸出力}}{\dot{m}\,\Delta h} \)

分母は蒸気が理論上出せる仕事

\( \Delta h=3550-2500=1050\ [\mathrm{kJ/kg}] \)
熱落差
★入口−出口のエンタルピー差
\( m=\dfrac{80\times 10^3}{3600}=22.22\ [\mathrm{kg/s}] \)
80 t/h を kg/s に
★÷3.6 でもよい
\( P_{th}=22.22\times 1050=23\,333\ [\mathrm{kW}] \)
理論出力
★蒸気が持つ仕事の能力
\( \eta_T=\dfrac{20\,000}{23\,333}=0.857 \)
割り算する
★約86 %

t/h から kg/s へは3.6で割る——kg/s から t/h へ掛けた3.6の逆です。

理論では23,333 kW 出せるはずが、実際は20,000 kW——その比が86 % になります。

答え正解は (4)——約86 % です。

同じ式を何について解くか

火力の計算問題は、この1本の式に集約されます

タービンの出力
\( P=\dot{m}\,\Delta h\,\eta_T \)

蒸気量×熱落差×タービン効率

問われるもの出題例
★出力P=mΔhη基本形
★蒸気量★m=P/(Δhη)★令和7年度上期 A2
★タービン効率★η=P/(mΔh)★令和4年度上期 A3(本問)
熱落差Δh=P/(mη)

3つが分かれば残り1つが出る——どれを問われても、同じ式を解き直すだけです。

加えて、発電機効率が絡むかどうかを確かめる——「発電機出力」なら割り戻し、「タービン出力」ならそのままになります。

⚠️ よくある間違い
発電機効率を掛けてしまう——19×0.95=18.05 MW として計算すると77 % となり選択肢(2)に一致します。
タービンの軸のほうが発電機出力より大きい——だから割るのが正解です。
発電機効率を無視する——19,000/23,333=81 % となり選択肢(3)に一致します。代表的な誤りに対応する選択肢が用意されているのです。
t/h を kg/s に直し忘れる——80×1050=84,000 となって桁が外れます。÷3.6 を忘れないこと。
熱落差を取り違える——入口から出口を引くのが正しい向きです。

⏱️ 本番での進め方
①★発電機出力÷発電機効率=タービン軸出力。割る。
②★t/h → kg/s は÷3.6。
③理論出力=蒸気量×熱落差。実際との比が効率。
④掛けると(2)、無視すると(3)に誘導される。

💡 覚え方
「軸のほうが端子より大きい」——発電機で損失を受ける前だからです。そして t/h と kg/s は3.6で行き来する——この2つで本問は解けます

同じ式を蒸気量について解く問題が令和7年度上期 A問題2火力:熱落差から使用蒸気量)にあります。

タービン効率が100 % にならない理由

理論では23,333 kW 出せるはずが、実際は20,000 kW——どこで失われるのでしょうか

損失内容
★摩擦損失★蒸気が翼や壁面をこすりながら流れる
★漏れ損失★翼の先端と外周の隙間を素通りする蒸気
★渦・衝突損失★流れの向きが翼と合わないときに生じる
湿り損失水滴が翼にぶつかって仕事を妨げる
排気損失最終段を出た蒸気がまだ速度を持っている

いずれも、蒸気が理想どおりに膨張しないことから生じます——合計で1〜2割になります。

本問の86 % は、実機として妥当な値——大型機では90 % を超えるものもあります

部分負荷では効率が下がる

タービン効率は、設計点で最も高くなります——そこから外れると落ちるのです。

流量が減ると、蒸気が翼に当たる角度がずれます——衝突損失が増えることになります。

これが「汽力は部分負荷で効率が落ちる」理由の一つ——コンバインドが台数制御で有利な理由でもあります。

効率の連鎖のどこを問われているか

火力の効率は、いくつも連なっています——問題文がどこを指しているかを見極めます

効率入力出力本問
ボイラ効率燃料の熱蒸気の熱
★タービン効率★蒸気の理論仕事(mΔh)★軸出力★求めるもの
★発電機効率★軸出力★電気出力★95 %(与えられる)

本問では、ボイラ効率は登場しません——蒸気のエンタルピーが直接与えられているからです。

燃料から蒸気までの話は不要——蒸気から先だけを考えればよいことになります。

「タービン効率」と「タービン室効率」の違い

用語分母含むもの
★タービン効率★理論仕事 mΔh★タービン内部の損失だけ
★タービン室効率★蒸気が持ち込んだ熱の総量★復水器で捨てる熱も含む

似た名前ですが、評価する範囲が違います。タービン効率は蒸気の理論仕事に対する実際の軸仕事を表し、タービン室効率はタービン室へ供給された熱量を基準に評価します。

値が大きく違うので、取り違えるとすぐ分かります——本問の86 % はタービン効率の範囲です。

問題文の用語を正確に読む——それが計算問題の第一歩になります。

この1問で押さえること

発電機出力19 MW を発電機効率95 % で「割って」タービン軸出力20 MW——軸のほうが端子より大きいからです。

熱落差1,050 kJ/kg、蒸気量22.22 kg/s から理論出力23,333 kW——t/h から kg/s へは÷3.6

20,000/23,333=86 %——掛けると77 %(選択肢(2))、無視すると81 %(選択肢(3))誘導されます

単位換算の早見

換算係数
★t/h → kg/s★÷3.6
★kg/s → t/h★×3.6
MW → kW×10³
kW·h → kJ×3600

3.6 という数字が何度も出てきます——3600秒÷1000から来ているのです。

どちらに掛けるか迷ったら、大小を確かめる——80 t/h は22 kg/sですから、t/h のほうが数値が大きいと分かります。

まとめ

タービン効率86パーセントと選択肢4を誤答例とともに照合
正しい計算では86%となり選択肢(4)です。発電機効率を掛けると(2)、無視すると(3)になります。
与えられた出力19MWは発電機出力
タービン出力P_T=19×10³/0.95=20×10³kW(効率で割り戻す)
熱落差Δh=3550−2500=1050kJ/kg
供給熱量80×10³kg/h×1050=8.4×10⁷kJ/h
タービン効率(20×10³×3600)/8.4×10⁷≒85.7%→(4)86

▼あわせて解きたい関連問題
・タービン効率から使用蒸気量を求める(火力3・同じ式の逆向き):【電力】令和7年度上期 A問題2

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和4年度上期 問題一覧(全4科目)

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