今回は令和4年度上期 電力科目 A問題2を解説します。火力発電所のタービン発電機について、発電機の種類・回転子の構造とその理由・大容量機の冷却方式を問う空欄補充問題です。
出発点は2極=高速(3000/3600min-1)という事実。高速で回すと遠心力が大問題になるので、回転子は円筒形で直径を小さくし、軸方向に長い形にします。そして大容量機の冷却には水素が使われます。
令和4年度上期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 令和4年度上期 A問題2
次の文章は、火力発電所のタービン発電機に関する記述である。火力発電所のタービン発電機は、2極の回転界磁形三相(ア)発電機が広く用いられている。(イ)強度の関係から、回転子の構造は(ウ)で直径が(エ)。発電機の大容量化に伴い冷却方式も工夫され、大容量タービン発電機の場合には密封形(オ)冷却方式が使われている。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 同期 熱的 突極形 小さい 窒素 (2) 誘導 熱的 円筒形 大きい 水素 (3) 同期 機械的 円筒形 小さい 水素 (4) 誘導 機械的 突極形 大きい 窒素 (5) 同期 機械的 突極形 小さい 窒素
出題のポイント:2極の高速機から構造を導く

タービン発電機は2極の回転界磁形三相同期発電機です。同期速度の式から高速回転となり、遠心力に耐える機械的強度が必要になるため、回転子は突極のない円筒形で直径を小さくします。さらに大容量機では、損失による熱を除くため密封形水素冷却方式を用います。
(ア) 同期発電機であること

発電所の発電機は、ほぼすべて同期発電機です。
| ★同期発電機 | 誘導発電機 | |
| 回転速度 | ★同期速度で回る(N=120f/p) | 同期速度より速く回る |
| 励磁 | ★直流で界磁を作る(自前) | ★系統から無効電力をもらう |
| 電圧調整 | ★できる(AVR) | ★できない |
| 用途 | ★発電所の主力 | 小規模の風力など |
同期発電機は、自分で界磁を作れます——だから電圧を自分で決められるのです。
誘導発電機は励磁のための無効電力を系統またはコンデンサから受ける必要があります。一般的な系統連系運転では、同期発電機のように単独で端子電圧を設定する機器ではありません。
火力発電所の大容量タービン発電機には、端子電圧と無効電力を界磁で調整できる同期発電機が広く用いられます。
回転界磁形とは
磁石のほうを回し、コイルを止めておく形——これが同期発電機の標準です。
| 方式 | 回るもの | スリップリングを通る電流 | 採用 |
| ★回転界磁形 | ★界磁(磁石) | ★界磁電流(直流・小さい) | ★標準 |
| 回転電機子形 | 電機子(コイル) | ★発電した大電流 | 小容量に限られる |
発電した電気を回転部から取り出すのは大変です——数万アンペアがスリップリングを通ることになるからです。
界磁電流なら直流で、しかも小さい——スリップリングの負担が軽いのです。
だから磁石を回して、電機子を静止させる——回転界磁形が選ばれる理由になります。
2極である理由と形の関係
★東日本
★西日本
蒸気タービンは高速回転に適し、発電機を直結するため、商用周波数では2極機が広く用いられます。
| 原因 | 結果 |
| ★2極なので高速(3,000 min-1) | ★遠心力が大きい |
| ★遠心力が大きい | ★機械的強度が要る=(イ) |
| ★機械的強度が要る | ★突極では飛ぶので円筒形=(ウ) |
| ★遠心力は半径に比例 | ★直径を小さく=(エ) |
| ★細長くなって熱がこもる | ★水素冷却=(オ) |
すべてが「2極で高速」から連鎖しています——1つ理解すれば、残りは自動的に決まるのです。
(オ)は窒素ではなく水素です。水素は空気より密度が小さく風損を抑えやすいうえ、熱伝導率が高いため、大容量機の冷却媒体に適しています。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「誘導」としてしまう——選択肢(2)(4)がそれです。
「回転界磁形」と問題文に書かれている——界磁を持つのは同期発電機です。誘導機に界磁はありません。
(ウ)を「突極形」としてしまう——選択肢(1)(5)。突極形は水車発電機。出っ張りが遠心力に耐えられません。
(オ)を「窒素」としてしまう——選択肢(1)(4)(5)。窒素は水素ガス置換のときに使う炭酸ガスと同じ役割で、冷却媒体ではありません。
(ア)と(ウ)の2欄で確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★「回転界磁形」とあれば同期発電機。
②(イ)(ウ)(エ) すべて「2極で高速」から連鎖する。
③(オ)★大容量機は密封形水素冷却。窒素ではない。
④回転界磁形=大電流の電機子を静止させる。
💡 覚え方
「2極だから高速、高速だから細長い」——形はすべて回転速度から決まります。そして大容量化で高い冷却能力が必要になるため水素で冷やす——一本の鎖でつながっています。
同じテーマが平成24年度 A問題2(火力:タービン発電機の特徴)にあります。そちらは遠心力 F=mrω² が主題です。水素冷却の詳細は平成30年度 A問題1(火力:水素冷却方式)へ。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 同期 | ★(1)(3)(5) |
| (ウ) | 円筒形 | ★(3)に確定 |
(ア)は「回転界磁形」という語が手がかり——界磁を持つのは同期発電機です。これで2つ落ちます。
(ウ)は高速回転に耐える構造——円筒形。突極形では出っ張りが飛んでしまいます。2手で確定します。
(イ)(エ)(オ)で裏を取る
| 欄 | 正しい語 | 根拠 |
| (イ) | 機械的 | ★遠心力に耐える必要がある |
| (エ) | 小さい | ★遠心力は半径に比例する |
| (オ) | 水素 | ★大容量機は密封形水素冷却 |
3つとも(3)と一致します——確信を持って答えられるでしょう。
「熱的強度」という選択肢もありますが、回転子の形を決めているのは遠心力——問題文が「2極の」と断っているのが手がかりになります。
同期発電機の界磁をどう作るか
回転する界磁に、どうやって直流を送るのでしょうか。
| 方式 | 仕組み | 特徴 |
| ★静止形励磁 | ★整流器で作った直流をスリップリングで送る | ★応答が速い |
| ★ブラシレス励磁 | ★軸上に交流励磁機と回転整流器を載せる | ★ブラシが不要で保守が楽 |
| 直流励磁機 | 軸に直結した直流発電機から供給 | 古い方式 |
ブラシレス方式では、スリップリングもブラシもありません——回転する部分の中で整流を済ませてしまうのです。
ブラシは摩耗するので、定期的な交換が要ります——なくせるなら、そのほうが望ましいことになります。
ただし応答は少し遅くなる——系統の安定度が重視される機では静止形が選ばれるのです。
水素冷却の適用範囲
| 容量 | 冷却方式 |
| 数万 kW 以下 | 空気冷却 |
| ★数万〜数十万 kW | ★密封形水素冷却 |
| ★数十万 kW 以上 | ★水素冷却+固定子巻線の水冷却 |
問題文が「大容量タービン発電機の場合には」と断っているのは、小容量機では空気冷却で足りるからです。
この1問で押さえること
「回転界磁形」とあれば同期発電機——誘導機に界磁はありません。
2極で高速回転するため遠心力が大きく、機械的強度が要る——だから突極形ではなく円筒形で、直径を小さくするのです。
大容量化すると発生損失と除去すべき熱が増えるため、大容量機には密封形水素冷却方式が用いられます。
水車発電機との対比
| ★タービン発電機 | ★水車発電機 | |
| 極数 | ★2極 | ★多極 |
| 回転子 | ★円筒形 | ★突極形 |
| 形 | ★直径小・軸長長 | ★直径大・軸長短 |
| 軸 | ★横軸 | ★立軸が多い |
| 冷却 | ★水素 | ★空気 |
水車発電機とタービン発電機では、主に回転速度・極数・回転子形状が対照的です。
片方を覚えれば、もう片方は反対だと分かる——対で押さえるのが効率的でしょう。
唯一の共通点は「回転界磁形の三相同期発電機」であること——大電流の電機子を静止させるという設計思想は同じです。
形は正反対でも、電気的な原理は変わらない——原動機の回転速度だけが、すべての違いを生んでいるのです。
まとめ

| (ア) | 回転界磁形三相 同期 発電機 |
| (イ) | 2極=高速→遠心力→機械的強度の関係 |
| (ウ) | 回転子の構造は円筒形 |
| (エ) | 直径は小さい(軸方向に長い) |
| (オ) | 大容量機は密封形 水素 冷却方式→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・水車発電機とタービン発電機の特徴(水力27):【電力】平成28年度 A問題2
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和4年度上期 問題一覧(全4科目)

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