今回は令和4年度下期 電力科目 A問題11を解説します。電力の需要と供給について、日中の発電量が需要を上回る原因、需給バランスの確保に使われる発電方式、電力貯蔵装置、そして周波数回復のために確保される予備力を問う空欄補充問題です。
キーワードは運転予備力。天候の急変や発電所の事故で周波数が乱れたとき、10分程度以内に応動できる予備力のことで、すでに並列して部分負荷で回っている水力・火力の発電機が担います。
出題のポイント:余剰電力の吸収と周波数回復をつなぐ

太陽光発電の大量導入で日中に余剰電力が生じたときは、揚水式発電や蓄電池で吸収します。天候急変や発電所故障で供給不足になったときは、部分負荷で運転中の水力・火力が持つ運転予備力を使って出力を増やし、周波数を回復させます。
令和4年度下期 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【火力】 令和4年度下期 A問題11
次の文章は、電力の需要と供給に関する記述である。電力の需要は1日の間で大きく変動し、一般に日中に需要が最大となる。一方で、(ア)の大量導入に伴って、日中の発電量が需要を上回る事例も報告されている。需要電力の平準化や、電力の需給バランスの確保のために、(イ)発電が用いられている。また近年では、(ウ)電池などの電力貯蔵装置の技術が向上している。
天候の急変時や発電所の故障発生時にも周波数を標準周波数へと回復させるために、(エ)が確保されている。部分負荷運転中の水力発電機や(オ)発電機などが(エ)の対象となる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) ベース供給力 流込み式 燃料 運転予備力 原子力 (2) ベース供給力 揚水式 蓄 運転予備力 原子力 (3) ベース供給力 流込み式 燃料 ミドル供給力 火力 (4) 太陽光発電 揚水式 燃料 ミドル供給力 火力 (5) 太陽光発電 揚水式 蓄 運転予備力 火力
(ア) 日中に発電量が需要を上回る原因

「日中の発電量が需要を上回る」——この現象を起こしているのは太陽光発電です。
| 電源 | 日中の出力 | 需要を上回ることがあるか |
| ★太陽光 | ★正午前後に最大 | ★ある(春秋の晴天日) |
| ベース供給力 | 一定(原子力など) | ★調整して運転している |
春や秋の晴れた休日——気温が穏やかで冷暖房が要らず、工場も休みです。
需要が少ないところへ、太陽光が最大出力で発電する——供給が需要を上回ってしまうのです。
電力系統では需要と供給を常に一致させる必要があり、大量に貯蔵するには専用設備が必要です——供給が需要を上回れば周波数が上がることになります。
(イ)(ウ) 余った電気をどうするか
| 手段 | 仕組み | 特徴 |
| ★揚水式発電 | ★余剰電力で水を汲み上げ、必要なときに発電する | ★大容量。総合効率70 % 前後 |
| ★蓄電池 | ★電気のまま貯める | ★応答が速い。効率が高い |
| 出力抑制 | 太陽光の出力を絞る | 発電できる電気を捨てることになる |
揚水発電は、従来から夜間の余剰電力を活用してきました——出力調整が限られるベース電源の余剰を利用し、下池の水を上池へ揚げるためです。
現在は日中の太陽光発電の余剰を吸収する役割も担っています——余剰が生じる時間帯に揚水し、不足する時間帯に発電する仕組みは同じです。
「蓄電池」の「蓄」が(ウ)——「燃料電池」は発電装置であって、電力を貯める装置ではありません。
(エ)(オ) 運転予備力とは
急な変動に備えて、余力を残しておく仕組みです。
| 予備力の種類 | 応答時間 | 担い手 |
| ★瞬動予備力 | ★10秒程度 | ★ガバナフリー運転中の発電機 |
| ★運転予備力 | ★10分程度 | ★部分負荷運転中の水力・火力 |
| 待機予備力 | 数時間 | 停止中の火力(起動が要る) |
すでに運転している発電機が、出力に余裕を残している状態——それが運転予備力です。
定格で運転していては、それ以上出せません——あえて部分負荷にしておくことになります。
問題文が「部分負荷運転中の水力発電機や(オ)発電機」と書いているのはそのため——(オ)は火力です。
「ミドル供給力」は需要の中間帯を担う電源の区分——周波数を回復させる仕組みではありません。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「ベース供給力」としてしまう——選択肢(1)(2)(3)がそれです。
ベース供給力は一定出力で運転する電源——その大量導入で日中だけ供給が上回ることはありません。「日中」という言葉が太陽光を指しています。
(ウ)を「燃料電池」としてしまう——選択肢(1)(3)(4)。問題文は「電力貯蔵装置」と言っています。燃料電池は水素から発電する装置で、貯蔵装置ではありません。
(エ)を「ミドル供給力」としてしまう——選択肢(3)(4)。「周波数を標準周波数へ回復させるために確保される」のは予備力です。
(ア)と(ウ)の2欄で確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★「日中」=太陽光。ベース供給力ではない。
②(イ)(ウ)★揚水式と蓄電池。電力を貯める2つの手段。
③(エ)★周波数の回復に使うのは予備力。
④(オ)★部分負荷運転中なので水力と火力。
💡 覚え方
「余ったら貯める、足りなくなったら出す」——揚水と蓄電池がその役目です。予備力は「出力に余裕を残しておくこと」——定格で運転していては予備力になりません。
揚水発電の仕組みは令和元年度 A問題1(水力:揚水発電所の方式)にあります。
ダックカーブという現象
太陽光が増えると、1日の需要曲線の形が変わります。
| 時間帯 | 需要 | 太陽光を差し引いた残り |
| 朝 | 増えていく | まだ高い |
| ★正午前後 | ★最大に近い | ★大きく落ち込む |
| ★夕方 | ★やや減る | ★急激に立ち上がる |
正午に落ち込み、夕方に跳ね上がる——その形がアヒルの背中に似ているのでダックカーブと呼ばれます。
問題になるのは夕方の急な立ち上がり——太陽光が沈むのと、需要が増えるのが重なるのです。
短時間で大量の出力を立ち上げなければならない——揚水発電やコンバインドサイクルの出番になります。
出力抑制という最後の手段
貯めきれないほど余ったら、発電を止めるしかありません——出力抑制と呼ばれます。
発電できるのに止めるのですから、もったいない話です。
だから揚水や蓄電池で吸収できる量を増やす取り組みが進んでいます——本問の(イ)(ウ)は、その文脈にあります。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 太陽光発電 | ★(4)(5) |
| (ウ) | 蓄 | ★(5)に確定 |
(ア)は「日中の発電量が需要を上回る」——日中だけ発電するのは太陽光です。これで3つ落ちます。
(ウ)は「電力貯蔵装置」——蓄電池。燃料電池は発電装置ですから当てはまりません。2手で確定します。
(イ)(エ)(オ)で裏を取る
| 欄 | 正しい語 | 根拠 |
| (イ) | 揚水式 | ★需給バランスの確保に使う発電方式 |
| (エ) | 運転予備力 | ★周波数を回復させるための余力 |
| (オ) | 火力 | ★部分負荷運転できる(原子力は不向き) |
(オ)が原子力ではない理由——原子力は出力を頻繁に変える運転に向きません。
ベース電源として一定出力で運転するのがふつう——予備力の担い手にはなりにくいのです。
この1問で押さえること
日中に供給が需要を上回るのは、太陽光の大量導入によるもの——春や秋の晴れた休日に起きやすいのです。
余った電気を貯める手段が揚水式発電と蓄電池——燃料電池は発電装置で、貯蔵装置ではありません。
周波数を回復させるために確保するのが運転予備力——部分負荷で運転している水力や火力が担い手になります。
予備力を持つということ
予備力とは、あえて出力に余裕を残しておくことです。
定格で運転すれば、それ以上は出せません——だから予備力にはならないのです。
余裕を残すぶん、その発電機は効率のよい運転点から外れます——系統全体の安定のために、多少の効率を犠牲にしていることになります。
変動する再生可能エネルギーが増えると、需給調整力や予備力の確保がより重要になります——本問がこのテーマを扱う背景です。
太陽光は雲がかかれば数分で出力が落ちます——その分をすぐ埋められる発電機が要るのです。
逆に晴れれば急に増える——上げる余力だけでなく、下げる余力も必要になります。
まとめ

| (ア) | 日中に発電量が需要を上回る原因=太陽光発電 |
| (イ) | 余剰で汲み上げピークに放流=揚水式発電 |
| (ウ) | 電力貯蔵装置=蓄電池 |
| (エ) | 周波数回復のために確保=運転予備力 |
| (オ) | 部分負荷運転中の水力・火力発電機が対象→(5) |
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