今回は平成20年度 法規科目 B問題11、高圧架空電線の許容引張荷重と電線の弛度(たるみ)を求める問題です。架空電線の設計計算の基本形で、公式を正しく使えれば確実に得点できます。
使う式は2つ。許容引張荷重=引張強さ÷安全率、弛度D=wS²/(8T)(w:合成荷重、S:径間、T:許容引張荷重)。安全率で引張強さを割った値をTに使うのがポイントです。
平成20年度 法規科目 B問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題11
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 平成20年度 B問題11
高圧架空電線に硬銅線を使用し、高低差のない場所に架設する。径間250m、電線の引張強さ58.9kN、電線の重量と水平風圧の合成荷重20.67N/m、安全率2.2。次の(a)及び(b)に答えよ。
(注)平成20年度は公式問題PDFが公表されていないため、電験王等の過去問データに基づいて問題文を再構成しています。
高圧架空電線に硬銅線を使用して、高低差のない場所に架設する。径間250m、電線の引張強さ58.9kN、電線の重量と水平風圧の合成荷重20.67N/m、安全率2.2とする。次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 電線の許容引張荷重[kN]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)から一つ選べ。
(1)23.56 (2)26.77 (3)29.45 (4)129.6 (5)147.3 kN
(b) 電線の弛度(たるみ)[m]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)から一つ選べ。
(1)4.11 (2)6.04 (3)6.85 (4)12.02 (5)13.71 m

答えは(a)26.77kN・(b)6.04m
架空電線の設計計算の基本形です——公式を正しく使えれば確実に得点できます。
★★(a)安全率で割る
(a)の答え
安全率は「引張強さ÷実際の張力」です——だから許容張力は引張強さを安全率で割る。
掛けるのか割るのかで迷ったら、「許容値は強さより小さい」で確かめます。
58.9×2.2=129.6kN(選択肢(4))が誤答として用意されています——掛けてしまった場合です。
★解釈66条の安全率
| 電線の種類 | 安全率 |
| ★硬銅線・耐熱銅合金線 | ★★2.2以上 |
| ★その他(ACSR等) | ★★2.5以上 |
本問は硬銅線なので2.2——問題文で与えられています。
硬銅線のほうが小さいのは、材料特性が安定しているからです。
この2つの数値は条文の空欄補充でも問われます。
★★(b)弛度の公式
★Tには許容引張荷重を使う
kNをNに直す
(b)の答え
Tの単位をNにそろえるのを忘れないこと——26.77kN=26 770N。
wは[N/m]なので、Tも[N]でそろえます——単位の整合が計算の要。
(a)で求めた値をそのまま使う——引張強さ58.9kNではありません。
★★弛度の公式はどこから来るのか
★実用上は放物線近似で十分
電験で使う式
厳密にはカテナリー(懸垂線)ですが、弛度が小さければ放物線で近似できます。
本問なら径間250mに対し弛度6m——十分に小さいのです。
だからこの式が実用的に使えます。
★弛度が径間の2乗に比例する意味
| 径間 | 弛度(他が同じ場合) |
| ★125m(半分) | ★★1.51m(1/4) |
| ★250m(本問) | ★★6.04m |
| ★500m(2倍) | ★★24.2m(4倍) |
径間が2倍になれば弛度は4倍——2乗で効くのです。
だから長径間では支持物を高くする必要があります——地表上の高さを確保するため。
解釈68条の高さ規定と直結します。
★弛度と張力のトレードオフ
★張ればたるみは減る
強く張れば弛度は小さくなりますが、張力が大きくなります——断線のリスク。
ゆるく張れば張力は小さいが、弛度が大きくなります——地表上の高さが不足する。
その折り合いが安全率という考え方です。
合成荷重の求め方
直交するのでベクトル和
解釈58条で求める
本問では合成荷重20.67N/mが与えられています——計算済みの値。
風圧荷重の問題と組み合わさると、この合成から始まります——2段構えの出題。
実長と弛度の関係
弛度の2乗に比例して長くなる
径間より約0.39m長い
たるんでいる分だけ電線は長くなります——0.39mの余裕。
温度が上がれば電線が伸び、弛度が大きくなります——夏と冬で違うのです。
計算の手順をまとめる
| 手順 | やること | 落とし穴 |
| ★① | ★★T=引張強さ÷安全率 | ★★掛けない |
| ★② | ★★単位をNにそろえる | ★★kN→N |
| ★③ | ★★D=wS²/(8T)に代入 | ★★Tは①の値 |
3ステップで解けます——公式を覚えていれば確実。
温度変化と弛度
αは線膨張係数
夏は垂れ、冬は張る
夏は電線が伸びて弛度が大きくなります——地表上の高さが不足しないか確認が要る。
冬は縮んで張力が大きくなります——断線のリスクが上がるのです。
だから最も厳しい条件で設計します——低温季の張力と高温季の弛度。
解釈68条の高さ規定と弛度
| 場所 | 高圧架空電線の高さ |
| ★道路横断 | ★★6m以上 |
| ★鉄道・軌道横断 | ★★5.5m以上 |
| ★横断歩道橋の上 | ★★3.5m以上 |
| ★その他 | ★★5m以上 |
この高さは、最も垂れた状態で満たす必要があります——高温季の弛度で判定。
だから弛度の計算が高さの設計に直結するのです。
⏱️ 本番での進め方
① 許容引張荷重=引張強さ÷安全率——掛けない。
② 弛度D=wS²/(8T)——Tは許容引張荷重。
③ 単位をNにそろえる(kN→N)。
④ 弛度は径間の2乗に比例、張力に反比例。
💡 覚え方
架空電線の弛度計算=①許容引張荷重T=引張強さ÷安全率(硬銅線・耐熱銅合金線は2.2以上、その他は2.5以上)②弛度D=wS²/(8T)(w:合成荷重[N/m]、S:径間[m]、T:許容引張荷重[N])。弛度は径間の2乗に比例し、張力に反比例する。
⚠️ よくある間違い
引張強さを安全率で「掛ける」のは誤り——割る。弛度の式のTには許容引張荷重を使う——引張強さではない。単位はNにそろえる。
まとめ
| (a)許容引張荷重 | 58.9/2.2≒26.77 kN →(2) |
| 弛度公式 | D=wS²/(8T) |
| 代入 | 20.67×250²/(8×26770) |
| (b)弛度 | ≒6.04 m →(2) |
| 弛度の性質 | 径間²に比例・張力に反比例 |
| 答え | (a)-(2),(b)-(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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