今回は令和7年度上期 電力科目 A問題4を解説します。原子力発電における原子燃料サイクルについて、ウラン235の濃縮度・使用済燃料の処理・ウランとプルトニウムの混合燃料・増殖を行う炉を埋める空欄補充問題です。
燃料の一生を追えば解けます。天然ウラン0.7%→濃縮して3〜5%→軽水炉で燃焼→使用済燃料を再処理→取り出したPuをMOX燃料にしてプルサーマル。そして消費より多くの燃料を生む炉が高速増殖炉です。
出題のポイント:核燃料サイクルの4つの用語を結び付ける

軽水炉用ウラン235の濃縮度、使用済燃料の再処理、MOX燃料、高速増殖炉を核燃料サイクルの流れに沿って結び付けます。用語の意味が分かれば選択肢を一意に絞れます。
令和7年度上期 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 令和7年度上期 A問題4
次の文章は、原子力発電における原子燃料サイクルに関する記述である。天然ウランには主に質量数235と238の同位体があるが、原子力発電所の燃料として有用な核分裂性物質のウラン235の割合は、全体の0.7%程度にすぎない。そこで、採鉱されたウラン鉱石は製錬、転換されたのち、遠心分離法などによって、ウラン235の濃度が軽水炉での利用に適した値になるように濃縮される。その濃度は(ア)%程度である。さらに、その後、再転換、加工され、原子力発電所の燃料となる。
原子力発電所から取り出された使用済燃料からは、(イ)によってウラン、プルトニウムが分離抽出され、これらは再び燃料として使用することができる。プルトニウムはウラン238から派生する核分裂性物質であり、ウランとプルトニウムとを混合した(ウ)を軽水炉の燃料として用いることをプルサーマルという。
また、軽水炉の転換比は0.6程度であるが、高速中性子によるウラン238のプルトニウムへの変換を利用した(エ)では、消費される核分裂性物質よりも多くの量の新たな核分裂性物質を得ることができる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 3〜5 再処理 MOX燃料 高速増殖炉 (2) 3〜5 再処理 イエローケーキ 高速増殖炉 (3) 3〜5 再加工 イエローケーキ 新型転換炉 (4) 10〜20 再処理 イエローケーキ 高速増殖炉 (5) 10〜20 再加工 MOX燃料 新型転換炉
解法の原理:核燃料を回収して再利用する流れ

4つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 3〜5 | ★(1)(2)(3) |
| (ウ) | MOX燃料 | ★(1)に確定 |
(ア)は軽水炉の濃縮度——3〜5 %。20 % 以上は高濃縮で発電には使いません。これで2つ落ちます。
(ウ)は「ウランとプルトニウムとを混合した」——MOX燃料。イエローケーキは製錬段階の原料ですから当てはまりません。
2手で確定——(イ)再処理と(エ)高速増殖炉は確認に使えます。
平成28年度とまったく同じ問題
本問は、平成28年度 A問題4と文面も選択肢も完全に一致します。
| 項目 | 平成28年度 A4 | 令和7年度上期 A4(本問) |
| 問題文 | ★同一 | ★同一 |
| 選択肢 | ★同じ並び | ★同じ並び |
| ★答え | ★(1) | ★(1) |
「核燃料サイクル」と「原子燃料サイクル」という表題の違いだけ——中身は変わりません。
9年を隔てての再出題——過去問がそのまま出ることを示す好例です。
プルサーマルの意義と課題
問題文に出てくるプルサーマル——なぜ行うのでしょうか。
| 観点 | 内容 |
| ★資源の有効利用 | ★使用済燃料に残るプルトニウムを燃料として使える |
| ★プルトニウムの消費 | ★余剰プルトニウムを持たない方針に沿う |
| 廃棄物の減量 | 再処理により高レベル廃棄物の体積が減る |
本来プルトニウムは高速増殖炉で使う計画でした——その実用化が遅れているのです。
だから当面は軽水炉で使う——それがプルサーマルという位置づけになります。
「サーマル」は熱中性子のこと——高速中性子で使うはずのプルトニウムを、熱中性子炉で使うという意味です。
MOX燃料を使うときの注意
| 項目 | ウラン燃料との違い |
| ★制御棒の効き | ★プルトニウムは中性子をよく吸うので効きが弱まる |
| ★ほう素の効き | ★同じく弱まるので濃度を高める |
| 装荷割合 | ★炉心の3分の1程度までに制限する |
だから全部を MOX燃料にはできません——制御性を保つために割合を抑えることになります。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「10〜20」としてしまう——選択肢(4)(5)がそれです。
軽水炉の燃料は3〜5 %——20 % 以上は高濃縮で、研究炉などに限られます。
(ウ)を「イエローケーキ」としてしまう——選択肢(2)(3)(4)。イエローケーキは製錬で得られる黄色い粉で、まだ濃縮も加工もされていません。
(イ)を「再加工」としてしまう——選択肢(3)(5)。正式な用語は「再処理」です。
(エ)を「新型転換炉」としてしまう——「消費される以上の量を得る」なら増殖炉です。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★軽水炉の濃縮度は3〜5 %。
②(ウ)★MOX=混合酸化物燃料。イエローケーキは原料。
③(エ)★転換比が1を超えるのが増殖炉。
④★平成28年度とまったく同じ問題。答えも(1)。
💡 覚え方
「3〜5 %、再処理、MOX、高速増殖炉」——4つの言葉を順に思い出せば解けます。プルサーマルは「熱中性子炉でプルトニウムを使う」という意味です。
まったく同じ問題が平成28年度 A問題4(原子力:核燃料サイクル)にあります。
問題の解説:空欄(ア)〜(エ)を順に決める


ウラン鉱石から使用済燃料の処理まで、一連の流れを確かめましょう。
| 工程 | やること | 得られるもの |
| 採鉱 | ウラン鉱石を掘り出す | ウラン鉱石 |
| ★製錬 | ★不純物を除いて精製する | ★イエローケーキ |
| ★転換 | ★気体に変える | ★六フッ化ウラン |
| ★濃縮 | ★遠心分離法でウラン235を高める | ★濃縮ウラン(3〜5 %) |
| 再転換・加工 | 粉にしてペレットに焼き固める | 燃料集合体 |
| ★再処理 | ★使用済燃料を溶かして分離する | ★ウラン・プルトニウム・廃棄物 |
気体にしてから濃縮する——固体のままでは同位体を分けられないからです。
濃縮した後は、また固体に戻します——それが「再転換」になります。
イエローケーキは製錬の段階で得られる黄色い粉——まだ濃縮も加工もされていません。
だから燃料の名前ではなく、原料の名前——工程の順序を思い出せば区別できます。
高速増殖炉の仕組み
問題文の(エ)について、もう少し詳しく見ておきましょう。
| 項目 | 軽水炉 | ★高速増殖炉 |
| ★中性子 | 熱中性子(減速する) | ★高速中性子(減速しない) |
| ★減速材 | 軽水 | ★なし |
| ★冷却材 | 軽水 | ★ナトリウム |
| ★燃料 | 低濃縮ウラン | ★MOX燃料 |
| ★転換比 | ★0.6 | ★1.2 |
なぜ高速中性子だと増殖できるのでしょうか——核分裂1回で飛び出す中性子の数が多いからです。
★余りが多い
連鎖反応を続けるには1個あれば足ります——残りをウラン238に吸わせればプルトニウムができるのです。
だから減速材を使わない——冷却材も中性子を減速させないナトリウムになります。
ナトリウムは熱をよく伝え、沸点が高いので加圧が不要——そのかわり水や空気と激しく反応するという難しさがあります。
使用済燃料の中身
再処理で何を取り出すのか、内訳を見ておきましょう。
| 成分 | 割合の目安 | 扱い |
| ★ウラン238 | ★約93 % | ★回収して再利用できる |
| ★ウラン235 | ★約1 % | ★まだ燃える |
| ★プルトニウム | ★約1 % | ★新たに生まれた燃料 |
| ★核分裂生成物 | ★約5 % | ★高レベル放射性廃棄物 |
95 % は再利用できる物質——だから再処理して取り出すのです。
残る5 % が本当の意味での廃棄物——ガラスに固めて地層処分することになります。
再処理をせずにそのまま処分する方式もあります——ワンススルー(直接処分)と呼ばれ、国によって方針が分かれています。
転換比という指標
問題文の「軽水炉の転換比は0.6程度」——燃やした量に対して、どれだけ新しい燃料が生まれるかを表します。
0.6 ということは、6割が新たに生まれている——軽水炉でも増殖は起きているのです。
だから軽水炉の出力の3割前後は、実はプルトニウムが燃えたもの——意識しないうちに核燃料サイクルの一部が働いていることになります。
押さえる4つの言葉
| 空欄 | 正しい語 | 紛らわしい語 |
| (ア) | ★3〜5 % | ★10〜20 %(高濃縮で発電には使わない) |
| (イ) | ★再処理 | ★再加工(そういう用語はない) |
| (ウ) | ★MOX燃料 | ★イエローケーキ(製錬段階の原料) |
| (エ) | ★高速増殖炉 | ★新型転換炉(転換比は1未満) |
4つとも、対になる紛らわしい語が用意されています——正しいほうを1つずつ確実に覚えましょう。
(ア)と(ウ)の2欄で選択肢は(1)に確定——残りは確認に使えます。
平成28年度とまったく同じ問題で、答えも(1)——過去問がそのまま出た例です。
まとめ
| (ア) | 軽水炉用の濃縮度は3〜5%程度 |
| (イ) | 使用済燃料からU・Puを分離抽出=再処理 |
| (ウ) | U+Puの混合=MOX燃料(プルサーマル) |
| (エ) | 消費より多く生成=高速増殖炉 |
| 答え | (1) |
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