火力30【電験3種 電力】理論空気量を求める!molはgで数える・酸素濃度21%で割る 平成29年度 B問題15 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成29年度 B問題15 燃焼に必要な空気は何m³?0.21で割るのを忘れずに

今回は平成29年度 電力科目 B問題15を解説します。定格出力600MW・発電端熱効率42%・重油の発熱量44000kJ/kgの汽力発電所について、(a)1日の燃料消費量と(b)それを完全燃焼させるのに必要な理論空気量を求める問題です。

(a)はいつもの効率計算。勝負は(b)の理論空気量で、注意点が2つあります。①molは「g」で数える(kgのまま割ると1000倍ずれる)②求めるのは酸素ではなく空気——最後に酸素濃度21%で割るのを忘れないこと。

目次

平成29年度 電力科目 B問題15:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成29年度 B問題15 問題文
平成29年度 電力科目 B問題15 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題15

電験3種 電力科目 【火力】 平成29年度 B問題15

 定格出力600MW、定格出力時の発電端熱効率42%の汽力発電所がある。重油の発熱量は44000kJ/kgで、潜熱の影響は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

 ただし、重油の化学成分は質量比で炭素85%、水素15%、水素の原子量を1、炭素の原子量を12、酸素の原子量を16、空気の酸素濃度を21%とし、重油の燃焼反応は次のとおりである。 C+O₂→CO₂ / 2H₂+O₂→2H₂O

定格出力600MW、定格出力時の発電端熱効率42%の汽力発電所がある。重油の発熱量は44000kJ/kgで、潜熱の影響は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、重油の化学成分は質量比で炭素85%、水素15%、水素の原子量を1、炭素の原子量を12、酸素の原子量を16、空気の酸素濃度を21%とし、重油の燃焼反応は次のとおりである。 C+O₂→CO₂ / 2H₂+O₂→2H₂O
(a) 定格出力にて、1日運転したときに消費する燃料質量の値[t]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)117 (2)495 (3)670 (4)1 403 (5)2 805 t

(b) そのとき使用する燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気量※の値[m³]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、1molの気体標準状態の体積は22.4Lとする。(※理論空気量:燃料を完全に燃焼するために必要な最小限の空気量(標準状態における体積))

(1)6.8×10⁶ (2)9.2×10⁶ (3)32.4×10⁶ (4)43.6×10⁶ (5)87.2×10⁶ m³

(a) 1日の燃料質量

\( P_{in}=\dfrac{600}{0.42}=1428.6\ [\mathrm{MW}] \)
発電端熱効率42 %
★入熱
\( Q=1\,428\,600\times 86\,400=1.234\times 10^{11}\ [\mathrm{kJ}] \)
1日=86,400秒
\( B=\dfrac{1.234\times 10^{11}}{44\,000}=2.805\times 10^6\ [\mathrm{kg}] \)
発熱量で割る
★約2,805 t

選択肢(1)の117は1時間ぶん——2,805÷24=117 です。「1日」を見落とすと、ここに落ちます

答え(a) の正解は (5)——約2,805 t です。

(b) 理論空気量を mol で数える

気体の体積は分子の数で決まります——だから mol に直してから体積にします

① 炭素が必要とする酸素

\( m_C=2.805\times 10^6\times 0.85=2.384\times 10^6\ [\mathrm{kg}] \)
炭素は85 %
\( n_C=\dfrac{2.384\times 10^9}{12}=1.987\times 10^8\ [\mathrm{mol}] \)
g に直して原子量12 で割る
★kg のままでは割れない
\( n_{O_2}=1.987\times 10^8\ [\mathrm{mol}] \)
C+O₂→CO₂ は1:1

② 水素が必要とする酸素

\( m_H=2.805\times 10^6\times 0.15=4.208\times 10^5\ [\mathrm{kg}] \)
水素は15 %
\( n_{H_2}=\dfrac{4.208\times 10^8}{2}=2.104\times 10^8\ [\mathrm{mol}] \)
H₂ の分子量は2
★原子量1×2
\( n_{O_2}=\dfrac{2.104\times 10^8}{2}=1.052\times 10^8\ [\mathrm{mol}] \)
2H₂+O₂ なので半分

③ 空気の体積に直す

\( n_{O_2}=1.987\times 10^8+1.052\times 10^8=3.039\times 10^8\ [\mathrm{mol}] \)
酸素の合計
\( V_{O_2}=3.039\times 10^8\times 0.0224=6.81\times 10^6\ [\mathrm{m^3}] \)
22.4 L=0.0224 m³
★酸素だけの体積
\( V_{air}=\dfrac{6.81\times 10^6}{0.21}=3.24\times 10^7\ [\mathrm{m^3}] \)
酸素濃度21 % で割る
★約32.4×10⁶ m³

選択肢(1)の6.8×106 は、酸素だけの体積——0.21で割り忘れた人向けに用意されています

空気の8割は窒素——燃焼には使われませんが、一緒に送り込むしかないのです。

答え(b) の正解は (3)——約32.4×106 です。

平成23年度と同じ型の問題

項目平成23年度 B15★平成29年度 B15(本問)
定格出力500 MW★600 MW
発電端熱効率40 %★42 %
★運転時間★1時間★1日(24時間)
(a)の答え102 t★2,805 t
(b)の答え1.18×106★32.4×106

重油の組成(炭素85 %、水素15 %)も、発熱量44,000 kJ/kg も同じ——違うのは出力・効率・運転時間だけです。

解き方はまったく同じ——手順さえ身につけていれば、どちらも確実に取れます

⚠️ よくある間違い
(a)で1時間ぶんを求めてしまう——117 t となって選択肢(1)に一致します。「1日運転したとき」と問われています。
(b)で kg のまま原子量で割る——1000倍ずれます原子量は g 単位の話です。
(b)で水素の分子量を1とする——H₂ なので2酸素が2倍になってしまいます
(b)で0.21で割り忘れる——6.8×106 となって選択肢(1)に一致します。最も多い誤りでしょう。
(b)で0.21を掛けてしまう——空気は酸素より多いので割るのが正解です。

⏱️ 本番での進め方
①(a)★「1日」を見落とすと117 t で選択肢(1)。
②(b)★mol=質量[g]÷原子量。kg のままでは割れない。
③(b)★水素は分子量2、しかも酸素は半分。
④(b)★最後に0.21で割る。忘れると(1)に誘導される。

💡 覚え方
「mol にして22.4を掛け、最後に0.21で割る」——3段階です水素だけは分子量2で酸素は半分——2つの落とし穴があります。

同じ型の問題が平成23年度 B問題15火力:1時間の燃料重量と理論空気量)にあります。出力・効率・運転時間だけが違います

理論空気量と実際空気量

本問で求めたのは理論値——実際にはもっと多く送り込みます

空気比(過剰空気率)
\( m=\dfrac{\text{実際空気量}}{\text{理論空気量}} \)

1より大きい

燃料空気比の目安理由
気体(LNG)1.05〜1.1よく混ざる
★液体(重油)★1.1〜1.2★霧化して混ぜる
固体(石炭)1.2〜1.3粉にしても混ざりにくい

理論どおりの量では、混ざりむらで燃え残ります——だから多めに送り込むのです。

\( 32.4\times 10^6\times 1.15=37.3\times 10^6\ [\mathrm{m^3}] \)
空気比1.15 なら
★実際に送り込む量

ただし多すぎると、余分な空気を温めるぶん熱を捨てることになります——排ガス量も増えて効率が落ちるのです。

燃え残りも無駄も出さない——その折り合いが空気比だと言えます。

1日3,200万 m³ という空気の量

\( \dfrac{32.4\times 10^6}{86\,400}=375\ [\mathrm{m^3/s}] \)
毎秒に直すと
★毎秒375 m³

毎秒375 m³ の空気を吸い込んでいる——教室ひとつぶんの空気が毎秒という規模です。

これを送り込むのが押込通風機——所内電力を大きく消費する補機になります。

まとめ

(a)1日の入熱1.44×10⁷kW·h×3600/0.42=1.234×10¹¹kJ
(a)燃料質量1.234×10¹¹/44000≒2.805×10⁶kg=2805t→(5)
(b)炭素側のO₂2.384×10⁹g/12=1.987×10⁸mol(C:O₂=1:1)
(b)水素側のO₂4.208×10⁸g/2=2.104×10⁸molのH₂→その半分=1.052×10⁸mol
(b)理論空気量(3.039×10⁸×22.4×10⁻³)/0.21≒32.4×10⁶m³→(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・重油専焼火力の発電端効率と二酸化炭素発生量(火力2):【電力】令和7年度下期 B問題15

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成29年度 問題一覧(全4科目)

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