今回は平成19年度 電力科目 A問題1を解説します。水力発電について、水車発電機の磁極数・制御装置・主変圧器の結線・ペルトン水車・カプラン水車の5つの記述から、誤っているものを選ぶ問題です。
ねらわれているのは主変圧器の結線の向き。発電所の主変圧器は発電機側がΔ結線・系統側がY結線——系統側を中性点接地できるようにするためです。問題文はこれが逆になっています。
平成19年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 平成19年度 A問題1
水力発電に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。
水車発電機の回転速度は、汽力発電と比べて小さいため、発電機の磁極数は多くなる。
電圧の大きさや周波数は、自動電圧調整器と調速機を用いて制御される。
発電電圧は、主変圧器で昇圧し送電される。この変圧器には発電機側にY結線、系統側にΔ結線のものが多く用いられる。
ペルトン水車は、水の衝撃力で回転する衝動水車の一つである。
カプラン水車は、プロペラ水車の一種で、流量に応じて羽根の角度を調整することで部分負荷での効率の低下が少ない。

誤りは(3):主変圧器の結線が逆
正しくは発電機側がΔ結線、系統側がY結線——問題文は入れ替わっています。
| 側 | ★正しい結線 | 理由 |
| ★発電機側(低圧) | ★Δ | ★第3調波を環流させて閉じ込める |
| ★系統側(高圧) | ★Y | ★中性点を取り出して接地できる |
「系統側は接地したいからY」——これだけ覚えれば、残りは自動的にΔです。
なぜ発電機の電圧は低いのか
そもそも、はじめから高い電圧で発電すれば昇圧は不要のはず——そうしない理由があります。
| 制約 | 内容 |
| ★固定子スロットの絶縁 | ★高電圧にすると絶縁が厚くなり、導体が入らない |
| ★スロットの寸法 | ★絶縁に場所を取られると、銅の断面が減って損失が増える |
| 製作と保守 | コイルの取り扱いが難しくなる |
発電機の巻線は、細いスロットの中に収めなければなりません——絶縁を厚くする余裕がないのです。
だから発電機の端子電圧は11〜24 kV 程度に抑える——電圧を上げる仕事は変圧器に任せるほうが合理的になります。
変圧器なら油の中に浸けて絶縁できる——回転しないぶん、設計の自由度が高いのです。
昇圧すると何が得なのか
| 電圧を10倍にすると | 変化 |
| 電流 | ★1/10 |
| ★抵抗損 3I2R | ★1/100 |
| ★必要な電線の断面積 | ★小さくてよい |
| 絶縁 | 強化が必要 |
電線を細くできるのは大きな利点——銅やアルミの量が減り、鉄塔も軽くて済むのです。
その代わり絶縁の費用は増えます——がいしが長くなり、鉄塔も高くなる。送電距離が長いほど電線の節約が効くので、遠距離ほど高電圧が選ばれることになります。
⚠️ よくある間違い
(3)を「そんなものか」と流してしまう——Δ と Y のどちらが発電機側か、はっきり覚えていないと判断できません。
他の4つは水車と発電機の基本——磁極数・AVR と調速機・ペルトンは衝動水車・カプランの可動羽根。いずれも繰り返し出題される定番です。
定番だけで4つ埋まるなら、残る1つが答え——消去法が有効な問題型だと言えます。
「発電電圧は主変圧器で昇圧し送電される」という前半は正しい——誤りは後半の結線だけです。1文の中で正しい部分と誤った部分が混在することに注意しましょう。
⏱️ 本番での進め方
①★主変圧器は発電機側Δ・系統側Y。
②理由:系統側は中性点接地したいからY。
③他の4つは定番なので消去法が効く。
④★発電機の端子電圧が低いのは絶縁の制約による。
💡 覚え方
「発電所はΔからYへ上げる」——低圧側がΔ、高圧側がYです。発電機が高電圧にできないのはスロットの絶縁が理由——だから変圧器に任せることになります。
まったく同じ趣旨の問題が令和6年度下期 A問題1(水力:主変圧器の結線)にあります。第3調波と接地方式の詳細はそちらをご覧ください。
正誤判定の進め方
5つの記述のうち、4つは定番——消去法が最短です。
| 記述 | 内容 | 判定 |
| (1) | 低速だから多極 | 正しい |
| (2) | AVR と調速機 | 正しい |
| ★(3) | ★発電機側Y・系統側Δ | ★誤り(逆) |
| (4) | ペルトンは衝動水車 | 正しい |
| (5) | カプランの可動羽根 | 正しい |
(1)(2)(4)(5)は他の年度でもそのまま出てきます——令和4年度上期、令和6年度下期にもほぼ同じ文があります。
見慣れた記述が並んでいたら、見慣れないものを疑う——この型の問題では有効な戦略です。
結線の覚え方
| 結線 | 中性点 | 第3調波 | 向く側 |
| ★Y | ★ある(接地できる) | 行き場がない | ★系統側(高圧) |
| ★Δ | ★ない | ★輪の中を環流する | ★発電機側(低圧) |
2つの性質が、きれいに役割分担している——接地はY、調波の処理はΔ。だからΔ-Y の組み合わせが選ばれるのです。
逆にすると、系統側に中性点がなく接地できません——地絡の検出も異常電圧の抑制もできなくなることになります。
変圧器の結線が使い分けられる場面
Δ と Y は、電圧階級と目的で使い分けられます。
| 結線 | 使われる場所 | ねらい |
| ★Δ-Y | ★発電所の主変圧器 | ★昇圧しつつ系統側を接地 |
| Y-Δ | 受電端の降圧 | 低圧側にΔを置く |
| Δ-Δ | 配電用 | 1台故障してもV結線で継続 |
| Y-Y-Δ | 系統連系用の大容量 | 三次巻線で第3調波を処理 |
どの組み合わせでも、必ずどこかにΔが入っている——第3調波の逃げ場が要るからです。
Y-Y だけで組むと波形がひずむ——だから安定巻線としてΔを追加することになります。
Δ-Y には位相のずれがある
一次側と二次側で、電圧の位相が30°ずれます——角変位と呼ばれるものです。
変圧器を並行運転させるときは、この角変位をそろえる必要があります——Δ-Y と Y-Y を並べると循環電流が流れてしまうのです。
発電所ではΔ-Y で統一する——複数台を並べても問題が起きないようにするためです。
結線の指定は、単なる慣習ではありません——接地・調波・位相の3つを同時に満たす答えが Δ-Y だったというだけのことです。
だから逆に書かれていれば、それは誤り——本問の(3)がまさにそれになります。
覚えるのは「系統側はY」の一点でかまいません——接地したいから中性点が要るという理由まで込みで押さえれば、どちらが発電機側かで迷うことはなくなります。
水車発電機の基本を確認する
(1)(2)(4)(5)は、繰り返し出題される定番——まとめて押さえておきましょう。
| 記述 | 内容 | 根拠 |
| (1) | 低速だから磁極数が多い | ★N=120f/p |
| (2) | 電圧はAVR、周波数は調速機 | ★界磁と流量で別系統 |
| (4) | ペルトンは衝動水車 | ★噴流の衝撃力で回る |
| (5) | カプランは羽根の角度を変えられる | ★部分負荷でも効率が落ちにくい |
★20極
★2極
同じ50 Hz でも、回転速度が10倍違えば極数も10倍違う——水車発電機が平たい形になる理由です。
磁極を円周に並べるのですから、数が多ければ直径が大きくなる——形は回転速度から決まっていくのです。
まとめ
| (1)磁極数 | N=120f/p、低速の水車発電機は多極→正しい |
| (2)制御 | 電圧はAVR、周波数は調速機→正しい |
| (3)主変圧器 | 正しくは発電機側Δ・系統側Y→誤り |
| (4)ペルトン | 噴流の衝撃力で回す衝動水車→正しい |
| (5)カプラン | 羽根可動で部分負荷の効率低下が少ない→正しい |
▼あわせて解きたい関連問題
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