今回は平成20年度 電力科目 A問題1を解説します。衝動水車と反動水車それぞれの代表的な方式と適用場所、そして水車発電機の極数の設計方針を問う空欄補充問題です。
反動水車の代表はフランシス水車(プロペラ水車とともに揚水式のポンプ水車にも使われる)、衝動水車の代表はペルトン水車(高落差・小流量向き)。そしてN=120f/pより、回転速度が低い水車発電機は極数を多くします。
平成20年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 平成20年度 A問題1
水力発電は、水の持つ位置エネルギーを水車により機械エネルギーに変換し、発電機を回す。水車には衝動水車と反動水車がある。(ア)には(イ)、プロペラ水車などがあり、揚水式のポンプ水車としても用いられる。これに対し、(ウ)の主要な方式である(エ)は高落差で流量が比較的少ない場所で用いられる。
水車の回転速度は構造上比較的低いため、水車発電機は一般的に極数を(オ)するよう設計されている。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 反動水車 ペルトン水車 衝動水車 カプラン水車 多く (2) 衝動水車 フランシス水車 反動水車 ペルトン水車 少なく (3) 反動水車 ペルトン水車 衝動水車 フランシス水車 多く (4) 衝動水車 フランシス水車 反動水車 斜流水車 少なく (5) 反動水車 フランシス水車 衝動水車 ペルトン水車 多く

(ア)〜(エ) ポンプ水車になれるのはどちらか
本問の手がかりは「揚水式のポンプ水車としても用いられる」——この一言で反動水車だと決まります。
ポンプは羽根で水を押し出す機械——圧力を扱えなければ務まりません。ペルトンは噴流を受けるだけなので、逆回ししても水を汲み上げられないのです。
| 反動水車 | 衝動水車 | |
| 代表 | ★フランシス・プロペラ | ★ペルトン |
| ポンプ水車 | ★なれる(フランシス形が主流) | ★なれない |
| 落差 | 中〜低落差 | 高落差 |
| 流量 | 多い | 比較的少ない |
「プロペラ水車などがあり」と並べられているのも決め手——プロペラは反動水車ですから、(ア)は反動水車、(イ)はその代表のフランシス になります。
(イ)にペルトンを入れる選択肢は誤り——ペルトンは衝動水車です。プロペラと同じグループには入りません。
(オ) なぜ水車発電機は多極なのか
本問の後半は、発電機側の話——同期速度の式1本で決まります。
周波数f は50 または60 Hz で固定——変えられません。だから回転速度N を下げたければ、極数p を増やすしかないのです。
| 極数 p | 50 Hz での同期速度 | 該当する発電機 |
| 2 | 3,000 min-1 | ★タービン発電機(火力・原子力) |
| 4 | 1,500 min-1 | タービン発電機 |
| ★20 | ★300 min-1 | ★水車発電機 |
| 60 | 100 min-1 | 低落差の水車発電機 |
水車は構造上ゆっくりしか回れません——大きなランナを高速で回すと、遠心力とキャビテーションで持ちません。だから100〜600 min-1 程度になります。
その低速で50 Hz を作るには、極数を20〜60 と多くする——「多く」が答えです。「少なく」すると高速になってしまい、水車が追いつきません。
水車発電機とタービン発電機の違い
| ★水車発電機 | タービン発電機 | |
| 回転速度 | ★低速 | ★高速(3,000) |
| 極数 | ★多極(20〜60) | 2〜4極 |
| 回転子の形 | ★突極機 | ★円筒機(非突極) |
| 軸の向き | ★立軸が多い | 横軸 |
| 直径と長さ | 直径が大きく短い | 直径が小さく長い |
多極にすると、磁極を並べるために直径が大きくなります——だから水車発電機は平たい円盤のような形。タービン発電機は細長い円筒——高速回転に耐えるため、直径を小さくする必要があるからです。
⚠️ よくある間違い
(イ)にペルトンを入れてしまう——選択肢(1)(3)がそれです。
ペルトンは衝動水車——プロペラ水車と並べて「反動水車の例」にはできません。(イ)だけで2つ落とせます。
(オ)を「少なく」とする選択肢(2)(4)——N=120f/p で p を小さくすると N が大きくなる。水車は低速なので逆です。式を書けば一目で分かります。
(ア)と(オ)の2欄で確定します。
⏱️ 本番での進め方
①「ポンプ水車にもなる」=反動水車(フランシス形)。
②ペルトンは衝動水車。プロペラと同じ仲間にはしない。
③(オ)★N=120f/p。低速なら極数は多い。
④水車発電機=多極・突極・立軸。タービン発電機=2〜4極・円筒。
💡 覚え方
「遅く回すには極を増やす」——N=120f/p がすべての根拠です。そして「ポンプになれるのは圧力を扱える反動水車だけ」——ペルトンは逆回ししても水を汲めません。
水車の分類は平成25年度 A問題1(水力:水車の分類)、構造の詳細は令和元年度 A問題2(水車の構造と特徴)にあります。
揚水発電とポンプ水車
問題文の「揚水式のポンプ水車」——1台で水車にもポンプにもなる機械です。
| 方式 | 構成 | 特徴 |
| ★ポンプ水車 | ★1台が両方を兼ねる | ★安価・省スペース。回転方向を逆にする |
| タンデム形 | 水車とポンプを別々に持つ | 切替が速いが高価 |
フランシス形のポンプ水車が主流——羽根の形が、逆回しでもポンプとして働けるからです。
発電時と揚水時で回転方向が逆になる——だから切り替えにはいったん停止して逆転させる必要があります。数分かかるのはこのためです。
なぜペルトンではだめなのか
ペルトンはバケットが噴流を受けるだけの構造——逆に回しても水を押し出せません。
ポンプとして働くには、羽根で水を掴んで押し出す形が要ります——それができるのは、水で満たされた反動水車だけ。「ポンプ水車としても用いられる」という一言が、反動水車の決め手になるのです。
同期速度の早見表を持っておく
N=120f/p は電力・機械の両科目で繰り返し使います——代表的な値を覚えておくと速いです。
| 極数 p | 50 Hz | 60 Hz |
| 2 | ★3,000 | 3,600 |
| 4 | 1,500 | 1,800 |
| 8 | 750 | 900 |
| ★12 | ★500 | 600 |
| ★24 | ★250 | 300 |
極数は必ず偶数——N極とS極が対になるからです。「極対数」で数えると、その半分になります。
水車発電機は250〜600 min-1 あたりが多い——表で言えば12〜24極です。低落差の大型機ではさらに多極になります。
なぜ極数を増やすと直径が大きくなるのか
磁極は回転子の外周に並べます——数が増えれば、それだけ周長が要るのです。
24極なら24個の磁極を円周に並べる——1個あたりの幅を確保すると、直径が数mにもなることになります。だから水車発電機は平たく大きい——立軸にして床に据えるのが自然な形になります。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (イ) | フランシス水車 | ★(2)(4)(5) |
| (ア) | 反動水車 | ★(5)に確定 |
(イ)はプロペラ水車と並べて挙げられている——ペルトンは衝動水車なので同じ仲間には入りません。これで2つ落ちます。
(ア)はそのグループの名前——フランシス・プロペラは反動水車。(2)(4)は「衝動水車」としているので誤り——2手で確定します。
(オ)の極数は確認するまでもありませんが、時間があれば N=120f/p で裏を取るとよいでしょう。低速なら多極です。
揚水発電は電気をためる装置
| 時間帯 | 運転 | 電力の向き |
| ★夜間・余剰時 | ★★ポンプで揚水 | ★★電気を消費して位置エネルギーに |
| ★昼間・ピーク時 | ★★水車で発電 | ★★位置エネルギーを電気に |
揚水発電は、水を電池代わりに使う仕組みです——総合効率は約70 %で、3割は損失になります。
損してでも成り立つのは、夜と昼で電気の価値が違うからです——安い電気で汲み上げ、高い時間に売るのです。
近年は太陽光の余剰を昼にためる使い方も増えています——汲み上げる時間帯が変わってきたのです。
まとめ
| (ア) | プロペラと同じ仲間・ポンプ水車にも→反動水車 |
| (イ) | 反動水車の代表=フランシス水車 |
| (ウ) | 高落差・小流量に使う→衝動水車 |
| (エ) | 衝動水車の主要方式=ペルトン水車 |
| (オ) | N=120f/pより低速→極数は多く→(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・衝動水車は位置水頭を速度水頭に変える(水力34):【電力】平成22年度 A問題1
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成20年度 問題一覧(全4科目)

コメント