水力25【電験3種 電力】水車のキャビテーション(発生条件と対策)を攻略する!平成29年度 A問題2 完全解説

電験3種 電力科目 水力 平成29年度 A問題2 気泡が羽根を削るキャビテーション!対策は?

今回は平成29年度 電力科目 A問題2を解説します。水車のキャビテーションについて、発生する条件(圧力と飽和水蒸気圧)、生じる有害現象、そして防止対策(吸出し管の高さ)の空欄を補充する問題です。

キャビテーションは「圧力が飽和水蒸気圧以下まで下がって水が蒸発し、気泡が高圧部で圧潰する」現象。害は壊食・効率低下・振動や騒音で、対策は吸出し管の高さを低くすることです。

目次

平成29年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 水力 平成29年度 A問題2 問題文
平成29年度 電力科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2

電験3種 電力科目 【水力】 平成29年度 A問題2

 次の文章は、水車のキャビテーションに関する記述である。運転中の水車の流水経路中のある点で(ア)が低下し、そのときの(イ)以下になると、その部分の水は蒸発して流水中に微細な気泡が発生する。その気泡が(ア)の高い箇所に到達すると押し潰され消滅する。このような現象をキャビテーションという。水車にキャビテーションが発生すると、ランナやガイドベーンの壊食、効率の低下、(ウ)の増大など水車に有害な現象が現れる。吸出し管の高さを(エ)することは、キャビテーションの防止のため有効な対策である。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)流速飽和水蒸気圧吸出し管水圧低く
(2)流速最低流速吸出し管水圧高く
(3)圧力飽和水蒸気圧吸出し管水圧低く
(4)圧力最低流速振動や騒音高く
(5)圧力飽和水蒸気圧振動や騒音低く

キャビテーションが起きる仕組み

水は100 ℃ でなくても沸きます——圧力が下がれば、常温でも蒸発するのです。

段階起きること場所
★圧力が飽和水蒸気圧以下に低下流速の速い部分・ランナ出口
水が蒸発して微細な気泡が発生同上
気泡が圧力の高い場所へ流される下流
★④★気泡が押し潰されて消滅(圧潰)★金属面を叩く

気泡が潰れる瞬間、周りの水が一点に殺到します——その衝撃圧は数百MPa にも達すると言われます。それが金属面を少しずつ削り取るのです。

(ア)は圧力、(イ)は飽和水蒸気圧——「流速」「最低流速」ではありません気泡ができるかどうかを決めるのは圧力です。

(ウ) キャビテーションの害

内容
★壊食(潰食)ランナやガイドベーンの表面が削られる
効率の低下気泡が流れを乱し、水の通り道を狭める
★振動・騒音の増大圧潰の衝撃が繰り返し発生する

選択肢の「吸出し管水圧の増大」は害になりません——むしろ圧力が高いほうがキャビテーションは起きにくいのです。だから(ウ)は振動や騒音 になります。

壊食は数千時間かけて進みます——すぐに壊れるわけではないのですが、放置すればランナの交換が必要になることになります。

(エ) 吸出し管の高さを低くする

対策の理屈は、圧力を下げないこと——ランナ出口の圧力を確保するのです。

ランナ出口の圧力(概念)
\( p_2\fallingdotseq p_a-\rho g H_s-\dfrac{1}{2}\rho v_2^2 \)

H_s:吸出し高さ(ランナ〜放水面)。大きいほど圧力が下がる

吸出し管が長い(ランナが高い)ほど、ランナ出口の圧力は低くなります——その分だけ真空に近づくからです。だから低くする=ランナを放水面に近づけるのが対策になります。

対策内容
★吸出し高さを低くする★ランナを放水面に近づける(本問)
比速度を大きくしすぎない限界比速度以下に抑える
過度の部分負荷運転を避ける流れの乱れを防ぐ
壊食に強い材料を使うステンレス鋼などで表面を保護

「高くする」と真空度が増して悪化——直感と逆に感じるかもしれませんが、ストローを長くすると吸い上げにくくなるのと同じ理屈です。

答え正解は (5)——(ア)圧力 (イ)飽和水蒸気圧 (ウ)振動や騒音 (エ)低く です。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「流速」としてしまう——選択肢(1)(2)がそれです。
流速が上がると圧力は下がります(ベルヌーイ)——だから流速も関係はあるのですが、気泡発生の直接の条件は圧力問題文が「(イ)以下になると」と書いているので、比較する相手は飽和水蒸気圧=圧力の話だと分かります。
(エ)を「高く」とする選択肢(2)(4)——高くすると圧力がさらに下がって悪化します。(ア)と(エ)の2欄で確定できます。

⏱️ 本番での進め方
①(ア)(イ)★圧力が飽和水蒸気圧以下→気泡発生。
②高圧部で圧潰し、その衝撃が金属を削る(壊食)。
③(ウ) 害は壊食・効率低下・振動や騒音。
④(エ)★吸出し高さは低くする。高くすると悪化。

💡 覚え方
「圧力が下がると常温でも water が沸く」——それがキャビテーションの出発点です。対策は「圧力を下げないこと」——ランナを放水面に近づけるのが基本になります。

比速度とキャビテーションの関係は令和4年度下期 A問題2水力:衝動水車の原理と比速度)にあります。

吸出し管の高さはどこまで許されるか

理屈のうえでは、大気圧で支えられる水柱の高さが上限です——約10 m

\( h=\dfrac{p_a}{\rho g}=\dfrac{101\,300}{1000\times 9.8} \)
大気圧を水柱に換算
\( =10.3\ [\mathrm{m}] \)
計算
★理論上の限界

これを超えると、ランナ出口が完全な真空になっても水が上がってきません——物理的に不可能です。

ただし実際には、飽和水蒸気圧に達した時点でキャビテーションが始まります——だから実用上の吸出し高さは5〜7 m 程度に抑えられます。

吸出し高さ状態
低い(0〜3 m)★安全。キャビテーションが起きにくい
5〜7 m実用上の目安
10 m 超★物理的に不可能

なぜランナ出口の圧力が下がるのか

吸出管の中では、水が「ぶら下がっている」状態——その重さの分だけ、上端の圧力が下がるのです。

ストローで水を吸い上げるのと同じ——長いストローほど強く吸わないと上がってこないその「強く吸う」が、ランナ出口の低圧にあたります

だから吸出し高さを低くすれば、圧力低下が小さくて済む——(エ)が「低く」である理由が、この見方ではっきりします。

空欄の絞り込み手順

4つの空欄がありますが、2つで確定します。

確定させる欄正しい値残る選択肢
(ア)圧力★(3)(4)(5)
(イ)飽和水蒸気圧★(3)(5)
(エ)低く★(5)に確定

(ア)は「(イ)以下になると」と続く——比較する相手が圧力なら(ア)も圧力「流速が飽和水蒸気圧以下」では意味が通りません

(イ)が「最低流速」では、そもそも(ア)と単位が合わない——文としての整合性で判断できます。

キャビテーションは水車だけの話ではない

ポンプ、船のスクリュー、配管の弁——流速が速く圧力が下がる場所ならどこでも起きます

船のスクリューでは、羽根の裏側で圧力が下がって気泡が生じます——やはり壊食と騒音の原因潜水艦が静粛性を求めるとき、キャビテーションを避けるのが最重要になります。

共通する対策は「圧力を下げすぎない」「流速を上げすぎない」——水車で吸出し高さを低くするのも、この原則の一例です。

トーマのキャビテーション係数

キャビテーションの起きやすさを表す指標があります——設計で吸出し高さを決めるときに使うものです。

トーマのキャビテーション係数
\( \sigma=\dfrac{H_a-H_v-H_s}{H} \)

H_a:大気圧水頭、H_v:飽和水蒸気圧水頭、H_s:吸出し高さ、H:有効落差

σ が大きいほど安全——分子は「ランナ出口にどれだけ圧力の余裕があるか」を表しています。

条件σ への影響結果
★吸出し高さHs を低く★分子が大きくなる★σ が大きく安全
有効落差H が大きい分母が大きくなるσ が小さく危険
比速度が大きい必要なσ が大きくなるより低い設置が必要

水車ごとに「必要なσ」が決まっていて、実際のσ がそれを上回るように設置します——吸出し高さは、この式から逆算して決められるのです。

(エ)が「低く」である理由が、式の形からも確認できます——Hs は分子でマイナスですから、小さいほどσ が大きくなるのです。

まとめ

(ア)圧力が低下
(イ)飽和水蒸気圧以下で気泡発生
(ウ)振動や騒音の増大(+壊食・効率低下)
(エ)吸出し管の高さを低くする
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・水力発電所のダムの種別と特徴(水力24):【電力】平成29年度 A問題1

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成29年度 問題一覧(全4科目)

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