今回は令和4年度上期 電力科目 A問題4を解説します。沸騰水型原子炉(BWR)について、燃料と軽水・PWRとの比較・出力調整・制御棒・タービン系統の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。
ねらいは制御棒の挿入方向。BWRの炉心の上部には気水分離器と蒸気乾燥器が鎮座しているので、制御棒は下から入れるしかありません。「上部から」とあれば構造的にあり得ないのです。
令和4年度上期 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 令和4年度上期 A問題4
沸騰水型原子炉(BWR)に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
燃料には低濃縮ウランを、冷却材及び減速材には軽水を使用する。
加圧水型原子炉(PWR)に比べて原子炉圧力が低く、蒸気発生器が無いので構成が簡単である。
出力調整は、制御棒の抜き差しと再循環ポンプの流量調節により行う。
制御棒は、炉心上部から燃料集合体内を上下することができる構造となっている。
タービン系統に放射性物質が持ち込まれるため、タービン等に遮へい対策が必要である。
出題のポイント:BWRの制御棒は下から挿入

BWRでは、炉心上部に気水分離器と蒸気乾燥器があり、十字形制御棒を燃料集合体の間へ下方から挿入します。炉心上部から燃料集合体内の案内管へ挿入するのはPWRの構造です。この方向と位置の違いから、誤っている記述を判定します。
誤りは(4):BWRの制御棒は下から入る

「炉心上部から燃料集合体内を上下する」——それは加圧水型の構造です。
| ★沸騰水型(BWR) | ★加圧水型(PWR) | |
| ★制御棒の向き | ★下から挿入 | ★上から挿入 |
| ★駆動方式 | ★水圧駆動 | ★電磁石で保持 |
| ★緊急停止 | ★水圧で押し込む | ★電磁石を切り、重力で落とす |
| ★形 | ★十字形 | ★束状(クラスタ) |
なぜ沸騰水型は下からなのでしょうか——炉心の上が蒸気で埋まっているからです。
上部には気水分離器と蒸気乾燥器が納まっています——制御棒を通す隙間がないのです。
だから下から水圧で押し上げる——重力に逆らう向きになります。
PWRは炉内で沸騰させず、圧力容器上部の制御棒駆動機構から、燃料集合体内の案内管へ制御棒を挿入します。
緊急停止のしかたが違う
挿入方向の違いは、緊急停止の設計に直結します。
加圧水型は電磁石で制御棒を吊っています——電源が切れれば自然に落ちるのです。
停電しても安全側に働く——フェイルセーフの典型だと言えます。
沸騰水型は重力が使えません——下から押し上げる必要があるからです。
だから高圧の窒素ガスで蓄圧したタンクを備えます——電源がなくても水圧で押し込める仕組みです。
どちらも「電源を失っても止まる」ように作られている——手段が違うだけになります。
(1)(2)(3)(5) 沸騰水型の特徴
| 記述 | 内容 | 要点 |
| (1) | 低濃縮ウラン、冷却材・減速材とも軽水 | ★軽水炉の定義 |
| (2) | 圧力が低く、蒸気発生器がないので構成が簡単 | ★約7 MPa(PWRは約15 MPa) |
| (3) | 制御棒と再循環ポンプの流量で出力調整 | ★ボイド効果の利用 |
| (5) | タービンに遮へい対策が必要 | ★炉心の蒸気が直接入る |
(2)(3)(5)はBWRの直接サイクルや炉内沸騰に関係する特徴で、(1)の低濃縮ウランと軽水の使用は軽水炉に共通する特徴です。
誤りの(4)だけが、加圧水型の記述を紛れ込ませたもの——構造の話は方式で必ず対になります。
⚠️ よくある間違い
(2)の「構成が簡単」を疑ってしまう——正しいのです。蒸気発生器も加圧器もない——そのぶん機器が少なくなります。
(3)の「再循環ポンプの流量調節」を疑ってしまう——沸騰水型に特有の出力調整です。ボイドの量を変えて減速の効きを操作する。
(4)を「上下することができる」の部分で正しいと判断する——誤りは「炉心上部から」の1語です。
(5)の「遮へい対策」を疑ってしまう——必要です。タービン建屋まで放射線管理区域になります。
方式が明示された問題では、構造の向きが狙われる——制御棒の上下は最頻出です。
⏱️ 本番での進め方
①★BWRは下から、PWRは上から挿入。
②★BWRの上部は気水分離器と蒸気乾燥器で埋まっている。
③★PWRは電磁石を切って重力で落とす。BWRは水圧で押し込む。
④(1)(2)(3)(5)はいずれもBWRについて正しい記述。
💡 覚え方
「沸騰水型の上は蒸気でふさがっている」——だから制御棒は下からです。重力が使えないので水圧で押し込む——それでも電源なしで止まるように作られています。
2方式の比較は平成22年度 A問題4(原子力:PWRで「正しいもの」を選ぶ)、出力調整は平成20年度 A問題4(原子力:PWRとBWRの出力調整)にあります。
炉心上部に何があるか
沸騰水型の炉心の上には、2つの装置が積み重なっています。
| 装置 | 働き | 位置 |
| ★気水分離器 | ★遠心力で水と蒸気を分ける | ★炉心のすぐ上 |
| ★蒸気乾燥器 | ★残った水滴を取り除く | ★さらに上 |
炉心で発生するのは、水と蒸気が混ざった状態——そのままではタービンに送れません。
気水分離器で大半の水を落とし、乾燥器で仕上げる——湿り度0.1 % 以下まで下げます。
分離された水は炉心へ戻る——再循環ポンプがその流れを作ります。
この2つが上部を占めているので、制御棒は下から入れるしかない——構造上の必然です。
加圧水型に気水分離器はいらない
加圧水型は炉内で沸騰させません——だから分離するものがないのです。
蒸気は蒸気発生器で作る——気水分離器はそちらの中に入っています。
炉の上部が空くので、制御棒を上から入れられる——すべてが「沸騰させるかどうか」に帰着します。
制御棒の形も方式で違う
挿入方向だけでなく、形そのものが異なります。
| ★沸騰水型 | ★加圧水型 | |
| ★形 | ★十字形 | ★細い棒を束ねたクラスタ |
| ★入る場所 | ★燃料集合体4体の隙間 | ★燃料集合体の内部の案内管 |
| ★材料 | ★炭化ほう素・ハフニウム | ★銀・インジウム・カドミウム合金 |
問題文の「燃料集合体内を上下する」は加圧水型の構造——沸騰水型は集合体の外側の隙間に入ります。
十字形にするのは、4体の集合体の間にちょうど納まるから——形が配置から決まっているのです。
つまり(4)は挿入方向だけでなく、入る場所も誤り——2重に加圧水型の記述になっています。
反応度調整の役割分担
制御棒だけで出力を調整するわけではありません。
BWRでは、制御棒で反応度や出力分布を調整し、再循環流量の変更によっても出力を調整します——(3)の記述はその両方を挙げています。
再循環流量なら制御棒を動かさずに出力を変えられる——炉心の出力分布を乱さずに済むのです。
要点をもう一度
誤りは(4)——沸騰水型の制御棒は下から、集合体の外側の隙間に入ります。
| 記述 | 正誤 | 決め手 |
| (1) | 正 | 軽水炉の定義 |
| (2) | 正 | 約7 MPa・蒸気発生器なし |
| (3) | 正 | 制御棒+再循環流量 |
| ★(4) | ★誤 | ★「炉心上部から」「集合体内」はPWRの構造 |
| (5) | 正 | タービンに遮へいが必要 |
方式が明示された問題では、他方式の記述を紛れ込ませるのが定番——構造の向きが最も狙われます。
「沸騰水型の上は蒸気で埋まっている」——この一点から制御棒の向きが決まります。
沸騰水型が「構成が簡単」である理由
(2)の記述を、機器の数で確かめましょう。
| 機器 | ★沸騰水型 | ★加圧水型 |
| ★蒸気発生器 | ★なし | ★2〜4基 |
| ★加圧器 | ★なし | ★1基 |
| ★一次冷却材ポンプ | ★なし | ★2〜4基 |
| ★再循環ポンプ | ★2基 | ★なし |
BWRは原子炉で発生した蒸気を直接タービンへ送るため、PWRのような独立した一次冷却系の蒸気発生器や加圧器が不要で、主要機器の構成が比較的簡単です。
BWRは炉内で冷却材を沸騰させる方式であり、一次冷却材を沸騰させないPWRより原子炉圧力が低くなります。
ただしタービンまで放射性物質が回る——簡単さと引き換えの代償です。
どちらが優れているというより、設計思想の違い——国内では両方式が使われています。
まとめ

| (1)燃料と軽水 | 低濃縮ウラン+軽水(冷却材・減速材)→正しい |
| (2)PWR比較 | 圧力が低く蒸気発生器なしで簡単→正しい |
| (3)出力調整 | 制御棒+再循環ポンプの流量調節→正しい |
| (4)制御棒 | 炉心下部から挿入(上部は気水分離器)→誤り |
| (5)タービン | 放射性物質が持ち込まれ遮へい必要→正しい。答えは(4) |
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