火力51【電験3種 電力】水素冷却の誤りは「比熱が小さい」!比重と比熱の大小を逆にしない 平成21年度 A問題2 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成21年度 A問題2 水素の比熱は大きい!大小の逆転を見抜く

今回は平成21年度 電力科目 A問題2を解説します。タービン発電機の水素冷却方式を空気冷却方式と比較した記述から、誤っているものを選ぶ問題です。

覚え方は火力27と同じ「大きい=比熱、小さい=比重」。比熱が大きいからよく冷え、比重が小さいから風損が減る——この2つの大小を入れ替えた選択肢が毎回誤りになります。

目次

平成21年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成21年度 A問題2 問題文
平成21年度 電力科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2

電験3種 電力科目 【火力】 平成21年度 A問題2

 タービン発電機の水素冷却方式について、空気冷却方式と比較した場合の記述として、誤っているのは次のうちどれか。

水素は空気に比べ比重が小さいため、風損を減少することができる。
水素を封入し全閉形となるため、運転中の騒音が少なくなる。
水素は空気より発電機に使われている絶縁物に対して化学反応を起こしにくいため、絶縁物の劣化が減少する。
水素は空気に比べ比熱が小さいため、冷却効果が向上する。
水素の漏れを防ぐため、密封油装置を設けている。

答え誤っている記述は (4)——「比熱が小さい」を「比熱が大きい」に直せば正しくなります

誤りは(4):水素の比熱は大きい

「比熱が小さいため冷却効果が向上する」——2重に誤っています

性質空気を1とすると効果
★比重(密度)★約1/14(小さい)★風損が減る
★比熱★約14倍(大きい)★熱をたくさん運べる
★熱伝導率★約7倍(大きい)★熱が伝わりやすい

比熱が大きいほど、同じ体積で多くの熱を運べます——冷却には「大きい」ほうが有利です。

そもそも「比熱が小さいのに冷却効果が向上する」では理屈が通りません——理由と結論がつながっていないのです。

小さいのは比重、大きいのは比熱と熱伝導率——この対比を押さえておけば即答できます

(5) 密封油装置が必要な理由

水素は漏れやすく、しかも危険——だから軸の出口を油で封じます

水素の危険性内容
★爆発範囲★空気中で4〜75 % と非常に広い
★分子が小さい★わずかな隙間からも漏れる
着火エネルギー小さく、静電気でも着火する

回転する軸とケーシングの間には、必ず隙間があります——そこから水素が漏れるのです。

その隙間に油を高い圧力で送り込んで塞ぐ——これが密封油装置です。油の圧力を水素より高く保つことで漏れを止めます。

純度を高く保つことが安全につながる

水素の純度は90 % 以上に保たれます——空気が混じると爆発範囲に入るからです。

純度が高いほど風損も小さく、冷却も効く——安全と性能が同じ方向を向いていることになります。

機内に入れるときは、いきなり水素を入れません——まず炭酸ガス(不活性)で空気を追い出し、それから水素に置換するのです。抜くときも逆の手順を踏みます。

(2)(3) 全閉形にすることの利点

利点内容
★騒音が小さい★密閉されているので風の音が外へ出ない
★絶縁物が劣化しにくい★酸素がないので酸化しない
ほこりが入らない閉じた系なので清浄に保てる
コロナ劣化が少ない水素中ではオゾンや硝酸が生じない

空気冷却では、コロナ放電でオゾンや窒素酸化物ができます——それが絶縁物を傷めるのです。

水素中には酸素も窒素もない——だから化学反応が起きにくく、絶縁物が長持ちすることになります。

⚠️ よくある間違い
(1)を疑ってしまう——「比重が小さいため風損を減少できる」は正しいのです。
(1)と(4)は似た形の文——「比重が小さい」は正しく、「比熱が小さい」は誤り1文字違いで正誤が変わります
「小さいから〜が向上する」という論法に注意——風損は減らしたいので「小さい」でよい冷却は強めたいので「大きい」が要る求める方向が逆です。
(5)の密封油装置を疑ってしまう——水素は漏れやすいので必須の設備正しい記述です。

⏱️ 本番での進め方
①★比重は小さく、比熱と熱伝導率は大きい。
②「比熱が小さい」と書いてあれば、その時点で誤り。
③(5) 密封油装置は水素漏れを防ぐ。爆発範囲4〜75 %。
④全閉形なので騒音が小さく、絶縁物も劣化しにくい。

💡 覚え方
「軽くて、熱をよく運ぶ」——比重は小さく、比熱は大きいこの2つが水素冷却の理由です。どちらも「小さい」と書いてあったら誤りだと覚えましょう。

タービン発電機が細長い理由は平成24年度 A問題2火力:タービン発電機の特徴)にあります。

正誤判定の進め方

5つのうち、性質を理由に挙げているのは(1)と(4)——そこを比べます

記述挙げている性質判定
(1)比重が小さい → 風損が減る正しい
(2)全閉形 → 騒音が少ない正しい
(3)化学反応しにくい → 絶縁物が劣化しにくい正しい
★(4)★比熱が小さい → 冷却効果が向上★誤り
(5)漏れ防止 → 密封油装置正しい

(1)と(4)は「〜が小さいため」という同じ形——片方が正しく、片方が誤りです。

風損を減らしたいなら「小さい」が望ましい——冷却を強めたいなら「大きい」が望ましい求める方向が逆だと気づけば見抜けます。

水素冷却が採用される容量

容量冷却方式
数万 kW 以下空気冷却
★数万〜数十万 kW★水素冷却
★数十万 kW 以上★水素冷却+固定子巻線の水冷却

大容量になるほど、発熱も大きくなります——気体だけでは冷やしきれないのです。

そこで固定子の巻線を中空にして、水を通す——水は水素よりさらに熱を運べることになります。ただし純水を使う必要があり、設備は複雑です。

水素冷却の運用で気をつけること

性能は優れていますが、扱いには手間がかかります

管理項目内容
★純度★90 % 以上を保つ。下がると爆発範囲に近づく
★圧力★大気圧より高く保つ(外から空気が入らないように)
★密封油の圧力★水素圧より高く保つ
露点水分が入ると絶縁が落ちるので乾燥させる

機内の圧力を大気圧より高くしておく——漏れるとしても内から外へになります。

逆に負圧だと、空気が吸い込まれて爆発範囲に入るおそれ——だから加圧しておくのです。

圧力を上げるほど冷却能力も上がります——安全と性能が、ここでも同じ方向を向いていることになります。

水素ガス置換の手順

操作理由
★①★空気を炭酸ガスで置換する★不活性ガスを挟む
★②★炭酸ガスを水素で置換する★空気と水素を直接混ぜない

空気と水素を直接入れ替えると、必ず爆発範囲を通過します——間に不活性ガスを挟むのです。

抜くときも逆の手順——水素→炭酸ガス→空気と置換していきます。

冷却方式で容量が決まる

タービン発電機の大容量化は、冷却技術の進歩そのものでした。

時代冷却単機容量の目安
初期空気冷却数万 kW
★水素冷却の導入後★水素冷却★数十万 kW
★現在★水素+固定子巻線の水冷却★100万 kW 級

発電機を大きくすると、損失も増えて発熱が集中します——冷やせなければ、それ以上大きくできないのです。

水素冷却は、その壁を破った技術——風損を減らしながら冷却も強められるという2つの利点を同時に持っていたからです。

水素以外の選択肢はなかったのか

気体密度熱伝導率採用
空気11小容量のみ
★水素★1/14★7倍★採用
ヘリウム1/76倍高価で不採用

ヘリウムなら爆発の危険がありません——それでも使われないのは価格です。

水素は水の電気分解でいくらでも作れる——危険を管理してでも使う価値があると判断されているのです。

密封油装置も純度計も、その管理のための設備——本問の(5)は、その一端を述べていることになります。

まとめ

(1)比重小さい→風損が約1/10に減少→正しい
(2)全閉形騒音が少なくなる→正しい
(3)不活性絶縁物の劣化が減少→正しい
(4)比熱大きいから冷却効果が向上(小さいは誤り)→誤り
(5)密封油装置水素の漏れを防止→正しい。答えは(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・水素冷却方式の特徴(火力27・空欄補充版):【電力】平成30年度 A問題1

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成21年度 問題一覧(全4科目)

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