今回は平成23年度 電力科目 B問題15を解説します。定格出力500MW・発電端熱効率40%・重油の発熱量44000kJ/kgの汽力発電所について、(a)1時間の燃料重量と(b)その燃料を完全燃焼させるのに必要な理論空気量を求める問題です。
火力30(平成29年度 B問題15)と同型で、こちらは1時間版。鬼門は同じく(b)で、①molは質量をgに直してから数える ②水素はH₂ 2molにO₂ 1mol ③最後に酸素濃度0.21で割って空気にする——この3点を守れば完答できます。
平成23年度 電力科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題15
電験3種 電力科目 【火力】 平成23年度 B問題15
定格出力500[MW]、定格出力時の発電端熱効率40[%]の汽力発電所がある。重油の発熱量は44000[kJ/kg]で、潜熱の影響は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、重油の化学成分を炭素85[%]、水素15[%]、水素の原子量を1、炭素の原子量を12、酸素の原子量を16、空気の酸素濃度を21[%]とし、重油の燃焼反応は次のとおりである。 C+O₂→CO₂ / 2H₂+O₂→2H₂O
定格出力500[MW]、定格出力時の発電端熱効率40[%]の汽力発電所がある。重油の発熱量は44000[kJ/kg]で、潜熱の影響は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、重油の化学成分を炭素85[%]、水素15[%]、水素の原子量を1、炭素の原子量を12、酸素の原子量を16、空気の酸素濃度を21[%]とし、重油の燃焼反応は次のとおりである。 C+O₂→CO₂ / 2H₂+O₂→2H₂O
(a) 定格出力にて、1時間運転したときに消費する燃料重量[t]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。(1)10 (2)16 (3)24 (4)41 (5)102 t
(b) このとき使用する燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気量※[m³]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、1[mol]の気体標準状態の体積は22.4[l]とする。(※理論空気量:燃料を完全に燃焼するために必要な最小限の空気量(標準状態における体積))
(1)5.28×10⁴ (2)1.89×10⁵ (3)2.48×10⁵ (4)1.18×10⁶ (5)1.59×10⁶ m³

(a) 1時間の燃料重量
★入熱
★約102 t
(b) 理論空気量は mol で数える
気体の体積は、重さではなく分子の数(mol)で決まります——だから mol に直してから体積にします。
① 炭素が必要とする酸素
★g に直してから割る
★1:1 の反応
原子量は「1 mol の質量をグラムで表した数」——だから kg のままでは割れません。
86,930 kg=86,930,000 g——これを12で割ることになります。
② 水素が必要とする酸素
★原子量1×2
★半分
水素は原子量1ですが、分子は H₂ なので2——ここを間違えると2倍ずれます。
そのうえ、反応式では水素2 mol に酸素1 mol——さらに半分になることになります。
③ 空気の体積に直す
★酸素の体積
★最後に割る
最後に0.21で割るのを忘れない——問われているのは酸素ではなく空気の量です。
空気の8割は窒素——燃焼には使われませんが、一緒に送り込むしかないのです。
選択肢(3)の2.48×105 は、酸素だけの体積——0.21で割り忘れた人向けに用意されています。
⚠️ よくある間違い
(b)で kg のまま原子量で割る——1000倍ずれます。原子量は g 単位の話だと押さえましょう。
(b)で水素の分子量を1とする——H₂ なので2。2倍の酸素が必要という誤った結果になります。
(b)で水素の反応比を1:1とする——2H₂+O₂ ですから酸素は水素の半分です。
(b)で0.21で割り忘れる——2.48×105 となって選択肢(3)に一致します。最も多い誤りでしょう。
(b)で0.21を掛けてしまう——空気は酸素より多いので割るのが正解です。
⏱️ 本番での進め方
①★mol=質量[g]÷原子量。kg のままでは割れない。
②★水素は H₂ なので分子量2。さらに反応比で半分。
③22.4 L=0.0224 m³ を掛けて体積に。
④★最後に0.21で割る。忘れると(3)に誘導される。
💡 覚え方
「mol にしてから22.4を掛け、最後に0.21で割る」——3段階です。水素だけは分子量2で、しかも酸素は半分——2つの落とし穴があります。
燃焼反応と CO₂ の計算は令和5年度上期 B問題15(火力:石炭火力の発電端効率とCO₂)にあります。
理論空気量の意味
燃料を完全に燃やすのに必要な、最小限の空気——それが理論空気量です。
| 用語 | 意味 |
| ★理論空気量 | ★完全燃焼に必要な最小限の空気 |
| ★実際空気量 | ★実際に送り込む空気(理論より多い) |
| ★空気比(過剰空気率) | ★実際空気量÷理論空気量 |
| 燃料 | 空気比の目安 | 理由 |
| ★気体燃料 | ★1.05〜1.1 | ★よく混ざる |
| ★液体燃料(重油) | ★1.1〜1.2 | ★霧化して混ぜる |
| ★固体燃料(石炭) | ★1.2〜1.3 | ★粉にしても混ざりにくい |
理論どおりの量では、混ざりむらで燃え残ります——だから多めに送り込むのです。
ただし多すぎると、余分な空気を温めるぶん熱を捨てることになります——排ガス量も増えて効率が落ちるのです。
燃え残りを出さず、かつ無駄も出さない——その折り合いが空気比だと言えます。
この1問で押さえること
(a)は出力を効率で割り、3600を掛け、発熱量で割るだけ——約102 t です。
(b)は mol で数えます——質量[g]÷原子量=mol。kg のままでは1000倍ずれます。
水素は分子が H₂ なので分子量2、しかも酸素は水素の半分——2つの落とし穴があります。
最後に0.21で割って空気の体積に——忘れると選択肢(3)に誘導されます。
計算の全体像
| 順 | やること | 本問の値 |
| ① | 炭素と水素の重量 | 86,930 kg/15,340 kg |
| ② | それぞれ mol に | 7.244×10⁶/7.670×10⁶ mol |
| ③ | 必要な酸素の mol | ★7.244×10⁶/3.835×10⁶ |
| ④ | 合計して22.4 L を掛ける | 2.48×10⁵ m³ |
| ★⑤ | ★0.21で割る | ★1.18×10⁶ m³ |
③で炭素は1:1、水素は2:1——反応式の係数がそのまま比になります。
まとめ
| (a)燃料重量 | 500×10³×3600/(0.40×44000)≒102t→(5) |
| (b)炭素のO₂ | 8.69×10⁷g/12≒7.24×10⁶mol |
| (b)水素のO₂ | 7.67×10⁶molのH₂→半分の3.84×10⁶mol |
| (b)O₂の体積 | 1.11×10⁷×22.4×10⁻³≒2.48×10⁵m³ |
| (b)理論空気量 | 2.48×10⁵/0.21≒1.18×10⁶m³→(4) |
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