今回は平成24年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所の保護装置について誤っているものを選ぶ問題です。★この内容は令和2年度 A問題3・令和7年度下期 A問題3でも出題されており、電験の電力科目で最も再利用されている問題の一つです。
ねらいは毎回同じで「蒸気加減弁」と「安全弁」のすり替え。本問は組合せ形式ではなく誤り1つを直接選ぶ形式なので、蒸気加減弁の記述を見つけたら即答できます。
平成24年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 平成24年度 A問題3
汽力発電所の保護装置に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ボイラ内の蒸気圧力が一定限度を超えたとき、蒸気を放出させ機器の破損を防ぐ蒸気加減弁が設置されている。
ボイラ水の循環が円滑に行われないとき、水管の焼損事故を防止するため、燃料を遮断してバーナを消火させる燃料遮断装置が設置されている。
蒸気タービンの回転速度が定格を超える一定値以上に上昇すると、自動的に蒸気止弁を閉じて、タービンを停止する非常調速機が設置されている。
蒸気タービンの軸受油圧が異常低下したとき、タービンを停止させるトリップ装置が設置されている。
発電機固定子巻線の内部短絡を検出・保護するために、比率差動継電器が設置されている。

誤りは(1):蒸気を放出するのは安全弁
蒸気加減弁はタービンへ送る蒸気量を調整する弁——圧力を逃がす装置ではありません。
| ★蒸気加減弁 | ★安全弁 | |
| 目的 | ★出力の調整 | ★圧力超過の防止 |
| 動くとき | ★通常運転中 | ★異常時のみ |
| 蒸気の行き先 | ★タービンへ | ★大気へ放出 |
| 操作 | ★調速機が連続的に動かす | ★ばねの力で自動的に開く |
加減弁を閉じても、ボイラの圧力は下がりません——むしろ行き場を失って上がるのです。
だから逃がす専用の弁が別に要る——それが安全弁になります。
この設問は繰り返し出題されている
まったく同じ内容が、複数の年度で問われています。
| 年度 | 出題形式 | 誤り/不適切の箇所 |
| ★平成24年度 A3(本問) | ★5つの記述から誤りを選ぶ | ★(1) 蒸気加減弁 |
| ★令和7年度下期 A3 | ★a)〜e)の適切/不適切の組合せ | ★c) 蒸気加減弁 |
記述の文面もほとんど同じ——「蒸気を放出させて機器の破損を防ぐ」という一句が共通です。
形式が変わっても、問われている知識は同じ——一度覚えれば、どの形で出ても解けます。
逆に言えば、ここを落とすと繰り返し失点する——確実に押さえておきたいところです。
保護装置は連鎖して動く
1つの異常が、いくつもの動作を引き起こします——インターロックと呼ばれる仕組みです。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★異常を検出(回転速度上昇・油圧低下など) |
| ② | ★蒸気止弁が閉じてタービンが停止 |
| ③ | ★発電機が系統から切り離される |
| ④ | ★ボイラの蒸気が行き場を失う |
| ⑤ | ★安全弁・逃がし弁が開いて圧力を逃がす |
| ⑥ | ★燃料が絞られる、または遮断される |
タービンを止めれば、それで終わりではありません——ボイラは火が入ったままだからです。
だから安全弁で圧力を逃がしつつ、燃料も絞る——一連の動作が自動で行われることになります。
本問の5つの装置は、それぞれこの連鎖の一部を担っています——単独ではなく、組み合わさって発電所を守るのです。
⚠️ よくある間違い
(1)の後半だけを読んで正しいと判断する——「蒸気を放出させ機器の破損を防ぐ」は安全弁の説明として正しいのです。
誤りは装置名だけ——働きの説明が正しいので、読み流すと気づけません。
(2)の「燃料遮断装置」を疑ってしまう——正しいのです。水管の焼損を防ぐには、まず火を消すのが確実です。
(3)(4)(5)もすべて標準的な保護装置——非常調速機・軸受油圧トリップ・比率差動継電器。5つのうち1つだけが誤りという構成です。
装置名と働きの対応を確かめるのが、この型の解き方になります。
⏱️ 本番での進め方
①★蒸気を放出するのは安全弁。加減弁は出力調整。
②装置名は正しくても、働きが違えば誤り。
③★同じ設問が令和7年度下期にも出ている。
④(2)〜(5)はすべて標準的な保護装置。
💡 覚え方
「加減弁は送る、安全弁は逃がす」——蒸気の行き先が違います。加減弁はタービンへ、安全弁は大気へ——そう考えれば取り違えません。
同じ内容が令和7年度下期 A問題3(火力:汽力発電所の保護装置)にあります。出題形式が違うだけです。
正誤判定の進め方
5つとも「〜のため、〜が設置されている」という同じ形——装置名と働きの対応を確かめます。
| 記述 | 装置 | 説明されている働き | 判定 |
| ★(1) | ★蒸気加減弁 | ★蒸気を放出して圧力超過を防ぐ | ★誤り(安全弁) |
| (2) | 燃料遮断装置 | バーナを消火して水管を守る | 正しい |
| (3) | 非常調速機 | 蒸気止弁を閉じて過速度を防ぐ | 正しい |
| (4) | トリップ装置 | 軸受油圧低下でタービンを停止 | 正しい |
| (5) | 比率差動継電器 | 発電機の内部短絡を検出 | 正しい |
(1)の説明文だけを取り出せば、まったく正しい——安全弁の定義そのものです。
だから装置名のほうを疑う——「この働きをするのは本当にこの装置か」と問い直すのが解き方になります。
逆に(3)(4)(5)は、装置名と働きがきれいに対応しています——疑う余地がありません。
ボイラの保護をもう少し詳しく
(2)の燃料遮断は、いくつもの条件で働きます。
| 検出するもの | 危険な状態 |
| ★ドラム水位の異常低下 | ★蒸発管が空焚きになる |
| ★全火炎喪失(失火) | ★未燃の燃料が炉内に溜まり、爆発のおそれ |
| ★通風機の停止 | ★燃焼用空気が来ない |
| 燃料圧力の異常 | 安定した燃焼ができない |
いずれも「まず火を消す」ことで被害を防ぎます——熱の供給を止めるのが最も確実だからです。
失火時に燃料を送り続けると、炉内に可燃ガスが充満します——再点火した瞬間に爆発する——炉内爆発と呼ばれる重大事故です。
だから失火を検出したら、即座に燃料を遮断し、炉内を換気(パージ)してから再点火する——手順が厳格に決められています。
保護装置の全体像
汽力発電所の保護は、守る対象で3つに分かれます。
| 対象 | 主な保護 | 本問 |
| ★ボイラ | ★安全弁・燃料遮断装置・ドラム水位 | ★(1)(2) |
| ★タービン | ★非常調速機・軸受油圧トリップ・振動 | ★(3)(4) |
| ★発電機 | ★比率差動・地絡・界磁喪失・逆電力 | ★(5) |
5つの記述が、3つの対象をきれいに網羅しています——よくできた出題だと言えます。
ボイラは「熱の暴走」、タービンは「回転の暴走」、発電機は「電気の異常」——守るべきものが違えば、検出するものも違うのです。
どこから止めるか
異常の種類によって、止め方の順序が変わります。
タービン側の異常なら、まず蒸気を止める——回転を落とすのが先です。
ボイラ側の異常なら、まず火を消す——熱の供給を断つのが先になります。
いずれの場合も、その後に残る蒸気の圧力を安全弁で逃がす——装置が連鎖して働くことになります。
だから安全弁は「最後の砦」——他のすべてが働いた後でも、圧力だけは物理的に逃がさなければならないのです。
その役目を蒸気加減弁が担えないのは、行き先がタービンだから——タービンが止まっている以上、そこへは送れません。大気へ逃がす弁が別に要る理由がここにあります。
安全弁の設置場所
| 場所 | ねらい |
| ★ドラム | ★ボイラ本体の圧力を守る |
| ★過熱器出口 | ★過熱器の管を守る(先に開くよう設定) |
| 再熱器 | 再熱蒸気系統を守る |
過熱器出口の安全弁は、ドラムのものより低い圧力で開くよう設定されます——先に蒸気を流して、過熱器の管を冷やし続けるためです。
蒸気が流れなくなると、過熱器の管は炉の熱で焼けてしまいます——圧力を逃がすだけでなく、流れを保つ役目も持っているのです。
まとめ
| (1)蒸気加減弁 | 蒸気を放出するのは安全弁→誤り |
| (2)燃料遮断装置 | 循環不良時にバーナ消火→正しい |
| (3)非常調速機 | 定格超過の速度上昇で蒸気止弁を閉鎖→正しい |
| (4)トリップ装置 | 軸受油圧の異常低下で停止→正しい |
| (5)比率差動継電器 | 固定子巻線の内部短絡を検出→正しい。答えは(1) |
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