今回は平成28年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所のボイラ及びその付属設備について、蒸気ドラム・節炭器・空気予熱器・通風装置・安全弁の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。
ねらいは節炭器の「飽和温度以上」という一語。節炭器はあくまで給水の予熱装置で、加熱するのは飽和温度以下まで。飽和温度を超えると節炭器の管内で蒸気が発生してしまい(スチーミング)、水の流れが乱れて危険です。
平成28年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 平成28年度 A問題3
汽力発電所のボイラ及びその付属設備に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
蒸気ドラムは、内部に蒸気部と水部をもち、気水分離器によって蒸発管からの気水を分離させるものであり、自然循環ボイラ、強制循環ボイラに用いられるが貫流ボイラでは必要としない。
節炭器は、煙道ガスの余熱を利用してボイラ給水を飽和温度以上に加熱することによって、ボイラ効率を高める熱交換器である。
空気予熱器は、煙道ガスの排熱を燃焼用空気に回収し、ボイラ効率を高める熱交換器である。
通風装置は、燃焼に必要な空気をボイラに供給するとともに発生した燃焼ガスをボイラから排出するものである。通風方式には、煙突だけによる自然通風と、送風機を用いた強制通風とがある。
安全弁は、ボイラの使用圧力を制限する装置としてドラム、過熱器、再熱器などに設置され、蒸気圧力が所定の値を超えたときに弁体が開く。

誤りは(2):節炭器は飽和温度まで温めない
「飽和温度以上に加熱する」——飽和温度以下でなければなりません。
| ★正しい動作 | 飽和温度を超えると | |
| 節炭器の中の水 | ★液体のまま温まる | ★沸騰して蒸気が混じる |
| 管の中の流れ | ★安定している | ★気泡で乱れる |
| 管の温度 | ★水が熱を運び去る | ★局所的に過熱して傷む |
節炭器は蒸発させる装置ではありません——あくまで給水を予熱する装置です。
蒸発させるのは、火炉の中の蒸発管(水冷壁)の役目——役割が違います。
管の中で沸騰が始まると、気泡が壁に張りつきます——気体は熱を伝えにくいので、そこだけ管が過熱するのです。
だから節炭器の出口温度は、飽和温度より数十 ℃ 低く抑えられます。
(4) 通風方式の分類
燃焼用空気を送り、燃焼ガスを排出する仕組みです。
| 方式 | 仕組み | 炉内の圧力 |
| ★自然通風 | ★煙突の高さと温度差だけで通風する | 大気圧よりわずかに低い |
| ★押込通風 | ★押込通風機で空気を送り込む | ★大気圧より高い(正圧) |
| ★誘引通風 | ★誘引通風機でガスを吸い出す | ★大気圧より低い(負圧) |
| ★平衡通風 | ★押込と誘引の両方を使う | ★ほぼ大気圧に保つ |
大容量のボイラでは、煙突だけでは足りません——送風機を使う強制通風になります。
平衡通風なら、炉内をほぼ大気圧に保てる——高温ガスの吹き出しも、空気の漏れ込みも防げるのです。
だから大型機では平衡通風が使われます——問題文の(4)は、自然通風と強制通風という大きな分け方を述べたものです。
(5) 安全弁の設置場所
| 場所 | 守るもの | 設定圧力 |
| ★ドラム | ★ボイラ本体 | 最も高い |
| ★過熱器出口 | ★過熱器の管 | ★最も低い(先に開く) |
| ★再熱器 | ★再熱蒸気系統 | 系統に応じて設定 |
過熱器の安全弁が最初に開くよう設定されています——蒸気を流し続けて管を冷やすためです。
過熱器は火炉に近い高温部にあります——蒸気が流れなくなると、すぐに焼損するのです。
圧力を逃がすだけでなく、流れを保つ役目も持っている——設定圧力の順序には、そうした意味があることになります。
⚠️ よくある間違い
(1)の貫流ボイラの記述を疑ってしまう——「貫流ボイラでは必要としない」で正しいのです。
貫流ボイラでは1本の管を通る間に全部が蒸気になります——分離すべき水が残らないので、ドラムが要りません。
(3)の空気予熱器も正しい——「煙道ガスの排熱を燃焼用空気に回収」そのままです。
(2)と(3)を見比べる——どちらも煙道の余熱回収装置ですが、(2)だけが「飽和温度以上」という踏み込んだ記述をしています。そこが怪しいと読めるでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★節炭器は給水を飽和温度「以下」まで温める。
②理由:沸騰すると気泡で管が局所過熱する。
③(4) 通風は自然通風と強制通風(押込・誘引・平衡)。
④(5)★過熱器の安全弁が先に開く。管を冷やし続けるため。
💡 覚え方
「節炭器は温めるだけ、蒸発させない」——蒸発させるのは火炉の蒸発管です。沸騰すると気泡が管を焼く——だから飽和温度より低く抑えます。
ボイラ設備は令和3年度 A問題3(火力:ボイラ設備)、平成23年度 A問題2(火力:ボイラ設備の説明)にあります。
正誤判定の進め方
5つとも設備の説明——踏み込んだ記述がどこかを探します。
| 記述 | 設備 | 判定 |
| (1) | 蒸気ドラム(貫流では不要) | 正しい |
| ★(2) | ★節炭器(飽和温度以上) | ★誤り |
| (3) | 空気予熱器 | 正しい |
| (4) | 通風装置 | 正しい |
| (5) | 安全弁 | 正しい |
(2)だけが温度について具体的に述べています——他の4つは役割を述べるにとどまるのです。
踏み込んだ記述ほど、誤りを仕込みやすい——そこに目を留めるのが解き方になります。
水が温まっていく順序
| 場所 | 温度の目安 | 状態 |
| 復水器出口 | 33 ℃ | 飽和水 |
| 給水加熱器の後 | 250 ℃ 前後 | 圧縮水 |
| ★節炭器の出口 | ★飽和温度より数十 ℃ 低い | ★まだ水のまま |
| 蒸発管 | 飽和温度 | ★ここで蒸発する |
節炭器を出た水は、まだ沸騰していません——蒸発はドラムと蒸発管の役目です。
役割の境目がはっきりしている——だから「飽和温度以上」という記述は成り立たないのです。
節炭器の設計上の制約
なぜ飽和温度まで温めてはいけないのか、もう少し詳しく見ましょう。
| 現象 | 起きること | 結果 |
| ★管内で沸騰が始まる | ★気泡が管壁に付着する | ★そこだけ熱が伝わらない |
| ★気泡が成長する | ★管壁が水に触れなくなる | ★局所的に過熱する |
| ★流れが脈動する | ★水と蒸気が交互に流れる | ★振動や熱疲労 |
気体は液体より熱を伝えにくい——気泡が張りつくと、その部分の管が冷やされなくなるのです。
だから出口温度は飽和温度より数十 ℃ 低く設計されます——沸騰させないことが安全上の条件になります。
節炭器という名前の由来
エコノマイザ(economizer)の訳語——「節約する装置」という意味です。
石炭を焚いていた時代に、燃料を節約する装置として名付けられました——だから「節炭器」。
いまは石炭に限らず使われますが、名前だけが残っている——「炭を節約する」と覚えれば、給水を温める装置だと思い出せます。
この1問で押さえること
節炭器は給水を飽和温度より低い温度まで温めます——「飽和温度以上」は誤りです。
沸騰すると気泡が管壁に張りついて熱が伝わらなくなり、局所的に過熱する——だから沸騰させないのです。
蒸発させるのは火炉の蒸発管(水冷壁)の役目——役割の境目がはっきりしています。
残る4つの記述
| 記述 | 要点 |
| (1) | ★貫流ボイラにはドラムも気水分離器も不要 |
| (3) | 空気予熱器は煙道ガスで燃焼用空気を温める |
| (4) | ★通風は自然通風と強制通風(押込・誘引・平衡) |
| (5) | ★安全弁はドラム・過熱器・再熱器に設置 |
4つとも、装置の役割を素直に述べた記述——疑う余地がありません。
(2)だけが温度について具体的に踏み込んでいる——そこに誤りが仕込まれていると読めるでしょう。
節炭器の位置づけをもう一度
ボイラの中で水が通る順序は「節炭器 → ドラム → 蒸発管」——節炭器はいちばん手前です。
そこはガスの温度がすでに下がった低温側——飽和温度まで持ち上げるだけの熱量がそもそもありません。
位置からしても「予熱する装置」だと分かる——役割と配置は対応しているのです。
まとめ
| (1)蒸気ドラム | 汽水分離。貫流ボイラでは不要→正しい |
| (2)節炭器 | 加熱は飽和温度以下まで。「以上」は管内蒸発を招く→誤り |
| (3)空気予熱器 | 排熱を燃焼用空気に回収→正しい |
| (4)通風装置 | 自然通風と強制通風→正しい |
| (5)安全弁 | 所定の圧力を超えると弁体が開く→正しい。答えは(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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