理論は他の3科目すべての土台です。ここが崩れると、機械の等価回路も、電力の送電計算も、法規の施設管理計算も、理屈ではなく暗記になってしまいます。遠回りに見えても、最初に理論を固めるのがいちばん速い道です。
この記事では、当サイトが平成18年度〜令和7年度の24回分・理論科目432問すべてを分野別に分類した実データをもとに、どこから手をつけるべきかを整理します。
理論科目はどんな試験か
| 項目 | 内容 |
| 試験時間 | 90分 |
| 問題数 | 18問(A問題14問+B問題4問(うち2問選択)) |
| 1問あたり | 約5.0分 |
| 合格基準 | 100点満点中60点以上(難易度により調整あり) |
| 出題範囲 | 電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測 |
公式の問題作成方針では、理論科目は電気に関する基本物性や計測技術に関する理解と分析力を問う。とされています。
分野別の出題数——ここに偏りがある

| 分野 | 問題数 | 割合 |
| 静電界 | 69問 | 16.0% |
| 直流回路 | 66問 | 15.3% |
| 単相交流 | 60問 | 13.9% |
| 磁気・電磁力 | 56問 | 13.0% |
| 電気及び電子計測 | 43問 | 10.0% |
| 電子回路 | 41問 | 9.5% |
| 半導体 | 27問 | 6.2% |
| 過渡現象 | 24問 | 5.6% |
| 三相交流 | 24問 | 5.6% |
| 電子の運動 | 22問 | 5.1% |
| 合計 | 432問 | 100% |
上位4分野で251問/432問=58%。
上位4分野で全体の約6割。静電界・直流回路・単相交流・磁気電磁力を固めれば、合格基準の60点に手が届く計算になります。
この順番で手をつける
1. 直流回路(66問・15.3%)
オームの法則・キルヒホッフ・分圧分流・テブナンの定理。回路を読む力そのものなので、ここから始める。
2. 静電界(69問・16.0%)
クーロンの法則・電界と電位・コンデンサ。式の形が磁気とそっくりなので、次の磁気が楽になる。
3. 磁気・電磁力(56問・13.0%)
静電界と対で覚える。電磁力とフレミングの法則は機械の全分野に効く。
4. 単相交流(60問・13.9%)
ベクトル図・複素数・共振・電力(有効/無効/皮相)。機械と電力の計算はここの延長にある。
残りの分野は、この4〜5分野が固まってから広げれば十分です。60点で合格できる試験なので、薄い分野を完璧にするより、厚い分野を落とさないほうが得点に直結します。
つまずきやすいところ
複素数が出てくると手が止まる
電験3種の複素数は「直角三角形の計算」です。j は「90度回す記号」だと割り切って、まずベクトル図を描いてから式にすると詰まりにくくなります。
ベクトル図が描けない
描く順番を固定します。直列回路なら電流を基準(横向き)に、並列回路なら電圧を基準に取る。この2つだけ決めておけば迷いません。
過渡現象が苦手
出題は年24問中1問程度。時定数 τ=L/R、τ=CR と、「最終値の63.2%に達する時間」だけ押さえれば十分戦えます。
本番の時間配分
⏱️ 本番での進め方
A問題14問を1問4分で56分、B問題4問(うち2問選択)に30分。残り4分で見直し。計算量が多いので、手が止まった問題は印を付けて即座に飛ばすこと。
理論科目は90分で18問。1問あたり約5.0分です。公式の問題作成方針でも「1問あたり概ね5分から10分程度以内」で解ける設計だと明記されています。詰まった問題は必ず飛ばす——これだけで数点変わります。
捨ててよい分野の考え方
電子の運動(22問・5.1%)と半導体(27問・6.2%)は、配点の割に覚えることが多い分野です。時間がないときは後回しにして、上位4分野と電気計測を確実にするほうが得点は伸びます。
⚠️ よくある間違い
「捨てる」は手をつけないではなく後回しにするという意味です。本番で出たら消去法で拾いにいけるよう、用語だけは眺めておくと期待値が上がります。
再出題が多いことを利用する
当サイトで理論科目432問を突き合わせたところ、92問(21%)に過去の類題・同一問題がありました。公式の問題作成方針にも「必要に応じ、過去の出題からの試験問題構成を行う」と書かれています。
つまり過去問は傾向をつかむ道具ではなく、そのまま本番に出る可能性のある問題です。回し方は過去問は何年分を何周する?にまとめました。
理論でよく使う式
この科目の計算問題は、次の式でほぼ足ります。分野を横断して繰り返し使うものだけを挙げました。
| 用途 | 式 |
| オームの法則 | \( V = RI \) |
| 合成抵抗 | 直列 \(R_1+R_2\)/並列 \(\dfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\) |
| テブナンの定理 | \( I = \dfrac{E_0}{R_0+R} \) |
| 静電容量 | \( C = \dfrac{\varepsilon S}{d} \)(直列・並列は抵抗と逆) |
| 静電エネルギー | \( W = \tfrac{1}{2}CV^{2} \) |
| 直線電流の磁界 | \( H = \dfrac{I}{2\pi r} \) |
| 電磁力 | \( F = BIL \)(フレミング左手) |
| 実効値 | 最大値 ÷ \(\sqrt{2}\) |
| リアクタンス | \( X_L = \omega L \)、\( X_C = \dfrac{1}{\omega C} \) |
| 共振周波数 | \( f = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}} \) |
| 交流電力 | \( P = VI\cos\theta \) |
| 時定数 | \( \tau = \dfrac{L}{R} \)、\( \tau = CR \) |
静電界と磁気は式の形がそっくりです。クーロン力・電界・電位の3本を静電界で覚えたら、磁気は同じ形に読み替えるだけで済みます。
💡 覚え方
式を覚えるときは、単位で検算する癖をつけると取り違えが減ります。たとえば水力の \(P = 9.8QH\eta\) は[m³/s]×[m] に 9.8[m/s²] を掛けて [kW] になる、と単位で追えば係数の位置を間違えません。
本番で「捨てる」判断のしかた
60点で合格できる試験なので、解けない問題を抱え込まないことが得点につながります。判断は次の順でします。
⏱️ 本番での進め方
1. 問題文を読んで30秒で方針が立つか判断する
2. 立たなければ印を付けて飛ばす(考え込まない)
3. 全問に目を通し終えてから、飛ばした問題に戻る
4. 戻っても方針が立たない問題は、消去法で選択肢を2つに絞って決め打つ
5. 空欄では出さない(五肢択一なので期待値がある)
五肢択一なので、まったく分からなくても20%の期待値があります。選択肢を2つに絞れれば50%です。捨てる=空欄にする、ではありません。
⚠️ よくある間違い
いちばん多い失点が時間切れで最後の数問を読めなかったというものです。
前半の難問に10分使うと、後半の解けるはずの問題が2問消えます。難問を1問取るより、易しい問題を2問確実に取るほうが点になります。
まとめ
・理論科目は90分18問。1問あたり約5.0分
・上位4分野で全体の58%を占める
・その4分野を固めれば合格基準の60点が見えてくる
・432問中92問に類題・同一問題がある
・詰まった問題は飛ばす。60点で合格できる試験である

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