火力48【電験3種 電力】電気集じん器の帯電は「負イオン」!LNG・脱硫・脱硝の環境対策 平成22年度 A問題2 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成22年度 A問題2 ばいじんは負に帯電する!脱硫・脱硝も総点検

今回は平成22年度 電力科目 A問題2を解説します。火力発電所の環境対策について、LNGの使用・排煙脱硫装置・酸素濃度の低下・電気集じん器・排煙脱硝装置の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。

ねらいは電気集じん器のイオンの極性。放電電極から放出されるのは負イオンで、粒子を負に帯電させて正極側の集じん電極(平板)で捕まえます。「正イオン」と書かれていたら誤りです。

目次

平成22年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成22年度 A問題2 問題文
平成22年度 電力科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2

電験3種 電力科目 【火力】 平成22年度 A問題2

 火力発電所の環境対策に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

燃料として天然ガス(LNG)を使用することは、硫黄酸化物による大気汚染防止に有効である。
排煙脱硫装置は、硫黄酸化物を粉状の石灰と水との混合液に吸収させ除去する。
ボイラにおける酸素濃度の低下を図ることは、窒素酸化物低減に有効である。
電気集じん器は、電極に高電圧をかけ、ガス中の粒子をコロナ放電で放電電極から放出される正イオンによって帯電させ、分離・除去する。
排煙脱硝装置は、窒素酸化物を触媒とアンモニアにより除去する。

答え誤っている記述は (4)——「正イオン」を「負イオン」に直せば正しくなります

誤りは(4):帯電させるのは負イオン

電気集じん器の放電電極は、負の高電圧をかけるのがふつうです。

★負コロナ(実際)正コロナ
放電電極の極性★負(−)正(+)
生じるイオン★負イオン正イオン
火花放電までの余裕★大きい(高い電圧をかけられる)小さい
用途★工業用の集じん空気清浄機など

負コロナのほうが、火花放電に移るまでの電圧の余裕が大きい——より高い電圧をかけられるのです。

電界が強いほど微粒子が速く集まります——だから工業用では負コロナを使うことになります。

帯電した粒子は負なので、正極である集じん電極(平板)へ引き寄せられる——平板側は接地されているのがふつうです。

火力発電所の環境対策3本柱

対象対策方法本問
★SOx(硫黄酸化物)★燃料転換・排煙脱硫★LNG を使う/石灰スラリーで吸収★(1)(2)
★NOx(窒素酸化物)★低NOx 燃焼・排煙脱硝★酸素濃度を下げる/アンモニアと触媒★(3)(5)
★ばいじん★電気集じん★コロナ放電で帯電させて捕集★(4)

5つの記述が、3つの対象をきれいに網羅しています——環境対策の全体像を問う出題です。

(1) LNG が硫黄酸化物に有効な理由

天然ガスには硫黄分がほとんど含まれていません——そもそも SOx が生じないのです。

燃料硫黄分脱硫装置
★LNG★ほぼ零★不要
重油0.1〜3 %必要
石炭0.3〜1 %必要

そもそも出さないのが最も確実な対策——後から取り除くより効率がよいのです。

液化する過程で不純物が取り除かれる——LNG がきれいな燃料だとされる理由でもあります。

(2) 排煙脱硫のしくみ

石灰石こう法
\( \mathrm{SO_2}+\mathrm{CaCO_3}+\tfrac{1}{2}\mathrm{O_2}+2\mathrm{H_2O}\rightarrow\mathrm{CaSO_4\cdot 2H_2O}+\mathrm{CO_2} \)

SO₂ を石こうに変えて回収する

石灰石と水の混合液(スラリー)に排ガスを通します——SO₂ が吸収されて石こうになるのです。

できた石こうは、石こうボードなどの建材に使われます——捨てるのではなく資源として回収することになります。

(3)(5) NOx への2段構え

段階方法内容
★燃焼の工夫★二段燃焼・排ガス再循環・低NOx バーナ★酸素濃度と燃焼温度を下げて発生を抑える
★排煙脱硝★アンモニア接触還元(SCR)★出てしまった NOx を窒素と水に戻す
アンモニア接触還元
\( 4\mathrm{NO}+4\mathrm{NH_3}+\mathrm{O_2}\rightarrow 4\mathrm{N_2}+6\mathrm{H_2O} \)

触媒の上でアンモニアと反応させる

NOx は窒素と酸素が結びついたもの——アンモニアで還元すれば、無害な窒素と水に戻せるのです。

まず出さない工夫をし、それでも出た分を処理する——2段構えが基本になります。

⚠️ よくある間違い
(3)の「酸素濃度の低下」を疑ってしまう——正しいのです。
サーマル NOx は、高温で窒素と酸素が結びついてできます——酸素が少なければ生成も減ることになります。
ただし少なすぎると不完全燃焼を起こします——ばいじんや一酸化炭素が増えるので、加減が難しいところです。
(4)の「コロナ放電」「高電圧」は正しい——誤りは「正イオン」だけ1語の違いを見抜く問題です。

⏱️ 本番での進め方
①★電気集じん器は負イオンで帯電させる。
②理由:負コロナのほうが高い電圧をかけられる。
③SOx は LNG と脱硫、NOx は燃焼工夫と脱硝、ばいじんは集じん。
④★脱硫は石灰石で石こうに、脱硝はアンモニアで窒素に。

💡 覚え方
「負コロナで負に帯電させ、正の平板へ引き寄せる」——極性の流れです。環境対策は SOx・NOx・ばいじんの3本柱——それぞれ対策が対応しています

電気集じん装置の構造は令和3年度 A問題4火力:電気集じん装置)にあります。

正誤判定の進め方

5つとも環境対策の記述——細かい語句まで確かめます

記述対象判定
(1)SOx(LNG)正しい
(2)SOx(脱硫)正しい
(3)NOx(酸素濃度)正しい
★(4)★ばいじん(集じん)★「正イオン」が誤り
(5)NOx(脱硝)正しい

(4)は「電極に高電圧」「コロナ放電」「分離・除去」——ほとんどが正しいのです。

誤りは「正イオン」という1語だけ——読み流すと気づけません

細かい語句が1つだけ違う型は、他の4つが確実に正しいと分かれば消去法でも解けます

ばいじんの捕集後

灰の種類どこで生じるか用途
★フライアッシュ★集じん装置で捕集される微細な灰★セメント混和材・コンクリート
クリンカアッシュ火炉の底に落ちる粗い灰路盤材など

捕集した灰は、そのまま捨てるわけではありません——大半が資源として使われています

集じん装置は「大気を守る装置」であると同時に、「資源を回収する装置」でもあると言えるでしょう。

排煙処理設備の配置

3つの装置は、煙道の中で順序が決まっています

装置ガス温度その位置の理由
★①★脱硝装置★350 ℃ 前後★触媒が働く温度が高い
空気予熱器下がっていく余熱を回収
★③★電気集じん装置★150 ℃ 前後★電極の耐熱と灰の抵抗率
★④★脱硫装置★さらに低温★水を使うので最後

脱硝が最も上流——触媒が働くには高い温度が要るからです。

脱硫は最も下流——スラリー(水)を使うので、ガスを冷やしてからになります。

集じんはその間——灰を先に取っておかないと、脱硫装置が汚れるのです。

湿式と乾式

方式脱硫の仕組み特徴
★湿式(石灰石こう法)★スラリーに吸収させる★脱硫率が高い(90 % 以上)。主流
乾式粉末の吸収剤を吹き込む排水処理が不要だが効率は劣る

本問の(2)は湿式の説明——「粉状の石灰と水との混合液」がスラリーです。

できた石こうを回収するので、廃棄物も出ません——だから主流になっているのでしょう。

この1問で押さえること

電気集じん器は、負コロナで生じた負イオンによって微粒子を帯電させます——「正イオン」は誤りです。

負コロナのほうが火花放電までの余裕が大きく、高い電圧をかけられる——電界が強いほど微粒子が速く集まるからです。

環境対策の対応表

物質発生源対策
★SOx★燃料中の硫黄分★LNG へ転換/排煙脱硫(石灰石こう法)
★NOx★高温での窒素と酸素の反応★低NOx 燃焼/排煙脱硝(アンモニア接触還元)
★ばいじん★燃料中の灰分★電気集じん装置

SOx は「燃料しだい」、NOx は「燃やし方しだい」——発生源が違うので対策も違います

LNG に替えれば SOx はほぼ零になりますが、NOx は出ます——空気中の窒素が原因だからです。

まとめ

(1)LNG硫黄分をほぼ含まずSOx対策に有効→正しい
(2)排煙脱硫装置石灰と水の混合液でSOxを吸収→正しい
(3)酸素濃度の低下NOx低減に有効→正しい
(4)電気集じん器帯電させるのは負イオン(正イオンではない)→誤り
(5)排煙脱硝装置触媒とアンモニアでNOxを除去→正しい。答えは(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・火力発電所の環境対策(火力29・同テーマ):【電力】平成29年度 A問題3

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成22年度 問題一覧(全4科目)

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