電験3種の受験生の皆さん、こんにちは。今回は、機械科目の最重要分野の一つである「誘導機」の計算問題について、スライド資料を使って徹底解説します。
取り上げるのは、令和5年度上期 機械科目 問4 です 。 この問題は、誘導電動機のトルク計算の基礎が詰まった良問です。公式の暗記だけでなく、「回転速度」と「同期速度」の関係を正しく理解しているかが問われます。
問題の概要と条件整理 [Page 1-3]


まず、今回の問題を確認しましょう。
問題文の要約: 定格出力 $36 \text{ kW}$、定格周波数 $60 \text{ Hz}$、8極のかご形三相誘導電動機があります 。これが滑り $4\%$ で定格運転しているときのトルク $[N\cdot m]$ を求めます 。

条件の整理: 計算ミスを防ぐために、与えられた数値を整理し、単位を基本単位(Wなど)に直すことが第一歩です 。
- 定格出力 ($P_o$): $36 \text{ kW} \rightarrow 36,000 \text{ W}$ (※ここ重要!kWのまま計算しないこと)
- 極数 ($p$): $8$
- 周波数 ($f$): $60 \text{ Hz}$
- 滑り ($s$): $4\% \rightarrow 0.04$
現象のイメージ:トルクは「ズレ」から生まれる [Page 4]

計算に入る前に、誘導機の回転イメージを持ちましょう。
誘導機には2つの速度があります。
- 同期速度 ($N_s$): 固定子がつくる磁界の回転速度 。
- 回転速度 ($N$): 回転子(ローター)の実測速度 。
この2つの速度には「滑り ($s$)」という差があります 。この回転の「ズレ」があるからこそ、トルクが発生するという仕組みを理解しておきましょう 。
ステップ1:同期速度と角速度の導出 [Page 5]

それでは計算に入ります。まずは磁界の速度である「同期速度」を求めます。
同期速度 $N_s$ の計算:
$$N_s = \frac{120f}{p}$$
$$N_s = \frac{120 \times 60}{8} = 900 \text{ min}^{-1}$$
重要:角速度 $\omega_s$ への変換 トルク計算の公式では、回転数($min^{-1}$)ではなく、角速度($rad/s$)を使うのが一般的です。ここで変換しておきましょう 。
$$\omega_s = \frac{2\pi N_s}{60}$$
$$\omega_s = \frac{2\pi \times 900}{60} = 30\pi \approx 94.25 \text{ rad/s}$$
ステップ2:実際の回転速度を求める [Page 6]

次に、実際に回っている回転子の速度($\omega$)を求めます。 回転子は、滑り ($s$) の分だけ、同期速度よりも遅く回っています 。
回転速度 $\omega$ の計算:
$$\omega = \omega_s(1 – s)$$
$$\omega = 94.25 \times (1 – 0.04)$$
$$\omega = 94.25 \times 0.96 \approx 90.48 \text{ rad/s}$$
つまり、磁界は $100\%$ の速度で回っていますが、回転子は $96\%$ の速度で追いかけているイメージです 。
ステップ3:トルクの導出と解答 [Page 7-8]

準備が整いました。いよいよトルク $T$ を求めます。 「出力 = トルク × 角速度」という基本関係式を使います 。
トルク $T$ の計算:
$$P_o = T \times \omega$$
$$T = \frac{P_o}{\omega}$$
数値を代入します。出力 $P_o$ は $36,000$、回転速度 $\omega$ は $90.48$ です。
$$T = \frac{36,000}{90.48} \approx 397.88 \text{ N}\cdot\text{m}$$

計算結果 $397.88$ に最も近い選択肢は (2) 398 となります 。
別解:二次入力(同期ワット)を用いた解法 [Page 9]

実は、もう一つスマートな解き方があります。出力ではなく「二次入力 ($P_2$)」に着目する方法です。
誘導機におけるパワーフロー(エネルギーの流れ)の比率は以下のようになります。
$$P_2 : P_m : P_{c2} = 1 : (1-s) : s$$
※ $P_2$:二次入力、 $P_m$:機械的出力($P_o$)、 $P_{c2}$:二次銅損
この比率を使って、まず二次入力 $P_2$ を求めます。
$$P_2 = \frac{P_o}{1-s} = \frac{36,000}{0.96} = 37,500 \text{ W}$$
この $P_2$(同期ワット)を、同期角速度 $\omega_s$ で割ることでトルクが求まります。
$$T = \frac{P_2}{\omega_s} = \frac{37,500}{94.25} \approx 397.88 \text{ N}\cdot\text{m}$$
どちらの計算ルートを通っても、同じ答えにたどり着きます。
注意:試験で陥りやすい「ペアリングの罠」 [Page 10]

この問題には、多くの受験生が引っかかる「罠」が仕掛けられています。
正しいペア:
- 出力 ($P_o$) $\div$ 実回転速度 ($\omega$)
- 二次入力 ($P_2$) $\div$ 同期角速度 ($\omega_s$)
誤った計算(よくある間違い):
出力 ($P_o$) を、誤って同期角速度 ($\omega_s$) で割ってしまう計算です。
$$36,000 \div 94.25 = 382$$
恐ろしいことに、この誤答「382」は、選択肢(1)として用意されています 。 「公式には当てはめたはずなのに間違えた」という事態を防ぐため、「出力は実速度とペア、入力は同期速度とペア」という原則を徹底しましょう。
重要公式まとめ [Page 11]

最後に、本問で使った重要公式をまとめます 。これらを組み合わせて使いこなすことが合格への鍵です。
- 同期速度: $N_s = \frac{120f}{p}$
- 同期角速度: $\omega_s = \frac{2\pi N_s}{60}$
- 回転速度: $\omega = \omega_s(1-s)$
- トルク: $T = \frac{P_o}{\omega} = \frac{P_2}{\omega_s}$
基本公式の組み合わせで確実に解ける問題ですので、ぜひマスターしてください!



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