今回は、電験3種 機械科目 令和2年度 問3「三相かご形誘導電動機の等価回路定数の測定」に関する問題の解説をしていきます。この問題は、誘導機の特性を理解する上で欠かせない3つの基本試験(一次抵抗測定、無負荷試験、拘束試験)の目的と方法を正確に覚えているかが問われる、非常に重要な問題です。
電験3種 機械 令和2年度 問3 問題文


問題文(テキスト)
問3 三相かご形誘導電動機の等価回路定数の測定に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,等価回路としては一次換算した一相分の簡易等価回路(L形等価回路)を対象とする。
- (1) 一次巻線の抵抗測定は静止状態において直流で行う。巻線抵抗値を換算するための基準巻線温度は絶縁材料の耐熱クラスによって定められており,75℃や115℃などの値が用いられる。
- (2) 一次巻線の抵抗測定では,電動機の一次巻線の各端子間で測定した抵抗値の平均値から,基準巻線温度における一次巻線の抵抗値を決められた数式を用いて計算する。
- (3) 無負荷試験では,電動機の一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して無負荷運転し,一次側において電圧[V],電流[A]及び電力[W]を測定する。
- (4) 拘束試験では,電動機の回転子を回転しないように拘束して,一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して通電し,一次側において電圧[V],電流[A]及び電力[W]を測定する。
- (5) 励磁回路のサセプタンスは無負荷試験により,一次二次の合成漏れリアクタンスと二次抵抗は拘束試験により求められる。
誘導電動機のL形等価回路とは?3つの試験で定数を求めよう

誘導電動機の特性を分析するために、実際の電動機を電気回路に置き換えたものを「等価回路」と呼びます。このL形等価回路の各定数(抵抗やリアクタンス)を求めるために、以下の3つの試験が行われます。
- 一次巻線抵抗測定:一次巻線の抵抗 r₁ を求めます。
- 無負荷試験:励磁コンダクタンス g₀ と励磁サセプタンス b₀ を求めます。
- 拘束試験:一次と二次の漏れリアクタンスの合計 x₁+x₂’ と、二次抵抗 r₂’ を求めます。
それぞれの試験が、回路のどの部分の定数を求めているのか、全体像を把握することが大切です。
ステップ1:一次巻線抵抗測定(直流抵抗測定法)

最初のステップは、一次巻線の抵抗 r₁ を測定します。この試験のポイントは「静止状態」で「直流」を流して測定する点です。交流を流すとリアクタンスの影響が出てしまうため、純粋な抵抗値を測るために直流が用いられます。
また、測定した抵抗値は、基準となる温度(例えば75℃や115℃)における値に換算する必要があります。基準巻線温度は絶縁材料の耐熱クラスによって定められており、換算式を用いて計算します。
$$ r_{1(\text{ref})} = r_{1(\text{meas})} \times \frac{234.5 + \theta_{\text{ref}}}{234.5 + \theta_{\text{meas}}} $$ここで、\( \theta_{\text{ref}} \) は基準巻線温度(℃)、\( \theta_{\text{meas}} \) は測定時の巻線温度(℃)です。
ステップ2:無負荷試験(励磁回路の定数を求める)

次に、無負荷試験です。これは電動機を無負荷(空転)状態で運転し、「定格周波数・定格電圧」を印加して行います。無負荷時は滑り s がほぼ0に近いため、二次電流がほとんど流れず、等価回路の二次側は開放されていると考えることができます。
この試験で一次側の電圧 \( V_{0} \)、電流 \( I_{0} \)、電力 \( P_{0} \) を測定し、以下の式から励磁回路の定数を求めます。
$$ g_0 = \frac{P_0}{V_0^2}, \quad b_0 = \sqrt{\left(\frac{I_0}{V_0}\right)^2 – g_0^2} $$励磁コンダクタンス \( g_{0} \) は鉄損に対応し、励磁サセプタンス \( b_{0} \) は磁化電流に対応します。
ステップ3:拘束試験(漏れリアクタンスと二次抵抗を求める)

最後は拘束試験です。回転子を文字通り「拘束」して動かないように固定(滑り s=1)して行います。このとき、二次側が短絡された状態と等価になります。
この試験で最も重要なポイントは、「低電圧」を印加し、一次電流が「定格値」になるように調整する点です。一次側の電圧 \( V_{s} \)、電流 \( I_{s} \)、電力 \( P_{s} \) を測定し、以下の式から短絡インピーダンスを求めます。
$$ r_s = r_1 + r_2′ = \frac{P_s}{I_s^2}, \quad x_s = x_1 + x_2′ = \sqrt{\left(\frac{V_s}{I_s}\right)^2 – r_s^2} $$解答のポイント:拘束試験で定格電圧を印加してはいけない理由

今回の問題の核心部分です。選択肢(4)では「拘束試験では、電動機の回転子を回転しないように拘束して、一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して通電し…」とありますが、これは明確な誤りです。
もし拘束状態で定格電圧を印加してしまうと、回路のインピーダンスが非常に小さいため、電動機の巻線に定格電流をはるかに超える過大な電流が流れてしまいます。これにより、巻線が焼損する危険性が非常に高く、絶対に行ってはいけません。
正しくは、一次電流が定格値になるように、低い電圧から徐々に調整して印加します。拘束試験時の印加電圧は定格電圧の数十分の一程度の低電圧です。
全選択肢の正誤まとめ:正解は(4)

以上の解説から、各選択肢の正誤は以下のようになります。
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| (1) | 一次巻線の抵抗測定は静止状態において直流で行う。基準巻線温度は絶縁材料の耐熱クラスによって定められており、75℃や115℃などの値が用いられる。 | ✓ 正しい |
| (2) | 一次巻線の各端子間で測定した抵抗値の平均値から、基準巻線温度における一次巻線の抵抗値を決められた数式を用いて計算する。 | ✓ 正しい |
| (3) | 無負荷試験では、電動機の一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して無負荷運転し、一次側において電圧[V]、電流[A]及び電力[W]を測定する。 | ✓ 正しい |
| (4) | 拘束試験では、電動機の回転子を回転しないように拘束して、一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して通電し、一次側において電圧[V]、電流[A]及び電力[W]を測定する。 | ✗ 誤り(定格電圧ではなく低電圧!) |
| (5) | 励磁回路のサセプタンスは無負荷試験により、一次二次の合成漏れリアクタンスと二次抵抗は拘束試験により求められる。 | ✓ 正しい |
したがって、この問題の正解は(4)です。
3つの試験の重要ポイント比較|電験3種 機械科目 試験対策

最後に、3つの試験のポイントを表で整理しておきましょう。特に「電圧」と「状態」の違いをしっかり区別して覚えることが、類似問題を解く上での鍵となります。
| 試験名 | 回転子の状態 | 印加電圧 | 求められる定数 |
|---|---|---|---|
| 一次巻線抵抗測定 | 静止 | 直流(低電圧) | 一次抵抗 \( r_1 \) |
| 無負荷試験 | 無負荷回転(空転) | 定格周波数・定格電圧 | 励磁コンダクタンス \( g_0 \)、励磁サセプタンス \( b_0 \) |
| 拘束試験 | 拘束(固定) | 定格周波数・低電圧 | 漏れリアクタンス \( x_1+x_2′ \)、二次抵抗 \( r_2′ \) |
この機会にしっかりマスターしておきましょう!電験3種の機械科目では、誘導電動機に関する問題が毎年出題されています。等価回路定数の測定方法は基礎知識として確実に押さえておきましょう。

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