#42【電験3種 機械】平成29年度 問3 徹底解説|誘導機の電力フローと滑り・発電機運転の原理

電験3種 機械科目 平成29年度 問3 表紙 - 誘導機の電力フローと滑り

今回は、電験3種 機械科目の平成29年度 問3を徹底解説します。この問題は、誘導機の「二次入力」「電力分配の法則」「滑りと運転モードの関係」という3つの重要概念を理解しているかを問う良問です。特に、滑りが負になる「発電機」としての運転は、多くの受験者が苦手とするポイントです。この記事では、スライドを使ってエネルギーの流れ(電力フロー)を視覚的に追いながら、一つ一つの概念を丁寧に解き明かしていきます。

目次

H29 機械 問3 問題文の確認

電験3種 機械 平成29年度 問3 問題文 - 誘導機の二次入力、機械出力と二次銅損の比、滑りと運転モードに関する空欄補充問題

まずは問題文を確認しましょう。誘導機の二次入力、電力の比率、そして特定の滑りの範囲における運転状態に関する空欄(ア)〜(エ)を埋める問題です。

誘導機の二次入力は(ア)とも呼ばれ、トルクに比例する。二次入力における機械出力と二次銅損の比は、誘導機の滑りをsとして(イ)の関係にある。この関係を用いると、二次銅損は常に正であることから、sが-1から0の間の値をとるとき機械出力は(ウ)となり、誘導機は(エ)として運転される。

この問題を解く鍵は、3つのコア概念にあります。

問題の解体・3つのコア概念 - (1)トルクの定義 (2)電力分配の法則 (3)滑りと運転モード

H2-1.(ア)の攻略:二次入力の別名「同期ワット」とは?

(ア)の攻略:二次入力の別名 - P2 = ω0 * T の公式解説

最初の空欄(ア)は、二次入力の定義に関する問題です。誘導機の二次入力 \( P_2 \) は、同期角速度 \( \omega_0 \) とトルク \( T \) の積で表されます。

\[ P_2 = \omega_0 \times T \]

この式が意味するのは、「もし回転子が同期速度で回転したと仮定した場合、そのトルクTを生み出すために必要な電力をワット[W]で表現したもの」ということです。ここから、二次入力は別名「同期ワット」と呼ばれます。

H3-1-1. なぜトルクに同期角速度を掛けるのか?

電力[W]は、角速度[rad/s]とトルク[N・m]の積で計算できます(P = ωT)。誘導機において、固定子(ステータ)が作る回転磁界の速度が同期速度です。この回転磁界が回転子にエネルギーを渡すため、基準となる速度は同期速度 \( \omega_0 \) となります。そのため、トルク \( T \) に同期角速度 \( \omega_0 \) を掛けることで、回転子に渡される電力、すなわち二次入力 \( P_2 \) を表現できるのです。

H2-2.(イ)の攻略:誘導機のエネルギーフローと電力分配の法則

(イ)の攻略:誘導機のエネルギーフロー - P2:Po:Pc2 = 1:(1-s):s のサンキーダイアグラム

次に空欄(イ)です。これは誘導機の電力フローにおける最も重要な関係式です。二次入力 \( P_2 \) は、回転子に渡された後、最終的な「機械的出力 \( P_o \) 」と、回転子巻線で熱として失われる「二次銅損 \( P_{c2} \) 」の2つに分配されます。

この3つの電力の比率は、滑り \( s \) を用いて常に一定の関係になります。

\[ P_2 : P_o : P_{c2} = 1 : (1-s) : s \]

問題文で問われているのは「機械出力と二次銅損の比」なので、上の比率からそのまま抜き出して、\( (1-s) : s \) が答えとなります。

H2-3.(ウ)(エ)の攻略:滑り(s)が負の時の運転モード

最後の空欄(ウ)と(エ)は、滑り \( s \) が負の値(-1から0の間)をとるときの状態を問うています。先ほどの電力分配の法則を使って、機械的出力 \( P_o \) がどうなるか計算してみましょう。

出力(ウ)と運転状態(エ)を導くための立式 - Poの導出過程

比率の関係から、\( s \cdot P_o = (1-s) \cdot P_{c2} \) という式が成り立ちます。これを \( P_o \) について解くと、以下のようになります。

\[ P_o = \frac{1-s}{s} P_{c2} \]

H3-3-1. 機械的出力の符号を調べる(ウ)

(ウ)の攻略:負の滑りがもたらす結果 - Poの符号判定

ここで、問題の条件「sが-1から0の間」を代入して、\( P_o \) の符号を調べてみましょう。例えば \( s = -0.5 \) を代入してみます。

  • 分子 (1-s): \( 1 – (-0.5) = 1.5 \) → プラス(正)
  • 分母 s: \( -0.5 \) → マイナス(負)
  • 二次銅損 \( P_{c2} \): 抵抗で発生するジュール熱なので、常にプラス(正)です。

結果として、\( P_o = \frac{\text{(正)}}{\text{(負)}} \times \text{(正)} \) となり、全体の符号は必ず「負」になります。これが(ウ)の答えです。

H3-3-2. 機械的出力が「負」の意味(エ)

(エ)の攻略:機械的出力が「負」とはどういう意味か? - 電動機と発電機の比較

では、「機械的出力が負」とは、一体どういう状態なのでしょうか?

電動機の場合 (s > 0)

機械的出力は正 (\( P_o > 0 \))。これは、電気エネルギーを消費して、軸を回転させる力(出力)を生み出している状態です。

今回の場合 (s < 0)

機械的出力は負 (\( P_o < 0 \))。これは、出力の向きが逆になった、つまり「機械的な入力」を外部から受けている状態を意味します。外部から軸を強制的に回され、その結果として電気エネルギーを発生させているのです。これはまさに「発電機」の動作です。これが(エ)の答えです。

H2-4. 概念の統合:滑り(s)と誘導機の3つの顔

概念の統合:滑り(s)と誘導機の3つの顔 - 発電機・電動機・制動機の領域

滑り \( s \) の値によって、誘導機は3つの異なるモードで動作します。

  • 発電機 (s < 0): 回転子が同期速度よりも速く、外部から強制的に回されている状態。機械的エネルギーを電気エネルギーに変換します。
  • 電動機 (0 < s < 1): 回転子が回転磁界を追いかけるように、同期速度より少し遅れて回転している状態。電気エネルギーを機械的エネルギーに変換します。
  • 制動機 (s > 1): 回転子が回転磁界とは逆方向に回転している状態。大きなブレーキとして作用します。

H2-5. 補足知識:誘導発電機の系統連系

+α 補足知識:誘導発電機の系統連系 - 励磁電流と無効電力の関係

誘導発電機は、自ら回転磁界を作るための励磁電流を生成できません。そのため、単独では運転できず、必ず電力系統に接続して無効電力を供給してもらう必要があります。この特性は電験3種で頻出の重要ポイントなので、合わせて覚えておきましょう。

H2-6. 最終解答のまとめ

最終解答 - (ア)同期ワット (イ)(1-s):s (ウ)負 (エ)発電機

以上の解説から、各空欄に当てはまる語句は以下の通りです。

  • (ア)同期ワット
  • (イ)(1-s):s
  • (ウ)
  • (エ)発電機

したがって、正しい組み合わせは選択肢(1)となります。

お疲れ様でした。誘導機のエネルギーフローは一見複雑に見えますが、\( P_2 : P_o : P_{c2} = 1 : (1-s) : s \) の黄金比さえ覚えてしまえば、多くの問題に対応できます。今回の問題を機に、ぜひマスターしてください。

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