電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「比例推移で挿入抵抗を求める」問題は巻線形誘導電動機の代表的な計算パターンです。本記事では、平成22年度 A問題4「回転速度を1 200 min⁻¹にするための二次挿入抵抗」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
使う式は比例推移 \( \dfrac{r_2}{s_1} = \dfrac{r_2 + R}{s_2} \) ただ一つ。目標の滑り \( s_2 \) さえ出せば、あとは分数方程式を解くだけです。
平成22年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成22年度 A問題4
極数 4 で 50 Hz 用の巻線形三相誘導電動機があり、全負荷時の滑りは 4 %である。全負荷トルクのまま、この電動機の回転速度を 1 200 min⁻¹ にするために、二次回路に挿入する 1 相当たりの抵抗 [Ω] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、巻線形三相誘導電動機の二次巻線は星形(Y)結線であり、各相の抵抗値は 0.5 Ω とする。
(1) 2.0 (2) 2.5 (3) 3.0 (4) 7.0 (5) 7.5
出題のポイント:使う式は1本だけ
比例推移の計算問題は、式を1本立てれば終わります。難しいのは式ではなく、目標の滑りを正しく出すことです。

3ステップで解く
4極・50 Hz。60 Hz と読み違えないこと。
1 200 min−1 にしたいということは、滑り0.20 で運転するということ。
滑りが0.04→0.20 と5倍なので、総抵抗も5倍の2.5 Ω。
答えるのは「挿入分」であって「総抵抗」ではない。


選択肢の正体
| 選択肢 | そう出る計算 | どこを間違えたか |
| (1) 2.0 | 2.5 − 0.5 | 正解 |
| (2) 2.5 | 0.5 × 5 | 総抵抗をそのまま答えた(最頻の誤り) |
| (3) 3.0 | 0.5 × 6 | 滑り比を6倍と誤った |
| (4) 7.0 | 7.5 − 0.5 | 60 Hz として Ns=1 800 で計算(s=1/3) |
| (5) 7.5 | 0.5 × 15 | 同上で、しかも総抵抗のまま |
(4)(5)は「60 Hz と思い込んだ場合」の答えです。Ns=1 800 とすると s2=(1800−1200)/1800=1/3 で15倍——問題文の「50 Hz 用」を読み飛ばすと、この2つに吸い込まれます。
(2)は「総抵抗と挿入抵抗の取り違え」で、この型の問題で最も多い誤りです。計算の最後に「引き算がもう1回要らないか」を確認する習慣をつけてください。
一般式にしておくと速い
「5倍にしたいなら元の4倍を足す」——引き算が式の中に組み込まれているので取り違えようがない。
この形で覚えておくと、(2)のような取り違えが構造的に起きなくなります。「滑りを k 倍にしたいなら、外部抵抗は r2 の (k−1) 倍」——覚えるならこの一文です。
この運転で、どれだけの電力を捨てているのか
滑り0.20 で運転するということは、二次入力の20 % を熱にしているということです。具体的な数字で見てみましょう。
仮にこの電動機の二次入力が10 kW だったとします(トルク一定なら同期ワット=二次入力も一定です)。
| 抵抗なし(s=0.04) | 抵抗挿入後(s=0.20) | |
| 二次入力 P2 | 10 kW | 10 kW(トルク一定なので同じ) |
| 二次銅損 sP2 | 0.4 kW | 2.0 kW |
| うち回転子内部(0.5 Ω 分) | 0.4 kW | 0.4 kW |
| うち外部抵抗器(2.0 Ω 分) | — | 1.6 kW |
| 機械出力 (1−s)P2 | 9.6 kW | 8.0 kW |
| 回転速度 | 1 440 min−1 | 1 200 min−1 |
速度を17 % 落とすために、1.6 kW を抵抗器で捨てている——これが二次抵抗による速度制御の代償です。熱くなるのは外部抵抗器なので機械は焼けませんが、電気代はそのまま出ていきます。
抵抗の配分は抵抗値の比そのままです。0.5 Ω : 2.0 Ω=1 : 4 ですから、2.0 kW のうち0.4 kW が回転子内部、1.6 kW が外部抵抗器——4/5 は機外で捨てられているので、電動機自体の温度上昇は抑えられます。
「熱を機外で出せる」ことが巻線形の長所でもあります。かご形で一次電圧制御をすると、同じ熱が回転子の中で出てしまい冷やせません——同じ「滑りを捨てる」制御でも、捨てる場所が違えば使える範囲が変わるのです。
⏱️ 本番での進め方
① 式は r2/s1=(r2+R)/s2 の1本。または R=r2(s2/s1−1)。
② 「50 Hz 用」を読み落とさない。60 Hz と思うと(4)(5)へ吸い込まれる。
③ 答えるのは挿入分。総抵抗2.5 Ω をそのまま書くと(2)。
④ 倍率で検算:滑り5倍 ⇒ 総抵抗も5倍。
抵抗を入れると、速度が負荷で動きやすくなる
本問は「全負荷トルクのまま」という条件で解きました。では、負荷が変わったらどうなるのか——ここに二次抵抗制御のもう一つの弱点があります。
トルクは r2/s で決まるのですから、抵抗が大きいほど、同じトルク変化に対する滑りの変化も大きくなります。
| 負荷トルク | 抵抗なし(r2=0.5 Ω) | 抵抗挿入後(合計2.5 Ω) |
| 全負荷 | s=0.04(1 440 min−1) | s=0.20(1 200 min−1) |
| 半負荷 | s=0.02(1 470 min−1) | s=0.10(1 350 min−1) |
| 無負荷 | s≒0(1 500 min−1) | s≒0(1 500 min−1) |
| 全負荷→無負荷の速度変化 | 60 min−1(4 %) | 300 min−1(20 %) |
抵抗を入れた状態では、負荷が抜けると一気に1 500 min−1 まで戻ってしまいます。速度変動率が4 % から20 % へ跳ね上がる——定速度電動機だったものが、変速度電動機になってしまうのです。
だから二次抵抗による速度制御は「負荷が安定している用途」に限られます。クレーンの巻下げのように負荷(荷の重さ)が決まっている場面では問題ありませんが、負荷が刻々変わる用途では速度が定まりません。
インバータならこの問題は起きません。同期速度そのものを下げているので、滑りは元のまま小さく、速度変動率も定格のままです。「滑りを大きくして減速する」方式と「同期速度を下げて減速する」方式の、もう一つの決定的な違いがここにあります。
💡 覚え方
「r2/s=一定——滑り k 倍なら総抵抗も k 倍、答えは挿入分だけ」。一般式は R=r2(s2/s1−1)で、「k 倍にしたいなら (k−1) 倍を足す」。滑り0.20 での運転は二次入力の20 % を熱にしているが、その4/5 は外部抵抗器=機外で捨てられる。
⚠️ よくある間違い
総抵抗2.5 Ω をそのまま答える(選択肢(2))のが最頻の誤りです。問われているのは「挿入する抵抗」——一般式 R=r2(s2/s1−1) で解けば構造的に防げます。もう一つは「50 Hz 用」を見落として Ns=1 800 とすることです。

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