誘導機19【電験3種 機械】V/f一定制御と電流特性とは?平成26年 A問題4 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成26年度 A問題4 周波数を下げたら電圧も下げる!V/f制御の理由

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「V/f一定制御と電流特性」は計算不要で得点できるボーナス問題の代表格です。本記事では、平成26年度 A問題4「電圧と周波数を共に10 %下げたときの電流」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

トルクの比例式 \( T \propto VI_2/f \) に「Vもfも0.9倍」を入れると、0.9が分母分子で約分されて消えます。トルク一定なら電流は100 Aのまま——それが答えです。

目次

平成26年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成26年度 A問題4 問題文(三相かご形誘導電動機のV/f一定制御と電流)
平成26年度 機械科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成26年度 A問題4

一般的な三相かご形誘導電動機がある。出力が大きい定格運転条件では、誘導機の等価回路の電流は、「二次電流≫励磁電流」であるから、励磁回路を省略しても特性をほぼ表現できる。さらに、「二次抵抗による電圧降下≫その他の電圧降下」となるので、一次抵抗と漏れリアクタンスを省略しても、おおよその特性を検討できる。

このような電動機でトルク一定負荷の場合に、電流 100 A の定格運転から電源電圧と周波数を共に 10 %下げて回転速度を少し下げた。このときの電動機の電流の値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 80  (2) 90  (3) 100  (4) 110  (5) 120

🔁 再出題情報
本問とほぼ同じ文面・同じ論理の問題が令和7年度上期 A問題4(誘導機18)で再出題されました(100 A・10 %→80 A・5 %に数値変更のみ)。確実に得点源にしましょう。

出題のポイント:長い前置きは「簡易回路で解け」という合図

問題文の前半は、まるまる解法のヒントです。「励磁回路を省略してよい」「一次抵抗と漏れリアクタンスも省略してよい」——出題者が「単純な比例式だけで考えなさい」と指示してくれています

簡易化したあとのトルク

\( T=\dfrac{P_2}{\omega_s}\propto\dfrac{V I_2}{f} \)  (\( \omega_s=\dfrac{4\pi f}{p}\propto f \))

二次入力は電圧×電流、同期角速度は周波数に比例——この形にしてしまえば、あとは代入するだけです。

🔁 再出題情報
本問とほぼ同じ文面・同じ論理の問題が令和7年度上期 A問題4(誘導機18)で再出題されました(100 A・10 %→80 A・5 %に数値変更のみ)。確実に得点源にしましょう。
Vとfをともに0.9倍にすると磁束と定トルク電流が変わらず100アンペアとなる解法図
V/f一定では磁束が一定となり、同じトルクなら電流も変わりません。

0.9 が約分されて消える

\( T\propto\dfrac{V I_2}{f} \)
❶ 変形後のトルク
分子に V、分母に f。
\( T\’\propto\dfrac{(0.9V)\,I_2\’}{0.9f}=\dfrac{V I_2\’}{f} \)
❷ 10 % 下げて代入
0.9 が分子と分母で打ち消し合う
\( T\’=T \;\Rightarrow\; I_2\’=I_2=100\ \mathrm{A} \)
❸ トルク一定なら
電流は変わらない
答え電動機の電流は 100 A(変わらない) ⇒ (3)
変更前のVとf、変更後の0.9Vと0.9fを比較しV/f一定と磁束一定を示す図
電圧と周波数を同率で下げることがV/f一定制御の条件です。
平成26年度機械A問題4でTがVI2割るfに比例する式から電流100アンペアを導く計算図
0.9倍の電圧と周波数が約分され、正解は(3)100 Aです。

別の見方:磁束が変わらないから電流も変わらない

式を使わずに、物理だけで同じ結論に到達できます。

磁束と電圧・周波数

\( \phi\propto\dfrac{V}{f} \)  \( T\propto\phi I_2 \)

V も f も0.9倍なら V/f は不変——磁束が変わりません

トルクは「磁束×二次電流」です。磁束が同じでトルクも同じなら、二次電流も同じでなければ辻褄が合いません——それだけの話です。

「V/f 一定=磁束一定=トルク特性そのまま」——この一行がインバータ制御の全体像でもあります。周波数を変えて速度を変えても、電動機から見れば「いつもと同じ磁束、いつもと同じ電流」で回っているのです。

回転速度はどれだけ下がったのか

問題文は「回転速度を少し下げた」としか書いていませんが、実はきれいな結果が出ます

磁束が一定で二次電流も一定ということは、二次側に誘導される起電力 sE2 も一定だということです。E2 は周波数に比例して0.9倍になったのですから——

\( s\’\times 0.9E_2=s\times E_2 \;\Rightarrow\; s\’=\dfrac{s}{0.9} \)
❶ 滑りは大きくなる
電圧が下がった分、滑りが増えて釣り合う
\( s\’f\’=\dfrac{s}{0.9}\times0.9f=sf \)
滑り周波数は一定
これがV/f 一定制御の本質
\( N_s-N=s\,N_s=\dfrac{120\,(sf)}{p}=\text{一定} \)
❸ 同期速度からの遅れも一定
遅れ回転数が変わらない
定格(50 Hz)10 % 下げた後(45 Hz)
同期速度 Ns(4極)1 500 min−11 350 min−1
滑り s0.030.0333
遅れ回転数 Ns−N45 min−145 min−1(同じ)
回転速度 N1 455 min−11 305 min−1

回転速度は150 min−1 下がりましたが、これは同期速度の低下分(1 500→1 350)そのものです。「同期速度からの遅れ」は45 min−1 のまま変わっていません

V/f 一定制御では、周波数をいくつにしても「遅れ回転数」が一定に保たれる——だから同期速度を平行移動させるだけで速度を制御できるのです。問題文の「回転速度を少し下げた」という表現は、この平行移動を指しています

★再出題:令和7年度上期 A問題4

この問題は令和7年度上期 A問題4として、文面も論理もほぼそのまま再出題されています。変わったのは数値だけです。

平成26年度 A問題4(本問)令和7年度上期 A問題4
定格電流100 A80 A
下げる割合10 %5 %
答え100 A(変わらない)80 A(変わらない)

何 % 下げようが、電流は変わりません。V/f を保つ限り、割合は答えに影響しないのですから当然です。「数値を変えても答えの構造が変わらない」という、再出題しやすい問題だと言えます。

逆に言えば、この型を一度理解しておけば、次にどんな数値で出ても即答できます。過去問演習の価値を象徴するような1問です。

⏱️ 本番での進め方
長い前置きは解法のヒント——「省略してよい」と書いてあれば省略する。
T∝VI2/f。V と f が同率で変われば約分されて消える。
物理でも同じ:V/f 一定=磁束一定 ⇒ 同じトルクなら同じ電流。
「何 % 下げるか」は答えに影響しない。数値を変えた再出題に強くなる。

電流は同じでも、出力と効率は変わる

電流が100 A のまま変わらない——では、電動機が出している仕事や損失はどうなっているのでしょうか。

定格(50 Hz)10 % 下げた後(45 Hz)変化
トルク定格定格(同じ)
電流100 A100 A(同じ)
回転速度1 455 min−11 305 min−1約0.90倍
機械出力(P=Tω)定格約0.90倍減る
銅損(∝I2定格定格(同じ)
鉄損定格少し減る(周波数が下がるため)減る

出力は約1割減ったのに、銅損は変わっていません。だから効率はわずかに下がります——「V/f 一定なら効率もそのまま」ではないことに注意してください。

電動機の発熱で見ると、事情はもっと厳しくなります。銅損が同じだけ出ているのに、回転が遅くなって冷却ファンの風量が落ちるからです。軸に直結したファンで自己冷却している電動機では、低速で連続運転すると温度が上がります

インバータで大幅に減速して長時間運転する場合、別電源の外部ファンを付けるのが実務での対策です。「電流が同じだから大丈夫」とは言えない——本問の結論は、そこまで含めて理解しておく価値があります

💡 覚え方
「V/f 一定=磁束一定=トルク特性そのまま=定トルクなら電流不変」T∝VI2/f——分母の f は ωs∝f から来ているV/f 一定制御では滑り周波数 sf が一定に保たれるので、同期速度からの遅れ回転数も一定——速度特性が平行移動する

⚠️ よくある間違い
「電圧が10 % 下がったのだから電流も10 % 下がって90 A」とするのが最頻の誤りです(選択肢(2))。周波数も同時に下がっていることを見落としています。もう一つは「トルクが一定なら電力も一定だから電流は増える」と考えること——速度が下がっているので電力は減っています

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