電験三種の機械科目、特に誘導機の計算問題で「等価回路が複雑で時間が足りない」と悩んでいませんか?
実は、平成26年度 問4のような「V/f一定制御」に関する問題は、複雑な計算を一切せずに、物理的なイメージ(直感)だけで解くことができるボーナス問題です。
今回は、計算機を使わずに論理だけで正解を導くプロセスを、スライドを使って詳細に解説します。
問題の概要と「省略」のヒント(Page 1 – 2)

Page 1: 今回のテーマは「V/f = Constant」
今回のテーマは、インバータ制御などで用いられる**「V/f一定制御(電圧・周波数比一定制御)」**です 。この言葉を聞いて「難しそう」と身構える必要はありません。むしろ、この法則を知っているだけで計算が劇的に楽になります。
Page 2: 問題文に隠された「計算不要」のサイン

まずは問題文を読み解きましょう。
一般的な三相かご形誘導電動機において、以下の条件が与えられています。
- 省略条件: 「二次電流 ≫ 励磁電流」および「二次抵抗の電圧降下 ≫ その他」のため、励磁回路、一次抵抗、漏れリアクタンスをすべて省略して考えることができます 。
- 運転条件: 電流100Aの状態から、電源電圧($V$)と周波数($f$)を共に10%下げて運転しました 。
- 負荷条件: トルク一定負荷です 。
このとき、変化後の電流がいくらになるかを問われています。(1)~(5)の選択肢には80Aから120Aまで並んでいますが、果たして計算結果はどうなるでしょうか 。
等価回路のモデル化と公式の導出(Page 3 – 6)

Page 3 – 4: 等価回路を極限までシンプルにする

問題文の「省略してよい」という言葉を回路図に翻訳してみましょう 。 通常のL形等価回路から、励磁回路($g_0, b_0$)や一次側のインピーダンス($r_1, x_1$)を取り除きます 。+2
すると、回路は電源$V$と二次抵抗 $\frac{r_2′}{s}$ だけの非常に単純な直列回路になります 。 ここでは、電流$I$は以下のオームの法則だけで近似できます 。+1
$$I \approx \frac{V}{r_2’/s}$$
Page 5: トルクと二次入力の関係

次に、トルク$T$を数式で表します。 二次入力$P_2$(電気的エネルギー)は、この簡易回路では $P_2 = 3 \times V \times I$ と表せます(力率はほぼ1とみなします) 。
一方、トルク$T$(機械的エネルギー)は、二次入力を同期角速度$\omega_s$で割ったものです 。
$$T = \frac{P_2}{\omega_s}$$
Page 6: 重要公式「トルクの比例関係」の導出

ここで重要なのは、同期速度$\omega_s$が周波数$f$に比例するということです 。 先ほどの式を組み合わせると、以下の**「重要公式」**が導かれます。
$$T = \frac{3VI}{\omega_s} \propto \frac{V \cdot I}{f} = \left( \frac{V}{f} \right) \cdot I$$
つまり、トルクは「V/f」と「電流 I」の積に比例するのです 。
条件適用と驚きの結論(Page 7 – 8)

Page 7: 数値をあてはめてみる
導出した比例式 $T \propto \frac{V}{f} \times I$ に、今回の変更条件(10%ダウン)を適用します。
- 変化前: トルク$T$、電圧$V$、周波数$f$、電流$I$ 。+1
- 変化後:
- 電圧は $0.9V$ (10%減)
- 周波数は $0.9f$ (10%減)
- トルクは一定(問題条件)
これを式に入れるとどうなるでしょうか?
$$T \propto \frac{0.9V}{0.9f} \times I’$$
分母と分子の $0.9$ がきれいに約分され、$V/f$ の比率は変化前のまま一定であることがわかります 。
Page 8: 最終的な解答

パズルのピースはすべて揃いました。
- トルク $T$ は一定(負荷条件) 。
- $\frac{V}{f}$ も一定(0.9倍同士で相殺) 。
この2つの条件を満たすためには、残る電流 $I$ も「一定」でなければつじつまが合いません 。 したがって、変化後の電流は変化前と同じ 100A となります。 正解は (3) です 。+2
【深掘り】なぜV/f一定制御を行うのか?(Page 9 – 13)

正解は出ましたが、ここからは「なぜそのような制御をするのか」という本質的な部分を解説します。
Page 9 – 10: 磁束を一定に保つための制御

誘導機の磁束 $\Phi$ は、電圧と周波数の比 $\frac{V}{f}$ に比例するという性質があります 。
- もし周波数だけを下げると、$\frac{V}{f}$ が大きくなりすぎて**磁束過多(磁気飽和)**を起こし、過電流や焼損のリスクがあります 。+2
- もし電圧だけを下げると、$\frac{V}{f}$ が小さくなりすぎて**磁束不足(トルク激減)**となり、負荷を回せなくなります 。+2
安全かつ効率的に速度を変えるためには、$\frac{V}{f}$ を一定に保ち、磁束を常に適正値に維持する必要があるのです 。これを実現しているのがインバータ(VVVF)です。+1
Page 11: 回転速度はどうなる?

ちなみに、回転速度 $N$ はどうなるでしょうか? 周波数 $f$ が10%低下すれば、同期速度 $N_s$ も10%低下します 。 トルク一定の場合、すべり $s$ はわずかに増加しますが 、全体としては周波数の低下に伴って回転速度は低下します。これは問題文の「回転速度を少し下げた」という記述と一致しています 。+2
Page 12 – 13: 物理的感覚で「10秒」で解く


最後に、試験本番で役立つ「物理的感覚」を養いましょう。
- V/f一定 $\rightarrow$ 「磁束(力の源)」が一定 。
- トルク一定 $\rightarrow$ 必要な仕事量が一定。
- 力の源が一定で、仕事量も一定なら、流れる電流も変わるはずがない 。
この感覚(Physical Sense)を持っていれば、計算式を立てるまでもなく、問題文を見た瞬間に「電流は変わらないから100A!」と10秒で即答できるようになります 。

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