電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「V/f一定制御と電流特性」はインバータ時代の定番テーマです。本記事では、令和7年度上期 A問題4「電圧と周波数を共に5 %下げたときの電流」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
一見難しそうですが、実は計算らしい計算は不要。トルクの比例式 \( T \propto VI_2/f \) に「Vもfも0.95倍」を入れると0.95が約分されて消え、電流は80 Aのまま——それが答えです。
令和7年度上期 機械科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和7年度上期 A問題4
一般的な三相かご形誘導電動機がある。出力が大きい定格運転条件では、誘導機の等価回路の電流は、「二次電流≫励磁電流」であるから、励磁回路を省略しても特性をほぼ表現できる。さらに、「二次抵抗による電圧降下≫その他の電圧降下」となるので、一次抵抗と漏れリアクタンスを省略しても、おおよその特性を検討できる。
このような電動機でトルク一定負荷の場合に、電流 80 A の定格運転から電源電圧と周波数を共に 5 %下げて回転速度を少し下げた。このときの電動機の電流の値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 72 (2) 76 (3) 80 (4) 84 (5) 88
V/f一定制御と電流特性は平成26年度 A問題4(誘導機19)とほぼ同型のテーマ。セットで解けば確実に得点源になります。
出題のポイント:「変わらない」が答えになる問題
条件が変わったのに答えが変わらない——この型の問題では「本当に何も変わらないのか」を疑って手が止まりがちです。しかし式で確かめれば、迷う余地はありません。
V/f一定制御と電流特性は平成26年度 A問題4(誘導機19)とほぼ同型のテーマ。セットで解けば確実に得点源になります。

0.95 が約分されて消える
0.95 が分子と分母で打ち消し合う。
電流は変わらない。


「何 % 下げるか」は答えに関係しない
この問題の構造で決定的なのは、下げる割合が式から消えてしまうという点です。
| 下げる割合 | 電圧 | 周波数 | V/f | 電流 |
| 5 %(本問) | 0.95V | 0.95f | 不変 | 80 A |
| 10 % | 0.90V | 0.90f | 不変 | 80 A |
| 30 % | 0.70V | 0.70f | 不変 | 80 A |
| 50 % | 0.50V | 0.50f | 不変 | 80 A |
何 % だろうと答えは変わりません。「5 %」という数字は、答えを出すためには不要な情報だということです——問題文の数値を全部使わないと不安になる人ほど、この型で迷います。
ただし極端に下げれば話は別です。周波数を数 % まで下げると、一次抵抗の電圧降下が無視できなくなって磁束が痩せます——V/f 一定制御が成り立たなくなる領域です。本問の5 % や10 % 程度なら、その心配はありません。
回転速度はどう変わったのか
問題文の「回転速度を少し下げた」を、具体的な数字で追ってみましょう。4極・50 Hz・定格滑り3 % の機械だとします。
周波数に比例して下がる。
これは変わらない(滑り周波数が一定だから)。
1 455 → 1 380 で75 min−1 低下。
「同期速度からの遅れ」が45 min−1 のまま変わらないのが、V/f 一定制御の特徴です。トルクが同じなら二次電流も同じ、二次電流が同じなら滑り周波数も同じ——だから遅れ回転数も同じになります。
速度制御の全体像で言えば、トルク−速度曲線が横に平行移動しているということです。曲線の形(傾き)は変わらず、位置だけがずれる——だから低速でも定格と同じトルクを、同じ電流で出せるのです。
★同型問題:平成26年度 A問題4
この問題は平成26年度 A問題4と、文面も論理もほぼ同一です。変わったのは数値だけでした。
| 平成26年度 A問題4 | 令和7年度上期 A問題4(本問) | |
| 定格電流 | 100 A | 80 A |
| 下げる割合 | 10 % | 5 % |
| 答え | 100 A(変わらない) | 80 A(変わらない) |
| 正解の番号 | (3) | (3) |
電流も割合も変えられていますが、答えの構造はまったく同じです。「与えられた電流をそのまま答える」という一点で決着します。
11年ぶりの再出題で、正解の番号まで一致しました。選択肢が「与えられた値」を中央に置いて上下に振る構成なので、並べ替えの余地がなかったとも言えます。
この型を一度理解しておけば、次にどんな数値で出ても即答できます。過去問演習の価値を象徴するような1問です。
⏱️ 本番での進め方
① 「省略してよい」と書かれた前置きは解法の指定。素直に簡易回路で考える。
② T∝VI2/f——V と f が同率で変われば割合は約分されて消える。
③ 「変わらない」を選ぶ勇気。与えられた値がそのまま答えになることもある。
④ 下げる割合は答えに影響しない——数値を変えた再出題に強くなる。
「トルク一定負荷」とは何か——負荷の3分類
本問の「トルク一定負荷」という条件は、答えを決める重要な前提です。負荷には性格の違う3つの型があり、どれかによって話がまったく変わります。
| 負荷の型 | トルクと速度の関係 | 動力と速度の関係 | 代表例 |
| 定トルク負荷 | T=一定 | P∝N | コンベヤ・巻上機・押出機 |
| 二乗低減トルク負荷 | T∝N2 | P∝N3 | 送風機・ポンプ |
| 定出力負荷 | T∝1/N | P=一定 | 巻取機・工作機械の主軸 |
本問は定トルク負荷ですから、速度を下げてもトルクは同じだけ要ります——だから電流も同じだけ必要になるわけです。
送風機・ポンプなら、話は劇的に変わる
もし本問の負荷が送風機やポンプだったら——速度を下げた瞬間に、必要なトルクも電流も激減します。
| 回転速度 | 流量 | 圧力 | 軸動力 | 省エネ効果 |
| 100 % | 100 % | 100 % | 100 % | — |
| 90 % | 90 % | 81 % | 73 % | 27 % 削減 |
| 80 % | 80 % | 64 % | 51 % | 49 % 削減 |
| 50 % | 50 % | 25 % | 13 % | 87 % 削減 |
風量を8割にするだけで、動力は半分になります。ダンパやバルブで絞る従来のやり方では、動力はほとんど減らない(流れを堰き止めているだけなので)のに対し、回転速度を下げれば3乗で効く——これがインバータによる省エネの正体です。
本問が定トルク負荷を扱っているのは、この3乗則を使わせないためでしょう。負荷の型を取り違えると答えがまったく変わる——問題文の「トルク一定負荷」は読み飛ばしてはいけない一語です。
💡 覚え方
「V/f 一定=磁束一定=トルク特性そのまま=定トルクなら電流不変」。T∝VI2/f の分母の f は ωs∝f から来ている。滑り周波数 sf も一定に保たれるので、同期速度からの遅れ回転数も変わらず、トルク−速度曲線が平行移動する。
⚠️ よくある間違い
「電圧が5 % 下がったのだから電流も5 % 下がって76 A」とするのが最頻の誤りです(選択肢(2))。周波数も同時に下がっていることを見落としています。もう一つは「変わらないはずがない」と思い込んで、あえて別の選択肢を選ぶこと——条件変化の問題で「変化なし」が正解になるのは珍しくありません。

コメント