電験3種・機械科目、平成21年度 問15 の解説ブログを作成しました。
この問題は、誘導機の**「トルク計算」と「効率計算」、そして「比例推移」**という3つの重要テーマが組み合わさった良問です。公式の丸暗記では太刀打ちできない「エネルギーの流れ(パワーフロー)」を、スライドに沿ってわかりやすく解説します。
スライド1:平成21年度 問15「誘導機のトルクと効率」の完全攻略

今回のテーマは、三相誘導電動機の「エネルギーフロー(パワーフロー)」です。
公式をただ覚えているだけでは解けない、応用力が試される問題です。しかし、エネルギーがどこから入って、どこで消費され、どう出力されるかという「流れ」さえ見えれば、恐れることはありません。
スライド2:問題文の確認と条件整理

まずは問題文から重要なデータを抜き出しましょう。
問題の概要
- 定格出力:$15 \text{ kW}$
- 定格周波数:$60 \text{ Hz}$
- 極数:$6$極
- 定格運転時の滑り:$5\%$
- (a) このときの発生トルクは?
- (b) トルクが $1/2$ になったときの効率は?(ただし、一次銅損は $250 \text{ W}$、トルクと滑りは比例するものとする)
スライド3:【設問a】トルクを求めるための戦略

トルク $T$ を求める公式はいくつかありますが、最も基本となるのは「出力 $P$」と「角速度 $\omega$」の関係式です。
$$T = \frac{P}{\omega}$$
この公式を使うために、以下の手順で計算を進めます。
- 周波数と極数から同期速度を出す。
- 滑りを考慮して実際の回転速度を出す。
- 回転速度を角速度 ($\text{rad/s}$) に変換する。
- 公式に代入してトルクを求める。
スライド4:ステップ1:回転速度 $N$ を求める

まずは、モーターが1分間に何回転しているか($N$)を求めます。
- 同期速度 $N_s$(理想の回転数)$$N_s = \frac{120f}{p} = \frac{120 \times 60}{6} = 1200 \text{ min}^{-1}$$
- 定格回転速度 $N$(実際の回転数)滑り $s = 0.05$ なので、少し遅くなります。$$N = N_s (1 – s) = 1200 \times (1 – 0.05) = 1140 \text{ min}^{-1}$$
スライド5:ステップ2:角速度 $\omega$ への変換

トルクの計算($T=P/\omega$)で使う速度は、$\text{min}^{-1}$(rpm)ではなく、$\text{rad/s}$(ラジアン毎秒)である必要があります。
$$\omega = \frac{2\pi N}{60}$$
$$\omega = \frac{2\pi \times 1140}{60} \approx 119.38 \text{ rad/s}$$
※ 円周率 $\pi$ は $3.14$ として計算しても良いですが、電卓の $\pi$ キーを使うと誤差が少なくなります。
スライド6:ステップ3:定格トルクの計算(aの解答)

準備が整いました。定格出力 $15 \text{ kW} = 15,000 \text{ W}$ を角速度で割ります。
$$T = \frac{15,000}{119.38} \approx 125.65 \text{ N}\cdot\text{m}$$
選択肢の中で最も近いのは (3) 126 です。これで(a)はクリアです!
スライド7:【設問b】状況変化!トルクが半減すると滑りはどうなる?

ここから設問(b)です。条件が変わります。
「発生トルクが $1/2$ になった」
誘導機の運転範囲(直線部分)では、「トルクは滑りに比例する ($T \propto s$)」 という性質(比例推移)があります。
- トルクが $1/2$ 倍になる $\rightarrow$ 滑り $s$ も $1/2$ 倍になる
$$s’ = 0.05 \times \frac{1}{2} = 0.025$$
新しい滑り $s’ = 2.5\%$ を使って、これからの計算を行います。
スライド8:誘導機のパワーフロー(エネルギーの流れ)を制する

効率を求めるには、「入力」と「出力」が必要です。エネルギーの流れ図(パワーフロー)をイメージしましょう。
- 一次入力 $P_1$: コンセントからの全電力。
- 一次銅損 $P_{c1}$: ここで $250 \text{ W}$ 引かれます。
- 二次入力 $P_2$: 回転子へ渡るパワー。
- 二次銅損 $P_{c2}$: 滑り $s$ の分だけ熱として捨てられます。
- 機械的出力 $P_o$: 残ったエネルギーが仕事になります。
黄金比: $P_2 : P_{c2} : P_o = 1 : s : (1-s)$
スライド9:ステップ1:新しい二次入力 $P_2’$ の導出

まずは、流れの真ん中にある「二次入力(同期ワット)」から攻めます。
二次入力 $P_2$ は、「同期速度で回っていると仮定したときの仕事率 ($P_2 = \omega_s \times T$)」です。
- 同期角速度 $\omega_s = \frac{2\pi \times 1200}{60} \approx 125.66 \text{ rad/s}$
- 新しいトルク $T’ = 62.8 \text{ N}\cdot\text{m}$ ((a)の半分)
$$P_2′ = 125.66 \times 62.8 \approx 7891.4 \text{ W}$$
スライド10:ステップ2:新しい出力 $P_o’$ の算出

二次入力 $P_2’$ のうち、滑り $s’$ の分を捨てた残りが「出力」です。
- 新しい滑り $s’ = 0.025$ (2.5%)
- 仕事になる割合 = $1 – 0.025 = 0.975$ (97.5%)
$$P_o’ = 7891.4 \times 0.975 \approx 7694.1 \text{ W}$$
これが、分子に来る「出力」の値です。
スライド11:ステップ3:一次入力 $P_1’$ の算出

次は、分母に来る「入力」の値です。
全入力 $P_1$ は、「二次入力」に、その手前で失われた「一次銅損」を足し戻せば求まります。
$$P_1′ = P_2′ + P_{c1}$$
$$P_1′ = 7891.4 + 250 = 8141.4 \text{ W}$$
※ $P_{c1} = 250 \text{ W}$ は問題文で与えられた固定値です。
スライド12:最終ステップ:効率の計算(bの解答)

いよいよラストです。効率 $\eta$ を計算します。
$$\eta = \frac{\text{出力}}{\text{入力}} \times 100$$
$$\eta = \frac{7694.1}{8141.4} \times 100 \approx 94.506 \dots \%$$
選択肢の中で最も近いのは (3) 94.5 です。
スライド13:ここで間違える!注意すべきポイント

この問題には2つの罠があります。
- 滑りの変化:トルクが半分になったので、滑りも $0.05$ から $0.025$ に変えて計算する必要があります。定格時の $0.05$ をそのまま使ってはいけません。
- 一次銅損の扱い:通常、銅損は電流の2乗に比例して変化しますが、この問題では「$250 \text{ W}$ であった」と値が指定されています。勝手に計算せず、問題文の指示に従う素直さが求められます。
スライド14:本問の重要公式まとめ

- 同期速度: $N_s = 120f/p$
- トルク: $T = P / \omega$
- 比例推移: $T \propto s$
- パワーフロー比: $P_2 : P_{c2} : P_o = 1 : s : (1-s)$
- 同期ワット: $P_2 = \omega_s T$
これらをセットで覚えておきましょう。
スライド15:合格へのアドバイス

誘導機の計算問題は、数式を暗記するだけでは限界があります。
今回のように、**「エネルギーがどこから入り、どこで熱になり、どこで出力になるか」**というパワーフロー図を頭の中に描けるようになれば、どんな応用問題が出ても怖くありません。
この「イメージする力」こそが、合格への最短ルートです!

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