#61【電験3種 機械】平成20年 問10 過去問解説|誘導電動機の始動とVVVFインバータ制御

電験3種 機械科目 平成20年度 問10 誘導電動機の始動とVVVFインバータ制御 解説スライド表紙

誘導電動機の速度制御について学習していると、「V/f制御」や「VVVFインバータ」といった用語が頻繁に登場します。しかし、「なぜ電圧と周波数の比を一定にする必要があるのか?」「サイリスタとPWM制御の違いは何なのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、電験3種 機械科目 平成20年度 問10の過去問を通じて、誘導電動機の始動とインバータ制御の仕組みを詳しく解説します。この記事を読むことで、V/f制御の目的や、2種類のインバータ制御方式(サイリスタ整流器方式とPWMインバータ方式)の違いを明確に理解できるようになります。

目次

1. 電験3種 機械 平成20年度 問10 問題文

電験3種 機械科目 平成20年度 問題10 問題文前半
電験3種 機械科目 平成20年度 問題10 問題文(前半)
電験3種 機械科目 平成20年度 問題10 問題文後半と選択肢
電験3種 機械科目 平成20年度 問題10 問題文(後半・選択肢)

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

交流電動機を駆動するとき,電動機の鉄心の 〔ア〕 を防ぎトルクを有効に発生させるために,駆動する交流基本波の電圧と周波数の比がほぼ 〔イ〕 になるようにする方法が一般的に使われている。この方法を実現する整流器とインバータによる回路とその制御の組み合わせの例には,次の二つがある。

一つの方法は,一定電圧の交流電源から直流電圧を得る整流器に 〔ウ〕 などを使用して,インバータ出力の周波数に対して目標の比となるように直流電圧を可変制御し,この直流電圧を交流に変換するインバータでは出力の周波数の調整を行う方法である。

また,別の方法は,一定電圧の交流電源から整流器を使ってほぼ一定の直流電圧を得て,インバータでは出力パルス波形を制御することによって,出力の電圧と周波数を同時に調整する方法である。

一定の直流電圧から可変の交流電圧を得るインバータの代表的な制御として, 〔エ〕 制御が知られている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

番号(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)磁気飽和一定ダイオードPWM
(2)振動2乗ダイオードPLL
(3)磁気飽和2乗サイリスタPLL
(4)振動一定サイリスタPLL
(5)磁気飽和一定サイリスタPWM

2. 問題の概要と問われていること

誘導電動機の可変速駆動制御の概要とブロック図
誘導電動機の可変速駆動制御の概要(交流電源→整流器→インバータ→誘導電動機)

この問題のテーマは「誘導電動機の可変速駆動制御」です。特に、電圧と周波数の比を一定に保つ「V/f制御」に関する知識が問われています。

問題文では、V/f制御を実現するための2つの方式が説明されています。方式①は整流器で直流電圧を可変にし、インバータで周波数を調整する方式です。方式②は整流器で一定の直流電圧を作り、インバータで電圧と周波数を同時に制御する方式です。これらの方式の仕組みを理解し、空白の(ア)〜(エ)に適切な語句を当てはめることが目標です。システム全体の流れとしては、「交流電源 → 整流器 → インバータ → 誘導電動機」という順序で電力が変換されていきます。

3. 解説STEP1:なぜV/fを一定にするのか?(ア・イの解説)

誘導電動機の一次誘導起電力と磁束の関係式
一次誘導起電力 E1 と磁束 φ の関係(E1 ∝ f × φ)
V/f制御の基本原理と電圧・周波数の比例グラフ
V/f制御の基本原理:V/f = 一定 を保つことで磁束を一定に維持する

まずは、空白(ア)と(イ)について考えてみましょう。なぜ電圧 V と周波数 f の比を一定にする必要があるのでしょうか。

誘導電動機の一次誘導起電力 E1 は、周波数 f と磁束 φ の積に比例するという重要な関係があります。

E1 ∝ f × φ

この式を変形すると、磁束 φ は E1/f に比例することがわかります。一次誘導起電力 E1 は電源電圧 V とほぼ等しいため、次のように近似できます。

φ ∝ E1/f ≈ V/f

つまり、磁束 φ の大きさは、電圧 V と周波数 f の比(V/f)によって決まるということです。

もし、周波数 f だけを下げて電圧 V をそのままにした場合、比率 V/f が大きくなりすぎます。すると、磁束 φ が過大になり、電動機の鉄心が磁気飽和を起こしてしまいます。鉄心が磁気飽和すると、トルクが低下し、励磁電流が急増して電動機が焼損する恐れがあります。これを防ぐために、電圧 V と周波数 f の比 V/f を一定に制御します。これが「V/f制御」の基本原理です。

したがって、空白には以下が入ります。
(ア) = 磁気飽和 / (イ) = 一定

4. 解説STEP2:サイリスタによる直流電圧の可変制御(ウの解説)

サイリスタを用いた位相制御による直流電圧の可変制御
方式①:サイリスタ整流器方式のブロック図

次に、空白(ウ)について考えます。問題文の「一つの方法(方式①)」に関する部分です。

一定電圧の交流電源から直流電圧を得る整流器に 〔ウ〕 などを使用して,インバータ出力の周波数に対して目標の比となるように直流電圧を可変制御し…

この方式では、整流器の段階で「直流電圧を可変制御」しています。交流を直流に変換する整流器において、出力される直流電圧の大きさを自在にコントロールするためには、サイリスタ(SCR)を使用します。

サイリスタは、ゲートに信号を送るタイミング(点弧角)を変えることで、出力電圧を調整する「位相制御」が可能です。これにより、可変の直流電圧を作り出し、後段のインバータでは周波数のみを調整することで、結果的に V/f = 一定 を実現します。一方、選択肢にある「ダイオード」は、単に交流を直流に整流するだけで、電圧の大きさを制御することはできません。

したがって、空白には以下が入ります。
(ウ) = サイリスタ

5. 解説STEP3:PWM制御による電圧・周波数の同時制御(エの解説)

PWM制御によるパルス幅変調と等価正弦波出力の波形図
PWM制御の波形図:直流電圧→PWMパルス波形→等価正弦波出力

最後に、空白(エ)について考えます。問題文の「別の方法(方式②)」に関する部分です。

一定の直流電圧から可変の交流電圧を得るインバータの代表的な制御として, 〔エ〕 制御が知られている。

この方式では、整流器(ダイオードなど)で一定の直流電圧を作り、インバータ側で「出力パルス波形を制御」することによって、電圧と周波数を同時に調整します。この代表的な制御方式が PWM(パルス幅変調) 制御です。

PWM制御では、一定の直流電圧を高速でオン・オフ(スイッチング)し、そのパルスの幅(デューティ比)を変化させます。パルス幅が広い部分は平均電圧が高く、パルス幅が狭い部分は平均電圧が低くなるため、これらを滑らかにつなぐと、等価的に任意の電圧と周波数を持つ交流(正弦波)を作り出すことができます。現在、GTOやIGBTなどの自己消弧型半導体素子を使用したVVVFインバータの多くは、このPWM制御を採用しています。

したがって、空白には以下が入ります。
(エ) = PWM

6. 解答とまとめ

正解(5) 磁気飽和・一定・サイリスタ・PWMのまとめ
正解:(5) 磁気飽和 / 一定 / サイリスタ / PWM

ここまでの解説をまとめると、各空白に入る語句は以下の通りです。

  • (ア) 磁気飽和:V/fが大きいと磁束が過大になり、鉄心が磁気飽和する。
  • (イ) 一定:磁気飽和を防ぐため、V/fの比を一定に保つ(V/f制御)。
  • (ウ) サイリスタ:位相制御によって直流電圧を可変にするために使用する。
  • (エ) PWM:パルス幅(デューティ比)を変えることで、電圧と周波数を同時に制御する。

これらを正しく組み合わせた選択肢は (5) となります。

正解:(5)

7. 試験に出るポイントまとめ

VVVFインバータシステムの構成と試験対策ポイント
試験に出るポイントまとめ:VVVFインバータシステムの全体構成

電験3種の機械科目において、誘導電動機のインバータ制御は頻出テーマです。以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。

  1. V/f制御の目的:磁束 φ を一定に保ち、鉄心の磁気飽和を防ぐこと。関係式 φ ∝ V/f を覚えておきましょう。
  2. VVVFインバータ:可変電圧・可変周波数の交流を出力する装置。GTOやIGBTなどの半導体素子が使用されます。
  3. 2種類の制御方式:サイリスタ整流器方式(整流器で直流電圧を可変制御し、インバータで周波数を制御)と、PWMインバータ方式(整流器で一定の直流を作り、インバータでパルス幅を変調して電圧・周波数を同時制御)の2種類があります。
  4. PWMの原理:パルスの幅(デューティ比)を変えることで、等価的な交流電圧の大きさを制御する技術です。

8. よくあるミス・注意点

ダイオードとサイリスタの混同に注意してください。ダイオードは「整流」しかできませんが、サイリスタはゲート信号によって「整流+電圧制御(位相制御)」が可能です。電圧を可変にする必要がある箇所にはサイリスタが使われる点を押さえておきましょう。

また、V/f制御の理由を忘れることも多いミスです。「なぜV/fを一定にするのか?」という根本的な理由(磁気飽和の防止)は、文章の穴埋め問題だけでなく、正誤判定問題でもよく問われます。公式 E1 ∝ f × φ とセットで理解しておくことが重要です。

9. FAQ(よくある質問)

Q1. PWM制御とPLL制御の違いは何ですか?

PWM(パルス幅変調)は電圧の大きさを制御するための技術です。一方、PLL(位相同期回路)は主に周波数や位相を正確に一致させるための通信やモーターの精密な速度制御(フィードバック制御)に使われます。インバータの主回路で電圧を作る方式としてはPWMが正解です。

Q2. VVVFインバータはどのような場所で使われていますか?

身近なところでは、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサー駆動、エレベーター、そして電車のモーター制御(VVVFインバータ制御電車)など、モーターの速度を滑らかに、かつ効率よく変える必要があるあらゆる場所で広く使われています。

Q3. V/f制御において、低周波数領域ではどのような工夫が必要ですか?

周波数が非常に低い領域では、電動機の一次巻線抵抗による電圧降下の影響が無視できなくなります。そのため、単純な V/f = 一定 のままでは磁束が不足し、トルクが低下してしまいます。これを補うために、低周波数領域では電圧を少し高めに設定する「トルクブースト(電圧ブースト)」という補償が行われます。

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