誘導機57【電験3種 機械】誘導機の速度制御とは?令和元年 A問題4 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 令和元年度 A問題4 極数・周波数・すべり!速度を決める3要素

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「誘導機の速度制御」は繰り返し出題される超定番テーマです。本記事では、令和元年度 A問題4を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

出発点は速度の式 n=120(1−s)f/p。fを変える(VVVF)、pを変える(極数切換)、sを変える(一次電圧・二次抵抗)——制御法は式の3変数への対応で全整理できます。

目次

令和元年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢

電験3種 機械科目 令和元年度 A問題4 問題文(誘導機の速度制御)
令和元年度 機械科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 【誘導機】 令和元年度 A問題4(要約)

誘導機の回転速度は n=120・(ア)と表される。かご形では(イ)電源装置を用いた制御が広く利用される。この他に、固定子巻線の接続を変更して(ウ)を切り換える制御法(効率はよいが段階的)や、(エ)の大きさを変更する制御法(安定な制御範囲を広くするために(オ)を大きくとり銅損が大きくなる)がある。巻線形では(オ)の調整により比例推移を利用して速度を変える。

(1) sf/p・CVCF・極数・一次電圧・一次抵抗 (2) (1−s)f/p・CVCF・相数・二次電圧・二次抵抗 (3) sf/p・VVVF・相数・二次電圧・一次抵抗 (4) (1−s)f/p・VVVF・相数・一次電圧・一次抵抗 (5) (1−s)f/p・VVVF・極数・一次電圧・二次抵抗

🔁 再出題情報
本問は令和5年度下期 A問題3(誘導機55)で文面ほぼそのまま再出題されました。速度の式1本で完答できる、コスパ最高の定番です。

出題のポイント:式1本が5つの空欄を全部持っている

この問題は、回転速度の式を書いた時点でほぼ終わっています。式に出てくる文字が、そのまま制御法の名前に対応するからです。

回転速度と3つの変数

\( n=N_s(1-s)=120\cdot\dfrac{(1-s)f}{p} \)

f・p・s の3つ——動かせるものはこれしかないので、制御法も3系統しかありません

動かす変数制御法問題文のどこ機種
fVVVF インバータ「(イ)電源装置を用いた制御」かご形の標準
p極数切換「固定子巻線の接続を変更して(ウ)を切り換える」どちらでも
s一次電圧制御「(エ)の大きさを変更する」かご形でも可
s二次抵抗制御(比例推移)「巻線形では(オ)の調整により」巻線形のみ

滑りを動かす方法が2つあるのが本問の特徴です。一次電圧を下げても滑りは増え、二次抵抗を増やしても滑りは増える——どちらも「滑りを大きくして減速する」方式です。

🔁 再出題情報
本問は令和5年度下期 A問題3(誘導機55)で文面ほぼそのまま再出題されました。速度の式1本で完答できる、コスパ最高の定番です。
誘導電動機の速度式の周波数極数滑りとVVVF極数切換電圧抵抗制御の対応図
n=120(1−s)f/pの3変数から各速度制御法を整理します。

空欄を確定する

(ア)(イ):(1−s)f/p と VVVF

(ア)=(1−s)f/p「sf/p」では停止時(s=1)に最高速度という矛盾が起きます。回転速度は同期速度から滑りの分だけ引いたものですから、(1−s) でなければなりません

(イ)=VVVF(可変電圧可変周波数)。周波数を変えるのだから「可変周波数」でなければ話が始まりません

☝️ ひっかけの作り方:CVCF は「定電圧定周波数」——電圧も周波数も一定に保つ装置です。無停電電源装置(UPS)のように、入力が乱れても出力を安定させたい用途のもので、速度制御には使えません(変えないのですから当然です)。

(ウ):切り換えるのは極数

固定子巻線の接続を変更して切り換えられるのは極数です。(ウ)=極数「相数」を運転中に切り換える制御法は存在しません——三相の電動機を運転中に単相にする、といった話は聞いたことがないはずです。

(エ)(オ):一次電圧と二次抵抗

「(エ)の大きさを変更する制御法」で、かご形でも使えるもの——(エ)=一次電圧です。「(オ)の調整により比例推移」とあるので、(オ)=二次抵抗比例推移は二次抵抗の専売特許です。

答え(ア)(1−s)f/p/(イ)VVVF/(ウ)極数/(エ)一次電圧/(オ)二次抵抗 ⇒ (5)
VVVFインバータが電圧と周波数を変えてV毎fを一定に保つ説明図
V/fを一定にして磁束をほぼ一定に保ちながら回転速度を変えます。
1マイナスsかけるf毎p、VVVF、極数、一次電圧、二次抵抗の五つの空欄解説図
正しい並びは(1−s)f/p・VVVF・極数・一次電圧・二次抵抗で、正解は選択肢(5)です。

なぜ一次電圧制御では二次抵抗を大きくとるのか

本問でいちばん理解しにくいのが、「安定な制御範囲を広くするために(オ)を大きくとり銅損が大きくなる」という一文です。ここを式で追っておきましょう

一次電圧を下げると、トルク曲線は形を変えずに縦に縮みます。T∝V² なので全体が同じ割合で小さくなるだけで、山の位置(sm)は動きません

最大トルクの滑りは電圧に依らない

\( s_m=\dfrac{r_2}{x_2} \)(V を含まない)  \( T_m\propto\dfrac{V^2}{2x_2} \)

電圧を変えても山の位置は同じ、高さだけが変わる——二次抵抗を変えたとき(位置が動いて高さは不変)とちょうど逆です。

滑りの範囲曲線の傾き負荷と釣り合ったとき
0 < s < sm右上がり(滑りが増えるとトルクも増える)安定(外乱があっても戻る)
sm < s < 1右下がり不安定(減速が止まらず停止する)

安定に運転できるのは s<sm の範囲だけです。電圧を下げて減速していくと滑りが増えていきますが、sm を超えた瞬間に不安定になって止まってしまいます

だから制御範囲を広げたければ、sm を大きくするしかありません。sm=r2/x2 ですから、二次抵抗を大きめに設計する——これが問題文の言っていることです。

\( P_{c2}=sP_2 \)
その代償
滑りが大きい領域で運転する=二次入力のうち大きな割合が熱になる

s=0.5 で運転すれば二次入力の半分が熱です。「銅損が大きくなる」というのはこの意味で、一次電圧制御が小容量・短時間の用途に限られる理由でもあります。扇風機の風量切替のように、もともと軽い負荷でしか使えません

4つの方式を並べて比べる

VVVF(周波数)極数切換一次電圧二次抵抗
変える変数fpss
使える機種どちらでもどちらでもどちらでも巻線形のみ
速度の変わり方連続・広範囲段階的連続(範囲は狭い)連続
効率よいよい悪い悪い
装置の価格高い安い安い安い
主な用途現代のほぼ全部換気扇・エレベータ小形ファンクレーン・巻上機

効率が良いのは「同期速度そのものを変える」2方式(周波数・極数)だけです。滑りを変える2方式は、原理的に滑りの割合を熱として捨てている——この区別が誘導機の速度制御を理解する鍵です。

インバータが安価になった現在、実務ではVVVFがほぼすべてを占めています。それでも試験で4方式が問われるのは、「なぜVVVFが勝ったのか」を理解しているかを確かめたいからだと考えてよいでしょう。

⏱️ 本番での進め方
n=120(1−s)f/p を書いてから読む。f・p・s が制御法に1対1で対応する。
CVCF は定電圧定周波数(UPS用)——速度制御には使えない。
切り換えるのは極数であって相数ではない。相数切換という制御は存在しない。
比例推移=二次抵抗。この語が出たら(オ)は決まる。

★類題:平成18年度 A問題5も同じ知識で解ける

平成18年度 A問題5も、同じ「n=(1−s)·120f/p の変数分解」で解ける問題です。聞き方が違うだけで、必要な知識は共通しています。

平成18年度 A問題5令和元年度 A問題4(本問)
聞き方3つの制御法を a・b・c として説明速度の式から5つの空欄
扱う方式二次抵抗・周波数・極数の3つVVVF・極数・一次電圧・二次抵抗の4つ
本問だけにあるもの一次電圧制御と、その安定範囲の話
正解(2)(5)

本問の特徴は、一次電圧制御が加わっていることです。滑りを変える方式が「二次抵抗」と「一次電圧」の2つあるという点まで踏み込んでいるぶん、平成18年度より一段深い問題だと言えます。

なお本問は令和5年度下期 A問題3として、文面ほぼそのまま再出題されています。令和元年度 → 令和5年度下期という短い間隔での再出題ですから、この文面はこれからも繰り返されると考えてよいでしょう。

速度制御は誘導機のなかでも出題頻度が高い論点です。平成18年度・令和元年度・令和5年度下期の3本を続けて解けば、聞かれ方の幅がひととおり分かります

★同一問題:令和5年度下期 A問題3として再出題されている

この問題は令和5年度下期 A問題3として、文面までほぼ同一で再出題されています。今回は正解の番号まで一致しました。

令和元年度 A問題4(本問)令和5年度下期 A問題3
(ア)(イ)(1−s)f/p・VVVF(1−s)f/p・VVVF(同じ)
(ウ)(エ)(オ)極数・一次電圧・二次抵抗極数・一次電圧・二次抵抗(同じ)
正解の番号(5)(5)

わずか4年での再出題です。今回は選択肢の並べ替えがなく番号も一致しましたが、これは幸運——同じ問題で番号が動いた例は直流機・誘導機ともに複数あります番号ではなく5つの語で覚えてください

4年という短い間隔で同じ文面が出るということは、速度制御が誘導機の中心的な出題テーマとして定着しているということです。n=120(1−s)f/p という式1本で完答できるのですから、費用対効果は極めて高いと言えます。

💡 覚え方
n=120(1−s)f/p の3変数が制御法に対応——f=VVVF/p=極数切換/s=一次電圧・二次抵抗同期速度を変える2方式(f・p)は効率がよく、滑りを変える2方式は滑りの分が熱一次電圧制御で二次抵抗を大きくとるのは、安定範囲 s<sm=r2/x2 を広げるため

⚠️ よくある間違い
(ウ)に「相数」を選ぶのが定番の罠です。極数と相数は字面が似ていますが、相数を運転中に切り換える制御は存在しません。もう一つは(イ)にCVCF——「定周波数」では周波数を変えられないので、速度制御の話に登場しようがありません。

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