電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「誘導機の速度制御」は繰り返し出題される超定番テーマです。本記事では、令和元年度 A問題4を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
出発点は速度の式 n=120(1−s)f/p。fを変える(VVVF)、pを変える(極数切換)、sを変える(一次電圧・二次抵抗)——制御法は式の3変数への対応で全整理できます。
令和元年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和元年度 A問題4(要約)
誘導機の回転速度は n=120・(ア)と表される。かご形では(イ)電源装置を用いた制御が広く利用される。この他に、固定子巻線の接続を変更して(ウ)を切り換える制御法(効率はよいが段階的)や、(エ)の大きさを変更する制御法(安定な制御範囲を広くするために(オ)を大きくとり銅損が大きくなる)がある。巻線形では(オ)の調整により比例推移を利用して速度を変える。
(1) sf/p・CVCF・極数・一次電圧・一次抵抗 (2) (1−s)f/p・CVCF・相数・二次電圧・二次抵抗 (3) sf/p・VVVF・相数・二次電圧・一次抵抗 (4) (1−s)f/p・VVVF・相数・一次電圧・一次抵抗 (5) (1−s)f/p・VVVF・極数・一次電圧・二次抵抗
本問は令和5年度下期 A問題3(誘導機55)で文面ほぼそのまま再出題されました。速度の式1本で完答できる、コスパ最高の定番です。
出題のポイント:式1本が5つの空欄を全部持っている
この問題は、回転速度の式を書いた時点でほぼ終わっています。式に出てくる文字が、そのまま制御法の名前に対応するからです。
| 動かす変数 | 制御法 | 問題文のどこ | 機種 |
| f | VVVF インバータ | 「(イ)電源装置を用いた制御」 | かご形の標準 |
| p | 極数切換 | 「固定子巻線の接続を変更して(ウ)を切り換える」 | どちらでも |
| s | 一次電圧制御 | 「(エ)の大きさを変更する」 | かご形でも可 |
| s | 二次抵抗制御(比例推移) | 「巻線形では(オ)の調整により」 | 巻線形のみ |
滑りを動かす方法が2つあるのが本問の特徴です。一次電圧を下げても滑りは増え、二次抵抗を増やしても滑りは増える——どちらも「滑りを大きくして減速する」方式です。
本問は令和5年度下期 A問題3(誘導機55)で文面ほぼそのまま再出題されました。速度の式1本で完答できる、コスパ最高の定番です。

空欄を確定する
(ア)(イ):(1−s)f/p と VVVF
(ア)=(1−s)f/p。「sf/p」では停止時(s=1)に最高速度という矛盾が起きます。回転速度は同期速度から滑りの分だけ引いたものですから、(1−s) でなければなりません。
(イ)=VVVF(可変電圧可変周波数)。周波数を変えるのだから「可変周波数」でなければ話が始まりません。
☝️ ひっかけの作り方:CVCF は「定電圧定周波数」——電圧も周波数も一定に保つ装置です。無停電電源装置(UPS)のように、入力が乱れても出力を安定させたい用途のもので、速度制御には使えません(変えないのですから当然です)。
(ウ):切り換えるのは極数
固定子巻線の接続を変更して切り換えられるのは極数です。(ウ)=極数。「相数」を運転中に切り換える制御法は存在しません——三相の電動機を運転中に単相にする、といった話は聞いたことがないはずです。
(エ)(オ):一次電圧と二次抵抗
「(エ)の大きさを変更する制御法」で、かご形でも使えるもの——(エ)=一次電圧です。「(オ)の調整により比例推移」とあるので、(オ)=二次抵抗。比例推移は二次抵抗の専売特許です。


なぜ一次電圧制御では二次抵抗を大きくとるのか
本問でいちばん理解しにくいのが、「安定な制御範囲を広くするために(オ)を大きくとり銅損が大きくなる」という一文です。ここを式で追っておきましょう。
一次電圧を下げると、トルク曲線は形を変えずに縦に縮みます。T∝V² なので全体が同じ割合で小さくなるだけで、山の位置(sm)は動きません。
| 滑りの範囲 | 曲線の傾き | 負荷と釣り合ったとき |
| 0 < s < sm | 右上がり(滑りが増えるとトルクも増える) | 安定(外乱があっても戻る) |
| sm < s < 1 | 右下がり | 不安定(減速が止まらず停止する) |
安定に運転できるのは s<sm の範囲だけです。電圧を下げて減速していくと滑りが増えていきますが、sm を超えた瞬間に不安定になって止まってしまいます。
だから制御範囲を広げたければ、sm を大きくするしかありません。sm=r2/x2 ですから、二次抵抗を大きめに設計する——これが問題文の言っていることです。
滑りが大きい領域で運転する=二次入力のうち大きな割合が熱になる。
s=0.5 で運転すれば二次入力の半分が熱です。「銅損が大きくなる」というのはこの意味で、一次電圧制御が小容量・短時間の用途に限られる理由でもあります。扇風機の風量切替のように、もともと軽い負荷でしか使えません。
4つの方式を並べて比べる
| VVVF(周波数) | 極数切換 | 一次電圧 | 二次抵抗 | |
| 変える変数 | f | p | s | s |
| 使える機種 | どちらでも | どちらでも | どちらでも | 巻線形のみ |
| 速度の変わり方 | 連続・広範囲 | 段階的 | 連続(範囲は狭い) | 連続 |
| 効率 | よい | よい | 悪い | 悪い |
| 装置の価格 | 高い | 安い | 安い | 安い |
| 主な用途 | 現代のほぼ全部 | 換気扇・エレベータ | 小形ファン | クレーン・巻上機 |
効率が良いのは「同期速度そのものを変える」2方式(周波数・極数)だけです。滑りを変える2方式は、原理的に滑りの割合を熱として捨てている——この区別が誘導機の速度制御を理解する鍵です。
インバータが安価になった現在、実務ではVVVFがほぼすべてを占めています。それでも試験で4方式が問われるのは、「なぜVVVFが勝ったのか」を理解しているかを確かめたいからだと考えてよいでしょう。
⏱️ 本番での進め方
① n=120(1−s)f/p を書いてから読む。f・p・s が制御法に1対1で対応する。
② CVCF は定電圧定周波数(UPS用)——速度制御には使えない。
③ 切り換えるのは極数であって相数ではない。相数切換という制御は存在しない。
④ 比例推移=二次抵抗。この語が出たら(オ)は決まる。
★類題:平成18年度 A問題5も同じ知識で解ける
平成18年度 A問題5も、同じ「n=(1−s)·120f/p の変数分解」で解ける問題です。聞き方が違うだけで、必要な知識は共通しています。
| 平成18年度 A問題5 | 令和元年度 A問題4(本問) | |
| 聞き方 | 3つの制御法を a・b・c として説明 | 速度の式から5つの空欄 |
| 扱う方式 | 二次抵抗・周波数・極数の3つ | VVVF・極数・一次電圧・二次抵抗の4つ |
| 本問だけにあるもの | — | 一次電圧制御と、その安定範囲の話 |
| 正解 | (2) | (5) |
本問の特徴は、一次電圧制御が加わっていることです。滑りを変える方式が「二次抵抗」と「一次電圧」の2つあるという点まで踏み込んでいるぶん、平成18年度より一段深い問題だと言えます。
なお本問は令和5年度下期 A問題3として、文面ほぼそのまま再出題されています。令和元年度 → 令和5年度下期という短い間隔での再出題ですから、この文面はこれからも繰り返されると考えてよいでしょう。
速度制御は誘導機のなかでも出題頻度が高い論点です。平成18年度・令和元年度・令和5年度下期の3本を続けて解けば、聞かれ方の幅がひととおり分かります。
★同一問題:令和5年度下期 A問題3として再出題されている
この問題は令和5年度下期 A問題3として、文面までほぼ同一で再出題されています。今回は正解の番号まで一致しました。
| 令和元年度 A問題4(本問) | 令和5年度下期 A問題3 | |
| (ア)(イ) | (1−s)f/p・VVVF | (1−s)f/p・VVVF(同じ) |
| (ウ)(エ)(オ) | 極数・一次電圧・二次抵抗 | 極数・一次電圧・二次抵抗(同じ) |
| 正解の番号 | (5) | (5) |
わずか4年での再出題です。今回は選択肢の並べ替えがなく番号も一致しましたが、これは幸運——同じ問題で番号が動いた例は直流機・誘導機ともに複数あります。番号ではなく5つの語で覚えてください。
4年という短い間隔で同じ文面が出るということは、速度制御が誘導機の中心的な出題テーマとして定着しているということです。n=120(1−s)f/p という式1本で完答できるのですから、費用対効果は極めて高いと言えます。
💡 覚え方
n=120(1−s)f/p の3変数が制御法に対応——f=VVVF/p=極数切換/s=一次電圧・二次抵抗。同期速度を変える2方式(f・p)は効率がよく、滑りを変える2方式は滑りの分が熱。一次電圧制御で二次抵抗を大きくとるのは、安定範囲 s<sm=r2/x2 を広げるため。
⚠️ よくある間違い
(ウ)に「相数」を選ぶのが定番の罠です。極数と相数は字面が似ていますが、相数を運転中に切り換える制御は存在しません。もう一つは(イ)にCVCF——「定周波数」では周波数を変えられないので、速度制御の話に登場しようがありません。

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