誘導機55【電験3種 機械】誘導機の速度制御とは?令和5年下期 A問題3 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 令和5年度下期 A問題3 回転速度を自在に変える!制御方式は何がある?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「誘導機の速度制御」はVVVF・極数切換・電圧制御・二次抵抗制御を一望する総まとめテーマです。本記事では、令和5年度下期 A問題3を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

出発点は速度の式 n=120(1−s)f/p。f を変える(VVVF)、p を変える(極数切換)、s を変える(一次電圧・二次抵抗)——制御法は式の3変数に対応しています。

目次

令和5年度下期 機械科目 A問題3:問題文と選択肢

略語を展開するところから始めれば、迷う空欄が減ります。

電験3種 機械科目 令和5年度下期 A問題3 問題文(誘導機の速度制御とは)
令和5年度下期 機械科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3

電験3種 機械科目 【誘導機】 令和5年度下期 A問題3(要約)

誘導機の回転速度は n=120・(ア)と表される。かご形では(イ)電源装置を用いた周波数制御が広く利用される。この他に、固定子巻線の接続を変更して(ウ)を切り換える制御法(効率はよいが段階的)や、(エ)の大きさを変更する制御法(安定な制御範囲を広くするために(オ)を大きくとり銅損が大きくなる)がある。巻線形では(オ)の調整によりトルクの比例推移を利用して速度を変える。

(1) sf/p・CVCF・相数・一次電圧・一次抵抗 (2) (1−s)f/p・CVCF・極数・二次電圧・二次抵抗 (3) sf/p・VVVF・極数・一次電圧・一次抵抗 (4) (1−s)f/p・VVVF・相数・二次電圧・一次抵抗 (5) (1−s)f/p・VVVF・極数・一次電圧・二次抵抗

🔁 再出題情報
本問は令和元年度 A問題4(誘導機57)とほぼ同一の再出題です。速度の式1本で完答できる定番中の定番です。

出題のポイント:略語を展開すれば選べる

(イ)の VVVF と CVCF は、略語を展開するだけで判別できます意味を知らなくても、文字が答えを教えてくれるタイプの空欄です。

略語展開意味用途
VVVFVariable Voltage Variable Frequency可変電圧・可変周波数速度制御(インバータ)
CVCFConstant Voltage Constant Frequency定電圧・定周波数無停電電源装置(UPS)

「周波数制御」と書いてある空欄に「定周波数」の装置が入るはずがありません。(イ)=VVVF——Variable(可変)か Constant(一定)かを見るだけです。

回転速度と3つの変数

\( n=120\cdot\dfrac{(1-s)f}{p} \)

f・p・s の3つしか動かせない——だから制御法も3系統しかありません

誘導電動機の速度式からVVVF極数切換一次電圧二次抵抗の制御法を整理した図
f・p・sのどれを変えるかで速度制御法を分類します。

空欄を確定する

(ア):(1−s)f/p

回転速度は同期速度から滑りの分だけ引いたものですから、(1−s) が掛かっていなければなりません「sf/p」では停止時(s=1)に最高速度という矛盾が生じます。(ア)=(1−s)f/p(1)(3)が消えます

(ウ):切り換えるのは極数

固定子巻線の接続を変えて切り換えられるのは極数です。(ウ)=極数「相数」を運転中に切り換える制御法は存在しません——三相の電動機を運転中に単相にする、という話は聞いたことがないはずです。

(エ)(オ):一次電圧と二次抵抗

かご形の二次側には手が出せないのですから、かご形でも使える電圧制御は一次側——(エ)=一次電圧「二次電圧」を変える方法はありません

「比例推移を利用して速度を変える」とあるので、(オ)=二次抵抗比例推移は二次抵抗の専売特許です。

答え(ア)(1−s)f/p/(イ)VVVF/(ウ)極数/(エ)一次電圧/(オ)二次抵抗 ⇒ (5)
VVVFが電圧と周波数を同じ比率で変え磁束を保つ仕組みと他方式の比較
VVVFは可変電圧・可変周波数でV/fを一定に保ちます。
V/f一定制御の原理(Φ∝V/f、磁束一定でトルク特性維持)
V/f一定制御:磁束Φ∝V/fを一定に保つ
誘導機速度制御の五つの空欄を埋めて選択肢5を示す解説
(ア)(1−s)f/p、(イ)VVVF、(ウ)極数、(エ)一次電圧、(オ)二次抵抗です。

用途から方式を逆に引く

4つの方式を「どんな用途に使われているか」から引けるようにしておくと、応用問題にも対応できます。

こんな用途なら選ばれる方式理由
ポンプ・送風機の省エネ運転VVVF連続・広範囲・高効率。流量に応じて速度を落とせる
電車・エレベータVVVF加減速が滑らかで回生制動もできる
換気扇の「強・弱」極数切換2段階で足りるなら安く確実
小形ファンの風量調整一次電圧制御装置が安い。軽負荷なら損失も小さい
クレーン・巻上機の始動二次抵抗制御大きな始動トルクが要る。熱は機外で捨てられる

VVVF が2つの行を占めているのが現代の実情です。装置が高いという弱点が、半導体の値下がりで解消されたため、いまでは「まずインバータを検討する」のが標準になりました。

インバータで駆動すると、電動機側にも影響が出る

VVVF は万能に見えますが、電動機にとっては「本来と違う電圧」を受け取ることになります正弦波ではなく、細かく切り刻んだパルスの列だからです。

起きること原因対策
サージ電圧急峻なパルスが長い配線で反射し、巻線に電源電圧の2倍近くがかかるインバータ用の絶縁強化電動機/配線を短くする/リアクトル
軸電流(電食)コモンモード電圧で軸受に電流が流れ、転動面が傷む絶縁軸受/シャフトアース
高調波整流器が電源から歪んだ電流を取る交流リアクトル/高調波抑制対策
低速での温度上昇自己冷却ファンの風量が落ちる外部ファン/トルクを下げて使う

「インバータをつなげば終わり」ではないということです。電動機側にも相応の配慮が要る——だから「インバータ駆動対応」と銘打った電動機が売られています

試験ではここまで問われませんが、「なぜ V/f 一定にするのか」を理解していれば、こうした副作用の理由も自然に見えてきます。パルス波形で電圧を作っている以上、正弦波では起きないことが起きる——パワーエレクトロニクスの分野につながる視点です。

★同一問題:令和元年度 A問題4の再出題

この問題は令和元年度 A問題4と、文面までほぼ同一の再出題です。今回は正解の番号まで一致しました。

令和元年度 A問題4令和5年度下期 A問題3(本問)
(ア)(イ)(1−s)f/p・VVVF(1−s)f/p・VVVF(同じ)
(ウ)(エ)(オ)極数・一次電圧・二次抵抗極数・一次電圧・二次抵抗(同じ)
正解の番号(5)(5)

わずか4年での再出題です。今回は選択肢の並べ替えがなく番号も一致しましたが、これは幸運——同じ問題で番号が動いた例は直流機・誘導機ともに複数あります

4年という短い間隔で同じ文面が出るということは、速度制御が誘導機の中心的な出題テーマとして定着しているということです。n=120(1−s)f/p という式1本で完答できるのですから、費用対効果は極めて高いと言えます。

⏱️ 本番での進め方
略語を展開する:VVVF=可変電圧可変周波数/CVCF=定電圧定周波数(UPS用)。
n=120(1−s)f/p を書いてから読む。f・p・s が制御法に対応する。
「相数切換」も「二次電圧制御」も存在しない。もっともらしいダミー。
比例推移=二次抵抗。この語が出たら(オ)は決まる。

式の「120」はどこから来たのか

n=120(1−s)f/p の 120 という数字——丸暗記しているだけの人が多いのですが、出どころが分かれば忘れませんし、単位の取り違えも防げます

\( f\ [\mathrm{Hz}]=\text{毎秒の周期数} \)
❶ 周波数は「秒」の単位
1秒間に磁界が電気角360°進む回数
\( \dfrac{f}{p/2}\ [\text{回転/秒}] \)
❷ 極対数で割ると機械的な回転数
磁極が1組(N・S)通り過ぎて機械的に1周分。極対数は p/2。
\( \dfrac{f}{p/2}\times60=\dfrac{120f}{p}\ [\mathrm{min^{-1}}] \)
❸ 毎分に直す
60(秒→分)×2(極対数→極数)=120

「120=60×2」——60 は秒を分に直す係数、2 は極数を極対数に直す係数です。この2つが掛かっているだけだと分かれば、rad/s で扱うときの ωs=4πf/p も自然に出てきます

角速度で書いた同期速度

\( \omega_s=2\pi\times\dfrac{f}{p/2}=\dfrac{4\pi f}{p}\ [\mathrm{rad/s}] \)

60 を掛けない代わりに 2π を掛ける——同じ式の単位違いです。

トルク計算では ωs=4πf/p を直接使ったほうが速いことがあります。本問のような穴埋めでは 120f/p、計算問題では 4πf/p——両方を同じものとして扱えるようにしておくと、min−1 と rad/s の往復で迷いません

💡 覚え方
「n=120(1−s)f/p——f は VVVF、p は極数切換、s は電圧(V²)と二次抵抗(比例推移)」VVVF は Variable、CVCF は Constant——速度制御に「定周波数」の装置は使えない存在しない制御法(相数切換・二次電圧制御)がダミーとして混ぜられる

⚠️ よくある間違い
(ウ)に「相数」を選ぶのが定番の罠です。極数と相数は字面が似ていますが、相数を運転中に切り換える制御は存在しません。もう一つは(エ)に「二次電圧」——かご形の二次側には手が出せないのですから、二次電圧を変える方法はありません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次