電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「かご形と巻線形の特性比較」は比例推移・二重かご・深溝形まで一気に総復習できる良問です。本記事では、令和3年度 A問題3「誤り探し」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
誤りは(2)——最大トルクを発生する滑りは \( s_m = r_2/x_2 \) で、二次抵抗を大きくすると滑りは「大きく」なります。「小さくなり」が逆です。他の4つはかご形・巻線形の設計思想の教科書的まとめです。
令和3年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
「結論は正しいが途中が逆」という誤りの作り方を見抜きます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和3年度 A問題3(要約)
誤っているものを選ぶ。(1) かご形:導体を銅→銅合金にすると二次抵抗増で定格効率低下。(2) 巻線形:比例推移により二次抵抗を大きくすると最大トルクを発生する滑りが小さくなり始動特性が良くなる。(3) 巻線形:外部可変抵抗で大始動トルクと定格高効率を両立。(4) 二重かご形:始動時は入口側の高抵抗導体、定格時は内部の低抵抗導体に電流。(5) 深溝かご形:表皮効果による抵抗変化で両立。
出題のポイント:結論は正しいが、途中が逆
誤り探しの問題では「結論だけ読むと正しく見える」記述が最も危険です。本問の(2)がまさにそれ——「始動特性が良くなる」という結びは正しいのに、そこへ至る理由が逆向きに書かれています。
(2)は「最大トルクを発生する滑りが小さくなり」と書いています。小さくなったら山は s=0 側へ逃げてしまい、始動トルクはむしろ減ります——結論と矛盾する記述です。

5つの記述を判定する
| 記述 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 銅→銅合金で二次抵抗増 ⇒ 定格効率低下 | 正しい | 抵抗が増えれば定格滑りが増え、二次銅損 sP2 が増える |
| (2) | 二次抵抗を大きくすると sm が小さくなる | 誤り ✗ | sm=r2/x2 なので大きくなる |
| (3) | 巻線形は外部可変抵抗で大始動トルクと高効率を両立 | 正しい | 始動時だけ抵抗を入れ、運転時は短絡する |
| (4) | 二重かご形は始動時に外側、定格時に内側 | 正しい | 外=高抵抗(始動)、内=低抵抗(運転) |
| (5) | 深溝かご形は表皮効果による抵抗変化で両立 | 正しい | 始動時は f2 が高く電流が上部に偏る |



(1)を数字で確かめる
「銅から銅合金に変えると効率が下がる」——なぜそう言えるのかを、数値で追ってみましょう。
銅合金は純銅より抵抗率が高い(合金化すると結晶が乱れて電子が散乱されるため)ので、二次抵抗が増えます。仮に1.5倍になったとして——
比例推移そのもの。定格トルクを出す滑りが動く。
抵抗が1.5倍なら滑りも1.5倍。
1.5 ポイントの低下。二次銅損はそのぶん増える。
わずか1.5 ポイントに見えますが、これは二次側だけの話です。総合効率にもそのまま効いてきますし、発熱が増えれば冷却も温度上昇も厳しくなります。
では、なぜわざわざ抵抗の高い銅合金を使うのか——始動トルクが欲しいからです。(1)は「効率が下がる」という代償だけを述べた記述で、その裏には「始動特性が良くなる」という狙いがあると読めると理解が深まります。
かご形の改良史として読む
(1)(3)(4)(5)を並べると、一つの物語になります。「二次抵抗は始動時だけ大きくしたい」という願いを、どう叶えるか——その答えの変遷です。
| 段階 | 方法 | 実現度 | 代償 |
| ① 導体の材質を変える((1)) | 銅合金にして抵抗を上げる | 始動も運転も同じ抵抗 | 運転時の効率が犠牲 |
| ② 回路で解決する((3)) | 巻線形+外部抵抗器 | 完全に両立できる | ブラシの保守が要る |
| ③ 構造で解決する((4)(5)) | 二重かご形・深溝かご形 | ほぼ両立できる | ほぼなし(作りがやや複雑) |
①は「妥協」、②は「回路で解決」、③は「構造で解決」——③が最後に来るのは、それが最も洗練された答えだからです。保守の要らないかご形のまま、巻線形の長所を手に入れたのですから。
選択肢が5つ並んでいるように見えて、実は設計思想の系譜になっている——そう読めると、この分野の記述問題はほとんど暗記なしで判定できるようになります。
⏱️ 本番での進め方
① sm=r2/x2 を書いてから読む。抵抗が増えれば滑りも増える。
② 「結論は正しいが理由が逆」を疑う。因果の途中まで検証する。
③ 山の高さは不変、位置だけが r2 に比例——対句で覚える。
④ 合金化すると抵抗率は上がる。「合金のほうが低抵抗」ではない。
二次抵抗を増やしていくと、始動トルクはどう変わるか
(2)を正しく直すと「二次抵抗を大きくすると sm が大きくなり、始動特性が良くなる」——では、どこまでも大きくすればよいのでしょうか。そうではありません。
x2=0.50 Ω の機械で、二次抵抗を変えながら始動トルクを追ってみます(最大トルクを1としたときの比)。
| 二次抵抗の合計 | sm=r2/x2 | 始動トルク(最大トルク=1) | 様子 |
| 0.05 Ω(抵抗なし) | 0.1 | 0.20 | 山が s=0 側にあり、始動点は裾野 |
| 0.25 Ω | 0.5 | 0.80 | 山が近づいてきた |
| 0.50 Ω(=x2) | 1.0 | 1.00(最大) | 山の頂上がちょうど始動点 |
| 1.00 Ω | 2.0 | 0.80 | 山が行き過ぎて、また下がる |
| 2.00 Ω | 4.0 | 0.47 | 入れすぎ |
r2=x2 のとき始動トルクが最大になり、それを超えて抵抗を入れると、今度は減っていきます。山の頂上が始動点を通り過ぎてしまうからです。
「抵抗を入れれば入れるほど始動トルクが増える」わけではない——この点は意外と見落とされます。比例推移は山を動かす操作であって、山を高くする操作ではないのですから、頂上を始動点に合わせたところが上限なのです。
この表は(2)の誤りを別の角度からも示しています。もし本当に「抵抗を大きくすると sm が小さくなる」なら、山は s=0 側へ逃げていき、始動トルクは下がる一方です。結論の「始動特性が良くなる」とは決して両立しません。
💡 覚え方
「山の高さは不変、山の滑りは r2 に比例(sm=r2/x2)」。抵抗を増やすと山が s=1 側へ寄る——だから始動トルクが増える。回路で解決=巻線形、構造で解決=二重かご・深溝という対比で(3)(4)(5)は丸ごと押さえられます。
⚠️ よくある間違い
(2)の結論だけを読んで正しいと判定するのが本問最大の罠です。「始動特性が良くなる」という結びは正しいのですが、その理由として書かれた「滑りが小さくなり」が逆です。もう一つは(1)を「合金のほうが低抵抗だろう」と誤解すること——合金化すると抵抗率は上がります。

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