電験3種の機械科目、得意ですか?特に「誘導電動機」の分野は、覚えることが多くて苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。今回は、そんな誘導電動機の中でも特に重要な「かご形」と「巻線形」の特徴を比較する、令和3年度 機械科目 問3をピックアップして徹底解説します。
この問題は「比例推移の法則」と「かご形誘導電動機の種類」という2大テーマが問われる良問です。しっかりマスターして合格に近づきましょう!
問題文:令和3年度 機械 問3(三相誘導電動機の特性)
まずは問題文をしっかり確認しましょう。どのような知識が問われているかを把握することが、正解への第一歩です。


問題全文
一定電圧,一定周波数の電源で運転される三相誘導電動機の特性に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
- (1) かご形誘導電動機では,回転子の導体に用いる棒の材料を銅から銅合金に変更すれば,等価回路の二次抵抗の値が増大するので,定格負荷時の効率が低下する.
- (2) 巻線形誘導電動機では,トルクの比例推移により,二次抵抗の値を大きくすると,最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが小さくなり,始動特性が良くなる.
- (3) 巻線形誘導電動機では,外部の可変抵抗器で二次抵抗値を変化させ,大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる.
- (4) 二重かご形誘導電動機では,始動時に回転子スロット入口に近い断面積が小さい高抵抗の導体に,定格負荷時には回転子内部の断面積が大きい低抵抗の導体に主要な二次電流を流し,大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる.
- (5) 深溝かご形誘導電動機では,幅が狭い平たい二次導体の表皮効果による抵抗値の変化を利用し,大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる.
かご形・巻線形誘導電動機の基本構造を理解しよう

三相誘導電動機は、回転子の構造によってかご形と巻線形の2種類に大別されます。
| 比較項目 | かご形 | 巻線形 |
|---|---|---|
| 回転子構造 | アルミや銅の棒+端絡環 | 三相巻線+スリップリング |
| 外部抵抗接続 | 不可 | 可能(スリップリング経由) |
| 始動特性の調整 | 困難(改良型で対応) | 外部抵抗で自在に調整可能 |
| 保守性 | 高い(構造がシンプル) | やや低い(ブラシ・スリップリングの保守が必要) |
| 用途 | 一般産業用途全般 | 大型・頻繁始動が必要な用途 |
比例推移の法則:電験3種 機械科目の最重要テーマ

比例推移の法則は、巻線形誘導電動機の最大の特徴であり、電験3種の機械科目では毎年のように出題される超重要テーマです。
比例推移の法則とは何か?
三相誘導電動機のトルク特性は、二次抵抗と滑りの比(r₂/s)によって決まります。この比が同じであれば、トルクの値も同じになります。これを「比例推移の法則」と呼びます。
この式から、二次抵抗 \(r_2\) を k 倍にしたとき、滑り s も k 倍にすれば同じトルクが得られることがわかります。
最大トルクを発生する滑りの変化
最大トルクを発生する滑り \(s_m\) は、次の式で表されます。
この式から明らかなように、二次抵抗 \(r_2\) を大きくすると、最大トルクを発生する滑り \(s_m\) も大きくなります。最大トルクの値 \(T_{max}\) 自体は変わりません。
正解の解説:選択肢(2)の誤りを徹底分析

選択肢(2)の記述を再確認しましょう。
巻線形誘導電動機では,トルクの比例推移により,二次抵抗の値を大きくすると,最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが小さくなり,始動特性が良くなる.
「滑りが小さくなり」という部分が誤りです。正しくは「滑りが大きくなり」です。
二次抵抗を大きくすると、最大トルクを発生する滑りが大きくなり(s=1に近づき)、始動時(s=1)のトルクが増加します。これにより始動特性が改善されます。
全選択肢の正誤まとめ

| 選択肢 | 内容の要点 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | かご形:銅→銅合金で二次抵抗増大→効率低下 | ✅ 正しい |
| (2) | 巻線形:二次抵抗増大→最大トルク発生滑りが小さくなる | ❌ 誤り(正解) |
| (3) | 巻線形:外部可変抵抗で始動トルク大&高効率を両立 | ✅ 正しい |
| (4) | 二重かご形:表皮効果で始動時は高抵抗、定格時は低抵抗導体に電流 | ✅ 正しい |
| (5) | 深溝かご形:表皮効果による抵抗変化で始動特性と高効率を両立 | ✅ 正しい |
かご形誘導電動機の進化形:二重かご形・深溝かご形の仕組み

二重かご形誘導電動機の始動原理
二重かご形誘導電動機は、回転子スロットに2種類の導体を配置した改良型かご形電動機です。
- 外側(スロット入口付近):断面積が小さい高抵抗の導体
- 内側(スロット内部):断面積が大きい低抵抗の導体
始動時(回転子周波数が高い):表皮効果により電流は外側の高抵抗導体に集中→大きな始動トルクを発生
定格運転時(回転子周波数が低い):電流は内側の低抵抗導体に流れる→銅損が少なく高効率
深溝かご形誘導電動機の始動原理
深溝かご形誘導電動機は、幅が狭く深い(縦長の)スロットに導体を配置した改良型です。
- 始動時:表皮効果により電流はスロット上部(高抵抗)に集中→大きな始動トルク
- 定格運転時:電流はスロット全体(低抵抗)に均一に流れる→高効率
巻線形誘導電動機の始動法:外部抵抗制御の活用

巻線形誘導電動機は、スリップリングを介して回転子巻線に外部抵抗を接続できます。これを利用して、始動特性と運転効率を両立させることができます。
- 始動時:外部抵抗を最大にする→二次抵抗が大きい→最大トルク発生滑りが大きくなる→始動トルクが増加
- 加速中:外部抵抗を徐々に減少させる→スムーズに加速
- 定格運転時:外部抵抗をゼロ(短絡)にする→二次銅損が最小→高効率運転
試験対策:電験3種 機械科目 誘導電動機の重要ポイント

最重要:比例推移の法則を完全マスター
二次抵抗を k 倍にすると、最大トルク発生滑りも k 倍になります。最大トルクの値は変わりません。
始動特性と効率のトレードオフ
| 二次抵抗の大きさ | 始動トルク | 定格運転効率 |
|---|---|---|
| 大きい | 大きい ↑ | 低い ↓ |
| 小さい | 小さい ↓ | 高い ↑ |
巻線形誘導電動機は外部抵抗で使い分けることで、このトレードオフを解決しています。
かご形の改良型まとめ
| 種類 | 原理 | 特徴 |
|---|---|---|
| 普通かご形 | — | シンプル・安価。始動特性は普通。 |
| 二重かご形 | 表皮効果 | 外側(高抵抗)と内側(低抵抗)の2層構造 |
| 深溝かご形 | 表皮効果 | 縦長スロットで上部(高抵抗)・下部(低抵抗)を使い分け |
まとめ:令和3年度 問3 の解答は(2)

今回は、三相誘導電動機の特性に関する問題を通して、比例推移の法則やかご形電動機の種類について学びました。
特に、比例推移における「二次抵抗を大きくすると、最大トルクを発生する滑りも大きくなる」という関係は絶対に覚えておきましょう。「小さくなる」と間違えやすい典型的なひっかけ問題です。
この問題の正解は (2) です。

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