電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「かご形の始動方式」は容量別の使い分けを問う頻出テーマです。本記事では、平成18年度 A問題2「3つの始動方式」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
整理はシンプル——小容量=全電圧(直入れ)、中容量=Y−Δ始動(電流・トルク1/3)、大容量=始動補償器(三相単巻変圧器)。容量の階段に3方式を並べれば完答です。
平成18年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
容量の階段に3つの始動方式を並べるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成18年度 A問題2(要約)
a. 5 kW程度以下の小容量では、(ア)に与える影響が小さいので直接電源電圧を印加する。b. 5〜15 kW程度では、まず固定子巻線を(イ)にして加速し、定格速度近くで(ウ)に切り換える。この方法では(ウ)で直接始動した場合に比べ、始動電流・始動トルクはともに(エ)倍になる。c. 15 kW程度以上では、まず(オ)により低電圧を供給し、定格速度近くで全電圧を供給する。
(1) 絶縁電線・Δ結線・Y結線・1/√3・三相単巻変圧器 (2) 電源系統・Δ結線・Y結線・1/√3・三相単巻変圧器 (3) 絶縁電線・Y結線・Δ結線・1/√3・三相可変抵抗器 (4) 電源系統・Δ結線・Y結線・1/3・三相可変抵抗器 (5) 電源系統・Y結線・Δ結線・1/3・三相単巻変圧器
出題のポイント:容量の階段に3方式を並べる
かご形誘導電動機の始動法は「容量が大きくなるほど、電圧を下げる手間をかける」という一本の筋で並んでいます。問題文が容量を明示してくれているので、階段に当てはめるだけです。
| 容量の目安 | 始動方式 | どうやって電圧を下げるか | 始動電流・トルク |
| 〜5 kW | 全電圧始動(直入れ) | 下げない | 電流は定格の4〜6倍 |
| 5〜15 kW | Y-Δ始動 | 結線をYにして相電圧を1/√3 | どちらも1/3 |
| 15 kW〜 | 始動補償器 | 三相単巻変圧器のタップ | どちらも k2 倍 |

空欄を確定する
(ア):直入れが許されるのは電源系統への影響が小さいから
始動電流は定格の4〜6倍ですが、5 kW 程度なら絶対値そのものが小さいので、電源系統の電圧降下が許容範囲に収まります。(ア)=電源系統。
☝️ ひっかけの作り方:「絶縁電線に与える影響が小さい」では文の意味が通りません。始動電流が問題になるのは電線の発熱ではなく、系統電圧の瞬時低下です(始動は数秒で終わるので電線は熱くなりません)。(ア)で(1)(3)が消えます。
(イ)(ウ):Yで始めてΔで回す
低い電圧で始動したいのだから、相電圧が1/√3になるY結線で始動し、加速したらΔに戻して定格電圧で運転します。(イ)=Y結線、(ウ)=Δ結線。順序が逆では意味がありません。
(エ):電流もトルクも1/3
(エ)=1/3。「1/√3」を選ばせるのが定番の罠ですが、1/√3 は相電圧の比であって、問われているのは始動電流と始動トルクの比です。
(オ):大容量は三相単巻変圧器
始動補償器(コンドルファ始動器)は三相単巻変圧器です。タップで50〜80 % の電圧を作って始動し、加速したら全電圧に切り替えます。(オ)=三相単巻変圧器。
「三相可変抵抗器」は不適切です。一次側に抵抗を入れれば確かに電圧は下がりますが、抵抗で消費される分がすべて熱になり、大容量では発熱が大きすぎます。変圧器なら損失なしで電圧を下げられる——これが単巻変圧器を使う理由です。


なぜ始動電流を抑えなければならないのか
始動電流が大きいと何が困るのか——電動機自身ではなく、周りの機器が困ります。数字で見てみましょう。
線路インピーダンス0.1 Ω の系統(200 V)に、定格50 A の電動機をつないだとします。
定格の6倍。
200 V に対して15 % の低下。
電圧降下は5 % に収まる。
15 % も電圧が下がると、同じ系統の照明がちらつき、他の電動機のトルクが不足し(T∝V² なので72 % に落ちます)、電子機器が誤動作します。始動電流を抑えるのは、自分のためではなく系統のため——(ア)が「電源系統」である理由がここにあります。
始動電流を抑える代償は、必ずトルクの低下です。電流を1/3にすればトルクも1/3——電圧を下げる方式では、この2つを分離できません。分離できるのは、巻線形の二次抵抗制御(電流を下げてトルクを上げられる)とインバータ(周波数を下げるので電流を増やさずトルクを保てる)だけです。
始動補償器はY-Δ始動の一般化
始動補償器のタップで電圧を k 倍にしたとき、電流とトルクがどうなるかを整理すると、Y-Δ始動が特別な場合にすぎないことが分かります。
| 電動機の端子電圧 | 電動機に流れる電流 | 電源側の線電流 | 始動トルク | |
| 始動補償器(タップ k) | kV | kI | k2I | k2T |
| Y-Δ(k=1/√3) | V/√3 | I/√3 | I/3 | T/3 |
| 50 % タップ | 0.5V | 0.5I | 0.25I | 0.25T |
| 80 % タップ | 0.8V | 0.8I | 0.64I | 0.64T |
電源側の線電流が k2 倍になるのは、変圧器が電圧を下げた分だけ一次側の電流を減らすからです。電動機には kI が流れているのに、電源から見ると k2I しか流れていない——この「もう一段の得」が、リアクトル始動(電流は k 倍のまま)に対する始動補償器の優位点です。
k=1/√3=0.577 を代入すると、電源電流もトルクも1/3——Y-Δ始動とぴったり一致します。Y-Δ始動は「変圧器を使わずに k=0.577 を実現する方法」だと言えます。安い代わりに比率を選べないのが違いで、始動補償器ならタップで50 %・65 %・80 % と選べます。
⏱️ 本番での進め方
① 容量の階段:〜5 kW 直入れ/5〜15 kW Y-Δ/15 kW〜 始動補償器。
② (エ)は1/3。1/√3 は相電圧の比であって、電流・トルクの比ではない。
③ (イ)(ウ)の順序でも2肢消える——低い電圧で始めたいのだからYが先。
④ 始動補償器=三相単巻変圧器。抵抗器では熱になるだけで大容量に使えない。
💡 覚え方
小は直入れ、中はY-Δ(電流もトルクも1/3)、大は始動補償器(三相単巻変圧器)。始動電流を抑えるのは電源系統の電圧降下を防ぐため。タップ k の始動補償器では、電動機電流 kI に対して電源側は k2I——k=1/√3 を入れるとY-Δ始動と一致する。
⚠️ よくある間違い
(エ)に1/√3を入れるのが最頻の誤りです。1/√3 は電圧の比で、トルクは2乗に比例するので1/3、電源側の線電流も1/3です。もう一つは(オ)に「三相可変抵抗器」——抵抗では下げた分が全部熱になるので、大容量の標準始動法にはなりません。

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