電験3種 機械科目 平成30年度 問8は、変圧器・直流電動機・誘導電動機・同期電動機の共通点と相違点を問う「穴埋め選択問題」です。各機器の原理・等価回路・制御方式の特徴をしっかり理解していれば確実に正解できます。この記事では、スライドに沿って一問一答形式でわかりやすく解説します。
📘 各種回転機と変圧器の特徴比較
今回解説するのは、電験3種 機械科目 平成30年度 問8(書籍では問33として掲載)です。テーマは「各種回転機と変圧器の特徴比較」。変圧器・誘導電動機・直流電動機・同期電動機という4つの主要な電気機器について、その共通点と相違点を正しく理解することが求められます。
📄 問題文(原文)
問33 (平成30年 問題8)
次の文章は,変圧器,直流電動機,誘導電動機及び同期電動機の共通点や相違点に関する記述である.
a ア と,負荷抵抗を接続した イ の等価回路は,電源からの電流が励磁電流と負荷電流に分かれるなど,原理及び構成に共通点が多い.相違点は,ア における二次側の負荷抵抗値が,滑り s によって変化するところである.
b 磁束を与える界磁電流と,トルクに比例する電機子電流を独立して制御できる ウ は,広範囲な回転速度で精密なトルクの制御ができる.
構造が簡単で丈夫なため広く使われている ア も,インバータを用いた制御によって,ウ と同様な運転特性をもたせることができる.
c ウ と エ は,界磁電流で励磁を制御するなど,原理及び構成に共通点が多い.相違点は,エ の出力に負荷角が関与するところである.
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
|---|---|---|---|---|
| (1) | 変圧器 | 誘導電動機 | 直流電動機 | 同期電動機 |
| (2) | 直流電動機 | 同期電動機 | 変圧器 | 誘導電動機 |
| (3) ✅ 正解 | 誘導電動機 | 変圧器 | 直流電動機 | 同期電動機 |
| (4) | 変圧器 | 直流電動機 | 誘導電動機 | 同期電動機 |
| (5) | 誘導電動機 | 変圧器 | 同期電動機 | 直流電動機 |
🎭 今回の主役たち ― 4つの電気機器の個性
この問題に登場する4つの電気機器を整理しましょう。それぞれの「個性」を理解することが、穴埋め問題を解く鍵です。
| 機器名 | 電源 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 変圧器 | 交流 | 電圧変換・T形等価回路(二次側は固定インピーダンス) |
| 誘導電動機 | 交流 | 構造簡単・堅牢。二次側抵抗が滑り s で変化 |
| 直流電動機 | 直流 | 界磁電流と電機子電流を独立制御 → 精密なトルク制御 |
| 同期電動機 | 交流 | 界磁制御・負荷角 δ が出力に関与・同期速度で一定 |
🔍 記述 a の解説 ― 等価回路が似ている2つは?
ポイント:「電源電流が励磁電流と負荷電流に分かれる等価回路」とは?
記述 a のキーワードは「等価回路」と「滑り s」です。変圧器と誘導電動機は、どちらもT形等価回路(またはL形等価回路)で表現でき、電源からの電流が励磁電流(鉄心の磁化に使われる電流)と負荷電流(エネルギーを伝達する電流)に分岐するという共通の構造を持ちます。
しかし、相違点があります。変圧器の二次側には固定の負荷インピーダンスが接続されるのに対し、誘導電動機の二次側抵抗は「滑り s」によって変化します。
🔑 誘導電動機の二次側等価抵抗
\[ R_2′ / s \]ここで、s(滑り)は次の式で定義されます:
\[ s = \frac{N_s – N}{N_s} \]Ns:同期速度〔min−1〕,N:回転速度〔min−1〕
✅ 結論(記述 a)
- (ア) = 誘導電動機:二次側抵抗が滑り s によって変化する
- (イ) = 変圧器:負荷抵抗を接続した等価回路(二次側は固定)
⚡ 変圧器 vs 誘導電動機 ― T形等価回路の違い
変圧器の等価回路
変圧器の等価回路では、一次側インピーダンス → 励磁ブランチ(励磁電流が流れる並列回路)→ 二次側負荷インピーダンス(固定値)という構成になっています。二次端子に負荷インピーダンスがそのまま接続されます。
誘導電動機の等価回路
誘導電動機の等価回路は変圧器と同じT形ですが、二次側の等価抵抗が固定ではなく、滑り s に依存して変化します。
📐 誘導電動機の二次側等価抵抗の分解
\[ \frac{R_2′}{s} = R_2′ + R_2′ \cdot \frac{1-s}{s} \]左辺の \( R_2’/s \) は、二次銅損に対応する抵抗 \( R_2′ \) と、機械的出力に対応する抵抗 \( R_2′(1-s)/s \) の和として解釈できます。
| 滑り s の値 | 状態 | 二次電流 |
|---|---|---|
| s = 1 | 停止(始動時) | 最大(始動電流) |
| 0 < s < 1 | 通常運転 | 負荷に応じた値 |
| s → 0 | 同期速度に接近 | 最小(無負荷に近い) |
🎮 記述 b の解説 ― 精密なトルク制御ができるのは?
ポイント:「界磁電流と電機子電流を独立して制御できる」機器は?
記述 b のキーワードは「界磁電流と電機子電流の独立制御」と「広範囲な回転速度での精密なトルク制御」です。
直流電動機(他励・分巻)は、磁束を作る界磁電流と、トルクを生み出す電機子電流を互いに独立して制御できます。これにより、広範囲な回転速度で精密なトルク制御が可能です。
🔑 直流電動機のトルク式
\[ T = k \cdot \Phi \cdot I_a \]T:トルク〔N·m〕,k:機械定数,Φ:磁束(界磁電流で制御),Ia:電機子電流(独立して制御可能)
磁束 Φ と電機子電流 Ia をそれぞれ独立して制御できるため、任意の速度で任意のトルクを精密に発生させることができます。
誘導電動機 + インバータ = 直流電動機と同等の性能
一方、誘導電動機(かご形)は構造が簡単で堅牢なため広く使われていますが、従来は速度制御が難しいという課題がありました。しかし、インバータ(V/f制御・ベクトル制御)を用いることで、直流電動機と同様な運転特性を実現できます。
✅ 結論(記述 b)
- (ウ) = 直流電動機:界磁・電機子を独立制御 → 精密トルク制御
- (ア) = 誘導電動機(記述 a と一致):インバータで直流機と同等の特性を実現
🤝 記述 c の解説 ― 界磁電流で励磁する仲間
ポイント:「界磁電流で励磁を制御する」共通点を持つ機器は?
記述 c のキーワードは「界磁電流で励磁を制御」という共通点と、「負荷角が出力に関与」という相違点です。
直流電動機と同期電動機は、どちらも界磁電流によって励磁(磁束)を制御するという共通の原理を持ちます。しかし、同期電動機には直流電動機にない特徴があります。それが「負荷角(δ)」です。
🔑 同期電動機の出力公式
\[ P = \frac{V E_f}{X_s} \sin\delta \]V:端子電圧〔V〕,Ef:逆起電力(界磁電流で制御)〔V〕,Xs:同期リアクタンス〔Ω〕,δ:負荷角〔rad〕
出力 P は負荷角 δ の正弦(sin)に比例します。δ = 90° のとき最大出力となり、これを超えると脱調します。
✅ 結論(記述 c)
- (ウ) = 直流電動機(記述 b と一致):界磁制御が共通
- (エ) = 同期電動機:出力に負荷角 δ が関与
🎯 解答まとめ ― 正解は (3)!
✅ 正解:(3)
| 空白 | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| (ア) | 誘導電動機 | 等価回路に滑り s が関与 / 構造簡単・堅牢 |
| (イ) | 変圧器 | 負荷抵抗を接続した等価回路(二次側固定) |
| (ウ) | 直流電動機 | 界磁・電機子を独立制御 → 精密トルク制御 |
| (エ) | 同期電動機 | 出力に負荷角 δ が関与 |
📌 試験で使える!各機器の特徴まとめ
🔷 変圧器
- T形等価回路(励磁ブランチ + 負荷ブランチ)
- 二次側負荷は固定インピーダンス
- 誘導電動機と等価回路の構造が共通
🔷 誘導電動機
- 変圧器と同じT形等価回路
- 二次側抵抗 = \( R_2’/s \)(滑りで変化)
- 構造が簡単・堅牢(かご形)
- インバータ制御で直流電動機と同等の特性を実現
🔷 直流電動機
- 界磁電流(磁束)と電機子電流(トルク)を独立制御
- 広範囲な速度・精密なトルク制御が可能
- 同期電動機と界磁制御の原理が共通
🔷 同期電動機
- 界磁電流で励磁制御(直流電動機と共通)
- 出力 \( P \propto \sin\delta \)(負荷角が関与)
- 回転速度は同期速度で一定
⚙️ 補足 ― インバータ制御と現代の電動機
従来の誘導電動機の課題
商用電源(50Hz/60Hz固定)に直接接続された誘導電動機は、同期速度が固定されるため速度制御が難しく、トルク制御の精度も低いという課題がありました。
インバータ技術の登場
インバータは直流を任意の周波数・電圧の交流に変換する装置です。これにより:
- V/f制御:電圧と周波数の比を一定に保ちながら周波数を変化させ、速度を制御
- ベクトル制御(FOC):磁束成分と電流成分を独立制御し、直流電動機と同等の精密なトルク制御を実現
現代の応用例
| 応用分野 | 内容 |
|---|---|
| 電気自動車(EV) | インバータ制御による高効率なモーター駆動 |
| 工場の生産ライン | コンベアやポンプの省エネ速度制御 |
| エアコン・冷蔵庫 | インバータ圧縮機による省エネ運転 |
📝 今日のまとめ ― 4機器の個性を覚えよう!
この問題の攻略法
- 等価回路の形 → 変圧器と誘導電動機はT形等価回路が共通
- 滑りの有無 → 誘導電動機だけが二次側抵抗に滑り s が入る
- 独立制御 → 界磁と電機子を独立制御できるのは直流電動機
- 負荷角 → 同期電動機の出力に負荷角 δ が関与
次のステップ
- 各機器のT形等価回路を自分で描けるようにしよう
- 誘導電動機の滑りと二次抵抗の関係を式で理解しよう
- 同期電動機の出力公式 \( P = \frac{VE_f}{X_s}\sin\delta \) を暗記しよう
✅ 正解:(3) 誘導電動機 / 変圧器 / 直流電動機 / 同期電動機
電験3種 機械科目 平成30年度 問8 解説 | 各種回転機と変圧器の特徴比較

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