電験3種の機械科目で頻出の「変圧器の短絡試験」に関する問題。「短絡試験のデータから、どうやって漏れリアクタンスを計算すればいいの?」と悩んでいませんか?
この記事では、平成19年度 機械科目 問7の過去問を用いて、短絡試験の結果(電圧、電流、電力)から漏れリアクタンスを導き出す手順を、図解を交えてステップバイステップで分かりやすく解説します。
この記事を読めば、短絡試験の等価回路の考え方から、インピーダンス三角形を用いた計算方法まで、試験で確実に得点するためのポイントが身につきます。
問題文:変圧器の漏れリアクタンスを求める

単相変圧器の一次側に電流計,電圧計及び電力計を接続して,二次側を短絡し,一次側に定格周波数の電圧を供給し,電流計が 40 [A] を示すよう一次側の電圧を調整したところ,電圧計は 80 [V],電力計は 1 200 [W] を示した。この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンス [Ω] の値として,最も近いのは次のうちどれか。
ただし,電流計,電圧計及び電力計は理想的な計器であるものとする。
(1) 1.28 (2) 1.85 (3) 2.00 (4) 2.36 (5) 2.57
問題の概要と条件整理

まずは、問題で与えられている条件と、最終的に何を求めるのかを整理しましょう。
短絡試験とは?
短絡試験とは、二次側を短絡し、一次側に低電圧を加えて定格電流を流す試験です。この試験により、変圧器の漏れインピーダンスや銅損を求めることができます。
与えられた条件
- 電流計の値(短絡電流)\( I = 40 \text{ [A]} \)
- 電圧計の値(短絡電圧)\( V = 80 \text{ [V]} \)
- 電力計の値(短絡時の消費電力)\( P = 1200 \text{ [W]} \)
求めるもの
一次側からみた漏れリアクタンス \( x \text{ [}\Omega\text{]} \)
短絡試験の等価回路

短絡試験の計算を行う上で、等価回路を正しくイメージすることが非常に重要です。
短絡試験では、定格電圧の数%というはるかに低い電圧を加えます。そのため、鉄損や励磁電流は非常に小さくなり、励磁回路の影響は無視することができます。
したがって、短絡試験時の等価回路は、一次側から見た直列インピーダンス \( Z = r + jx \) のみで表されるシンプルな直列回路になります。この回路において、電力 \( P = 1200 \text{ [W]} \) はすべて抵抗 \( r \) での消費電力(銅損)となります。
計算手順 STEP 1:インピーダンス Z を計算する

まずは回路全体のインピーダンスの大きさ \( Z \) を求めます。等価回路より、一次側から見たインピーダンス \( Z \) は、オームの法則を用いて電圧を電流で割ることで求められます。
ここで求めた \( Z \) は、抵抗とリアクタンスを合成したインピーダンスの大きさ(絶対値)であることに注意してください。
計算手順 STEP 2:抵抗分 r を計算する

次に、インピーダンスのうちの抵抗成分 \( r \) を求めます。電力計が測定する値 \( P \) は有効電力です。等価回路において電力を消費するのは抵抗 \( r \) のみなので、電力の公式 \( P = I^2 r \) を変形して \( r \) を求めます。
※ \( 40^2 = 1600 \) の計算ミスに注意しましょう。単位を確認すると \( \text{[W]} / \text{[A]}^2 = \text{[}\Omega\text{]} \) となり、正しいことが分かります。
計算手順 STEP 3:漏れリアクタンス x を計算する

いよいよ、問題で問われている漏れリアクタンス \( x \) を求めます。インピーダンス \( Z \)、抵抗 \( r \)、リアクタンス \( x \) の間には、直角三角形の三平方の定理と同じ関係式 \( Z^2 = r^2 + x^2 \) が成り立ちます。
選択肢の中で最も近い値は (2) 1.85 となります。
インピーダンス三角形で整理しよう

ここまでの計算を視覚的に整理するために、「インピーダンス三角形」をイメージすると理解が深まります。変圧器の等価インピーダンスは、直角三角形の各辺に対応させることができます。
- 斜辺 \( Z = 2 \text{ [}\Omega\text{]} \):インピーダンス全体(電圧と電流から求めた値)
- 底辺 \( r = 0.75 \text{ [}\Omega\text{]} \):抵抗分(電力計の値から求めた有効成分)
- 高さ \( x = 1.854 \text{ [}\Omega\text{]} \):リアクタンス分(漏れ磁束による無効成分)
ひっかけポイント・よくある間違い

1. Z を直接 x と間違える
STEP 1で求めた \( Z = 2 \text{ [}\Omega\text{]} \) をそのまま答えにしてしまうミスです。選択肢 (3) 2.00 が用意されているため、引っかかりやすい罠です。\( Z \) はインピーダンス全体であり、求めるべき \( x \) はその一部であることを忘れないでください。
2. r の計算で I² を忘れる
抵抗を求める際、\( r = P/I \) と間違えてしまうことがあります。正しくは \( r = P/I^2 \) です。単位を確認すると \( \text{[W]} / \text{[A]}^2 = \text{[}\Omega\text{]} \) となり、正しいことが分かります。
3. 短絡試験の前提を忘れる
短絡試験では「励磁回路を無視してよい」という前提があります。定格運転時の複雑な等価回路で考えようとすると、計算が行き詰まってしまいます。
解答まとめ:計算の流れ

- 【与条件】 \( I = 40 \text{ [A]} \)、\( V = 80 \text{ [V]} \)、\( P = 1200 \text{ [W]} \)
- 【STEP 1】 \( Z = V/I = 80/40 = 2 \text{ [}\Omega\text{]} \)
- 【STEP 2】 \( r = P/I^2 = 1200/1600 = 0.75 \text{ [}\Omega\text{]} \)
- 【STEP 3】 \( x = \sqrt{Z^2 – r^2} = \sqrt{3.4375} \approx 1.854 \text{ [}\Omega\text{]} \)
- 【正答】(2) 1.85
試験で使う重要公式まとめ

| 公式 | 式 | 備考 |
|---|---|---|
| インピーダンス | \( Z = V_s / I_s \) | 短絡電圧÷短絡電流 |
| 抵抗分 | \( r = P_s / I_s^2 \) | 電力計値÷電流の2乗 |
| リアクタンス | \( x = \sqrt{Z^2 – r^2} \) | インピーダンス三角形から |
| 力率 | \( \cos\theta = r / Z \) | この問題では 0.375 |
まとめ

- 短絡試験の目的:変圧器の漏れインピーダンス(\( r \), \( x \))を求める試験である。
- 等価回路:短絡試験では励磁回路を無視し、直列 \( Z = r + jx \) のみで考える。
- 計算の流れ:\( Z \rightarrow r \rightarrow x \) の順に求めるのが鉄則。
- インピーダンス三角形:\( Z^2 = r^2 + x^2 \) の関係を常にイメージする。
最終的な正答は (2) 1.85 [Ω] でした。
よくある質問(FAQ)
Q. なぜ短絡試験では励磁回路を無視できるのですか?
短絡試験では、二次側を短絡しているため、一次側に定格電流を流すのに必要な電圧(インピーダンス電圧)は、定格電圧の数%程度と非常に低くなります。電圧が低いため、鉄心を通る磁束も少なくなり、励磁電流や鉄損は実用上無視できるほど小さくなるからです。
Q. 電圧計・電流計・電力計の指示値から直接リアクタンスを求める公式はありますか?
直接求める単一の公式はありません。必ず「電圧と電流からインピーダンス \( Z \) を求める」「電力と電流から抵抗 \( r \) を求める」「\( Z \) と \( r \) からリアクタンス \( x \) を求める」という3ステップを踏む必要があります。
Q. 無負荷試験と短絡試験の違いは何ですか?
無負荷試験は「定格電圧」を加えて「鉄損と励磁回路の定数」を求める試験です。一方、短絡試験は「定格電流」を流して「銅損と漏れインピーダンス」を求める試験です。目的と求める定数が明確に異なります。

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