電験3種の機械科目では、変圧器に関する計算問題が頻出です。特に「二次側に負荷を接続したときの一次電流」を求める問題は、インピーダンスの一次換算という概念を正しく理解していないと解けません。
この記事では、平成18年度 機械科目 問題6を題材に、単相変圧器の負荷電流比の計算を、公式の意味から途中式・ひっかけポイントまで丁寧に解説します。
この記事を読めば、次のことが分かります。
- 定格一次電流 \( I_{1r} \) の求め方
- 二次側インピーダンスを一次側に換算する方法(なぜ \( a^2 \) 倍なのか)
- 負荷接続時の一次電流 \( I_1 \) の求め方
- 電流比 \( I_1 / I_{1r} \times 100 \) の計算と正答の選び方

問題文(平成18年度 機械科目 問題6)
まず、問題文を原文のまま確認しましょう。

定格容量 20〔kV・A〕,定格一次電圧 6 600〔V〕,定格二次電圧 220〔V〕 の単相変圧器がある.この変圧器の一次側に定格電圧の電源を接続し,二次側に力率が 0.8,インピーダンスが 2.5〔Ω〕 である負荷を接続して運転しているときの一次巻線に流れる電流を \( I_1 \)〔A〕 とする.定格運転時の一次巻線に流れる電流を \( I_{1r} \)〔A〕 とするとき,\( I_1 / I_{1r} \times 100 \)〔%〕 の値として,最も近いのは次のうちどれか.
ただし,一次・二次巻線の銅損,鉄心の鉄損,励磁電流及びインピーダンス降下は無視できるものとする.
(1)89 (2)91 (3)93 (4)95 (5)97
問題の条件を整理する

問題文から読み取れる条件を整理します。
| 項目 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 定格容量 | \( S_n \) | 20〔kV・A〕 |
| 定格一次電圧 | \( V_{1n} \) | 6 600〔V〕 |
| 定格二次電圧 | \( V_{2n} \) | 220〔V〕 |
| 負荷の力率 | \( \cos\theta \) | 0.8 |
| 負荷のインピーダンス | \( Z_L \) | 2.5〔Ω〕 |
また、問題文には「一次・二次巻線の銅損,鉄心の鉄損,励磁電流及びインピーダンス降下は無視できる」と明記されています。これは、この変圧器を理想変圧器として扱ってよいという意味です。
求めるものは、次の電流比です。
解法に使う公式・原理

この問題を解くために使う公式は4つです。
① 定格一次電流の公式
定格容量 \( S_n \) は「定格電圧 × 定格電流」で定義されるため、定格一次電流 \( I_{1r} \) は次の式で求められます。
② 巻数比(電圧比)
理想変圧器では、一次・二次の電圧比は巻数比 \( a \) に等しくなります。
③ インピーダンスの一次換算
二次側のインピーダンス \( Z_L \) を一次側に換算するには、巻数比の2乗を掛けます。
④ 一次電流の計算
理想変圧器として一次側に換算すると、一次電流 \( I_1 \) は次のように求められます。
STEP 1:定格一次電流 I₁r を求める

定格一次電流 \( I_{1r} \) は、定格容量と定格一次電圧から求めます。
ポイント1:単位変換を忘れずに。定格容量は 20〔kV・A〕 と与えられていますが、計算に使うときは 20 × 10³〔V・A〕 に変換する必要があります。この変換を忘れると桁が1000倍ずれてしまいます。
ポイント2:定格運転時の意味。定格運転時とは、変圧器が定格容量をフルに供給している状態のことです。このとき一次電流が \( I_{1r} \) になります。
STEP 2:負荷インピーダンスを一次側に換算する

次に、二次側の負荷インピーダンス \( Z_L = 2.5 \, [\Omega] \) を一次側に換算します。
巻数比の計算
一次換算インピーダンスの計算
なぜインピーダンス換算は a² 倍なのか
理想変圧器では、一次と二次の間で電圧と電流が次のように変換されます。
- 電圧:一次側は二次側の \( a \) 倍
- 電流:一次側は二次側の \( 1/a \) 倍(電力保存のため)
インピーダンスは「電圧 ÷ 電流」で定義されるため、一次側に換算すると
となり、\( a^2 \) 倍になることが分かります。これは変圧器の等価回路の基本的な考え方です。
STEP 3:負荷接続時の一次電流 I₁ を求める

一次換算インピーダンス \( Z_1 = 2\,250 \, [\Omega] \) が求まったので、一次電流 \( I_1 \) を計算します。
ポイント1(ひっかけ注意):力率 0.8 は使わない。問題文には「力率が 0.8」と与えられていますが、ここでは電流の大きさ(絶対値)を求めているため、インピーダンスの絶対値 \( |Z_L| = 2.5 \, [\Omega] \) をそのまま使います。力率を使って \( Z_L \) を分解する必要はありません。
ポイント2:一次電圧は定格電圧のまま。理想変圧器ではインピーダンス降下が無視できるため、一次電圧は常に定格電圧 6 600〔V〕 です。
STEP 4:電流比を計算して正答を選ぶ

STEP 1 と STEP 3 で求めた値を使って、電流比を計算します。
選択肢と比較すると、96.8〔%〕に最も近いのは 97 です。
| 選択肢 | 値 | 差(96.8との差) |
|---|---|---|
| (1) | 89 | 7.8 |
| (2) | 91 | 5.8 |
| (3) | 93 | 3.8 |
| (4) | 95 | 1.8 |
| (5) | 97 | 0.2 ← 最も近い |
正答:(5)97
ひっかけポイントと重要ポイントのまとめ

よくある誤りとひっかけポイント
この問題で受験者が間違えやすいポイントを3つ挙げます。
- 力率 0.8 を計算に使ってしまう。電流の大きさ(絶対値)を求める問題なので、インピーダンスの絶対値 \( |Z_L| = 2.5 \, [\Omega] \) をそのまま使えばよく、力率を使って有効分・無効分に分解する必要はありません。
- 定格容量の単位変換を忘れる。20〔kV・A〕を 20〔V・A〕のまま計算してしまうと、定格一次電流が 1000 分の 1 になってしまいます。必ず 20 × 10³〔V・A〕 に変換してください。
- インピーダンス換算を \( a \) 倍にしてしまう。電圧換算は \( a \) 倍ですが、インピーダンス換算は \( a^2 \) 倍です。混同しないよう注意が必要です。
重要ポイントのまとめ
- 理想変圧器では損失ゼロ、励磁電流ゼロとして扱う。
- 二次側インピーダンスの一次換算:\( Z_1 = a^2 \times Z_L \)
- 定格一次電流:\( I_{1r} = S_n / V_{1n} \)
- 巻数比:\( a = V_{1n} / V_{2n} = 6\,600 / 220 = 30 \)
まとめ
本記事では、電験3種 機械科目 平成18年度 問題6「単相変圧器の負荷電流比」を4つのステップに分けて解説しました。
- 定格一次電流 \( I_{1r} = S_n / V_{1n} \approx 3.030 \, [\text{A}] \)
- 巻数比 \( a = V_{1n} / V_{2n} = 30 \) を求め、一次換算インピーダンス \( Z_1 = a^2 \times Z_L = 2\,250 \, [\Omega] \) を計算
- 一次電流 \( I_1 = V_{1n} / Z_1 \approx 2.933 \, [\text{A}] \)
- 電流比 \( (I_1 / I_{1r}) \times 100 \approx 96.8 \, [\%] \) → 最も近い選択肢は (5)97
変圧器の問題では「理想変圧器として扱う」という条件が頻出です。この条件が与えられたら、損失・励磁電流・インピーダンス降下をすべて無視して計算できます。また、インピーダンスの一次換算(\( a^2 \) 倍)は変圧器の等価回路の基本中の基本ですので、確実に身につけておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 力率 0.8 は計算に使わないのですか?
A. この問題では「電流の大きさ(絶対値)の比」を求めているため、インピーダンスの絶対値 \( |Z_L| = 2.5 \, [\Omega] \) をそのまま使います。力率は電流の位相(有効分・無効分の比率)を表すものであり、電流の大きさには直接影響しません。もし「有効電力」や「無効電力」を求める問題であれば力率を使います。
Q2. インピーダンス換算はなぜ a² 倍なのですか?
A. 理想変圧器では電圧が \( a \) 倍、電流が \( 1/a \) 倍になります。インピーダンスは「電圧 ÷ 電流」で定義されるため、\( a \div (1/a) = a^2 \) 倍になります。電圧換算(\( a \) 倍)と混同しないよう注意してください。
Q3. 定格容量の単位 kV・A と kW の違いは何ですか?
A. kV・A(キロボルトアンペア)は皮相電力の単位で、電流と電圧の積です。kW(キロワット)は有効電力の単位で、皮相電力に力率を掛けたものです。変圧器の定格容量は皮相電力〔kV・A〕で表されます。
Q4. 理想変圧器と実際の変圧器の違いは何ですか?
A. 理想変圧器は、巻線の銅損(抵抗損)、鉄心の鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)、励磁電流(磁束を作るための電流)、インピーダンス降下がすべてゼロと仮定した変圧器です。実際の変圧器ではこれらの損失が存在しますが、電験3種の計算問題では「無視できる」と明記されることが多く、その場合は理想変圧器として扱います。
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