そんな風に思っていませんか?実は、**たった一つの「魔法の比率」**さえ覚えれば、パズルのように解けてしまう単元なんです。
今回は、平成25年度「機械」問4 という良問を使い、誘導機の最重要テクニック**「比例推移」**を、初心者の方に向けて世界一わかりやすく解説します。
スライド1:比例推移(ひれいすいい)って何?

まずは、この聞き慣れない言葉の意味から。「比例推移」とは、巻線形誘導電動機だけの特別な性質です。
ポイント 二次抵抗(回転子の抵抗)を変えると、トルクのカーブが**形を保ったままズレていく(推移する)**現象のこと 。
抵抗を大きくすると、モーターは同じ力を出そうとして回転数を落とします(滑りが増える)。この性質を利用して、速度をコントロールするのが「比例推移」です 。
スライド2:エネルギーの「黄金比」を覚えよう

誘導機の計算で一番大切なのは、**「入力されたエネルギーがどこへ行くか」です。これを「黄金比」**と呼びましょう 。
入力されたエネルギー $P_2$ は、以下の比率で「熱(損失)」と「仕事(出力)」に分かれます 。
$$P_2 : P_{c2} : P_o = 1 : s : (1-s)$$
- 入力 ($1$):回転子に入ってくるパワー
- 損失 ($s$):抵抗で熱になって消えるパワー
- 出力 ($1-s$):軸から取り出せる仕事のパワー
滑り $s$ とは、「入力の何割を熱として捨てているか」を表す数字なのです 。
スライド3:等価回路で見る「見えない抵抗」

電気回路図で見ると、モーターの出力は**「可変抵抗」**として描かれます 。
回路図の右側にある $\frac{1-s}{s}r’_2$ という部分。これが「出力」です 。 「えっ、出力なのに抵抗?」と思うかもしれませんが、電気の世界では**「エネルギーを消費すること=仕事をすること」**と考えるので、抵抗として表現するのです 。
スライド4:比例推移のメカニズム

ここで重要な公式が登場します。
$$\frac{r_2}{s} = \text{一定}$$
これは、**「抵抗 $r_2$ を $k$ 倍に増やしたら、滑り $s$ も $k$ 倍にすれば、同じトルクが出せる」**という意味です 。
グラフで見ると、抵抗を増やすと山なりのカーブが左側(滑りが大きい方)へスライドしていくのがわかります 。
スライド5:【実践】H25 機械 問4 に挑戦!

それでは、実際の問題を解いてみましょう。
問題の概要
- ある誘導電動機が、トルク一定で運転しています。
- 最初は滑り $s=0.01$ で運転していました。
- そこで抵抗を大きくしたら、損失(二次銅損)が30倍になってしまいました。
- さて、**出力は定格の何%**になったでしょうか?
スライド6:問題文の「暗号」を解読する

この問題には2つのヒントが隠されています 。
- 「二次電流一定(トルク一定)」
- $\rightarrow$ これは**「二次入力 $P_2$ も一定」**という意味です 。
- 「損失が30倍になった」
- 電流が同じなのに損失($I^2 R$)が30倍になったということは…?
- $\rightarrow$ **「抵抗 $r_2$ を30倍にしたんだな!」**と読み解きます 。
スライド7:【ステップ1】変化後の滑りを求める

ここで「比例推移」の法則を使います。
抵抗 $r_2$ が 30倍 になったなら、バランスを取るために滑り $s$ も 30倍 になります 。
- 元の滑り:$0.01$
- 新しい滑り:$0.01 \times 30 = \mathbf{0.3}$
抵抗(ブレーキ)をかけたせいで、滑りが大幅に悪化してしまいました。
スライド8:【ステップ2】出力の変化を計算する

出力の比率は $(1-s)$ で決まります 。
- 定格運転時(元の状態)
- $1 – 0.01 = \mathbf{0.99}$
- (入力の99%が仕事になっていた!)
- 抵抗を入れた後(今の状態)
- $1 – 0.3 = \mathbf{0.70}$
- (入力の70%しか仕事にならず、30%は熱で消えている…)
スライド9:【ステップ3】答えを出す

最後は割り算をするだけです 。
$$\text{出力比} = \frac{0.70}{0.99} \approx 0.707$$
答えは 約70%。選択肢の (4) が正解です 。
スライド10:物理的なイメージ(なぜ出力が減った?)

この現象を円グラフで見てみましょう 。
- 左(定格):ほとんど損失がなく、エネルギーを無駄なく使えています(青い部分が多い)。
- 右(抵抗挿入後):無理やり抵抗を入れたため、エネルギーの30%が「熱」として捨てられています(赤い部分)。その分、仕事に使える「出力」が減ってしまったのです 。
まさに「ブレーキを踏みながらアクセル全開」のような、もったいない運転状態ですね。
スライド11:【補足】インバータ制御との違い

今は「インバータ制御(VVVF)」が主流ですが、試験ではなぜかこの古い「抵抗制御」が出ます 。
- 抵抗制御:エネルギーを熱として捨てて減速する(効率悪い)。
- インバータ:周波数を変えて減速する(効率良い・省エネ)。
試験で抵抗制御が出るのは、「エネルギー保存の法則」や「物理現象」を理解しているか試すのに最適だからです。
スライド12:試験直前チェックリスト

最後に、これだけは覚えておきましょう!
- 黄金の比率: $P_2 : P_{c2} : P_o = 1 : s : (1-s)$
- 比例推移: $\frac{r_2}{s} = \text{一定}$ (トルク一定のとき)
- 合言葉: 「滑り $s$ は、捨てられる熱の割合」
この3つさえ頭に入っていれば、誘導機の計算問題は怖くありません。自信を持って試験に挑んでください!

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