誘導機14【電験3種 機械】同期ワット(二次入力)の計算とは?平成28年 A問題4 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成28年度 A問題4 同期ワットとは二次入力!何kWになる?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「同期ワット(二次入力)」はトルクと電力の関係を理解しているかを一発で試せる頻出テーマです。本記事では、平成28年度 A問題4「トルクから二次入力を求める」問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

機械出力は「実際の回転速度×トルク」、二次入力は「同期速度×トルク」。使う速度が違うだけです。だから二次入力は「同期ワット」と呼ばれます。機械出力20 kWはダミーに近い検算用データです。

目次

平成28年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成28年度 A問題4 問題文(かご形三相誘導電動機の同期ワット)
平成28年度 機械科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成28年度 A問題4

定格周波数 50 Hz、6 極のかご形三相誘導電動機があり、トルク 200 N・m、機械出力 20 kW で定格運転している。このときの二次入力(同期ワット)の値 [kW] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 19  (2) 20  (3) 21  (4) 25  (5) 27

出題のポイント:どの速度を掛けるかで名前が変わる

トルクに速度を掛ければ電力になる——ただし誘導機には速度が2つあるので、掛ける相手で答えの意味が変わります

名前意味本問での値
二次入力(同期ワット)P2=ωsT「同期速度で回したつもり」の電力20.9 kW(求める値)
機械出力Po=ωT実際の速度で出している電力20 kW(与えられている)
二次銅損Pc2=P2−Po=sP2「つもり」と「実際」の差0.9 kW

「同期ワット」という名前は、まさに「同期速度で回したと仮定したときの電力」という意味です。実際にはそこまで回っていないので、差の分だけ二次銅損として熱になっています

誘導電動機の機械出力と二次入力を実回転角速度および同期角速度で比較した図
機械出力は実速度×トルク、二次入力は同期速度×トルクです。

3ステップで解く

\( N_s=\dfrac{120\times50}{6}=1000\ \mathrm{min^{-1}} \)
❶ 同期速度
6極・50 Hz。極数を極対数と混同しないこと。
\( \omega_s=\dfrac{2\pi\times1000}{60}=104.7\ \mathrm{rad/s} \)
❷ 同期角速度
min−1 のままでは掛けられない
\( P_2=\omega_sT=104.7\times200=20\,900\ \mathrm{W}=20.9\ \mathrm{kW} \)
❸ 二次入力
最も近いのは21 kW
答え二次入力(同期ワット) 約20.9 kW(3) 21 kW
周波数50ヘルツ、6極、トルク200ニュートンメートルから同期ワットを求める3段階の式
同期速度を毎分回転数から角速度へ変換し、トルクを掛けて二次入力を求めます。
同期速度1000毎分、同期角速度104.7ラジアン毎秒、二次入力20.9キロワットを示す解答図
二次入力は約20.9kWなので、最も近い(3) 21kWが正解です。

与えられた機械出力20 kW は何のためにあるのか

本問は機械出力20 kW を使わずに解けます。では、なぜ与えられているのか——検算のため、そして誤答へ誘うためです。

まず検算に使ってみましょう。二次入力と機械出力が分かれば、滑りも回転速度も逆算できます

\( s=1-\dfrac{P_o}{P_2}=1-\dfrac{20}{20.9}=0.043 \)
❶ 滑り
4.3 %——誘導電動機として自然な値。
\( P_{c2}=P_2-P_o=20.9-20=0.9\ \mathrm{kW} \)
❷ 二次銅損
sP2=0.043×20.9=0.9 ✓
\( N=N_s(1-s)=1000\times0.957=957\ \mathrm{min^{-1}} \)
❸ 回転速度

滑り4.3 %、回転速度957 min−1——どちらも誘導電動機として自然な値です。答えが妥当だということが、これで確認できます

そして誤答への誘い——「20 kW」がそのまま選択肢(2)に置かれているのです。問題文にある数字をそのまま答えてしまうという、意外に多い誤りを狙った配置だと言えます。

選択肢の正体

選択肢その値の正体判定
(1) 1920 × 0.957(機械出力に (1−s) を掛けた)方向が逆
(2) 20与えられた機械出力そのもの問題文の数字をそのまま答えた
(3) 21104.7 × 200正解
(4) 25桁や係数の誤り
(5) 274極として ωs=157 で計算すると31 kWに近い極数の読み違い

方向で絞れます。二次入力は機械出力より必ず大きい(差が二次銅損)のですから、20 kW 以下の(1)(2)は即座に消せますさらに定格滑りは数 % ですから、20 kW の数 % 増し=21 kW 付近と目星がつきます。

トルクが分かれば、3つの電力が全部出る

この問題の構造をもう一段抽象化すると、「トルクは3つの電力への入口」だということが見えてきます。

トルクから3つの電力へ

\( P_2=\omega_sT \)  \( P_o=(1-s)P_2 \)  \( P_{c2}=sP_2 \)

トルクと滑りが分かれば、二次側の電力はすべて決まる——逆に、どれか一つが分かれば残りも出ます

与えられるもの求まるもの使う式
トルクと同期速度二次入力P2=ωsT
二次入力と滑り機械出力・二次銅損黄金比
二次銅損と滑り二次入力・機械出力P2=Pc2/s
機械出力と実速度トルクT=Po

この表のどこから入っても、二次側の全体が埋まります。誘導機の計算問題は、結局この地図の上をどう歩くかという問題——入口と出口を確認してから式を選ぶのが確実です。

⏱️ 本番での進め方
同期ワットには同期角速度。実速度を掛けると機械出力になってしまう。
二次入力 > 機械出力——20 kW 以下の選択肢は消せる。
定格滑りは数 %なので、20 kW の数 % 増し=21 kW 付近と目星がつく。
ω=2πN/60。「1分N回転 → 1秒N/60回転 → 1回転2π」と意味で覚える。

なぜトルクは「同期ワット」で表せるのか

P2=ωsT という関係は、単なる定義ではありません誘導機の性質から必然的に出てくるもので、比例推移の根拠にもなっています

二次入力とトルク

\( P_2=3\cdot\dfrac{r_2}{s}I_2^{\,2} \)  \( T=\dfrac{P_2}{\omega_s}=\dfrac{3}{\omega_s}\cdot\dfrac{r_2}{s}I_2^{\,2} \)

ωs は機械の作りと電源周波数で決まる定数——だからトルクは二次入力に正比例します。

「トルクに比例する量」だから、トルクの代わりに使える——これが同期ワットという言い方の値打ちです。N·m の代わりに W で語れるので、電力の計算とトルクの計算を行き来しなくて済みます

そしてこの式には r2/s が現れています。二次抵抗と滑りが同じ比なら同じトルク——比例推移そのものです。本問の P2=ωsT と、比例推移の r2/s=一定は、同じ式の別の読み方だということになります。

同じ式から読めること内容
P2=ωsT二次入力はトルクに比例(同期ワット)
T∝(r2/s)I22r2/s が同じなら同じトルク(比例推移)
T∝I22/s定トルクなら I2∝√s(電圧低下時の電流増加)
Pc2=sP2滑りの割合が熱(黄金比)

誘導機の主要な関係が、すべてこの一本の式から派生していることが分かります。公式を4つ覚えるのではなく、1つの式を4通りに読む——そのほうが確実で、しかも忘れません

本問は「トルクから二次入力を出す」という、この式の最も素直な使い方です。ここが出発点だと理解しておけば、他の3つの読み方にも自然につながります

💡 覚え方
「同期ワット=同期速度で回したつもりの電力」P2=ωsT機械出力は Po=ωT「つもり」と「実際」の差が二次銅損 sP2トルクと滑りが分かれば二次側の電力はすべて決まる——入口と出口を確認してから式を選ぶ

⚠️ よくある間違い
実際の回転速度で計算して20 kW とする(選択肢(2))のが本問の罠です。それは機械出力であって、問われているのは二次入力です。もう一つは極数6を極対数(3)と混同して同期速度を2 000 min−1 とすること——120f/p の p は極数です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次