電験3種・機械科目で出題される「誘導電動機」。今回は、平成28年度 問4 を題材に、多くの受験生が混乱しやすい**「二次入力(別名:同期ワット)」**の計算方法を解説します。
「トルク」と「回転数」の関係さえ分かれば、実はとてもシンプルな計算で解ける問題です。スライドの流れに沿って、初心者の方にもわかりやすく紐解いていきましょう。
スライド1:今回のテーマは「二次入力(同期ワット)」

今回の主役は「二次入力」です。電験の過去問では「同期ワット」という言葉で呼ばれることもあります。
難しそうな名前に聞こえますが、要するに**「回転子(回る部分)に、磁界からどれだけのパワーが渡されたか」**を計算する問題です。
公式の暗記だけでなく、物理的な意味を理解すれば確実に得点源にできます。
スライド2:問題文の確認

まずは問題設定を確認しましょう。
問題の概要
- 定格周波数:$50\text{ Hz}$
- 極数:$6$極
- トルク:$200\text{ N}\cdot\text{m}$
- 機械出力:$20\text{ kW}$
- このときの「二次入力(同期ワット)」はいくらか?
選択肢は (1) 19 から (5) 27 まであります。
スライド3:現状整理:与えられた条件とゴール

計算を始める前に、手持ちの「武器(データ)」を整理します。
- GIVEN(条件):
- 周波数 $f = 50\text{ Hz}$
- 極数 $p = 6$
- トルク $T = 200\text{ N}\cdot\text{m}$
- 機械出力 $P_o = 20\text{ kW}$ (※これは最終的な「結果」の値です)
- GOAL(目標):
- 二次入力 $P_2 = ?$
スライド4:エネルギーの流れ(パワーフロー)を可視化する

ここで、誘導機の中でのエネルギーの流れをイメージしてください。
$$P_1(\text{一次入力}) \rightarrow [P_2(\text{二次入力})] \rightarrow P_o(\text{機械出力})$$
重要なのは、「二次入力 $P_2$ から、損失(二次銅損)が引かれて、機械出力 $P_o$ になる」という順序です。 つまり、計算結果の $P_2$ は、必ず機械出力 $20\text{ kW}$ よりも少し大きい値になるはずです。
(※この時点で、選択肢(1)と(2)は答えの候補から外れる可能性が高いと予想できます)
スライド5:「同期ワット」の物理的定義

ここが最大のポイントです。電力(ワット)は、回転速度とトルクの掛け算で求まりますが、使う「速度」が違います。
| 項目 | 計算式 | 使う速度 |
| 機械出力 $P_o$ | $P_o = \omega \times T$ | 実際の回転速度 $\omega$ |
| 二次入力 $P_2$ | $P_2 = \omega_s \times T$ | 同期速度 $\omega_s$ |
二次入力(同期ワット)を求めたいときは、**「同期速度(磁界のスピード)」**を使うのが鉄則です 。
スライド6:Step 1. 同期速度 $N_s$ を求める

まずは、回転磁界の速度(rpm)を求めましょう。おなじみの公式です。
$$N_s = \frac{120 f}{p}$$
数値を代入します。
$$N_s = \frac{120 \times 50}{6} = \frac{6000}{6} = 1000\text{ min}^{-1}$$
磁界は1分間に1000回転しています 。
スライド7:Step 2. 同期角速度 $\omega_s$ へ変換する

トルクの単位が $[\text{N}\cdot\text{m}]$ なので、回転速度も $[\text{rad/s}]$(ラジアン毎秒)に直す必要があります。
これには $\frac{2\pi}{60}$ を掛けます。
$$\omega_s = \frac{2\pi N_s}{60}$$
$$\omega_s = \frac{2\pi \times 1000}{60} = \frac{100\pi}{3}$$
電卓で計算すると、$\omega_s \approx 104.72\text{ rad/s}$ となります 。
スライド8:Step 3. 二次入力(同期ワット)の導出

準備は整いました。公式 $P_2 = \omega_s \times T$ に代入します。
$$P_2 = 104.72 \times 200$$
$$P_2 = 20,944\text{ W}$$
単位を $\text{kW}$ に直すと、
$$P_2 \approx 20.94\text{ kW}$$
となります 。
スライド9:検算:物理的な整合性の確認

計算結果をチェックしましょう。
- 計算した二次入力 $P_2 \approx 20.9\text{ kW}$
- 与えられた機械出力 $P_o = 20.0\text{ kW}$
ちゃんと 入力 > 出力 の関係になっていますね。 差分の約 $0.9\text{ kW}$ が、回転子で熱として失われた損失(二次銅損)です。物理的にも正しい結果と言えます 。
スライド10:結論と解答

計算結果 $20.94\text{ kW}$ に最も近い選択肢を選びます。
(1) 19
(2) 20
(3) 21
(4) 25
(5) 27
正解は (3) です 。
スライド11:【参考】誘導機の比例関係

少し応用的な話ですが、この問題から「効率」も見えてきます。
$$P_2 : P_{c2} : P_o = 1 : s : (1-s)$$
- 入力 $21\text{ kW}$ に対して、出力が $20\text{ kW}$。
- つまり、効率は約95%。
- 損失(滑り $s$)は約5%で運転している優秀なモーターであることがわかります 。
スライド12:試験直前チェックシート

最後に、この単元の必須公式をまとめました。試験直前に見返してください。
- 同期速度:$N_s = \frac{120f}{p}$
- 角速度変換:$\omega_s = \frac{2\pi N_s}{60}$
- 同期ワット:$P_2 = \omega_s \times T$
鉄則:「同期ワット」と聞かれたら、**「同期速度 × トルク」**で一発です!

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