電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器の短絡試験」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、令和6年度上期 A問題9で出題された「短絡試験の測定値から漏れリアクタンスを求める」問題を、はじめての方でも確実に解けるように基礎から丁寧に解説します。
電圧計・電流計・電力計の3つの測定値が与えられたら、解法はいつも同じ。Z=V/I → r=W/I² → x=√(Z²−r²) の3ステップで機械的に解けます。カギは「電力計が示すのは銅損(r で消費される有効電力)」という一点です。
令和6年度上期 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和6年度上期 A問題9
単相変圧器の一次側に電流計、電圧計及び電力計を接続して、二次側を短絡し、一次側に定格周波数の電圧を供給し、電流計が 40 A を示すよう一次側の電圧を調整したところ、電圧計は 80 V、電力計は 1 200 W を示した。この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンス [Ω] の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電流計、電圧計及び電力計は理想的な計器であるものとする。
(1) 1.28 (2) 1.85 (3) 2.00 (4) 2.36 (5) 2.57
出題のポイント:電力計が示すのは銅損だけ
短絡試験では、電力計が示す値がそのまま銅損になります。鉄損は含まれていません——この前提があるから、電力から抵抗分が求まります。
なぜ鉄損が含まれないのか——短絡試験で加える電圧は定格の数%しかないからです。鉄損は電圧の2乗に比例するので、電圧が5 %なら鉄損は 0.052=0.25 %——400分の1にまで小さくなり、無視できます。
| 加える電圧 | 流れる電流 | 鉄損 | 銅損 | |
| 定格運転 | 定格の100 % | 定格 | 100 % | 100 % |
| 短絡試験 | 定格の数% | 定格 | 0.2 %程度(無視できる) | 100 % |
| 無負荷試験 | 定格の100 % | 定格の数% | 100 % | 0.2 %程度(無視できる) |
2つの試験が、きれいに裏返しの関係になっていることが分かります。片方は電圧だけ定格、もう片方は電流だけ定格——だからそれぞれ一方の損失だけを取り出せるのです。

順に計算する
電圧計÷電流計
電力計÷電流の2乗
三平方の残りの辺
選択肢の1.85に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(1) 1.28 ΩはZ から R を単純に引いた値(2.00−0.75=1.25)に近い値、(3) 2.00 Ωはインピーダンス Z そのものです。
(5) 2.57 ΩはZ と R を足した値(2.75)に近く、あるいは \( \sqrt{Z^{2}+R^{2}}=2.14 \) ——いずれにせよ Z より大きい値はあり得ません。
☝️ ひっかけの作り方:X は必ず Z より小さい——直角三角形の斜辺が Z なのだから、他の辺は必ず短いからです。この一点だけで (3)(4)(5) の3肢が消えます。残る (1) と (2) のうち、引き算ではなく三平方を使えば (2)——計算する前にここまで絞れます。
短絡試験でしてはいけないこと
短絡試験は安全な試験ですが、手順を誤ると危険になります。最も避けるべきは、定格電圧を加えたまま二次側を短絡することです。
%Z が5 %の変圧器なら、定格電圧を加えて短絡すれば定格の20倍の電流が流れます。これは短絡故障そのもの——巻線は電磁力で変形し、瞬時に焼損します。
だから短絡試験では、必ず電圧を0から徐々に上げていきます。電流計を見ながら、定格電流に達したところで止める——本問の「電流計が40 A を示すよう一次側の電圧を調整した」という一文が、まさにこの手順を表しています。
問題文の何気ない表現が、実際の試験手順を正確に描写している——そう気づくと、条件文の読み方も変わってきます。
「定格周波数の電圧を供給し」という条件の意味
問題文は「一次側に定格周波数の電圧を供給し」と断っています。この一言がないと、求めた漏れリアクタンスの値に意味がなくなる——リアクタンスは周波数によって変わるからです。
抵抗は周波数によらず一定(表皮効果を無視すれば)ですが、リアクタンスは周波数に比例します。だから「何ヘルツで測ったか」を明示しないと、値を比べられません。
| 測定条件 | 抵抗 R | リアクタンス X | インピーダンス Z |
| 50 Hz | 0.75 Ω | 1.85 Ω | 2.00 Ω |
| 60 Hz(同じ機器) | 0.75 Ω | 2.22 Ω(1.2倍) | 2.34 Ω |
同じ変圧器でも、60 Hz で使えば漏れリアクタンスは1.2倍になります。したがって %Z も大きくなり、電圧変動率も悪化——短絡電流は逆に小さくなります。
「50 Hz 機を60 Hz で使えることが多い」のは、磁束密度が下がって鉄心に余裕ができるからでしたが、一方で電圧変動率はやや悪くなる——周波数を変えると、複数の特性が同時に動くのです。
試験問題で「定格周波数」と書かれていたら、それは「実際の運転条件と同じ条件で測っている」という宣言です。だから求めた値をそのまま運転時の特性計算に使える——条件文には必ず理由があると考えて読みましょう。
⏱️ 本番での進め方
① Z=80/40=2.00 Ω、R=1 200/1 600=0.75 Ω。
② X=√(4−0.5625)=√3.4375≒1.85 Ω。
③ X<Z は必ず成り立つ。2.00 以上の肢を先に消す。
④ 短絡試験の電力計=銅損。鉄損は含まれない。
💡 覚え方
「短絡試験は電流を定格に、無負荷試験は電圧を定格に」——だから前者は銅損、後者は鉄損だけが測れます。2つの試験の対称性を押さえておけば、どちらの結果も正しく解釈できます。
出題履歴:4回にわたって同じ型が出ている
本問は平成19年度 A問題7とまったく同じ問題です(変圧器2:変圧器の短絡試験と漏れリアクタンス)。数値も選択肢も、正解の番号 (2) まで完全に一致しています。
| 年度 | 電流計 | 電圧計 | 電力計 | 答え |
| 平成19年度 問7 | 40 A | 80 V | 1 200 W | 1.85 Ω |
| 令和4年度上期 問8 | 40 A | 80 V | 1 000 W | 1.90 Ω |
| 令和6年度上期 問9(本問) | 40 A | 80 V | 1 200 W | 1.85 Ω |
| 令和7年度下期 問9 | 30 A | 150 V | 1 350 W | 4.77 Ω |
18年間で4回、しかも電流計40 A・電圧計80 V という設定は3回(変圧器4/変圧器49)。これほど繰り返される問題は、機械科目でも数えるほどです。
裏を返せば、3計器法さえ身につけておけば、何年度に受験しても得点できる可能性が高いということ——投資効率が極めて高いテーマだと言えます。


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