電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「二次銅損から出力を求める」計算はパワーフローの基本形として繰り返し出題されています。本記事では、令和4年度下期 A問題2「軸出力の計算」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
黄金比 \( P_o = \dfrac{1-s}{s}P_{c2} \) で機械的出力を出したら終わり——ではありません。本問は「機械損を引いて軸出力にする」最後のひと手間まで問うている点が新しい。ワナの選択肢もそこに仕掛けられています。
令和4年度下期 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
黄金比のあとに、機械損を引くもう一段があります。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和4年度下期 A問題2
三相誘導電動機が滑り 2.5 %で運転している。このとき、電動機の二次銅損が 188 W であるとすると、電動機の軸出力 [kW] の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、機械損は 0.2 kW とし、負荷に無関係に一定とする。
(1) 7.1 (2) 7.3 (3) 7.5 (4) 8.0 (5) 8.5
出題のポイント:黄金比のあとに、もう一段ある
二次銅損から機械的出力を出すところまでは定番です。本問はそこで終わらず、「機械損を引いて軸出力にする」最後のひと手間まで問うています。

3ステップで解く
1/s−1 と計算すると速い(40−1=39)。
二次銅損の39倍。
機械損0.2 kW を引く。単位をkWにそろえてから。



選択肢の正体
| 選択肢 | そう出る計算 | どこを間違えたか |
| (1) 7.1 | 7.332 − 0.2 | 正解 |
| (2) 7.3 | 39 × 188(=7.332) | 機械損を引き忘れた(最頻の誤り) |
| (2) 7.3(別ルート) | 188/0.025 − 200=7 320 | 倍率を1/s=40 とした(それは二次入力) |
| (3) 7.5 | 188/0.025=7 520 | 二次入力をそのまま答えた |
| (4)(5) 8.0・8.5 | — | 桁や倍率の大きな誤り |
(2)7.3 には2通りの誤りが同時に着地するのが巧妙なところです。「機械損を引き忘れた」場合も「倍率を40倍とした」場合も、どちらも7.3 になります——出題者が意図して重ねた配置でしょう。
「機械損が与えられている以上、必ず使う」——問題文に出てくる数値を全部使ったか確認するのが、この型の対策です。
パワーフロー全体を1枚にする
誘導電動機の電力は、入口から出口まで5回の関門を通ります。どの段の話をしているのかを見失わないために、全体を並べておきましょう。
| 段 | 量 | 本問での値 | そこで失われるもの |
| ① 一次入力 P1 | 電源から入る電力 | (与えられていない) | 一次銅損 Pc1+鉄損 Pi |
| ② 二次入力 P2 | =同期ワット | 7 520 W | 二次銅損 Pc2=sP2 |
| ③ 機械的出力 Po | 回転子で機械エネルギーになった分 | 7 332 W | 機械損 Pm(摩擦・風損) |
| ④ 軸出力 Psh | 実際に取り出せる出力 | 7 132 W | — |
本問が求めているのは④です。②と③の間だけが滑りで決まり、③と④の間は機械損という別の損失——この2つを混同しないことが核心です。
②と③の間は「電気が機械になる関門」で、その通行料が滑りの割合です。③と④の間は「機械のまま失われる関門」で、軸受の摩擦や冷却ファンを回す力がここで消えます。性質がまったく違う損失だと理解してください。
逆向きにも歩けるようにしておく
この地図は、どちらの向きにも歩けます。「軸出力と機械損から二次銅損を求めよ」という逆パターンも出題されます。
機械損を足す。
(1−s)/s ではなく s/(1−s) を掛ける。
「どちらを掛けるのか」で迷ったら、大小関係で判断してください。二次銅損は機械的出力よりずっと小さい(滑りが小さいのだから当然です)ので、小さくする方向の倍率=s/(1−s) です。
滑り2.5 % なら「39分の1」——倍率39 の逆数ですから、行きと帰りで同じ数字を使えばよいことになります。
⏱️ 本番での進め方
① (1−s)/s は 1/s−1 で計算する。2.5 % なら 40−1=39。
② 機械損が与えられたら必ず使う——問題文の数値を全部使ったか確認。
③ 単位をそろえてから引く。7 332 W と0.2 kW を混ぜない。
④ 検算は二次入力から:P2=Pc2/s=7 520 W、その (1−s) 倍が7 332 W。
この電動機の効率はどれくらいか
本問は軸出力までで終わりますが、もう一歩進めば効率が出せます。一次側の損失を仮に置いて、全体像を眺めてみましょう。
仮に一次銅損が250 W、鉄損が200 W だったとします(この規模の機械としては妥当な値です)。
二次入力に、一次側で失われた分を足し戻す。
約90 %——この容量帯では標準的。
| 損失 | 値 | 全損失に占める割合 | 性質 |
| 一次銅損 | 250 W | 30 % | 負荷の2乗で増える |
| 鉄損 | 200 W | 24 % | ほぼ一定(負荷に依らない) |
| 二次銅損 | 188 W | 22 % | 負荷の2乗で増える |
| 機械損 | 200 W | 24 % | ほぼ一定(速度で決まる) |
| 合計 | 838 W | 100 % | — |
4つの損失がほぼ同じくらいの大きさになっているのが分かります。「どれか一つが飛び抜けて大きい」わけではない——設計としてバランスが取れているということです。
負荷に依らない損失(鉄損+機械損=400 W)と、負荷の2乗で増える損失(銅損の合計=438 W)がほぼ等しい点にも注目してください。効率が最大になるのは「固定損=可変損」のときですから、この機械はちょうど定格付近で効率が最大になるよう設計されていることになります。
問題文が「機械損は負荷に無関係に一定とする」と断っているのも、この分類を意識させるためでしょう。損失を「負荷で変わるもの」と「変わらないもの」に分ける——効率を扱うときの基本の型です。
💡 覚え方
「銅損→出力は ×(1−s)/s、軸出力は機械損を引いてゴール」。(1−s)/s は 1/s−1 で速く出る。パワーフローは 一次入力 → 二次入力(同期ワット)→ 機械的出力 → 軸出力 の4段で、滑りが効くのは二次入力と機械的出力の間だけ。機械損はその外側の別の損失。
⚠️ よくある間違い
機械損を引き忘れて7.3 kW とする(選択肢(2))のが最頻の誤りです。「機械的出力」と「軸出力」は別物で、問われているのは軸出力です。もう一つは倍率を1/s=40倍としてしまうこと——それで出るのは二次入力7 520 Wで、ここから機械損を引いてもやはり(2)に着地するように仕組まれています。

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