#60【電験3種 機械】平成23年度 問2 完全解説|誘導機の始動方法(巻線形・かご形・単相)

電験3種 機械科目 平成23年度 問2 誘導機の始動方法 表紙スライド

電験3種の機械科目において、「誘導機の始動方法」は頻出かつ重要なテーマです。誘導電動機には大きく分けて「三相巻線形」「三相かご形」「単相」の3種類があり、それぞれ構造が異なるため、始動方法も全く異なります。

今回は、平成23年度 機械科目 問2の過去問を通じて、これら3種類の誘導電動機の始動方法の違いを、図解を交えながら視覚的にわかりやすく解説していきます。この1問を完璧に理解することで、誘導機の始動に関する基礎知識をしっかりと固めることができます!

目次

問題文の確認:誘導電動機の始動に関する記述

問題文(前半:三相巻線形・三相かご形)

電験3種 機械科目 平成23年度 問2 問題文前半のスライド

📝 問題文(前半)

次の文章は,誘導電動機の始動に関する記述である。

a. 三相巻線形誘導電動機は,二次回路を調整して始動する。トルクの比例推移特性を利用して,トルクが最大値となる滑りを (ア) 付近になるようにする。具体的には,二次回路を (イ) で引き出して抵抗を接続し,二次抵抗値を定格運転時よりも大きな値に調整する。

b. 三相かご形誘導電動機は,一次回路を調整して始動する。具体的には,始動時はY結線,通常運転時はΔ結線にコイルの接続を切り替えてコイルに加わる電圧を下げて始動する方法,(ウ) を電源と電動機の間に挿入して始動時の端子電圧を下げる方法,及び (エ) を用いて電圧と周波数の両者を下げる方法がある。

c. 三相誘導電動機では,三相コイルが作る磁界は回転磁界である。一方,単相誘導電動機では,単相コイルが作る磁界は交番磁界であり,主コイルだけでは始動しない。そこで,主コイルとは (オ) が異なる電流が流れる補助コイルやくま取りコイルを固定子に設けて,回転磁界や移動磁界を作って始動する。

問題文(後半:単相誘導電動機)と選択肢

電験3種 機械科目 平成23年度 問2 問題文後半と選択肢のスライド

📋 選択肢((1)〜(5)から一つ選べ)

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)1スリップリング始動補償器インバータ位相
(2)0整流子始動コンデンサ始動補償器位相
(3)1スリップリング始動抵抗器始動コンデンサ周波数
(4)0整流子始動コンデンサ始動抵抗器位相
(5)1スリップリング始動補償器インバータ周波数

誘導機の始動方法:3つのポイントを整理しよう

3種類の誘導電動機の始動方法の概要スライド

問題を解く前に、まずは3種類の誘導電動機の始動方法の全体像を整理しておきましょう。

  • 三相巻線形:回転子(二次側)に巻線があり、外部に抵抗を接続して始動します。キーワードは「比例推移」です。
  • 三相かご形:回転子が「かご」のような構造で、二次側に抵抗を接続できません。そのため、一次側(電源側)の電圧や周波数を調整して始動します。
  • 単相:家庭用電源などで使われますが、単相交流だけでは回転磁界が作れないため、自力で始動できません。補助的な工夫が必要です。

詳細解説 STEP1:三相巻線形誘導電動機の始動方法(比例推移とスリップリング)

三相巻線形誘導電動機の始動方法(比例推移とスリップリング)の解説スライド

比例推移とは?スリップリングの役割を理解しよう

三相巻線形誘導電動機の最大の特徴は、回転子(二次側)の巻線がスリップリングを通して外部に引き出されている点です。これにより、外部から抵抗(二次抵抗)を接続して、回路の抵抗値を調整することができます。

ここで重要になるのが「比例推移」という特性です。二次抵抗を大きくすると、最大トルクを発生する滑り \( s \) も大きくなります。始動時は回転子が止まっているため、滑り \( s = 1 \) です。この始動時(\( s = 1 \))に最大トルクが発生するように二次抵抗を調整することで、大きな始動トルクを得ることができます。

比例推移の関係式は以下のように表せます:

$$\frac{r_2}{s_{tm}} = \frac{r_2 + R}{1}$$

$$\therefore R = \left(\frac{1}{s_{tm}} – 1\right) r_2$$

ここで、\( r_2 \) は二次抵抗、\( s_{tm} \) は最大トルクを発生する滑り(通常運転時)、\( R \) は外部接続抵抗です。

(ア)= 1(始動時の滑りは1)
(イ)= スリップリング(二次回路を引き出すための部品)

詳細解説 STEP2:三相かご形誘導電動機の始動方法(始動補償器とインバータ)

三相かご形誘導電動機の始動方法(始動補償器とインバータ)の解説スライド

Y-Δ始動・始動補償器・インバータ(VVVF制御)の違い

三相かご形誘導電動機は、二次側に抵抗を接続できないため、始動電流を抑えるには一次側(電源側)の電圧を下げる必要があります。問題文には3つの方法が挙げられています。

  1. Y-Δ始動:始動時はY結線にして相電圧を \( \dfrac{1}{\sqrt{3}} \) に下げ、運転時はΔ結線に戻す方法です。始動電流・始動トルクともに全電圧始動時の \( \dfrac{1}{3} \) になります。
  2. 始動補償器始動:単巻変圧器(オートトランス)を用いて、電源と電動機の間に挿入し、始動時の端子電圧を下げる方法です。始動電流を全電圧始動時の \( \dfrac{1}{lpha} \) に低減したとき、始動トルクは \( \dfrac{1}{lpha^2} \) になります。
  3. インバータ始動(VVVF制御):可変電圧可変周波数(VVVF)インバータ電源装置を用いて、電圧(V)と周波数(F)の両方を制御して、滑らかに始動する方法です。速度制御にも使えます。

(ウ)= 始動補償器(電圧を下げるための単巻変圧器)
(エ)= インバータ(電圧と周波数の両方を下げる装置)

詳細解説 STEP3:単相誘導電動機の始動方法(交番磁界から回転磁界へ)

単相誘導電動機の始動方法(交番磁界と回転磁界)の解説スライド

交番磁界では始動できない理由と、位相をずらして回転磁界を作る方法

三相交流は自然に「回転磁界」を作りますが、単相交流が作る磁界は、大きさが変化しながら行ったり来たりするだけの「交番磁界」です。交番磁界の中では、回転子は左右から同じ力で押される状態になり、自力で回り始める(始動する)ことができません。

そこで、主コイルとは別に「補助コイル」を設け、コンデンサなどを接続して電流の位相をずらします。位相の異なる2つの電流が流れることで、擬似的に「回転磁界」を作り出し、モーターを始動させることができます。

(オ)= 位相(電流のタイミングをずらして回転磁界を作る)

解答のまとめと正解の選択肢

解答まとめスライド

これまでの解説をまとめると、各空欄に入る正しい語句は以下の通りです。

空欄正解ポイント
(ア)1始動時の滑り = 1(回転子が静止状態)
(イ)スリップリング巻線形の二次回路を外部に引き出す部品
(ウ)始動補償器単巻変圧器で端子電圧を下げる
(エ)インバータ電圧と周波数の両方を制御(VVVF)
(オ)位相補助コイルで電流の位相をずらして回転磁界を作る

🎯 正解:(1)

試験対策:誘導機の始動に関する重要キーワード一覧

誘導機の始動に関する重要キーワードまとめスライド

電験3種の試験対策として、以下のキーワードをセットで覚えておくと、得点源になります!

  • 巻線形 = 比例推移、スリップリング、二次抵抗、外部抵抗接続
  • かご形 = Y-Δ始動、始動補償器(単巻変圧器)、インバータ(VVVF制御)
  • 単相 = 交番磁界では始動不可、位相をずらして回転磁界を作る(コンデンサ始動・分相始動など)

おわりに:構造と原理をイメージで覚えよう

お疲れ様でした!まとめスライド

誘導機の始動方法は、それぞれのモーターの「構造」と「原理」を理解することが鍵です。単に言葉を暗記するのではなく、今回紹介したような図やイメージと結びつけて覚えると、試験本番でも忘れにくくなりますよ。

引き続き、電験3種の合格に向けて頑張りましょう!

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