電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「誘導電動機の速度制御3方式」は速度の式の変数分解そのものを問う基本テーマです。本記事では、平成18年度 A問題5を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
a=巻線形の二次抵抗制御(滑りを変える・損失大)、b=周波数制御(インバータ・広範囲)、c=極数変換(段階的)。n=(1−s)nₛ の変数がそのまま3方式に対応します。
平成18年度 機械科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成18年度 A問題5(要約)
n=(1−s)nₛ より、滑り・同期速度を変えると回転速度を変えられる。a.(ア)誘導電動機の(イ)回路の抵抗を変えて滑りを変化させる方法((イ)回路の電力損失が大きい)。b. 電源の(ウ)を変化させる方法(インバータ、圧延機や工作機械等の広範囲な速度制御)。c. 固定子の同じスロットに(エ)の異なる上下2種類の巻線を設けたり接続を変更したりして(エ)を変え、回転速度を(オ)的に変える方法。
(1) かご形・一次・電圧・相数・連続 (2) 巻線形・二次・周波数・極数・段階 (3) かご形・一次・周波数・相数・段階 (4) 巻線形・一次・電圧・極数・段階 (5) 巻線形・二次・周波数・極数・連続
出題のポイント:速度の式を変数ごとに分解する
誘導電動機の速度制御は覚えるものではなく、式から出てくるものです。回転速度の式に登場する変数は3つしかないので、制御法も3つしかありません。
| 変える変数 | 制御方式 | どんな機種で使えるか | 速度の変わり方 | 効率 |
| s | 二次抵抗制御 | 巻線形のみ | 連続 | 悪い(滑りの分が熱) |
| f | 周波数制御(インバータ) | どちらでも | 連続・広範囲 | よい |
| p | 極数変換 | どちらでも | 段階的 | よい |

a・b・c を式の変数に当てはめる
a:抵抗で滑りを変える=巻線形の二次抵抗制御
「(イ)回路の抵抗を変えて滑りを変化させる」——抵抗を挿入できるのは二次回路だけで、それができるのはスリップリングを持つ巻線形だけです。(ア)=巻線形、(イ)=二次。
「(イ)回路の電力損失が大きい」という但し書きが決定的な裏づけになります。二次銅損は sP2——滑りを大きくして速度を落とすということは、そのぶんを熱に捨てるということだからです。
b:インバータで変えるのは周波数
「圧延機や工作機械等の広範囲な速度制御」——「広範囲」は周波数制御の代名詞です。(ウ)=周波数。
「電圧」も候補に見えますが、電圧制御では範囲が狭いのです。トルクは電圧の2乗に比例するので、電圧を下げると速度が下がる前にトルクが足りなくなって止まってしまいます。
c:接続を変えて極数を変える=段階的
「同じスロットに(エ)の異なる上下2種類の巻線を設けたり接続を変更したり」——(エ)=極数。極数は2・4・6・8…と整数でしか変えられないので、速度は飛び飛び=(オ)=段階です。
☝️ ひっかけの作り方:(2)と(5)の違いは(オ)だけです。「連続」と書いてある(5)を選ばないこと——4極から6極へ「連続的に」変えることは物理的にできません。極数変換だけは必ず段階的と覚えてください。


なぜインバータは「V/f 一定」で制御するのか
周波数だけを下げると、実は電動機が壊れます。その理由が分かると、インバータの動作が腑に落ちます。
| 周波数 | 電圧 | 磁束 φ∝V/f | 何が起きるか |
| 50 Hz | 200 V | 基準 | 定格運転 |
| 25 Hz | 200 V のまま | 2倍 | 磁気飽和 ⇒ 励磁電流が激増して焼損 |
| 25 Hz | 100 V に下げる | 基準のまま | 正常(V/f 一定制御) |
だからインバータは周波数と電圧をセットで動かします。V/f を一定に保てば磁束が一定=トルクを出す能力も一定——低速でも定格トルクを出せるのが、インバータが「広範囲」と言われる理由です。
ただし極低速では話が変わります。一次抵抗による電圧降下が無視できなくなり、巻線に実際にかかる電圧が足りなくなるため、低周波数側では電圧を少し高めに補正します(トルクブースト)。
逆に定格周波数を超える側では、電圧をこれ以上上げられません(電源電圧の上限)。V/f が下がって磁束が減る=弱め界磁と同じ状態になり、トルクは落ちるが出力は保たれる定出力領域に入ります。直流機の弱め界磁制御とまったく同じ構図です。
極数変換の実際:2速モータ
問題文の「同じスロットに上下2種類の巻線を設けたり、接続を変更したり」は、2つの方式を並べて述べています。
| 方式 | どうするか | 特徴 |
| 独立巻線方式 | 極数の違う巻線を2組、同じスロットに収めて切り替える | 速度比を自由に選べる(6極と8極など)が、片方は必ず遊んでいるので効率が悪い |
| 接続変更方式(ダーランダ結線) | 1組の巻線のコイル群の接続を変えて極数を半分にする | 巻線を有効に使えるが、速度比は1:2 に固定 |
接続変更方式では、つなぎ方によってトルクの出方が変わります。Δ結線から並列Y(YY)へ切り替えると定トルク特性、Y結線からYYへ切り替えると定出力特性になり、負荷の性質に合わせて選びます。
換気扇の「強・弱」、エレベータの「高速・着床速度」、大形送風機の季節切替——2段階で足りる用途なら、インバータより安く確実です。古典技術ですが、いまも使われています。
3方式の使い分け
| 二次抵抗制御 | 周波数制御 | 極数変換 | |
| 使える機種 | 巻線形だけ | どちらでも | どちらでも |
| 速度の連続性 | 連続 | 連続 | 段階的 |
| 制御範囲 | 定格以下のみ | 定格の上下に広い | 決まった何段か |
| 効率 | 悪い(滑りの分が熱) | よい | よい |
| 装置の価格 | 安い | 高い | 安い |
| 主な用途 | クレーン・巻上機の始動 | 圧延機・工作機械・現代のほぼ全部 | 換気扇・エレベータ |
二次抵抗制御が「損失が大きい」のは、滑りの割合がそのまま熱になるからです。半分の速度で回すには滑り0.5=二次入力の半分を捨てることになり、連続運転には使えません。始動時だけ、あるいは短時間の速度調整に限るのが実務です。
この損失を捨てずに電源へ返そうというのが二次励磁(セルビウス方式)で、周波数制御が安くなるまでは大形ポンプなどで使われていました。いまはインバータが安価になり、ほとんどの用途で周波数制御に置き換わっています。
⏱️ 本番での進め方
① N=(1−s)·120f/p を書いてから読む。変数が3つ=方式も3つ。
② 「損失が大きい」=二次抵抗制御、「広範囲」=周波数制御、「段階的」=極数変換。
③ (2)と(5)は(オ)だけの違い。極数は整数なので必ず段階的。
④ 外部抵抗を入れられるのは巻線形だけ——(ア)にかご形は入らない。
★類題:令和元年度 A問題4は一次電圧制御まで踏み込む
令和元年度 A問題4も、同じ「n=(1−s)·120f/p の変数分解」で解ける問題です。ただし扱う方式が1つ多い点が違います。
| 平成18年度 A問題5(本問) | 令和元年度 A問題4 | |
| 聞き方 | 3つの制御法を a・b・c として説明 | 速度の式から5つの空欄 |
| 扱う方式 | 二次抵抗・周波数・極数の3つ | VVVF・極数・一次電圧・二次抵抗の4つ |
| 向こうだけにあるもの | — | 一次電圧制御と、その安定範囲の話 |
| 正解 | (2) | (5) |
一次電圧制御は、滑りを変えるもう一つの方法です。電圧を下げるとトルク曲線が縦に縮み(T∝V²)、負荷と釣り合う点が滑り側へ移動して減速します。二次抵抗制御と違って山の位置(sm)が動かないため、安定に使える範囲が s<sm に限られるのが特徴です。
本問の3方式に一次電圧制御を足せば、誘導機の速度制御は全部そろいます。「同期速度を変える2つ(f・p)は効率がよく、滑りを変える2つ(一次電圧・二次抵抗)は滑りの分が熱になる」——この二分法で4方式が整理できます。
💡 覚え方
N=(1−s)·120f/p の3変数がそのまま3方式。滑り=二次抵抗制御(巻線形専用・損失大)/周波数=インバータ(連続・広範囲・V/f 一定)/極数=極数変換(段階的)。V/f を一定に保つのは磁束 φ∝V/f を一定にするため——電圧をそのままに周波数だけ下げると磁気飽和で焼ける。
⚠️ よくある間違い
(オ)に「連続」を選ぶのが本問最大の罠です。極数は整数でしか変えられないので、速度は必ず飛び飛びになります。もう一つは(ウ)に「電圧」を入れること——電圧制御はトルクが2乗で落ちるため範囲が狭く、「広範囲」とは言えません。

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